悲しい親子マンモスの旅路を諸行無常に描くゲーム『The Mammoth: A Cave Painting』

『The Mammoth: A Cave Painting』は世界一悲しいマンモスのゲームだ。世界各国の開発者たちが制限時間内にゲームを作るゲームジャム「Ludum Dare 33」にて開発された作品。

The Mammoth: A Cave Painting』は世界一悲しいマンモスのゲームだ。

『The Mammoth』は、世界各国の開発者たちが48時間でゲームを作るゲームジャム「Ludum Dare 33」にて開発された作品だ。開発を担当したのはIsaac Ashdown氏、Rafal Fedro氏、Jan David Hassel氏、Daniel Nordlander氏の4人で結成されたチーム「inbetweengames」。タイムリミットを超え完成された本作は、itch.ioにて現在配信されており、WindowsかAndroid上にて無料で遊ぶことができる。

母マンモスと子マンモスの悲しい旅

the_mammoth_a_cave_painting『The Mammoth』は原始時代のマンモス親子の旅を描くアクションゲームだ。プレイヤーは母マンモスを操作して、はぐれた子マンモスを連れ、群れへ合流する ことを目指す。旅路の途中、人間の狩人たちが子マンモスを襲うため、母マンモスは彼らを撃退し子マンモスを守らなければならない。

ゲー ムプレイは至極単純で、WASDキーで母マンモスは移動し、その後を鴨の子どもたちのように子マンモスたちが付いてくる。CTRLキーで鳴き声を挙げ子マ ンモスたちを呼び寄せ、SPACEキーでハンターを倒すために突進する。操作はたったのこれだけだが、いずれのアクションも鈍重だ。母マンモスは歩くのが とてもゆっくりで、子マンモスは輪をかけてさらに遅いので、すぐにはぐれてしまう。子マンモスたちを呼び寄せる鳴き声を頻繁に挙げることはできない。ハン ターたちを蹴散らすため連続して突進することもできない。

ゲームの終盤、マンモスたちは狩人たちの村に迷い込むことになる。四方八方から出現する狩人たちは蟻のように群がり、槍は容赦なく子マンモスに突き 刺さってゆく。母マンモスを操作するプレイヤーは、なんとか子マンモスを守ろうと奮闘するが、数の暴力には勝てない。1匹、また1匹と、子マンモスたちは 悲痛な叫び声をあげつつ倒れてゆく。たちが悪いのが、子マンモスたちはプレイ次第では救うことが可能という点で、イベント戦闘ではなく子マンモスの死は “プレイヤーが原因だ”と訴えてくる。

このゲームは、ホラーゲームなどにおけるそれと同様に、ゲーム自体に制限をかけることでプレイヤーの感情移入を上手く増幅させているタイトルだ。ホ ラーゲームでは、移動速度を遅くしたり、弾薬を少なくしたりすることで、プレイヤーに緊張感を与える。同じように『The Mammoth』では、マンモスたちの操作に“もどかしさ”を与えることで、抗えない危機的状況に悲壮感を添えることに成功している。

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マンモスはもう母親ではなくなった。あなたは人間たちに復讐するか?それとも先へ進むか?

サブタイトルにある「A Cave Painting(洞窟の絵)」を意識してか、本作の独自の手描きビジュアルによって描かれている。淡々としたナレーション、単調だが心に訴えかける原始 的BGM、口で吹き替えられたサウンドエフェクトは、いずれも諸行無常なエンディングへのプレイ体験を高めてくれる。

なお海外メディアOffworldの 取材によれば、開発チームの4人は実はドイツのデベロッパーYager Developmentのベテランたちだというのだから驚きだ。確かに彼らはプレイヤーの心理を揺さぶる三人称視点シューター『Spce Ops: The Line』を生みだした人々で、このようなタイトルを生み出せるのも納得である。

『The Mammoth』のWindows版のファイルサイズは67MBしかない。サイズで予想できるように、親子の旅路は数分で終わるが、その体験は下手なビデオゲームよりも濃厚でせつない。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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