地形を操ることで老人の一人旅をサポートする2Dパズル・アドベンチャー『Old Man’s Journey』が開発中


発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第402回目は『Old Man’s Journey』を紹介する。

本作はキャラクターではなく地形をドラッグ操作することで、老人の一人旅を手助けするパズル・アドベンチャーゲームである。ドラッグ&ドロップの直感操作で起伏のはげしい道を動かし、老人が先へ進めるようにする。たとえば傾斜が急で通れない丘があれば削ってあげ、川が邪魔して進めないときは近くの地面を山なりにすることで別のルートをこしらえてあげる。こうして道筋が出来上がったら、あとは道標を指して誘導する。老人のために道を直接つくるのではなく、平らな道を上にひっぱることでアイテムを転がすといった環境パズルもある。

主人公である老人は人里離れた辺地で隠居生活を送っていたが、とある手紙をきっかけに旅へと出かける。道中で出くわすキャラクターやオブジェクトに触発され、若かりしころの思い出がよみがえってくる老人。その記憶の断片から、長い人生で味わった苦楽、後悔、喪失、そして彼の中にある償いの心が見えてくる。言葉を使わないビジュアル・ナラティブを採用した本作は、プレイヤーと老人を言葉にできない感情のレベルでつなげてくれるだろう。

老人が旅する地中海・中央ヨーロッパ風の暖かみのあるロケーションは手書きの2Dアート(一部は3Dモデル)で描かれており、心温まる穏やかな作風をつくりあげている。そのやさしいタッチにより2017年度の「Independent Games Festival」ではビジュアルアート部門でノミネートされた。公式サイトでは「コンパクトなゲーム体験」と述べているように、あまりゲームの時間を確保できない大人でも、就寝前に癒されたり、子供と一緒に遊んだりしやすいファミリー向けのタイトルと言えそうだ。

本作の開発を手がけるのは、オーストリアのインディーデベロッパーであるBroken Rules。2007年、当時学生であったメンバーが開発した物理パズル『And Yet It Moves(邦題:それでも地球は回っている)』が「Independent Games Festival」の「Student Showcase」で勝利をつかみ、話題となった。

それから10年の年月が経ち、学生から子を持つ親の身分となった彼らは、自分の夢を追うことと、家族と共に時間を過ごすことの両立に悩みはじめたという。その話題はいつしかメンバーをつなげる共通の話題となっていった。本作の物語は、こうした開発者自身の経験や悩みからインスピレーションを受けている。察するに主人公である老人も、長い人生の中で似たような葛藤を味わい、なにかを犠牲にし、ときには尾を引くような選択をしてきたのだろう。

なお本作は「IndieFund」からの資金提供により実現したプロジェクトである。「Indie Fund」は、その名のとおり『The Swapper』『Duskers』『Her Story』『That Dragon, Cancer』『Event[0]』といった小規模プロジェクトに出資する団体である。とくにパズルおよびアドベンチャー・ジャンルの中から有望なタイトルをピックアップする目利きであり、彼らが関わっているという事実だけでも、小規模ながら一定のクオリティが保証されていると考えられる。

『Old Man’s Journey』は2017年内にリリース予定。具体的な対象プラットフォームは未定だが、PCとモバイル両方への対応を予定している。