「中指」を立てて幽霊を撃退する一人称視点ホラーゲーム『The Night That Speaks』が怖い、ゲームボーイの色調で描く新たな恐怖

「中指を立てる」ことで幽霊をしりぞけるというホラーゲームは、『The Night That Speaks』ぐらいしかないだろう。小粒ながらも魅力を放つ本作を紹介するインプレッション。

射影機にて撮影する『零』シリーズや、ライトと銃のコンビネーションで戦う『Alan Wake』シリーズなど、ホラーゲームには霊や敵を撃退するための様々な方法が存在している。ただ、「中指を立てる」ことで幽霊をしりぞけるという作品は、『The Night That Speaks』ぐらいしかないだろう。

『The Night That Speaks』は、今年8月に開催された「GameBoy JAM 2015」にあわせて制作されたタイトルだ。約4日間にてAdam Gryu氏が完成させ、結局ゲームジャムへの出品は見送られたものの、その後いくつかのゲームメディアに取り上げられるなど密かに注目を集めていた。Adam Gryu氏によれば、自身初となるホラーゲーム開発だったそうで、『P.T.』や『Amnesia: The Dark Descent』、『Five Night At Freddy’s』といった好きな作品を参考にしたのだという。

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気がつくとプレイヤーは夜の静寂に包まれ、誰も居ない墓場に立ち尽くしていた。ここはどこなのか、そしてなぜここに自分がいるのかもわからないが、”ここを訪れることに意味はある”と直感で感じ取る。プレイヤーは目の前の地下墓地へと足を踏み入れ、鍵を探しだして奥深くの閉じられた扉を開かなければならない。

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近づいた敵を噛み殺す真っ黒な化け物や、スレンダーマンのような細身ののっぺらぼうなど、地下墓地には何種類かの敵が徘徊している。彼らはプレイヤーを発見すると襲いかかってくるため、プレイヤーは意思の力”備わっているという“とあるハンドポーズ”で敵を撃退しなければならない。それが「親指と人差し指で輪を作り、中指を立てる」というポーズだ。この中指を向けているあいだは敵は動けなくなり、さらに中指を立てたまま近づくと消滅してしまう。なんともロックな撃退方法だ。

中指を立てて幽霊を撃退するという構図はとても面白いい。しかし、本作はそれだけに留まっておらず、高品質な一人称視点ホラーゲームでもある点にも注目したい。ゲームボーイの色調で描かれる光と影の表現はとても美麗で、真っ暗な影のなかから敵がぬるりと突如出現する様子は、レトロというよりも逆に新鮮だ。敵が近づいてくる際に流れるBGMや声、中指を立てている時に際立つ心臓の鼓動など、音響効果も素晴らしく怖い。簡単なプロットながらも「主人公がいったい何者なのか」という物語も添えられており、小粒ながらも1本のホラーゲームとして楽しむことができる。有象無象の一人称視点ホラーゲームが登場している昨今だが、光と影の描写や音響効果がいかに同ジャンルにおいて大事かをよくわからせてくれる作品だ。

現在『The Night That Speaks』は、itch.toにて無料で配信されている。対象プラットフォームはPC/Mac。わずか十数分で終わる作品だが、興味を持ったプレイヤーは、ダウンロードして中指を立ててみてはいかがだろうか。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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