『Toxikk』 現代で奇しくもカジュアルとなった「古き良き」

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「古き良き」とは、今日において失われつつある味わい、面白みに価値を置く。それは現代との対比で良さが浮き彫りになるということだ。本稿で紹介するアリーナシューター『Toxikk』は、古き良きの好例である。FPSシーンの人気最新作と比較すれば、本作に秘められた魅力が明らかとなろう。

アリーナシューターはFPSのサブジャンルである。明確な定義はないが、代表作『Quake』と『Unreal Tournament』(以下UT)のようなゲームであると認知されている。FPSスキルを競い合う対戦ツールとして成熟の域にあり、昔からのPCゲーマーに愛好家が多い。ゲームモードはキル数を競い合うデスマッチだ。マップは狭く、ルールにうってつけの闘技場(アリーナ)を想起する。その上、リスポン場所がランダムゆえ背中を預ける場所はなく、撃ち合うまでの展開が非常に早い。また、キャラクターの性能差がないのも特色のひとつだ。

1対1でも対戦が成立する本作のゲーム設計は、他対他を前提とする現在の人気作と真逆にある。開発元は公式サイトの特徴紹介で、クラス制やMOBA要素、基本無料FPSのPay to Winを「Bullshit(たわごと)」とはねのけた。挑戦的なキャッチコピーに戸惑うが、言葉の真意は別にある。モダンスタイルとの対比を通じ、オールドファッションなゲーム設計に今だからこその魅力があると訴えたのだ。

公式サイトより。太字の大文字(大声)でモダンスタイルにNOを並べたてる。
公式サイトより。太字の大文字(大声)でモダンスタイルにNOを並べたてる。

『Toxikk』
開発元: Reakktor Studios
発売日: 2016年9月11日
価格: 14.99ドル(無料デモ版あり)
プラットフォーム: Windows

ミドリこうらを取って敵にぶつけるマリオカート

ジャンル外のゲーマーから見れば、アリーナシューターは次の印象になろう。尋常ならざるキーボードさばきで立体・高速機動を繰り返しつつ、正確無比なエイムをもって敵を倒す、一般人お断りゲーム。そうしたスポーティな面は確かにあるが、格闘ゲームや昔のRTSといった他ジャンルでも同様に見られる話だ。本稿は、プレイヤーをそこまで育ててしまった中毒的な魅力を紹介し、新規プレイヤーへの手引きとする。

公式マップ「DEKK」は『UT』シリーズに収録された定番マップのクローンだ。これを例にアリーナシューターの遊びかたを紹介する。
公式マップ「DEKK」は『UT』シリーズに収録された定番マップのクローンだ。これを例にアリーナシューターの遊びかたを紹介する。

本作の要約は、「ミドリこうらを取って敵にぶつけるマリオカート」である。マップには、一定時間ごとに特定の場所に強力な武器が出現する。初期装備の拳銃では話にならない。手にすべきはボディショット1発で敵を倒せるロケットランチャーだ。そして、この武器よりも重要なのが、出現間隔が長い3つの強力なアイテムである。ダメージを吸収する「メガアーマー」、一定時間攻撃力増加の「アドレナリン」、着弾点でマップ規模の爆発を引き起こし敵を倒す通称「核」を取りつづけ、相手に渡さないことで「状況の有利」をつくるのだ。

メガアーマー(画像左の鎧)はマップ1F中央の池。アドレナリン(画像右の赤いアイテム)はマップ2Fの箱の上。まずはこの場所を覚えよう。『UT』の場合は、ゲーム開始後一定時間経過でアイテムが出現するが、本作は最初から出現する。また、アドレナリンの出現間隔がメガアーマーより長い。
メガアーマー(画像左の鎧)はマップ1F中央の池。アドレナリン(画像右の赤いアイテム)はマップ2Fの箱の上。まずはこの場所を覚えよう。『UT』の場合は、ゲーム開始後一定時間経過でアイテムが出現するが、本作は最初から出現する。また、アドレナリンの出現間隔がメガアーマーより長い。

移動や照準コントロールといった基本操作の次に覚えることは、強力なアイテムの出現場所と出現間隔である。それらの独占を狙いつつ、マップ各所のライフパックやマイクロアーマーも回収するとなると、プレイヤーはマップを巡回するように走りつづけねばならない。こうして、アイテムは巡回コースのチェックポイントとなる。アリーナシューターはアイテム争奪戦であり、手にした者から逃げる鬼ごっこといってよい。風評から想像できないほど「立ち回り」を問う対戦ゲームだ。

横ドッジジャンプ中の姿(公式サイトより)。アリーナシューターの特徴、ドッジ(高速ジャンプ)、二段ジャンプ、壁キックによる高速機動は、銃撃戦の回避技術でもあるが、立ち回り強化の意味合いが強い。先と同じくマリオカートで例えるとハネやキノコであり、これを連打しながらコースを回れば、それだけアイテムを確保しやすくなる。
横ドッジジャンプ中の姿(公式サイトより)。アリーナシューターの特徴、ドッジ(高速ジャンプ)、二段ジャンプ、壁キックによる高速機動は、銃撃戦の回避技術でもあるが、立ち回り強化の意味合いが強い。先と同じくマリオカートで例えるとハネやキノコであり、これを連打しながらコースを回れば、それだけアイテムを確保しやすくなる。

わずらわしさが一切無い、「個」が主役のゲーム

前章の紹介内容はジャンル経験者からすれば今更の話である。だが、現在の主流であるクラスベース、MOBAスタイル、ミリタリー系にはなく、今日なら特筆に値するプレイ体験だ。この独自性は、本作にないものをあげると明解になる。

クラスの役割を果たさない味方に悪態をつくことはなく、クランマッチの6v6に不可欠なカウンター構成の都合で我慢して別クラスを選ぶこともない。オンライン人口維持で課せられた経験値稼ぎやログインボーナスでプレイを強いられることもない。キャラクターやストーリーに不満を抱くこともなく、演出を印象づけるQTEシーンといったミニゲーム集もない。

これらモダンスタイルはFPSジャンル興隆の立役者だが、上記のように「ノレない」ときは息苦しさや敷居にかわる。そうした「わずらわしさ」がないという意味で、アリーナシューターは現代のカジュアルFPSといえよう。敵より先にメガアーマーを入手したとき。万全の体勢をいかして撃ち勝ったとき。出会い頭にワンショットで敵を倒したとき。おもわず「うまい」と自分を称賛するシチュエーションは、プレイヤー自身の技量で得たものだ。チームワークや映画感動、課金勝利を廃したことで、FPSのプレイ体験を純化した。

『Toxikk』の功績は現代水準のビジュアルを持ってゲームを完成させた点にある。現代ゲームの映像美に慣れ親しんだゲーマーにもお勧めできる品質だ。近未来を舞台とした渋めのアートワークで、新生『UT』、『Quake Champions』と違った趣がある。本稿でアリーナシューターに興味を持たれたなら、まずは無料版を試してほしい。AI戦シングルプレイと、公式サーバのオンラインマッチが楽しめる。有料版はカスタムサーバの作成、参加ができるので、国内の友人と低PING環境で対戦するなら購入を検討されたし。

キル数を競うアリーナマップだけでなく、オブジェクティブ達成を競うキャプチャーセル、エリアドミネーションといったマッシブマップもある。最大8対8のチーム戦で、クルマや画像の人型兵器といったビーグルもあり、こちらはお祭り感覚で楽しめる。
キル数を競うアリーナマップだけでなく、オブジェクティブ達成を競うキャプチャーセル、エリアドミネーションといったマッシブマップもある。最大8対8のチーム戦で、クルマや画像の人型兵器といったビーグルもあり、こちらはお祭り感覚で楽しめる。
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