『Balthazar’s Dream』は、昏睡状態の飼い主を想う「犬の夢」の世界をピクセルアートで描く
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第347回目は『Balthazar’s Dream』を紹介する。
少年「Dustin」と彼のペットであり親友でもある愛犬「Balthazar」は、幼い頃から大の仲良し。ある日ふたりが公園で遊んでいる最中、Dustinがアイスクリームを販売するトラックに轢かれてしまうという衝撃的な展開から『Balthazar’s Dream』は始まる。
Dustinは一命を取りとめたものの、昏睡状態に陥ってしまう。犬であるBalthazarにできるのは、病院で眠るDustinのそばにいることだけだ。そんな飼い主の回復を祈るBalthazarは病室で眠るうちに、妙な夢の世界に入り込んでしまう。その世界でかすかなDustinのにおいと闇の気配を感じ取ったBalthazarは、「ご主人様が病院で眠っているのは誰かに連れて行かれたかからだ」と思い込み、少年を救うべく勇敢にも夢の深層へと潜ることを決意する。
『Balthazar’s Dream』のゲームシステムは横スクロールアクションを採用している。障害物を避け、崖を渡り夢の奥を目指していく。夢の世界という舞台設定の影響からか、Balthazarはロープにしがみついたり、前転したりと犬らしからぬアクロバティックなアクションを披露する。しかしこうしたアクションをおこなうと画面上のゲージ「Smarts bar」が減少する。ゼロになると、回復するまで前述のアクションができなくなってしまい、さらにその状態で掃除機に遭遇するとBalthazarはパニックをおこし操作せずとも走り出してしまうなど、場面によってはSmarts barの状態に注意を払わなければならない。しかしこの状態を利用して大ジャンプを繰り出すことも可能で、あえてゼロにするというのも覚えておくといいだろう。 ステージ内には襲いかかってくる敵も多く存在する。猫にはゴムボールを当て、アライグマにはフリスビーぶつけるなど、さまざまなオブジェクトを利用することで活路を見出していく。
KickstarterページにはWindows/Mac向けのデモが用意されているので早速遊んでみたところ、難易度は高いが小気味よく進む2Dアクションゲームに仕上げられていると感じた。ステージの要所にはDustinの幽霊が待っており、Balthazarとの絆が感じられる会話がかわされる。ひたむきでかわいいBalthazarを応援したくなる気持ちと、心優しいDustinを救いたい気持ちが湧き、うまくゲームを進行させる動機付けができている印象だ。ピクセルアートとオーケストラ調のBGMで描かれる、かわいらしさと暗さを両立させた世界観も、シナリオへの没入感を高めてくれる。
開発を手がけているのはPsilocybe Games。Sawa Bialczynska氏と夫のPeter氏のふたりによって設立されたスタジオだ。本作に登場する犬Balthazarはふたりの飼っているペットをモチーフにしているという。小さなスタジオながら『Balthazar’s Dream』は「スタジオジブリになるための第一歩」と意気込んでおり、野心がうかがえる。11月23日からはKickstarterキャンペーンも実施しており、見事にゴールを達成している。
対象プラットフォームはPC/Macで、2017年4月のリリースが予定されている。