発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第387回目は『One Dreamer』を紹介する。
『One Dreamer』は横スクロール形式のホラーゲームだ。主人公となるのは、インディーゲームを開発して暮らしているクリエイター「Frank」。彼はゲーム作りのためのインスピレーションを得たいと願いながら眠るうちに、奇妙な世界へとたどり着く。自分の知っている恋人やペットが姿を変えて存在する美しくも恐ろしい世界は、明晰夢(夢であることを自覚でき、コントロールできる)を通じて映し出された彼自身の自意識だった。奥に進み、無事に現実世界へと戻るが、眠るとまたしても夢世界へと誘われていく。Frankは自分の自意識に起こっている異変を知るために深層へと潜っていくが、潜れば潜るほど現実世界から断絶されていく。
『One Dreamer』は、夢パートと現実パートに分かれてゲームが進行する。夢パートでは横スクロールアクションゲームが展開される。シーンによってはステルスやクラフトなどが求められるものの、小気味よく進行するスピーディなものになるという。一方現実パートは、さまざまなアイテムを調べパソコンをいじりながらじっくりと時間をかけて謎を解いていくパズルアドベンチャーゲームとなる。このふたつの世界を往復しながら物語を進めていくのがゲームの目的だ。本作はおもに『キャサリン』や『The Last of Us』を参考にしているといい、心理学の観点からプレイヤーを揺さぶるゲームを目指して開発されているようだ。
配布されているデモをプレイしてみたが、開始してからすぐに筆者は“自意識”の世界に引き込まれた。『One Dreamer』は2Dゲームとしてデザインされているが、Frankはフルボイスで自分の心情を話すなど、ナラティブな要素も強い。血や奇妙な地形など、ビジュアルはプレイヤーの不安を煽るが、BGMはどこかさみしげでありながら落ち着きを感じさせる。またゲームグラフィックは、ピクセルアートで構成されているものの、光源エフェクトなどを用いるなど、多様な手法で物語を演出している。夢世界で恋人のAliceが恐ろしい形相で迫ってくるシーンは特に印象的だ。デモは2015年に制作されたもので、バグなども多い印象であるが、プレイすればそのポテンシャルが感じられるだろう。
開発を手がけるのはオーストラリアのダーウィンに住む4人のアマチュアデベロッパーだ。Gareth Ffoulkes氏がプログラミングとアートを担当しており、残りの3名は声優と作曲を担当している。開発チームは、みんな同じ街で生まれ育った幼なじみなのだという。
本作は、2015年にはKickstarterキャンペーンを開始し成功を収めたが、2016年末を予定していた発売日は延期しており、いつリリースされるかはまだ不明だ。依然として精力的に開発が続けられているとのことなので、2017年には自意識の夢世界へ飛び込めるかもしれない。