気鋭パブリッシャーSecret Modeはいま日本に本気。海上ホラー『Still Wakes the Deep』整頓パズル『A Little to the Left』などヒット作連発、日本で人気なのは?
弊誌は、同社の共同設立者でChief Publishing Officerを務めるJames Schall氏にインタビューを実施し、Secret Modeはどういった企業なのか話を訊いた。

パブリッシャーのSecret Modeは5月8日、Silent Gamesが手がけたアクションRPG『Empyreal』を配信した。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S。
なお、本作は日本語表示に対応している。販売元のSecret Modeは英国に拠点を置く企業であるが、近年は日本市場向けの展開を重要視しており、サポートを強化しているという。今回弊誌は、同社の共同設立者でChief Publishing Officerを務めるJames Schall氏にインタビューを実施し、Secret Modeはどういった企業なのか話を訊いた。

──Secret Modeについて、まずは簡単に紹介していただけますか。
James Schall氏(以下、Schall氏):
Secret Modeは完全に独立したパブリッシャーで、「ゲーマーが人生で必要としていることに気づいていなかったインディーゲームの逸品」を見出すことが主な仕事です。将来の新作だけでなく、これまで見過ごされてきた傑作を含め、プレイヤーに最高のインディーゲームを届けることを使命とし、また世界中のインディー開発者がその創造性をより多くの人々と共有できるよう尽力しています。
Secret Modeは2025年3月に独立しましたが、元々はSumo Groupの一員として2021年に設立された企業で、当初は素晴らしいインディーゲームの発掘に加え、Sumo Group内で開発されたタイトルの販売をサポートすることが仕事でした。その後、私たちは40人以上の優秀な人材を抱えるチームへと成長し、心温まるパズルゲームから大人向けホラーゲームまで手がけてきました。たとえば『A Little to the Left』や『Still Wakes the Deep』『Loddlenaut』『Wobbledogs』『Make Way』『Parcel Corps』『Critter Café』『DEATHSPRINT 66』、そして『Empyreal』といった作品が挙げられます。
──取扱タイトルの中では、最近はどのゲームが売れていますか。日本で人気の高いタイトルについても気になります。
Schall氏:
私たちが最初に契約したタイトルのひとつである、Max Infernoが手がけた整理整頓パズルゲーム『A Little to the Left』は、2022年の発売以来絶大な人気を誇っており、その勢いはいまだ衰える気配がありません。モバイルを含む全プラットフォームでリリースし、さらにパズルを追加する2つのDLCパックも配信しており、これまでにPCとコンソールで200万人以上にプレイされています。日本でも好評をいただいており、最近では日本のVTuberの方々がプレイされているのを見て大変嬉しく思っています。
Moon Lagoonが開発した海洋ゴミ回収アドベンチャーゲーム『Loddlenaut』も日本のプレイヤーに人気ですよ。とてもかわいいグラフィックで、またNintendo Switchでも快適にプレイできることもあって、あらゆるプレイヤー層に受け入れられています。

──幅広いジャンルのゲームを販売されていますが、取扱タイトルを選定するにあたってのポリシーや基準はあるのでしょうか。
Schall氏:
Secret Modeが取り扱うゲームには4つの柱があります。1つ目は「やさしい雰囲気(wholesome)のゲーム」で、『A Little to the Left』や『Loddlenaut』などが含まれます。こういったゲームは設立当初からSecret Modeの中核を成しており、まだまだ大きな可能性があると信じていますので、この分野の開発者と共にさらに探求していきたいと考えています。
2つ目の柱は、海上石油掘削施設ホラーゲーム『Still Wakes the Deep』や時間操作パズルゲーム『Eternal Threads』のような、「成熟した物語性を持つゲーム」です。表現方法は作品によりさまざまですが、プレイし終えた後も考えを巡らせたくなるようなストーリーが、作品の核として存在することが必須だといえます。
3つ目は、「何か月にもわたり繰り返しプレイしたくなる奥深さを持つストラテジーゲーム」です。実はこうしたタイトルは現在私たちのカタログには存在しておらず、まさにいま取り組んでいるところでして、一緒に仕事をする開発者を探しています。
そして4つ目の柱は、「特別な何か(special something)のグループ」と呼んでいます。どんなジャンルであれ、スタッフらにお気に入りとしてすぐ挙げられるようなゲームですね。混沌とした輝きを持つDIYパーティーレースゲーム『Make Way』が良い一例だと言えるでしょう。このカテゴリーに当てはまる次なる新作は間もなく発表予定ですが、あらゆる種類の興味深くクリエイティブなゲームを、私たちはまだまだ求めています。
──パブリッシャーとしてのSecret Modeならではの強みや特徴は何だと考えていますか。
Schall氏:
私たちの最大の強みは、パブリッシャーとして完全に独立していることだと言えます。どのチームと一緒に仕事をするのかを迅速に決断でき、そして真に情熱を注げるプロジェクトに取り組むことができるということです。
また、パブリッシングのあらゆる面において世界トップクラスの人材を揃えており、パートナーの開発者は最高のゲームを作ることだけに集中できます。取り扱うすべてのゲームを成功に導くため、QAやマーケティング、PR、インフルエンサー、ソーシャルメディア、コミュニティ、そして各ストアと連携して取り組んでいます。

──比較的多くの作品を日本語に対応させていますね。御社にとって日本市場はどういう位置付けでしょうか。今後も日本語対応ゲームのリリースを期待しても良いでしょうか。
Schall氏:
聞いてくれてありがとう。素晴らしいゲームというものは世界共通ですが、あらゆる地域のプレイヤーと私たちのゲームとの間に障壁を作らないようにすることは、パブリッシャーである私たちが責任をもって取り組まなければならないことです。Secret Modeは英国に拠点を置いていますが、社内だけでなく、アクティブゲーミングメディアなど日本の外部パートナーとも密接に協力して、日本市場への対応に万全を尽くしています。
Secret Modeの今後の作品においては、日本のプレイヤーをとても重要視しています。私はセガで13年働いた経験があり、日本の文化や、日本におけるビデオゲームという芸術様式の活気に触れてきました。日本のプレイヤーの皆様に私たちのゲームを楽しんでいただいていることは、非常に光栄ですし誇りに思っています。
──日本語対応というと、九州弁を採用した『Still Wakes the Deep』が記憶に新しいです。もともと英語版でも訛りがある作品ながら、九州弁は特に訛りが強い方言のひとつということなどで日本では賛否両論がありましたが。
Schall氏:
『Still Wakes the Deep』のローカライズに方言を使用するということは、開発元The Chinese Roomからの提案でして、私たちはそれを全面的に支持しました。本作のストーリーは、スコットランドの特定の地域および社会経済的階層に深く根ざしており、それがゲーム内の言語や雰囲気に現れています。The Chinese Roomは、海上石油プラットフォームでそうした人々と働く生活をプレイヤーに体感してもらうために、すべての翻訳言語にこの点を反映させたいと考えたのです。
日本語版の翻訳者に対しては、スコットランドとイングランドの労働者階級の人々の雰囲気に合う方言を使用するように依頼し、作業員たちの多様な言葉を反映させることを考慮した結果、博多弁を含む九州弁や、彼の出身である長崎弁、また関西弁をミックスする判断となりました。これは、従業員全員がさまざまな方言を話していたという、本作にも似た雰囲気のあった彼自身の工場勤務経験を反映させたものでもあるようです。
本作のキャラクターたちの訛りの強さはさまざまですが、翻訳者は方言を分かりやすく表現しようと努めていたことは伝えておきたいです。彼は、自身の方言をいつか翻訳に取り入れたいと願っていたとのことで、私たちとしてはその機会を与えることができて嬉しく思っています。

──Secret Modeは年々リリース数を増やしていますが、2025年についてはいかがでしょうか。
Schall氏:
2025年の計画についてはまだお話しできる段階にはありませんが、とても楽しみなプランが数多く進行中ですのでご安心ください。もちろん『Empyreal』のローンチにもワクワクしていますよ!なお、Sumo Groupのチームとは良好な関係を保っており、彼らのゲームで私たちのパブリッシング戦略に合致するものがあれば、今後も検討を続けていきます。
──直近の新作としては、『Empyreal』がリリースされました。どのような作品なのか、また日本のゲーマーにアピールしたい点などお教えください。
Schall氏:
『Empyreal』は、巨大なモノリスの内部を探索し、古代文明の産物として残された自動装置と戦うアクションRPGです。プレイヤーは、3種類の武器タイプを駆使する戦闘をマスターし、戦利品を集めて装備をアップグレードしながら、モノリス探索に派遣された調査隊のメンバーと協力して隠された秘密を解き明かすことになります。
日本のコアなRPGファンであれば、本作のロードアウト構築の奥深さをきっと気に入るでしょう。各装備は能力値を調整でき、お気に入りの装備を自分のプレイスタイルにあわせてカスタマイズ可能です。また、装備はクラスに固定されないため、より良い装備を見つけたり、新しい武器を試してみたくなったりした場合は、いつでも別の武器に切り替えることができます。

Schall氏:
『Empyreal』におけるモノリスの探索は、カルトグラムと呼ばれる設計図を使っておこないます。ステージの構造は同じですが、敵やアイテムはランダムで配置され、プレイするたびに異なるモノリスの旅では毎回隅々まで探索することになるでしょう。また、カルトグラムの最後には手強いボスが待ち受けており、撃破するにはスキルと忍耐が求められるはずです。
さらに本作には、ほかのプレイヤーを助けることができる面白い仕組みが用意されています。カルトグラムを完了すると戦利品の一部をギフトとして捧げることができ、カルトグラムを完了させたほかのプレイヤーに対して、ステータスを強化したうえでランダムに贈られる仕組みです。また、自分のキャラクターに必要なアイテムを求めて、ほかのプレイヤーとカルトグラムを取引することも可能ですよ。
──最後に、日本のゲーマーに向けてメッセージをお願いします。
Schall氏:
Secret Modeのゲームをプレイしたことがある方も、あるいは実況プレイで見たことがあるという方も、私たちの作品に興味を持ってくださり、本当にありがとうございます。これまでのご支援に感謝いたします。今後も引き続き応援してください!
──ありがとうございました。
Secret Modeの最新作『Empyreal』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。またインタビュー内でも言及されたように、同社からは幅広いジャンルの作品がリリースされており、高評価作品も多い。興味のある方はそれらもチェックしてみてはいかがだろうか。