『オクトパストラベラー0』は、どういうゲームなの?「『大陸の覇者』の約半分を再構築し、追加要素盛り盛りの完全新作」、開発者にどういうゲームなのか訊いた

『オクトパストラベラー0』の開発者に、弊誌はインタビューを行う機会に恵まれた。プロデューサーの鈴木裕人氏とディレクターの木寺康博氏に数々の興味深いお話をうかがうことができた。

スクウェア・エニックスの「オクトパストラベラー」シリーズ最新作として、『オクトパストラベラー0』は大胆な変化を遂げている。王道的なターン制コマンドバトルのRPGでありながらも、主人公の故郷を自由に発展させることが可能な「タウンビルド」を導入することで町づくりシミュレーションの要素も加わった。

そんな『オクトパストラベラー0』の開発者に、弊誌はインタビューを行う機会に恵まれた。プロデューサーの鈴木裕人氏とディレクターの木寺康博氏に数々の興味深いお話をうかがうことができたので、2本に分けてその内容をお伝えしたい。本稿は、『オクトパストラベラー0』の概要や特徴を両氏が語った内容を紹介する。

スマートフォン向け作品をベースにしつつも新要素山盛り

――最初に、お二人の自己紹介をお願いいたします。

鈴木裕人氏(以下、鈴木氏):
『オクトパストラベラー0』プロデューサーの鈴木裕人です。本日はどうぞよろしくお願いします。私はMMORPG『ファイナルファンタジーXI』のバトルプランナーとして、ゲーム開発に携わりはじめました。以降もさまざまなタイトルでプランナーを務めましたが、ゲーム開発の全体を知りたくなり、プロジェクトマネージャーや営業業務を経験したこともあります。

最新作の『オクトパストラベラー0』は、スマートフォン向けタイトル『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(以下、大陸の覇者)をベースにしていますが、同作ではシナリオディレクターと2代目のプロデューサーを務めていました。新作となる『オクトパストラベラー0』でもプロデューサーとメインシナリオのディレクションを担当しています。メインシナリオはシリーズでお馴染みの普津澤画乃新さんが執筆していますので、メインシナリオについてはこれまでと同じタッグで制作していますね。

木寺康博氏(以下、木寺氏):
『オクトパストラベラー0』ディレクターの木寺康博です。本作ではメインシナリオ以外のディレクションを担当させていただいております。具体的にはバトルやアートのディレクションのほか、『オクトパストラベラー0』で登場するプレイアブルキャラクターの設計などを担当させていただいております。

私のゲーム開発者としての活動を振り返ってみると、これまではスマートフォン向けタイトルの運営ディレクターとして開発に携わることが多かったです。2020年にリリースされた『大陸の覇者』はスマートフォン向けタイトルでありながらも、家庭用ゲーム機向けタイトルに負けないクオリティにしようと意気込んでいました。そうして作り出した『大陸の覇者』をベースにして、家庭用ゲーム機向けタイトルとして『オクトパストラベラー0』をリリースできるのは喜びもひとしおといったところです。

――新作の『オクトパストラベラー0』はスマートフォン向けに展開中の『大陸の覇者』をベースにしているとのことですが、どのようにベースにしているのでしょうか。ベースと新規コンテンツ、全体的にどのぐらいの割合で共通する部分が存在するのでしょうか?

鈴木氏:
ゲーム全体の体験でいうと、『大陸の覇者』をクリアした経験があるプレイヤーにとっても、『オクトパストラベラー0』の50%くらいは新鮮な気持ちでプレイできるように設計しています。

メインシナリオはだいたい3割〜4割が新規ですが、コンセプトである「自分自身が主人公」という点から全体の見直しを行っています。サイドクエストやパーティーチャットなどは完全に新規書き下ろしですし、キャラクターボイスについても新規に収録しています。

木寺氏:
バトルは、『オクトパストラベラー0』と『大陸の覇者』ではまったく別のプレイフィールになっているかと思います。本作のボスには『大陸の覇者』と同じボスも当然存在するんですけれど、レベルデザインに関してはほぼ一から作り直しています。いやぁ、もう大変でした(笑)

モンスターやボスキャラクターの数も凄まじいことになっています。本作に登場するエネミーの数を洗い出したとき、「本当にこんなにいるのか」と驚いた記憶があるんですよ。エネミーを一から作り直すという形で、開発を進めていきましたね。

――『オクトパストラベラー0』のストーリーは『大陸の覇者』をどの程度ベースにしているのでしょうか?

鈴木氏:
『オクトパストラベラー0』のストーリーは、『大陸の覇者』のサイドオルステラ編のメインストーリーを60%〜70%ほどベースにしていますが、自分自身が主人公で、滅ぼされた町を復興していくという物語も追加されているので、『大陸の覇者』をそのままなぞるようなものではありません。要所で発生する展開や出会うキャラクターたちも変わっていますので、『大陸の覇者』を経験している方にも楽しんでいただけると思います。

新要素満載でスマートフォン版経験者も満足できるものに

――プラットフォームや販売方法が異なるにも関わらず、なぜ『オクトパストラベラー 大陸の覇者』をベースにした『オクトパストラベラー0』を開発することを決めたのでしょうか?

鈴木氏:
そもそも『大陸の覇者』自体を「家庭用ゲーム機のRPG体験をスマートフォンでも提供したい」と考えて作っていたからですね。開発は大変でしたが、プレイヤーからも『 大陸の覇者』を高く評価していただきましたし、家庭用ゲーム機化を希望する数多くの声も寄せられるようになりました。

そうした経緯があったので、当初は『大陸の覇者』の家庭用ゲーム機化を目指すというところから始まったんです。しかし、そのまま移植するだけだと、まったく同じ体験で新鮮味がありません。そこで、「ゼロから誰でも楽しめる」ということを目標に『大陸の覇者』をベースにした『オクトパストラベラー0』を新作タイトルとして開発することに決めました。

しっかりと新しいものを作ると同時に、『大陸の覇者』のいいところは残していこうと挑戦した結果が今回の『オクトパストラベラー0』という作品になっています。たとえるなら、『オクトパストラベラー0』は『オクトパストラベラー 大陸の覇者』の魅力を残しつつ、新しい魅力が乗せられている、2段ケーキのような作品になっていると思います。

――シンプルに『オクトパストラベラー 大陸の覇者』の家庭用ゲーム機版を出す方法も存在しますよね。

鈴木氏:
『大陸の覇者』をクリアしたプレイヤーにとっては、家庭用ゲーム機版がリリースされたからといって、もう一度プレイすることはないかもしれません。同じものをプレイしたくないと思って、敬遠されてしまうこともあるでしょう。また、『オクトパストラベラー』シリーズは好きだけれども、スマートフォン版はプレイしないと考える方もいるかもしれません。そういった方々も含めて新しい体験を付け加えることで興味を持ってもらえるのではないかということを考えました。

ただ、私が『大陸の覇者』の制作・運営に関わっているときにはしばらく家庭用ゲーム機版をリリースすることを考えていました。『大陸の覇者』のアンケートでも「『オクトパストラベラー 大陸の覇者』の家庭用ゲーム機化を期待しますか」という質問をしたところ、80%以上がコンソール化を期待する、という結果だったんです。

――ユーザーからの家庭用ゲーム機化からの後押しがあったのであれば、ベタ移植でもよかったのでは。なぜ新作という形式に?

鈴木氏:
先ほどお伝えした通り、より多くの人に本作を届けたかったから、という点と、単純に私と木寺ディレクターふたりともいつかは家庭用ゲーム機で新作を作りたいと考えていたから、ですかね(笑)

アンケートで家庭用ゲーム機版のリリースに期待すると回答していただけたことも後押しでしたし、本当にうれしかったです。『大陸の覇者』を家庭用ゲーム機に出しても通用すると実感できました。

なお、アンケート結果が良ければ会社にアピールしようとは画策していました(笑)。そうした草の根活動が成功したことも、『オクトパストラベラー0』を開発するきっかけかもしれません。『大陸の覇者』はシナリオもバトルのおもしろさも評価してもらえていたので、その評価はきちんと残しつつ、新作として『オクトパストラベラー0』を開発すると決めました。

――『オクトパストラベラー0』をクリアするまでにかかる全体のボリュームを教えてください。

鈴木氏:
最近、改めて開発チームのテストプレイでクリア時間を検証しましたが、やはり100時間はかかるといった印象です(笑)。私自身もクリア時間は約100時間でした。私はメインストーリー中心にプレイしてタウンビルドにあまり時間をかけることができなかったので、やり込むプレイヤーはもっと時間がかかるかもしれません。ただ、なるべくまっすぐに進めてもクリアできるようなレベルデザインにはしているので、飽きるようなことはないかな、と思います。

ストーリーのつながり

――ストーリーの進行方法についてのプレイヤーの自由度はどのようになっているのでしょうか?

鈴木氏:
どのストーリーを進めていくかというのは、『オクトパストラベラー』シリーズらしくプレイヤーが自由に選べるようになっています。ただし、とあるストーリーを進めていると途中でほかのフラグがあって、そちらを先にクリアする必要がある場合も出てきます。自由度は高いのですが、さまざまなものが絡み合ってストーリーが紡がれていく形となっています。

――本作は『オクトパストラベラー』シリーズのナンバリングとしては第3作目となりますが、どうして『オクトパストラベラー0』が作品名になったのでしょうか?

鈴木氏:
初代『オクトパストラベラー』と同じ「オルステラ大陸」が舞台で、ストーリーがその前日譚となっていることから、『オクトパストラベラー0』という作品名にしました。主人公のキャラクタークリエイトやプレイヤー独自の町を創ることが可能なタウンビルドなど、本作が「ゼロから作る」をテーマにしていることも作品名に「ゼロ」とした理由の1つですね。

――前日譚ということは、『オクトパストラベラー0』と初代『オクトパストラベラー』にはどのような時系列的なつながりがあるのでしょうか?

鈴木氏:
この点は気にされている方も多いですよね。実は完全に続いているともいえますし、場合によってはパラレルストーリーになっているともいえる形になっています。

『オクトパストラベラー0』はメインストーリー以外で仲間にできるキャラクターについては、基本的にプレイヤー自身が仲間にするかを選ぶことができます。つまり、仲間にしないことも可能なんですよね。
たとえば、初代『オクトパストラベラー』の主人公の1人であるトレサはプレイアブルキャラクターですが、初代の物語ではまだ旅に出たことがない設定となっています。この場合、仲間にすると、初代とはズレが発生していきますが、仲間にしなければストーリーは一致します。少々ややこしいかもしれませんが、『オクトパストラベラー0』の開始時点では前日譚であることは間違いありません。プレイヤーの選択によって初代『オクトパストラベラー』と同じ設定にしていくこともできる形になっています。

――なるほど、情報が整理できました。ありがとうございました。

詳細編では、「タウンビルド」など新規要素をふんだんに散りばめた『オクトパストラベラー0』の挑戦について両氏が語ってもらった。そちらは後日公開予定だ。

オクトパストラベラー0』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/Switch/PC(Steam/Windows)向けに12月4日に発売予定。なお、Steam版は12月5日に発売予定となっている。

© SQUARE ENIX

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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