「アトリエ」シリーズ最新作『紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜』は、「王道完全新作RPG」で、スピンオフじゃない、どういうゲームかみっちり訊いてきた
『紅白レスレリ』は、いったいどのようなゲームなのか。めざしたものや、そこに込められた想いは、どのようなものなのか。

コーエーテクモゲームスより2025年9月26日(金)に発売予定の『紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜』。(以降、『紅白レスレリ』)「アトリエ」シリーズのコンシューマー最新作だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/PS4/Nintendo Switch。
タイトルに「レスレリアーナ」が含まれることから、スマートフォン/PC向けに展開されている『レスレリアーナのアトリエ』(以降、『レスレリ』)のスピンオフ作品にあたると思っている人も多いかもしれない。
しかし、その実態は「アトリエ」シリーズの王道をゆく、完全新作RPG。『レスレリ』ファンの期待に応えつつも、コンシューマーの「アトリエ」シリーズとしての「らしさ」を追求しているとのこと。

この『紅白レスレリ』は、いったいどのようなゲームなのか。めざしたものや、そこに込められた想いは、どのようなものなのか。開発の中心に携わる、プロデューサーの細井 順三氏と作田 泰紀氏、ディレクターの勝又 祐樹氏と渋谷 昌樹氏に話を聞いた。
「王道の「アトリエ」シリーズの完全新作」
――自己紹介と、これまでに携わった作品などのご経歴をお願いします。
細井 順三(以下、細井)氏:
ガストブランドの細井です。本作の総合プロデューサーを務めています。現在は「アトリエ」シリーズ全般を見ており、『レスレリ』をはじめ『秘密』シリーズや3月に発売した『ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~』のプロデューサーを務めています。
作田 泰紀(以下、作田)氏:
Team NINJA ブランドの作田です。本作は『レスレリ』と同様にガストブランドとTeam NINJAが共同開発をしており、私は開発プロデューサーを務めています。直近の他のタイトルですと、『DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation』や、その派生タイトルである『Venus Vacation PRISM – DEAD OR ALIVE Xtreme –』でプロデューサーを務めています。
勝又 祐樹(以下、勝又)氏:
ガストブランドの勝又です。本作ではディレクターを担当しています。過去作では、『ライザのアトリエ』などのメインプランナーを務め、『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~』や『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』のディレクションも担当していました。
渋谷(以下、渋谷)氏:
Team NINJAランドの渋谷です。本作には、勝又と同じくディレクターとして関わっています。過去作では、『影牢 〜ダークサイド プリンセス〜』や、スクウェア・エニックスさんと一緒に開発した『ディシディア ファイナルファンタジー』でもディレクターを務めました。「レスレリ」にもプロジェクトマネージャーとして関わってきており、その流れで本作にも参加しています。
――『紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜』とは一体なんなのでしょうか。
細井氏:
端的に申し上げると、「ターン制の、王道のアトリエシリーズの完全新作」です。
――完全新作!
細井氏:
はい。「レスレリ」の世界観を踏襲していて、システムもある程度「レスレリ」を参考にしている部分はありますが、あくまで完全新作として開発しているタイトルになります。

――いわゆる「スピンオフ」ではないと。
細井氏:
そうです。完全新作です。あえて言うなら、「レスレリ」を遊んでいる方からすれば、ある種スピンオフという見方もできるとは思います。「あ、ここがこうつながってるんだ」というのを感じながら遊べますし。いっぽうで、「レスレリ」をやっていない方にとっては、純粋な完全新作として遊んでいただけるつくりです。
――得られるゲーム体験としては、どのようなものをめざしていますか?
細井氏:
我々は、「アトリエ」シリーズをどういうふうに成長させていくか、というのをつねに考えています。たとえば、『ユミアのアトリエ』では、昨今のコンシューマーRPGのトレンドであるオープンワールドやアクション性の高いバトルの要素を積極的に取り入れ、その方向でのRPG体験を伸ばしていきました。しかしいっぽうで、我々はずっとターン制のRPGを作り続けてきており、「アトリエ」シリーズのファンの皆さんからもそれを望む声は非常に多く寄せられています。そこで、『ユミアのアトリエ』とは違うラインの「王道のアトリエ」もコンシューマーで伸ばしていきたいという想いがあり、そこにこの「紅白レスレリ」がある、という形です。その路線や精神性という意味では、『ソフィーのアトリエ2』の流れを汲む作品と言えます。
――開発のきっかけを教えてください。どんな座組みで作っていますか。
作田氏:
まず、スマートフォン/PC向けRPGである「レスレリ」を、その世界観を活かしながら、より「王道のアトリエ」として体験してもらいたい、という指針がありました。それで、開発環境を含めて「レスレリ」を熟知している渋谷が中心となり、ディレクターとして、どのようなゲーム体験を強化していくかというのを考えてきました。そして、「王道のアトリエ」を実現するにあたり、『ソフィーのアトリエ2』に携わった勝又も参加して、開発体制を作り上げていったという形です。
ふたりの主人公と、タイトルの秘密
――主人公であるリアスとスレイについて、キャラクターデザインにはどのようなポイントがありますか?まず、リアスについて教えてください。
細井氏:
リアスは、「アトリエ」シリーズとしては初の「獣人」の主人公です。「レスレリ」は獣人がいる世界なので、それをフィーチャーして、「レスレリ」の世界観をもっと広げたいと思いました。また、リアスは「レスレリ」の主人公であるレスナとヴァレリアとは出自が違うので、2人とは違ったイメージの服装にしようというのも意識しながらデザインしました。

――なるほど。世界観をふまえた差別化が図られているのですね。
細井氏:
はい。リアスは、「レスレリ」の世界観に沿いつつも、レスナとヴァレリアと同じ系統にはせず、新主人公としてきちんと立つようにデザインしています。また、もともと「アトリエ」シリーズのキャラクターデザインは、現代的なファッションの要素を取り入れつつ、いかにファンタジックにしていくかというのをイラストレーターさんとともにつねに考えてきています。なのでリアスのデザインも、レスナとヴァレリアをデザインした当時よりもさらに現代的なファッションのトレンドを見ながら進めていきましたね。
――もうひとりの主人公、スレイについてはいかがでしょう?
細井氏:
スレイは、「アトリエ」シリーズとしてひさびさの男性主人公ということになります。我々はいままでのシリーズでも多くの男性キャラクターを作ってきましたが、彼らとは被らないようにしつつ、主人公ですので「動かしたときに映える」ということを強く意識してデザインしています。
本作のタイトルは、『紅の錬金術士と白の守護者』ですよね。「錬金術士」がリアス、「守護者」がスレイを指すのかなと思ったのですが、ふたりはデザイン的にはさほど「紅」「白」ではありません。本作のタイトルには、どのような意味があるのでしょうか?
勝又氏:
はい、おっしゃる通り、「錬金術士」はリアス、「守護者」はスレイを指しています。「紅」と「白」が何を表しているのかはストーリーを進めるとだんだん謎が解けて明らかになっていきます。
――ストーリーの中核に関わりそうな謎ですね!楽しみです!
『ソフィー2』の流れを汲むゲームシステム
――戦闘について、本作は前衛3人+後衛3人の計6人で戦うとのことですが、もう少し詳しく教えてください。
渋谷氏:
キャラクターごとに「ロール」のような役割・特徴があり、それを活かしながら、前衛・後衛を組み替えて戦っていく形になります。『ソフィーのアトリエ2』に近い感じですね。さらに、マルチアクションという新しい要素もありますので、それらを駆使して連携を考え、戦っていくことになります。

――なるほど。本作のプレイアブルキャラクターは、リアス、スレイに加え、ロゼ、トトリ、ウィルベル、ソフィーの計6人ですよね。どのような個性づけや、強化・育成のしくみが用意されているのでしょうか?
勝又氏:
本作は、パーティに錬金術士が3人もいるのが特徴のひとつです。それをふまえ、特定のキャラクターにしか使えないアイテムを用意しています。また、これは『ソフィーのアトリエ2』もそうだったのですが、アイテムの装備枠がキャラクターによって違います。さらに、スキルツリーでの育成要素もありますし、戦闘中に使えるアクティブスキルもキャラクターごとにさまざま用意しています。
――なるほど。「レスレリ」だと代表的な強化&やりこみ要素としてメモリアがありますが、本作ではまた違う要素がいろいろ組み込まれているのですね。
勝又氏:
やり込みとしては、「亜空の道」という特別な場所も注目していただきたい要素です。「亜空の道」は訪れるたびにランダムに形が変わる階層型ダンジョンです。「亜空の道」でしか出現しない特別な装備があり、個性的な効果がついています。これがある種、メモリアのような、キャラクターの個性や特徴づけにつながるものにもなっています。
――ということは、メインストーリーを進めつつ、強化・育成したいときには亜空の道を潜り、キャラクターに合ったいい効果のついた装備を探して……みたいなイメージでしょうか?
勝又氏:
そうですね。ただ、もちろん、それをやりこまないとクリアできないよというバランスにはしていません。「亜空の道」には難易度があるので、ストーリーを楽しみたい方は浅い階層をクリアすれば良く、強さを突き詰めたい方は高難易度を楽しんでいただける要素としてご用意しています。
――町の発展についてもお教えください。これはどのようなものでしょうか?
勝又氏:
本作では、リアスとスレイがふたりでお店を経営することになります。そこで売った物に応じて、町が発展していく、というものになっています。自分でなにかを建築したり配置したりするというわけではなく、「町のこの区画のレベルを上げたい」というときには、このアイテムを重点的に売って……といった感じですね。
――おお、アトリエっぽい!
勝又氏:
区画のレベルが上がることによって、それに対応した新しいキャラクターが出てきたり新しいイベントが起きたりするようになっていて、町の発展とともにストーリーが進んでいきます。
――おもしろそう!錬金術士が人々の生活に貢献し、徐々に町全体に影響を与えていくという……まさに「王道のアトリエ」ですね。お店といえば、本作はシリーズでおなじみの妖精さんの姿がありますよね。これは、店番の仕事などを妖精さんに任せることができるのでしょうか?
勝又氏:
はい。まさにその通りで、お店経営の協力者として妖精さんが登場します。お店に妖精さんを配置して働いてもらい、それによって売上や町に与える影響が変わります。
――本作では、フィールドに時間経過の概念があります。昼と夜で見た目が変わりますが、それ以外の変化もありますか?
勝又氏:
本作は「レスレリ」の世界なので、昼と夜の切り替わりが特徴的です。昼と夜の間にあたる、夕方や朝が存在しないんです。急に昼と夜が切り替わる特殊な世界なので、その変化によって採取できるものも変わるようにしています。


――その時間経過は、なにに紐づくのでしょうか?たとえば、現実の時間とか、ゲーム内の時間とか……。
勝又氏:
ゲーム内の時間に紐づきますが、リアルタイムではなく、採取や戦闘などの行動を取ると時間が経過するようになっています。なので、放置していたら勝手に時間が進むというようなことはありません。
――なるほど。ここもターン制というか、落ち着いて遊べるしくみになっているのですね。
『レスレリ』や『ユミア』とのつながり
――本作は「レスレリ」と同じ世界とのことですが、時間軸という点ではどうでしょうか?「レスレリ」と同じ時間軸なのか、過去や未来の話なのか……
細井氏:
基本的に同じ時間軸です。ですので、「レスレリ」と同じ時代の、違う地方の話ですね。

――「いっぽうそのころ」みたいなことですね。
細井氏:
はい。制作においても、「レスレリ」のこの期間で「紅白レスレリ」のこの話をやるからこのキャラクターはそのあいだ「レスレリ」には出せない、とか、逆にこのキャラクターは「レスレリ」でこれをやっている時期だから「紅白レスレリ」には出せない、といったことも考えて作っています。
――緻密!同じ時間軸となると、「レスレリ」の主人公であるレスナとヴァレリアの登場を期待するユーザーは多いと思いますが、そこは正直、どうでしょうか?
勝又氏:
まだ詳しくは言えないのですが、レスナとヴァレリアは物語のキーマンとして登場します。
――それは楽しみです!開発という面での「レスレリ」とのつながりもお伺いしたいのですが、「レスレリ」を開発・運営してきたからこそ本作に取り入れられた要素などはありますか?
作田氏:
グラフィック面ですね。本作では、『ユミアのアトリエ』のグラフィックエンジンであるKATANAエンジンとは別のグラフィックエンジンを使用しています。そこは技術的に新しいアプローチをしていて、「レスレリ」で培ったものもうまく取り入れながら、本作だからこそできる表現を追求しています。
勝又氏:
戦闘面では、「レスレリ」には敗北時にその場で難度を下げて再挑戦できるしくみがありますが、同じものを本作でも取り入れています。
――直近のコンシューマー作品である『ユミアのアトリエ』から、本作に活かされている部分はありますか?
細井氏:
さきほどお話しした通り、本作は『ユミアのアトリエ』とは別ラインの作品ですので、直接なにかを引き継いでいるというわけではありませんが、『ユミアのアトリエ』発売直後にいただいたご意見については本作では特に気を付けて制作しています。
たくさんのお声をいただけるほど良いゲームを作れる
――「アトリエ」シリーズは、シリーズとしての伝統やお約束はありつつも、毎作新しいチャレンジをしている印象があります。本作でチャレンジした部分をお教えいただきたいです。
細井氏:
本作は、技術的なチャレンジはいろいろあるのですが、ゲームシステムとして見ると、じつはトリッキーなことはあえてしていません。『ソフィーのアトリエ2』の流れを汲む「王道のアトリエ」を2025年のいま世に出すにあたって、どのように再構成し、ひとつひとつをどう磨いていくか。そこを追求して、全体の完成度をしっかり高めていこう、という考え方で作っています。

――よくわかりました。それこそがある意味、本作のチャレンジかもしれないですね。ではその流れで、「王道のアトリエ」を待ち望んでいるファンに向けて、「ここはぜひお楽しみに!」と伝えたい部分を教えてください。
作田氏:
「レスレリ」は非常に多くの方に触っていただけているのですが、なかには「キャラクターはかわいいけど、ゲーム体験としてはちょっと自分の期待と違ったな」という方や、そもそも「スマートフォンゲームだからな……」という理由で辞めてしまった方もいらっしゃると思っています。しかし、本作はコンシューマーの「王道のアトリエ」として、おそらく皆さんがご期待されているであろう、物語を進めながら、できることがちょっとずつ増えていき、謎が解けていき……というようなRPG体験が存分にできますので、そこはぜひ楽しみにしていただければと思います。
――ありがとうございます。逆に、「レスレリ」で初めて「アトリエ」シリーズに触れて、そこから本作に興味を持っている人もいると思うのですが、そういうユーザーに向けて、「ここはぜひお楽しみに!」という部分はどこでしょうか?
作田氏:
「レスレリ」をお楽しみいただいている方は「レスレリ」の世界観を気に入ってくださっていると思うのですが、そこと同じ世界・同じ時間で、新しい主人公であるリアスとスレイがどんな活躍・体験をしていくのかは、大きな見どころになりますし、喜んでいただけると思います。また、「レスレリ」でおなじみのキャラもある程度登場しますので、「あ、ここでこういうふうに関わってくるんだ」というのも楽しんでいただければ嬉しいです。『調合』などの一部システムにも「レスレリ」らしさを感じられる要素がありますので、共通点や違いを楽しみながら、「コンシューマーの「アトリエ」ってこんな感じなんだ、おもしろいな」と思っていただいて、シリーズ全体への興味を深めていただけるとありがたいですね。
――余談なのですが、じつは、弊メディア(AUTOMATON)の英語版では、「アトリエ」シリーズの記事に対する海外、特に欧米圏からの評判が毎回よいです。特に、インタビュー記事での率直でオープンな受け答えが、ウケていまして(笑)そういう欧米圏を中心とした海外ファンへのメッセージはありますでしょうか。
細井氏:
『ユミアのアトリエ』のプロモーションで、初めて欧州と北米に行ったんです。そこで、我々が考えるものと欧米のユーザーの方々が求めているものの違いや、アジアと欧米のユーザーさんの感覚の違いを強く実感しました。たとえば、欧米では「もっとシンプルでアクション性の強いゲーム体験をさせてほしい」という声がよくあるのですが、アジアではその方向だと「シンプルすぎる」しまったり、「もっと調合を強化して」という声もあります。ゲーム作りの難しさを感じますが、すごく参考になるので、SteamのレビューでもSNSでもよいので、ぜひユーザーのみなさまからどんどんご意見をいただきたい!と思っています。
作田氏:
私が関わっている『DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation』は欧米向けには配信していないのですが、直近で発売した『Venus Vacation PRISM – DEAD OR ALIVE Xtreme –』は、海外のユーザーから多くの反応をいただくことができて、非常にうれしく思っています。こういうイマーシブな恋愛ゲームって、日本人以外のユーザーはどんな反応になるのだろうかというのは、なかなか予想できないところがあったので、とても参考になりましたね。タイトルを発表時は女の子のビジュアルを不安されている声を日本以外のユーザーも含めていただきました。それ以降もビジュアルを調整する日々が続きましたが、開発途中の最新映像を公開していく中で、徐々にポジティブに受け入れていただけている声が増えていき、最終的に多くの皆さんにかわいいと言ってもらえるようなビジュアルに仕上げることができたと思っています。世界中からご意見を言っていただけたことを大変ありがたく思っています。
細井氏:
「アトリエチームはみなさんのご意見・ご要望を受け止め、間違いは改善していくチームなので、みなさまからご意見をいただければいただけるほど良いゲームが作れます」とぜひ書いてください!
――書いておきます!ありがとうございました。
『紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜』は、2025年9月26日(金)に発売予定。