『リバース:1999』開発者インタビュー。Steam版もリリース、独自路線を突き進む世紀末RPG制作者に異色の「アサクリ」コラボ理由や日本ユーザーの印象を訊く
『リバース:1999』は中国のゲーム開発会社BLUEPOCHにより開発されている世紀末タイムリバースRPGだ。世紀の終わり1999年に発生した「ストーム」により旧時代へと巻き戻った世界を舞台に、主人公であるヴェルティがストームの謎に迫っていく物語だ。
重厚なストーリーや、魅力的なキャラクターが人気を獲得しており、Steamでは約1300件のユーザーレビューのうち94%が好評とする非常に好評ステータスを獲得している。昨年10月には1周年を迎え、先日おこなわれた生放送では『Assassin’s Creed II』『Assassin’s Creed Odyssey』とのゲーム内コラボなども発表され、今後の展開にも目を離せない本作。
この度、『リバース:1999』を開発しているBLUEPOCHにメールインタビューをする機会をいただいた。どのようにして創られているのか、なぜユーザーフレンドリーなのか、いちプレイヤーとしても気になっているさまざまな質問に答えてもらった。
『リバース:1999』の魅力とは
──まず初めに、開発・運営としてBLUEPOCHが考える『リバース:1999』の魅力についてお聞かせください。
開発チーム:
表現内容を尊重し、ユニークで時代背景に合ったコンテンツを制作することにこだわっているところ、でしょうか。私たちはゲームのテキスト、ビジュアル、音楽などの各パートを限界まで練り上げ、統一感のある印象的なコンテンツとして作り、プレイヤーに「奇妙でありながらもレトロ感のある体験」を提供したいと考えております。
同時に、『リバース:1999』に出てくるデザインや設定はどれも個性的である必要があり、ありふれたものであってはなりません。理想は、「『リバース:1999』でしか表現できない独特な設定」です。『リバース:1999』ならではの美学、そして魅力を、ゲームを通じて皆様にご覧いただければと思っております。重厚な時代性と文化的背景の再現――しかしストーリーのテーマは常に真新しく、視聴体験と合わせユニークに訴え、聞けばすぐに『リバース:1999』の内容だとわかるところが魅力です。そして、今後もそのような体験を提供し続けるため邁進してまいります。
──重厚な時代性と文化的背景の再現は、1人のプレイヤーとしても魅力的に感じています。一方でこの魅力は「人を選ぶ」「硬派」だと感じる要素でもあるように思います。多くのゲームが「シンプル」で「とっつきやすい」方向に向かう中で、『リバース:1999』がこの独自のスタイルを選んだ背景について教えてください。
開発チーム:
私たちは、伝統の型を打ち破りつつも、自分たちが好きであり得意なコンテンツづくりを目指しています。長い歴史の中には、宝石のように輝く豊かな文化があると考えています。私たちはこれらの文化や時代の特徴をゲームに融合させ、ユニークで味わい深く、プレイヤーの心に何かを残す作品を生み出したいと考えているのです。
感情は共鳴し合うものです。プレイヤーの心の琴線に触れ、共鳴し合い、壮大なシンフォニーを奏でられると信じています。確かに『リバース:1999』は一般的に「人を選ぶ」「硬派な」ゲームと見られるかもしれません。しかし、世界の市場は広く、プレイヤーの求めるものも多種多様です。リリース以降、多くのプレイヤーに『リバース:1999』を認めていただき、楽しんでいただけていることに心から感謝しています。これからもBLUEPOCHはゲームの品質を追求し続け、皆様により多くの高品質なコンテンツをご提供していく所存です。
『リバース:1999』はどのようにして創られているのか
──『リバース:1999』のストーリーや設定を考えるうえで、BLUEPOCHのチームが特に重要視している創作のヒントや習慣は何ですか?
開発チーム:
BLUEPOCHの最大の特徴は、「表現を尊重する」ところです。自由な創作環境により、開発チームは独創的で魅力的なアイデアを出すことができます。そして、会社全体の「個性」に対するこだわりが、これらのアイデアをゲームの隅々にまで反映させることができています。
また、会社の各部署間の風通しの良さと密接な協力関係も、血が通ったキャラクターを生み出せる重要な要素の一つです。「このキャラクターはどんな特徴を持っているんだろう」、「どんな神秘術を使うのかな」、「どんなストーリーを背負っているんだろう」…これらは全て繋がっており、しっかりとした因果関係を持っています。すべての要素は1つのコンセプトを主軸にしており、どのパートが欠けても、そのキャラクターが不完全なものになってしまうのです。これが実現できているのは、各部署の密接な協力関係があるからこそです。
──『リバース1999』では多くのキャラクターがそれぞれの時代や文化の象徴をモチーフとしていますが、特にデザインや性格設定において最も苦労したキャラクター、開発イチオシのキャラクターは誰ですか?
開発チーム:
「始めが最難関」という中国のことわざ(万事开头难)の通り、一番苦労したキャラクターは最初に創った「ドルーヴィスⅢ」ですね。
デザインに着手した時、私たちはこのキャラクターがストーリーの時代背景にうまく溶け込み、「ストーム」に翻弄されながらも自分で運命を選び取り、やがてストーリーが進展していくにつれ、大きな決断を前に「成長」や「変化」を見せてくれるような、どんどん味わい深くなるキャラクターになってほしいと願いをこめました。その結果生まれたのが今のドルーヴィスⅢです。彼女はジャズ・エイジや世界恐慌、そして神秘学を使うドルイドを代表する記号となり、まさに『リバース:1999』を代表するキャラクターの1人となってくれました。
私たちはプレイヤーに高品質で、質感のある内容を提供するため、また、ストーリーと相乗効果をなすキャラクターを作るために、どのキャラクターも心血を注いで制作しています。
「開発のイチオシのキャラクターは誰か」というご質問に関しましては、少々ずるいかもしれませんが、心から正直にこう答えさせていただきます。全員です。実際、私たちはどのキャラクターも大量の心血を注いで作っていますので、みんなの魅力を見ていただけましたら嬉しいです!
──さまざまな時代や文化を扱う『リバース:1999』のローカライズは非常に難しいものだと存じます。ローカライズにおいて難しかった点や手応えを感じた部分はありましたか?
開発チーム:
異なる文化圏の人が同じ事柄や感情を理解する時、通じ合う部分もあれば、各々の文化的背景に影響を受け、通じ合え無いところも出てくることがあります。このギャップを埋める挑戦は個々のキャラクターやストーリーのローカライズだけでなく、『リバース:1999』が表現する文化や感情など、全体の内容を「忠実に、わかりやすく、美しく」ユーザーに伝えるため、常に行われています。これらの作業はもっとも難しく挑戦のし甲斐があり、私たちが長期的に掲げている目標でもあります。
私たちは今でも、より良いローカライズを目指しチームを整え、世界各地のプレイヤーにより良いゲーム体験を提供したいと考えています。いつも『リバース:1999』のローカライズ業務をご理解、ご声援いただき、誠にありがとうございます!
──「モルパンク遊記」ではインドが舞台に、「さらば、ライヤシュキ」では旧ソ連が舞台となったように世界各地が舞台となっていますが、新たに選ぶ舞台やテーマを決定する際、どのような基準やインスピレーションを重視されているのでしょうか?
開発チーム:
ストーリーの舞台とテーマを決める時、私たちはその時代背景や文化的背景、斬新さとゲームとの相性を考慮しながら候補を選出しています。「この舞台で起きたストーリーは十分な時代性と重厚さを持っているのか?」、「この地域ではどんなストーリーが起きるのか?」、「ここで暮らす人々はどんな困難に直面し、どのような希望を持って懸命に生きているのか?」、「この地域で生活しているキャラクターは、その性格と地域の特徴から、どんなユニークな神秘術を使うのか?」……だいたいこのような切り口から発想していきます。そのうえで、制作に携わるクリエイターの考えを尊重し、クリエイターが伝えたい内容を尊重することが、常に新しい内容を作り続けられる秘訣かもしれません。
私たちはこれからブラジルのサンパウロでストーリーを迎える予定です。一緒に暑いブラジルでバカンスを楽しみましょう!
ゲーム内コラボの意図
──ゲーム内初のコラボが「ディスカバリーチャンネル」とのコラボで非常に驚きました。とういった経緯でディスカバリーチャンネルとのコラボとなったのでしょうか?
開発チーム:
「ディスカバリーチャンネル」は1985年に設立された歴史ある科学チャンネルです。世界中に足跡を残し、各地の人文科学をスクリーン越しに視聴者に届けてきました。このような歴史と時代の人文を尊重する特徴は、『リバース:1999』の創作理念と非常に相性がよかったのです。さらに開発チーム内にも「ディスカバリーチャンネル」の熱心なファンが多数いました。そのような多方向にわたる有利的な条件に恵まれ、私たちは「ディスカバリーチャンネル」とコラボをすることができました。
コラボ内容を決める時、私たちは双方の得意分野を活かし、この太陽系第三惑星で起きた奇跡をプレイヤーに見せたいという思いで、「旅と体験」というテーマに決めました。第1期コラボでは、「トゥースフェアリー」と「葛天」という深い文化的背景を持っている神秘学家が、皆様をイギリスのストーンヘンジや、エジプトのエドフ神殿にご案内いたしました。また、第2期コラボにも2名の神秘学家が登場する予定です。どうぞご期待ください!
──言われてみると、ディスカバリーチャンネルとのコラボはぴったりのように感じますね。では、『Assassin’s Creed II』『Assassin’s Creed Odyssey』とのコラボではどのような共通点を軸に企画がなされたのでしょうか?
開発チーム:
「重厚な時代感と豊かな文化を感じられるところ」、この2点を一番重視しております。『アサシン クリード II』の舞台であるフィレンツェも、『アサシン クリード オデッセイ』が見せてくれた古代ギリシャのアクロポリスも、輝かしい歴史と文明の息吹が感じられる都市です。
『アサシン クリード II』の舞台であるルネサンス期のフィレンツェでは、人々が少しずつ教会の厳しい支配から脱し、建築、医学、絵画、航海、哲学など、様々な分野で大きな成果を挙げ、多くの芸術家や思想家が輩出されました。『アサシン クリード オデッセイ』も同様です。それぞれの舞台に対する考察、再現度が非常に高く、綺麗に表現されていると思います。『リバース:1999』の輝かしい文化への追求もこれらと同じベクトルにあり、私たちも『リバース:1999』の中で、皆様に重厚な時代感と豊かな文化をお見せすることができればと思っています。
また「オデッセイ(Odyssey)」には「長い冒険旅行」という意味もあります。今回、『リバース:1999』にとっては初めてのゲーム作品との大型コラボです。きっと一度も足を踏み入れたことのない長い旅となることでしょう。皆様にもこのコラボバージョンで、ユニークかつ驚くほど面白いゲーム体験をしていただけたら幸いです!
ユーザーフレンドリーな運営方針
──自動戦闘やUTTU、エピソードなどのコンテンツにおいて、改善スピードがとても速いことが印象的です。そのスピーディな改善の理由や、可能にしている要因についてお聞かせください。
開発チーム:
私たちはプレイヤーの声を重要視しています。主にゲーム内のアンケートや、Discordコミュニティ、SNSなどを通じて、皆様の意見を常に収集しています。デザインやゲーム内容にご満足いただけなかった部分を見つけた際には、直ちにチームのスケジュールや人材配分を調整し、一刻も早く改善できるよう取り組んでいます。もちろん、新しいコンテンツを配信する際にも、慎重にテストと考察を重ねてから配信にゴーサインを出すようにしています。
改めまして、いつも『リバース:1999』を応援していただき、心から感謝申し上げます。もし『リバース:1999』に実装して欲しいアイデアなどがありましたら、ぜひお知らせください!皆様からたくさんのフィードバックをいただけることを楽しみにしております!
──コミュニティとの親密さも挙げられますが、デイリーミッション報酬やログインボーナスの未受取時にメールで送付されることや、全体的な課金圧の低さなど、ユーザーフレンドリーな運営方針が印象的です。こうした方針を採用されている背景や意図についてお聞かせいただけますか?
開発チーム:
ゲーム内のさまざまな変更や設計は、すべてプレイヤーにより良いゲーム体験を提供したいという思いから生まれたものです。
プレイヤーが安心してゲームを楽しむには、安定したコンテンツ更新はもちろんのこと、些細なところでの小さな手助けも必要なことだと、私たちは考えています。例えばデイリーミッションの報酬の再配布や、イベント終了前に送っているアイテム交換のリマインダー、ログインしたのに月間パスの受け取りを忘れてしまった際の再配布メールなど…これらはすべて、その思いのもとに生まれたサービスです。もちろん、メールの内容も熟慮の末に作られています。忙しい日々の中でも『リバース:1999』をプレイすることで、心が温まるような気分になっていただければ幸いです。どうか『リバース:1999』が皆様にとって安心して帰れる場所でありますように――これからも引き続き楽しんでいただければと思います。
──BLUEPOCHから見た、日本ユーザーの傾向や属性はどのようなものでしょうか?
開発チーム:
誕生して間もない開発チームであるBLUEPOCHにとって、当初日本ユーザーの傾向や属性は本当に掴みにくいものでした。しかしさまざまな娯楽メディアを通じて、少しずつ日本ユーザーの特徴を捉えることができるようになりました。
日本のスマホゲームユーザーにとって、「二次元文化」はすでに生活の隅々まで浸透している印象です。そのため、彼らは2D-RPGタイプのスマホゲームを受け入れてくれやすい傾向にあるように思います。しかし同時に眼識をもち、完璧を求める傾向にあるため、スマホゲームの運営に質の高いサービスや長期的な運営能力を求めるなどの厳しい面も持ち合わせているように思います。
ゲームリリース後は、ユーザーとの直接交流を通じて貴重な意見やアドバイスをいただきました。その中で、日本ユーザーは自分の好きな作品に対しとても忠実で、他よりも大量の情熱を注ぐところがあると気がつきました。この特徴は、公式コミュニティやSNSでの投稿、そしてユーザーの自発的な二次創作などからもわかります。皆様、いつも『リバース:1999』を愛してくださり、ありがとうございます!
──『リバース:1999』を通じて、BLUEPOCHがユーザーに届けたいメッセージや体験を教えて下さい。
開発チーム:
私たちは偉大な作品を作ることを目標としています。素晴らしいゲーム体験を提供し、末永く皆様と共にいられる、そんな作品を目指しています。もちろん、この「偉大な」という言葉の定義はとても広いです。高品質なゲーム内容、ユニークなテーマとストーリー、優秀な視聴体験、豊富で面白いイベントやシステム…これらすべてが、「偉大さ」を構築するパーツです。
この目標を実現する過程で、私たちは多くの「初めて」にチャレンジし、模索しながら改善を重ねています。大変な道のりですが、BLUEPOCHは決してめげず、目標に向かって突き進んでいきたいと思います。
──最後に、日本ユーザーに対してメッセージをお願いします。
開発チーム:
これまでのご声援、及び共に歩んでいただけたことに心から感謝を申し上げたいです!皆様のご期待に応えられるよう、私たちは引き続きユニークで、品質にこだわったゲームコンテンツを配信していく予定です。どうぞ、これからも『リバース:1999』をお楽しみください!
──ありがとうございました。
『リバース:1999』はPC(公式サイト/Steam)/iOS/Android向けに配信中。Ver.2.2「悲しき熱帯」は1/9(木)より開幕予定だ。