
『怪獣8号 THE GAME』は「運営型ターン制RPG」だからこそ実現した。遅れを許さない“アニメと同時展開”の苦労とメリットを、プロデューサーに訊いた
本作のプロデューサーである藤田真也氏から冷静な口調とは裏腹に『怪獣8号』への深い愛情と、『怪獣8号 THE GAME』にかける情熱の凄まじさを知った。

漫画やアニメで大ヒットを記録した『怪獣8号』のゲームとして、『怪獣8号 THE GAME』が2025年8月31日に配信された(関連記事)。原作漫画は完結してしまいファンは『怪獣8号』に飢えているが、絶賛放送中のアニメ第2期と『怪獣8号 THE GAME』が存在するおかげで、熱い夏を送ることができる。
なぜそう言い切れるかというと、本作のプロデューサーである藤田真也氏から冷静な口調とは裏腹に『怪獣8号』への深い愛情と、『怪獣8号 THE GAME』にかける情熱の凄まじさを知ってしまったからだ。藤田氏の冷静な語り口から明かされる衝撃的な話の数々を訊いてきたのでこの記事で紹介したい。
アカツキゲームス集大成のゲームへ
――自己紹介をお願いします。『怪獣8号 THE GAME』の開発において、どのように携わっているのでしょうか?
藤田真也氏(以下、藤田氏):
アカツキゲームスの藤田真也と申します。年齢は37歳で『怪獣8号 THE GAME』のリリース発表の前日の8月4日が誕生日でした。実は8月5日は『怪獣8号」の主人公である日比野カフカの誕生日なんですよ。作中でカフカは32歳ですから、私も連載の始まった2020年は同じ32歳でした。ほとんど私が日比野カフカといってもいい、というのはちょっと言いすぎですね(笑)
それはさておき、私とカフカが同年代で誕生日が近いことに親近感を覚えました。私は決して人生を諦めていたわけではなかったんですが、『怪獣8号」の冒頭で夢が叶わずに人生を諦めているようなカフカの姿にも共感しましたね。そういった縁もあって、私自身も『怪獣8号』にのめり込んでいったんですよ。
――藤田プロデューサーは『怪獣8号 THE GAME』にどのように携わっているのでしょうか?
藤田氏:
『怪獣8号 THE GAME』の企画立ち上げ当初からいまに至るまで、ずっと本作に携わっています。開発段階によって注力する部分が変わっていきますので、私がメインで携わる部分は随時変わっていきますね。ゲームの開発については、最初はビジュアル制作と並行してゲームの方向性のアイディアをまとめるところから始まりました。『怪獣8号』は漫画、アニメ、ゲームと関係者の方々がたくさんいらっしゃるので、そういった方々とコミュニケーションを取って円滑にゲームの開発を進めていくことが主な仕事になります。
開発物を関係各所に監修していただいて、そのフィードバックをゲームに反映させていくのも大切なお仕事ですね。修正すべきところが出てきた場合は開発チームに伝えて、ゲームを磨き上げていっています。そういった形で開発チームと監修していただく方々の間に立つマネジメントの仕事も行っています。
――『怪獣8号 THE GAME』の開発メンバーはどのようなバックグラウンドをもつ方がいらっしゃるのでしょうか?
藤田氏:
『怪獣8号 THE GAME』の開発メンバーのバックグラウンドは、大きく2つに分かれています。1つめはこれまで多くのタイトルを手掛けてきたターン制コマンドバトルの運営を得意としている運営企画のメンバーです。2つめは次世代の3Dゲームの開発を進めている「プロジェクト暁」のメンバーですね。「プロジェクト暁」はまだ開発基盤のプロジェクトなんですが、これまでに培った3Dグラフィックへの知見は本作へ既に活かされています。「プロジェクト暁」の中心メンバーが『怪獣8号 THE GAME』の開発に参加していますね。そうした意味では、『怪獣8号 THE GAME』はアカツキゲームスの集大成といえる作品になっているといえます。
――『怪獣8号』の漫画を読んで藤田プロデューサーはゲーム化を決意したとのことですが、連載のいつ頃からそう考えるようになったのでしょうか?
藤田氏:
『怪獣8号』は連載開始の第1話から話題になりましたし、私もひとりの読者として追いかけていました。ゲーム化を考えるようになったのはコミックスが発売された頃のことだったでしょうか。私はProduction I.Gと親しくさせていただいておりまして、ゲームの企画を考えて集英社に提案してみてはどうだろうという話になったんですよ。『怪獣8号』のゲームを作るならば、こうしたら面白いのでないかといったアイディアを企画にまとめていきました。

企画成立前に3Dモデルを作成する熱意
――漫画やアニメなどの人気作品はたくさんありますが、アカツキゲームスはどうして『怪獣8号』のゲーム化を決めたのでしょうか?
藤田氏:
なにより、私自身が『怪獣8号』のゲームを作りたいと思ったんです。というのも、『怪獣8号』は2020年に連載を開始した新しい作品なんですよ。10年や20年も連載しているすごい作品のゲーム化も魅力的ですが、次世代の作品に携わってみたかった。『怪獣8号』に魅了された1人の読者としても、先の展開がわからない『怪獣8号』のゲーム化に興味を抱くようになりました。
連載が進むうちにキャラクターも増えていき、往年のジャンプ漫画らしいバトル展開も増えてきました。当初は『怪獣8号』をゲームにできるかどうかはわかりませんでしたし、そうした状態で企画を考えるのは一種の危険な賭けであったかもしれません(笑)
ゲーム化したらおもしろくなると考えた自分の直感を信じてよかったです。
『怪獣8号』をゲームにするならば、アカツキゲームスが目指す3Dでハイエンドなグラフィックのゲームにしようと考えました。「プロジェクト暁」のメンバーを中心とした開発チームはそれを実現できると考えましたし、運営型タイトルの知見も活かせるだろうと考えたんですよ。Production I.Gがアニメーション制作をし、スタジオカラーが怪獣デザイン&ワークスで携わるアニメはヒットする予感がしていました。そうしたなかでゲームを開発していくのは挑戦的でしたし、いいゲームを作ればいい評価を得られるはずだと考えたんです。
――『怪獣8号 THE GAME』はグラフィック表現が非常に特徴的ですが、どのようなところにこだわったのでしょうか?
藤田氏:
実はゲーム化を提案するにあたりに、プロジェクト暁のグラフィック制作に携わる少人数のメンバーで8号とキコルの3Dモデルを作りました。もちろんこれだけで企画が成立するわけではありませんが、3Dのキャラクターを見ていただくことで、このゲームに希望を持ってもらえるようになったと思います。グラフィックのクオリティが高ければ高いほど、より良いゲームになるかもしれないと期待してくれるでしょう。実は企画提案時、ゲームシステムや細かい内容についてはまだまだ手探りな状況でした。
私のようなプロデュースのメンバーにしてものメンバーにしても、開発チームが作ってくれたグラフィックからインスピレーションを得て、どのような要素を取り入れるかを考えていくものなんです。ビジュアルが存在することは、スピード感のあるゲーム開発を実現するのに重要なことなんだと実感していますね。
キャラクターの3Dモデルを作りはじめた頃は、まだアニメ版も存在していませんでした。とにかく漫画を読み返して、そこに描かれているキャラクターの造形に近づけるように努力していきましたね。3Dは情報量が多いので、漫画そのままではなく、ゲームとしてカッコいいと思ってもらえるようにビジュアルを仕上げていきました。ゲーム化の企画が正式に決まったときには8号とキコルのビジュアルが先行して進んでいたので、それからはほかのキャラクターがそのテイストに合わせていくような作りになりました。


――『怪獣8号 THE GAME』というゲームのコンセプトを教えてください。
藤田氏:
『怪獣8号』の印象として、ストレートでわかりやすいという特徴が存在します。それは日本人に限ったことではなく、海外の人々にも好まれています。そうしたところを考慮して、当初からゲームの作品名はシンプルなものにしようと考えていました。『怪獣8号』のゲームを開発するにあたってのコンセプトとしては、当初から漫画、アニメ、ゲームが横並びになって、『怪獣8号』という世界観を表現したいと考えたんです。スピンオフではなくて、当初から『怪獣8号』という作品をど真ん中から作りたいと願っていました。
そうしたコンセプトのもと、シンプルでゲームであることがわかりやすい『怪獣8号 THE GAME』という作品名が付けられました。『怪獣8号 THE GAME』という作品名は、最初に考えられたものです。ほかの案もいくつかあったのですが、『怪獣8号 THE GAME』が一番しっくりきました。仮の案がそのまま正式な作品名になりましたね(笑)
――怪獣の討伐はターン制コマンドバトルとなっていますが、アクションではなく、どうしてターン制コマンドバトルを採用したのでしょうか?
藤田氏:
まず、スマートフォン向けゲームとしてリリースすることが大前提でした。スマートフォン向け運営タイトルとアクションゲームとの相性はあまり良くないと思っています。開発に時間がかかることはもちろん、アクションではキャラクターの個性を表現しながら成立させることの難易度が非常に高いですし、場合によってはカメラワークも固定にせざるを得ないこともあります。アクションゲームでキャラクターを表現することはそもそも難しいことなんですよ。数多くのキャラクターを登場させること、カットイン演出を磨き上げキャラクターたちを魅力的に魅せること、短い開発期間でゲームを完成させること、そのすべてを実現するにはターン制コマンドバトルのRPGにすることがもっとも合理的だと考えました。
運営型のタイトルはアカツキゲームスは得意としていますし。その流れに沿うとやはりターンベースのゲームがいいだろうと思ったんです。『崩壊:スターレイル』のリリース前の映像を視聴して、ターン制コマンドバトルのRPGが再び盛り上がりそうなことを確信していました。ターン制コマンドバトルのRPGにしたことでキャラクター表現やカメラワークを突き詰めることができましたので、格段にカッコよくなったと思います。
スマートフォン向けにもゲームをつくるという大前提があったのも大きいかもしれません。タッチ操作でアクションを楽しめるようにするのはかなり難しいことで、間口の広いファン層の『怪獣8号」のゲームとしては組み合わせがよくないように感じました。もちろんそうしたゲームを求める人がいることは承知していますが、開発側からターゲット層を狭めるようなことはしたくなかったんです。


アニメの放送と連動させる形でゲームに新キャラが登場予定
――藤田プロデューサーの考える『怪獣8号」の最大の魅力はなんだと思いますか?
藤田氏:
原作マンガの第1話を読んだ人は『怪獣8号』がヒットすることを予感したと思いますし、私もその1人です。とにかく、インパクトが絶大でした。怪獣と戦うというキャッチーさと、主人公自身が怪獣になってしまうという驚きの展開。連載が続いていくうちに、往年のジャンプのようなバトル漫画として確立しました。ビジュアルも非常に特徴的で魅力的ですし、誰もが読みやすいような間口の広さがあるんですよね。老若男女に愛される作品であることが、私が考える『怪獣8号』の最大の魅力です。
テンポよく進行するストーリーの中でもキャラクターひとりひとりの個性が表現されていきますし、一度見たら忘れない印象的なシーンが次から次へと出てきます。個人的には、そうしたところが『怪獣8号』が秀でている部分だと思います。
――『怪獣8号』のファンが喜ぶゲーム化とは、どのようなことだと思いますか?
藤田氏:
『怪獣8号』のファンが喜ぶゲーム化について、大きく分けて2つが挙げられると考えています。1つめは『怪獣8号』の新しい情報を求めている人が数多いということですね。漫画を補完するようなストーリーだったり、キャラクターの情報だったり。そこは私自身も求めているところでしたので、ゲームはその部分を担う存在になっています。
『怪獣8号』は印象的なカッコいいシーンが登場します。キャラクター造形や表現をしっかりと再現しながらも、ゲームらしい表現に落とし込んでいく。これがファンが喜ぶゲーム化として2つめの要素になると考えています。
――ゲームらしい表現というと、ターン制コマンドバトルのRPGではどのような部分が該当するのでしょうか?
藤田氏:
漫画はコマ割りなので、どうしても実際の動きがわかりづらいこともあります。ゲームだと一連の動きを細かく追求することができますし、キャラクターのビジュアル、スーツ、武器などのディテールにもこだわることができます。キャラクターの繰り出す技をしっかりかっこよく表現すること、これが、ターン制コマンドバトルのRPGで実現できました。
キャラクターの魅力を表現できるものを作るときにシステムはもちろん重要ですが、どういう開発メンバーを揃えられるのかも大切になってきます。リリースの日程を考えると今回は寄り道している暇はありませんでした。お客様からのニーズを捉えつつ、最短距離で開発を進めていく。そうしたことが求められるタイトルでしたね。
――『怪獣8号 THE GAME』をプレイして漫画を読んでみたくなったり、アニメを視聴したくなったりするような仕組みは存在しますか?
藤田氏:
アニメの放送に合わせたキャラクターのリリースを予定しています。8月30日に放送されたアニメ第19話では市川レノが「識別怪獣兵器(ナンバーズ)6」と呼ばれる特別なスーツを着ています。アニメ放送翌日の8月31日にゲームはリリースされるんですが、そのときの目玉は8月30日に放送された、市川レノがナンバーズ6を着たバージョンです。
それ以降のキャラクターのリリースについては現時点でお伝えできることはありませんが、アニメの放送とできるだけリンクする形で新キャラクターがゲームに登場します。アニメで活躍したキャラクターをゲームでもすぐに見たい、というのはファンなら誰もが思うことではないでしょうか。そういった願いを叶えるために、アニメとゲームのリアルタイムなつながりはかなり意識していますね。
意図的にアニメとゲームをリンクさせることができるのは、スマートフォン向け運営型タイトルだからこそかもしれませんね。アニメを見た人の情熱が冷めないように、ゲームでキャラクターを供給していくことが、ユーザーファーストじゃないのかなと思っています。


ファンも未経験者も『怪獣8号』の世界観に浸れるストーリー
――『怪獣8号 THE GAME』にはストーリーモードが3つも存在しますが、それはなぜでしょうか?メインストーリー、追憶ストーリー、キャラストーリーそれぞれの見どころについても教えてください。
藤田氏:
ストーリーモードを3つ搭載した理由は、ゲームから『怪獣8号』に触れても楽しめるようにしたいと思ったからです。漫画やアニメをなぞるだけのストーリーではなくて、ゲームでしか得られないシナリオを体験してほしいと考えました。そうした意味で本作のメインストーリーはゲーム独自のものになっています。
追憶ストーリーは、アニメのストーリーを追体験するモードです。まだ漫画を読んだりアニメを視聴していない人も、『怪獣8号 THE GAME』から『怪獣8号』を知ることができます。追憶ストーリーは展開こそアニメとほとんど同じかもしれませんが、グラフィックなどはゲームのために新たに作り上げられたものです。キャラクターボイスもすべて録り直しました。
キャラストーリーに関しては、キャラクターを取り扱うゲームであればお約束的な要素ですよね。漫画やアニメは主人公の日比野カフカの視点でストーリーが展開されていくので、どうしても描ききれないキャラクターが存在するんです。そこにはもちろんキャラクターの魅力となりうる一面が隠されているでしょうし、ゲームではそうした一面を新たに展開することができます。そういうのを楽しんでくださるファンもいるはずだと考えてキャラストーリーを搭載しました。ストーリーモードはメインストーリー、追憶ストーリー、キャラストーリーの三本柱でいくと最初から決まっていましたね。
さらに細かなキャラクター描写でいうと、ゲームではグループチャットを使ったキャラクター同士のやり取りを見ることができます。そうした場面でも漫画やアニメでは知られていなかった新たな一面を知ることができます。


――キャラストーリーはどのようなものがあるのでしょうか?
藤田氏:
キャラストーリーは、それぞれのキャラクターにストーリーが数話にわたって展開されていきます。原作の特定のシーンを再現したものではありません。語られるストーリーは日常的なものも存在し、新たにゲーム用に作成したゲームオリジナルのエピソードになっています。たとえば、四ノ宮功が趣味のチェスに興じるところも描かれていますよ。漫画やアニメの設定を踏襲しつつも、秘められたキャラクターの魅力を引き出すためにキャラストーリーを作りました。
――『怪獣8号 THE GAME』ならではの、新しい試みがあれば教えてください。
藤田氏:
アニメの放送に合わせてゲームをリリースするために、3Dのゲームの開発としては短い期間で作り上げることができたと考えています。ゲームのリリースを遅らせることは絶対に許されません。クオリティを求めつつも、効率よく作らないと確実に間に合わなかったでしょう。
プロト開発や各所調整に数ヶ月、α以降の本格的な開発期間は約2年ぐらいですね。ターン制コマンド型に決定するまでにだいぶ悩んでいた時期があります。2023年のプロト開発期だったと思います。変更前は俯瞰視点のオートでキャラクターたちが戦っていくものを想定していました。しかしながら、等身の高いキャラクターを魅力的に見せるためには、アカツキゲームスがもともと得意なターン制コマンドバトルRPGにした方がいいだろうと考えたんです。結果的に限られた開発期間でキャラクター表現を追求するための最適解だったと考えています。数々の運営タイトルを経て、パラーメーターの調整などにも慣れていますし。本来得意だったターン制コマンドバトルRPGにジャンルを変更して、約2年で『怪獣8号 THE GAME』をリリースできることになりました。
約2年で作られるゲームはオリジナルの作品だったら成立することもあると思うんですけど、版権作品なので監修していただくのに時間がかかるんですよね。振り返ってみると綱渡りのような開発でした。こうしてゲームをリリースできることは奇跡だと思います(笑)

――最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
藤田氏:
『怪獣8号 THE GAME』は漫画やアニメを知っている人はもちろん、『怪獣8号』をまだ知らない人でも楽しめるゲームになっています。ゲームの開発にはさまざまな制約がありますが、一切手を抜かずに作り上げました。さまざまなチャレンジを経て完成した作品で、これまでアカツキゲームスが作ってきたタイトルとも異なる境地に達したと思います。アニメの放送を楽しみに視聴しながら『怪獣8号 THE GAME』もプレイしていただければ幸いです。
――ありがとうございました。
『怪獣8号 THE GAME』は、基本プレイ無料でiOS/Android向けに配信中。PC(Steam)版は後日の配信を予定している。
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