発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第403回目は『Mages of Mystralia』を紹介する。
本作は独自の「スペル・クラフト」システムにより、プレイヤー自身が編み出した魔法を使ってモンスターを倒し、環境パズルを解いていくアクションアドベンチャーである。開発元はカナダのインディーデベロッパーBorealys Games。「魔法使いになること」の意味を追求した彼らは、ユニークなゲームシステムを説得力のある物語と世界観で支えられるよう、脚本担当としてエド・グリーンウッド氏を迎え入れた。
グリーンウッド氏は、テーブルトップRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界設定(キャンペーンセッティング)の中でも魔法色の強い「Forgotten Realms」を生み出した人物であり、著書170作品以上のベストセラー作家でもある。また本作の音楽スコアは仲間将太氏が率いる「ビデオゲームオーケストラ」が演奏している。こうした人選からも、純度の高いファンタジー作品を目指していることが窺える。
プレイヤーが操作するのは、生まれつき魔法の力を宿した少女「Zia」。不運にも彼女の母国では魔法が禁じられている。「Zia」は魔法の極意を会得するため、母国を離れ、魔法使いたちが集う「Mystralia」王国へと足を踏み入れる。なお本作は「Zia」の成長物語であるが、グリーンウッド氏がつくりだした「Mystralia」王国の物語はゲーム一本では語りきれないものであったため、別途ウェブコミックとしても展開されている。
「Zia」が操る魔法は大きく4つのカテゴリに分類される。火や氷属性の玉をつくりだす「Actus」、範囲効果のある「Immedi」、召喚系の「Creo」、そして自分自身にかける「Ego」。いずれも単独では役に立たないが、特殊なルーン石を加えることで魔法の発生条件、挙動、効果を指定できる。
たとえば火の「Actus」に「Move」というルーン石をつけると、火の玉を前方に発射する。さらに「Duplicate(複製)」を加えると火の玉の同時発射数が3つに増える。「Homing」を加えると火の玉が敵を自動追跡するようになる。続いて氷の「Ego」に「Duplicate」を加えると、「Zia」のデコイが出来上がる。デコイと火の玉を組み合わせれば、火の玉を放つデコイになる。そこに発生条件「Periodic」を付け足せば、一定間隔で火の玉を発射し続けるタレットが出来上がる。
この「スペル・クラフト」システムによりプレイヤーは直感操作で魔法を組み合わせ、試行錯誤を繰り返すうちに高度な魔法が仕上がっていく。レベルアップにより魔法をアンロックするのではなく、プレイヤー自身の想像力を働かせることで、先人が思いつかなかった新しい魔法を生み出す。これぞ本作における魔法生成の魅力であろう。「Zia」の旅が終わるころには、プレイヤーごとに異なる唯一無二の魔法書が出来上がっているというわけだ。
本作はすでに完成間近。本稿執筆時点では、より完成度を高めるためKickstarterキャンペーンを実施している。初期目標資金額は2万5000カナダドル(約210万円)と比較的少額。集まった資金はゲーム性の向上、機能の追加に当てられる。またキャンペーンをきっかけとしてコミュニティを広めること、支援者が参加できるベータテストを通じてフィードバックを得ることも目的の一部となっている。
『Mages of Mystralia』のリリース時期は2017年第2四半期を予定。対象プラットフォームはPC(Steam)およびPlayStation 4/Xbox Oneとなっている。