愛と狂気の美少女ホラーゲーム『MiSide : ミサイド』インタビュー。激重ヒロインの魅力をキャラクターボイスを担当した声優に訊いてみた

美少女ホラーゲーム『MiSide : ミサイド』にて、キャラクターボイスを担当した声優の花岩香奈氏を中心に関係者インタビューを実施。同氏の考える、ヒロインの魅力などについて訊いた。

※この記事には一部、作品やストーリーのネタバレが含まれますのでご注意ください。

映画や演劇などで知られる松竹が、最近ゲーム事業に取り組んでいるのをご存知だろうか。2024年3月にリリースされた荷物整理対戦ゲーム『バックパック・バトル』では中国のパブリッシャーであるIndieArkと連携し、松竹が日本国内向け展開を担当(関連記事)。その松竹はIndieArkと再び手を組み、パブリッシャーとして2024年12月11日新作アドベンチャーゲームの『MiSide : ミサイド』をリリースしている。

『MiSide : ミサイド』は、謎多き美少女「ミタ」と過ごすアドベンチャーゲームだ。本作は主人公とミタの交流を楽しむ恋愛アドベンチャーと見せかけて、サスペンスホラーなストーリーが展開されていく。本作は日本語字幕と日本語音声に対応しており、ヒロインのミタのキャラクターボイスには『学園アイドルマスター』の葛城リーリヤ役で知られる声優の花岩香奈氏が起用されている。

弊誌は『MiSide : ミサイド』の関係者にインタビューする機会に恵まれた。ミタ役の花岩香奈氏をはじめ、松竹の玉置国大氏や同社のアジア地区パブリッシングをサポートするGameBridgeのチャーリー氏から興味深い話の数々を聞くことができたので、この記事で紹介したい。なお、インタビューは発売前に実施されたものとなっている。


体験版と製品版で違う顔を見せるヒロイン

──ヒロイン「ミタ」役の花岩さんから見て、本作『MiSide : ミサイド』はどのようなゲームになっていますか?

花岩香奈氏(以下、花岩氏):
ヒロインのミタのことを、私は「ミタちゃん」と呼んでいます。外見からもわかるように、ミタちゃんはかわいらしい女の子で、主人公のことが好きなんですよ。現在配信中の無料体験版では、ミタちゃんの「ずっと一緒にいてほしい」という思いがあふれたゲームになっています。そういう意味では、本作の体験版は「恋愛ゲーム」と言っていいと思いますね。

体験版でプレイできる恋愛ゲームのようなストーリーは、本編全体からすると最初の部分にすぎません。本編では、ホラーゲームのような衝撃的な展開の数々が待ち受けています。そうしたところも含めて、本作はすごく面白いゲームだと感じました。本編のホラー要素を匂わせるような表現も体験版には含まれていましたね。


──ホラーゲームの要素としては、ミタはどのようなところが怖いのでしょうか?

花岩氏:
主人公への愛が強いゆえに、ミタちゃんは主人公を離したくないと思ってしまうんです。そのミタちゃんの振る舞いは、プレイヤーからするとホラー要素になるかなと。ミタちゃんが普通の人とは違うような発言をしたり、行動したりするところにも驚きました。恋愛面だけじゃなくて、ホラー的な要素でもミタちゃんは特徴的です。

ミタちゃんは普通の女の子に見えるんですけど、彼女のことを知るうちにおかしいところに気がつくんです。そのおかしさが愛情にもとづいているのか、それともミタちゃん自身がもともと狂っているのかについては考えさせられましたね。


──ミタを演じるうえで、花岩さんが工夫したのはどのようなところでしょうか?

花岩氏:
実はミタちゃんにはたくさんのミタちゃんがいます。体験版では1人のミタちゃんしか出てきませんが、製品版にはもっと数多くのミタちゃんが出てくるんですよ。それぞれのミタちゃんにそれぞれの感情があるんです。

主人公をどうしたいのかについても、ミタちゃんによって違ってきます。キャラクターボイスの収録時には、いまから演じるミタちゃんの気持ちを想像して声を吹き込みました。そうした意味では、きちんと区別してミタちゃんを演じるのが大変でしたね。

世界観を考察したくなるストーリー

──本作のPC版は発売前にSteamのウィッシュリスト登録者数が10万人を突破しました。パブリッシャーとしてはどのような印象を受けましたか?

松竹の玉置国大氏(以下、玉置氏):
まずは、「ありがとうございます」と言わせてください。10万人という数字は大きなことです。さきほど花岩さんがおっしゃったように、体験版では伏せられていた要素が製品版に出てきます。体験版のボリュームは製品版からすると15%といったところでしょうか。製品版では体験版をプレイした人でも新たな衝撃を味わえると思います。

製品版をプレイしたときの驚きを存分に味わってほしいので、発売前にどこまでネタバレしていいのかについては開発者とパブリッシャーで相談したんですよ。より多くの人々に楽しんでもらえるポテンシャルが本作にはあると考えていますので、発売後にどのような反応をいただけるのかを楽しみにしています。

GameBridgeのチャーリー氏:
10万人もの方々がウィッシュリストに登録していただいたことに感謝しています。『MiSide : ミサイド』はいい作品ですので、世に送り出していくのがパブリッシャーの使命だと思っていましたね。日本の皆様にも本作の魅力をきちんと届けられるように、ローカライズもがんばりました。

玉置氏:
日本語テキストの翻訳は松竹が携わっています。ミタちゃんの台詞には花岩さんのボイスが付いていますので、日本語でもゲームの世界観に浸れるものになっています。花岩さんのボイスは体験版部分で収録に1日、製品版パートでは3日間かかっていて、かなりのボリュームを頑張っていただけました。

花岩氏:
何人ものミタちゃんを、いろいろなシチュエーションで演じました。


──ネタバレを避けたいということはストーリーも本作の大きな魅力になっていそうですね。本作のストーリーはどのようなところに注力しているのでしょうか?

玉置氏:
謎が解き明かされていくストーリーは、最初から本作の魅力の1つになる予感がありました。『MiSide : ミサイド』には3つの楽しみ方があると思っています。主人公とミタちゃんの交流を描く恋愛シミュレーションが最初にあって、次にホラーゲームとしての面白さが出てくる。恋愛シミュレーションとホラーゲームを体験したあとに出てくるのが、本作の世界の仕組みを解き明かしたくなる世界観の考察です。

この3つの要素が『MiSide : ミサイド』という作品に散りばめられていますね。すべてが繋がっていて、ストーリーを進めるうちに謎が解き明かされていく快感も楽しんでいただければと思います。


──製品版では主人公とミタの関係性はどのように描かれていくのでしょうか?

玉置氏:
製品版には、ホラーゲームでありながら、ミタちゃんの愛や主人公との関係性について示唆に富んだシーンも多く存在します。一種のロードムービーのようにもなっていて、道中で出会うミタちゃんたちとの「ふつうじゃない」コミュニケーションやクエストを通じ、主人公がどう反応して行動していくのかがストーリーの見どころとなっています。

独立した人格をもつ複数のヒロインが登場

──ミタというキャラクターにさまざまな側面がありますが、花岩さんはどのような工夫をして役作りに臨みましたか?

花岩氏:
キャラクターボイス収録の1日目は体験版部分で1人のミタちゃんだけ、2日目以降に他のミタちゃんたちの収録がありました。

それぞれのミタちゃんは違った性格をしているんですけど、ミタちゃんとして共通点を感じてもらえるような芝居を心がけました。この子もミタちゃんであの子もミタちゃんなんだと思ってもらえるように、演じていきましたね。


──複数のミタがいることを知ったあとにミタちゃんを演じることについては、花岩さんはどのように思いましたか?

花岩氏:
本編の台本を読んだとき、それぞれのミタちゃんが独立した存在なんだと実感しました。体験版のミタちゃんとは違うミタちゃんがたしかにそこにいる。そうした認識で、それぞれのミタちゃんを演じていきましたね。

玉置氏:
花岩さんには1人で9人ものミタちゃんを演じていただきましたが、作中にはもっと多くのミタちゃんが登場します。それぞれのミタちゃんのキャラクターイラストが用意されていて、開発資料にはキャラクターの設定情報が細かく書かれています。清楚系のミタちゃんもいれば病んでる系のミタちゃんもいますし、さらにはツンデレなミタちゃんもいます。

花岩氏:
電話で会話するシーンにしか登場しないミタちゃんもいますよ。どの子もとても個性的なので、ゲームを通じていろんなミタちゃんに会ってほしいですね。


──花岩さんが一番好きなミタは誰でしょうか?

花岩氏:
私が一番好きなのは「親切なミタ」ちゃんです。ホラーゲームの本作をプレイしていると怖い思いをすることもあるんですが、そのときに親切なミタちゃんに会うことで安心する気持ちになれました。唯一無二の癒しキャラです(笑)

異常ではないミタちゃんとして、親切なミタちゃんは特別な存在です。優しい親切なミタちゃんが主人公をサポートしてくれるところにグッときました。

──9人ものミタを演じられた花岩さんですが、それぞれのキャラクターを演じるときのテンションはどのように整えていったのでしょうか?

花岩氏:
ひとりひとりのキャラクターを演じる前に、一旦休憩を取るようにしています。気持ちを切り替えてから次のミタちゃんになるような感覚ですね。演じるミタちゃんに応じたテンションでいこうとか、この場面ではこういう気持ちを持っているんだということを追求しました。

いろんなミタちゃんが登場しますが、主人公のことが一番好きという部分はすべてのミタちゃんの根幹にあります。そこをどういうテンションで伝えていくかはずっと考えていましたね。ミタちゃんの中には傷ついているミタちゃんもいて、どういう過去があったのかを想像しながら演じました。ミタちゃんによっては傷ついているミタちゃんもいて、どういう過去があったのかを想像しながら演じました。


主人公への愛が深いヒロインの魅力

──製品版の収録を経て、花岩さんがあらためて思うミタの魅力を教えてください。

花岩氏:
私の考えるミタの一番の魅力は、主人公への愛が深いところです。いろんなミタちゃんが登場しますが、どのミタちゃんも主人公を愛しているところは共通していますね。ずっと主人公に優しくしてくれる「親切なミタ」ちゃんのような存在もいれば、愛に応えられなかったらこちらを刺してきそうなミタちゃんもいます。それぞれのミタちゃんは独立した存在なので、主人公の愛し方も違ってくるんですよ。主人公を愛するあまりに、思い詰めた行動を取るミタちゃんもいて衝撃的でした。

──花岩さんは本作のどのようなところに注目してほしいでしょうか?

花岩氏:
ゲームで出会うミタちゃんたちに注目してほしいですね。プレイすればするほどいろいろなミタちゃんに会えますし、ストーリーも展開されていきます。性格が違ういろんなミタちゃんから愛情を受け取ることのできるところが本作の魅力的なところだと思っています。その愛情がゆえに、ホラーを含めたいろいろな展開に繋がっていくところを製品版で体験してほしいです。

いろいろな伏線が張られているので、考察を楽しむことができるのも本作の魅力的なところです。主人公がゲームの世界に入ってから、もといた世界へ帰ろうとする過程が面白い作品だと思っています。


──『MiSide : ミサイド』はゲームですが、花岩さんが最近のエンターテイメントで好きなものがあれば教えてください。

花岩氏:
私はゾンビ映画が好きです。いろんなゾンビ映画を観ましたし、ドラマだと『ウォーキング・デッド』も観ました。「『ウォーキング・デッド』と『MiSide : ミサイド』ではホラーの方向性が違うのですが、インタビュー前にプレイさせていただいた『MiSide : ミサイド』の体験版はきちんと怖くて楽しかったです。

スポーツも好きで、最近になって野球にハマりました。東京ドームで野球観戦もしたんですよ。最近のマイブームを一言でいうと、「野球とゾンビ」です。


――ありがとうございました。

『MiSide : ミサイド』は、PC(Steam)で発売中。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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