『バイオハザード・ザ・リアル2』(以下『リアル2』)は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある11月9日までの期間限定アトラクションである。USJの一部が『バイオ』仕様になっているほか、オリジナルグッズを取りあつかう販売店もひらかれている。
すくなくとも筆者が読みとったかぎりでは公式サイトではどのような内容なのか判然としなかったため、実際に現地へ足を運んでみた。午後3時以降の入場券サマー・トワイライト・パス(大人5000円)に、優先入場券であるユニバーサル・エクスプレス・パス(約4000円、日によって異なる)をあわせて購入した。なお、これはテーマパークの大半でいえることだが、会場内の撮影は不可であった。そのため本稿がテキストベースになることをご了承いただきたい。
ゲーム開始まで
まず、行列に並ぶところからゲームスタートである。エクスプレスパスがあれば10-15分程度ですむが、(あまり賢明ではないが)整理券もなにもなしの素の状態で突っこむと「テーマーパークの一般的な待ち時間」待機することになるだろう。待つことに快感をおぼえる特殊なかた以外にはおすすめできない。
建物内は、まず『バイオ1』の洋館風にしつらえられている。額縁でかざられたモニタで流される映像群、シリーズファンはまずまちがいなくこの時点で反応する。ひととおり見終えたころに、ガンコントローラーのインストラクションがあった。ここで参加者は列ごとに「班分け」され、約10人ずつのグループへ区切られる。スタッフは全員『バイオ』に登場する特殊部隊風の衣装を着ている。イメージとしては『4』に登場する"クラウザー"のそれに近い。
奥に進むと一気に様子がかわり、階段では薄暗い研究所風になる。『バイオ』にかぎらずゾンビものお約束の光景だ。ただ、それなりの時間待機することになるだけに、文字通り足元が暗く不安があった。もちろん整理人員もいたが、物理的な問題の根本的な解決にはなっていない。
なお、待ち時間に終始『バイオ』シリーズの名曲が流れていたのは高く評価したい。それだけでも充分にテンションは上がる。
ガンコンについて
さて、肝心の「ゲーム」のルールは至極単純である。敵(キャスト)に向かって撃つ、基本はただそれだけだ。
ショットガン型のガンコンには残弾数と感染度(ようするにライフ)をしめすインジケーターが取りつけられている。1発発砲するたびにコッキングレバーを引かなければならない。このレバーが意図的なのだろうが相当重く、おそらく一般的な女性の腕力では片手では操作できない。必死なサバイバルを演出するためのエッセンスだったのかもしれないが、いささか過剰だ。現に、帯同していた筆者の妻は、序盤にさしはさまれるガンコン動作チェック時点までに2発しか撃てていなかった。
ガンコンでショットガン、と聞いて『THE HOUSE OF THE DEAD 3』を思い出すかたはなかなかのガンシュー好きだろう(『Evil Night』を連想したあなたは好事家だ)。『リアル2』は、『HoD3』のコッキングよりも確実に重い(後者はメンテナンスの影響も大きく、がばがばになっている店舗もあったが)。コントローラー自体の重量は『リアル2』のほうがおそらくやや軽い。USJのアトラクションの一つとしてみた場合、この味付けが適切だったとは個人的には思えない。
コントローラーにはもう一つ難があった。トリガーの感触である。スイッチのような感触が強く、「カチ・カチ」としたエアガンのような手応えなのだ。発砲音やリコイルなどもなく、およそ迫力とは縁遠い。
ゲームとしてみた場合
『リアル2』はゲームではない。再度繰り返すが、あくまでもユニバーサル・スタジオ・ジャパンにて期間限定で催されているアトラクションである。それをふまえても、少々品質の低さが目立つ。
キャストが扮する隊員に誘導され、同じくキャストが扮するゾンビやクリーチャーらに向けて発砲するのだが、上述したガンコンの仕様もあいまってまったくヒット感がない。敵側キャストはがんばって吹っとんでくれるが、よくある演技の域をこえていない。味方側のキャストも、浦安にある夢の国のそれと比較すると劣る。こちらとしては左手を酷使しての弾丸装填に必死であり、こうしたチープさなど早い段階でどうでもよくなるのだが。
倒した感触もなければ、被ダメージの実感もない。ただただ理不尽にライフだけが削られてゆく。しかもライフ制と弾数制限(スタート30発)について最初に説明はあるが、道中に補給があることがいっさい語られないため、とくに射撃に関するストレスは小さくない。さらに悪いことに、回復もノーリスクではなく、特定の目標物を適切に狙わなければならない。10人もが同時にだ。ガンシューティングに覚えのある筆者ですら2回目のグリーンハーブを逃した。
射撃→部屋移動→射撃、と繰り返すのが『リアル2』だ。そのコンセプト自体、つまりバイオハザード体感空間としては悪くない。だが、個別のパーツについて練り込み不足が否めない。プレイしていても、「つぎのお客様の団体を入れなければならないから」という展開の押し付けを感じる。キャストの練度も高いとはいえず、セリフが棒読みだったり、業務連絡的な意思疎通を客に見せてしまったりしていた。
総合的にみて、ゲームではなくアトラクションとして体験するとしても、やや残念だ。
USJの一パーツとしてとらえるべし
今回私、安田は『バイオハザード・ザ・リアル2』のプレイを主目的としてUSJまで足を運んだ。約9000円。実プレイ時間は10分程度(並んでいた時間は除く)。これを高いとみるか否かは、信心次第かもしれない。
がしかし、ここまで書いたとおり本アトラクションに対しすくなからず不満をいだいたのはたしかだ。『リアル2』のためだけにUSJにおもむくのは、相当純度の高い『バイオ』ファンでなければ危険である。
当然といえば当然の話だ。期間限定とはいえ突きつめていってしまえば、あるテーマパークのいちアトラクションにすぎない。ゲームとしての面白みや楽しさを求めるほうが間違っている。『ガンサバイバー』シリーズや『クロニクルズ』シリーズをこよなく愛する層は、むしろ知らなかったことにしたほうが幸せかもしれない。それでも、どうしても攻略したいというのならばおそらく2つ準備すべきものがある。4000円の優先入場券と、同志10名だ。いろいろと判定が曖昧なためこれで「クリア」できるかどうかはわからないが、何度も挑むならば精神衛生上用意したほうがいい。
とにもかくにも、"本作"だけを遊びにUSJに行くのは無謀だ。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを総合的に楽しみに行く、そしてそのパーツに『リアル2』が在る。そうした方向性のほうが、おそらく誰も不幸にならずにすむ。さいわい、過去最多入場数を牽引したとするハリーポッターエリアはじめ見どころは少なくない。また、まったく関係ないが『Ingress』のポータルも尋常な数ではないため、かなり遊べる。
ちなみに筆者はハリーポッターファンではないにも関わらず該当区域まで妻に強引に連れていかれ、そしてホグワーツ城をおがむことすらなく帰った。人が多すぎてまったく先に進めなかったからだ。