ゾンビも怪物も登場しない、実直な人間社会でのサバイバルを描く『Vestige of the Past』がUE4で開発中

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発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第356回目は『Vestige of the Past』を紹介する。

オープンワールド型のサバイバルゲームというのは、『DayZ』の登場以来PCゲーム市場にあふれ返っている。ではそこにライフシミュレーションの要素を付け加えるとどうだろうか。『The Sims』のように神視点からキャラクターの人生をコントロールするのではなく、あくまで一人称視点で。それもUnreal Engine 4を活かしたハイクオリティのビジュアルでだ。すると本作の特色が見えてくる。

『Vestige of the Past』の世界にはゾンビもモンスターも存在しない。プレイヤーはあくまで人間社会の中でサバイブする。空腹や喉の渇きといった生理的欲求を満たしつつも、コミュニティの中で働き、社会の一員としての帰属的欲求を満たしていく。我々プレイヤーが生きるリアルな人生こそがサバイバルなのだと言わんばかりだ。

オープンワールド型のサバイバルゲームも、ライフシミュレーションも、ジャンルとしては目新しいものではない。だが本作は切り口をずらすことで独自性を獲得しようとしている。「オープンワールド x サバイバル」を組み合わせた作品にはポスト・アポカリプス的な退廃した世界観が多い。対する本作はUnreal Engine 4の力で色彩豊かな明るい街並みを作り上げている。またライフシミュレーションでは多くの場合、自分の分身となるキャラクターを第三者の視点から操作する。その点、本作では一人称視点によりプレイヤー自身がシミュレーション内の世界に溶け込むことになる。

現時点ではシングルプレイのみを想定したタイトルであり、ストーリーモードが存在する点も本作の特徴としてあげられるだろう。ストーリーはプレイヤーが住む街の謎に関わってくる。ゲーム内の街並みは現実に寄せているが、わずかに違和感が残るようなデザインにしているという。そしてストーリーを通じてその違和感の正体が明らかになっていく。

昼夜サイクルや気温の概念も取り入れている
昼夜サイクルや気温の概念も取り入れている

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ゲーム内世界の設計に用いたのは、チェコ共和国のブルノをベースに自前でモデリングしたアセットである。アセットストアから購入したものは少ないという。なおブルノは本作のデベロッパーであるFineway Studiosが拠点を置く都市でもある。彼らは生きた街づくりを目指しており、ゲーム内にはスーパー、ガソリンスタンド、自動車修理屋といった店が立ち並んでいる。街の人々もひとりひとりに特徴がある。彼らの行動を観察し、世渡り上手になることが共同体内での地位向上につながる。人が良すぎては騙されるし、愛想がなくては親交を深められない。権力者と仲良くなれば、それだけ好条件の仕事にありつける。取引条件もよくなる。もちろん、NPCとの建前だけの関係を捨て、泥棒プレイを楽しむこともできる。

ゲームスタート時には無一文の状態からはじまる点はサバイバルゲームらしい。だが空腹や喉の渇きといった生理的欲求を満たしたあとで待っているのは、人間社会に揉まれながら仕事にありつき、衣食住を整えていくという、一階層上の欲求を視野に入れたサバイバルである。日銭を稼ぐにはファストフード店、農場、自動車修理屋で働くという手段がある。組織働きが好みでなければ狩猟、釣り、個人配達業で生計を立てることも可能だ。いずれは個人で店舗を構え、経営がうまくいけば支店を増やしていく、といったステップアップもある。ただし、こうした経営シミュレーション要素については想定段階の内容であり、リリース時に変更される可能性はある。

トレイラーには野菜を切り、フライパンで炒めるといった細かい調理シーンも
トレイラーには野菜を切り、フライパンで炒めるといった細かい調理シーンも
プレイヤーキャラクターやマイカーのカスタマイズ要素もある
プレイヤーキャラクターやマイカーのカスタマイズ要素もある

『Vestige of the Past』は昨年12月30日にSteam Greenlightプログラムへと登録されたばかり。わずか3日間でトップ10入りという好調ぶりである。対象プラットフォームはPC。まずは早期アクセスとして2017年第1四半期に公開する予定だ。ストーリーモードは正式リリースまで実装されず、早期アクセス中はサンドボックスモードのみプレイできる。NPCや経済システムは未完成である。

デベロッパーのFineway Studiosは過去に『Frankenstein: Master of Death』というカジュアルなアドベンチャーゲームを手がけた以外には未知数のスタジオである。野心的なタイトルであるだけに、正式リリースまで持ち込めるだけの支持を得られるのか、注目していきたい。

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