伊藤潤二作品とクトゥルフ神話を融合させたアドベンチャー『Kyohu no sekai 恐怖の世界』開発中。日常に隠された超現象の謎を暴け
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第367回目は『Kyohu no sekai 恐怖の世界 -world of horror-(以下、恐怖の世界)』を紹介する。
『恐怖の世界』はホラー漫画家として有名な伊藤潤二氏から強い影響を受けたアドベンチャーゲームだ。本作は、Webコミック風の世界を舞台に、美しい女性が登場し、不気味な超現象が発生し、グロテスクな化け物に襲われ、あっけないオチで終わる。本作はゲームの流れから細部にわたるまで、ホラー漫画界の巨匠に対する強烈な愛情であふれている。
ゲームの目的は「強大な力を持つ悪魔の目覚めを阻止すること」。悪魔の目覚めを予兆する超現象を調べ、悪魔の目覚めを妨害する手段を見つけていく。まずプレイヤーは街で噂される超現象について探っていくことになる。
本作のゲームシステムはやや複雑なものとなっている。まずプレイヤーはゲーム開始時にシナリオとキャラクターを選ぶ。選んだシナリオによって、ストーリーや展開が大きく変化する。キャラクターは女子高生から成人男性まで幅広く用意されており、それぞれにパラメーターが設定されている。このパラメーターの意味については後述する。シナリオとキャラクターを選択すれば、次は戦闘で使用する呪文とアイテムをセットする。こうした一連の準備が終われば、超現象の謎を探る調査の始まりだ。
プレイヤーは、任意の場所へと移動して噂を調査していく。ゲーム内では行動するたびに時間が経過する。場所によって移動にかかる時間が違うので、注意が必要だ。移動が終わればその土地を調査していく。調査をおこなえばなんらかのイベントが発生し、Doom値(おそらく100%になると破滅してしまう)が上昇したり、パラメーターが変化したり、アイテムを得たり、もしくは超現象につながるヒントが得られるだろう。いずれにせよ、どのような行動をするにしても前述したキャラごとに設定されているパラメーターのチェックが頻繁に発生する。該当のパラメーターの数字が一定の基準を満たしているかでイベントの成否が判定されるということだ。
調査を進めていけばグロテスクな化け物たちと遭遇することもあるだろう。彼らと遭遇すれば戦闘が始まる。こうした戦闘では、ゲーム開始時やイベントにて入手した呪文やアイテムが使用できる。戦闘にはダイスによるランダム要素も絡んでおり、頭脳と運の両方を持ち合わせていれば、化け物たちを撃退することもできるが、序盤はさっさと逃げるのが得策だ。こうして調査を進めながら、時に化け物と遭遇し、悪魔の復活を妨げる手段を探す。シナリオごとに「謎」が存在しており、それらをすべて集めきるとゲームクリアだ。このように『恐怖の世界』はアドベンチャーゲームながらフリーシナリオとなっていることに加え、ダイスを使った戦闘なども織り交ぜられており、ゲームブック色の強いシステムとなっている、
開発を手がけているのはポーランド在住のPaweł Koźmiński氏。学生として医療学校に通う氏は、多忙な日常のなかで空いた時間を見つけ本作を開発している。氏は自他ともに認める伊藤潤二氏の大ファンであり「伊藤潤二氏が描く世界に、クトゥルフ神話のコズミックホラーを融合させればマッチするのではないか」と思い、ゲームの開発を始めたようだ。
『恐怖の世界』は現在アルファ版がitch.ioにて無料公開されている。現時点ではすべて英語でありチュートリアルも簡易的にしか用意されていないゆえに、英語が苦手であれば遊ぶには困難がともなう。こうした部分についてKoźmiński氏にたずねたところ、次なるアップデートでは丁寧なチュートリアルが導入されるのでそれで幾分か遊びやすくなるだろう」との返答をいただいた。また日本語にローカライズする予定があるかうかがったところ「コードの変換の方法がわからないというだけで、扉は開いている」との返答もいただいた。
『恐怖の世界』は、ゲーム内容はまだまだ粗削りではあるものの、独特の世界観に加えて、不気味なSEやアニメーションでプレイヤーの不安を煽ったり、画面が切り替わる瞬間に小さなガイコツアイコンが現れたりするなど巧みな演出が光っている。ゲームは2017年夏に完成する予定とのことなので、ぜひ完成後は日本語でのリリースを心待ちにしたい。