ファーストインプレッション『Rosenkreuzstilette』-ハックロムロックマン風
[PLAYISM よりゲームソフトの提供を受けています]
PLAYISM で配信中のインディーゲームのインプレッションをお届けします。毎週火曜更新予定。
第3回は『Rosenkreuzstilette』。また読みづらいタイトルですが発音は"ローゼンクロイツスティレッテ"。意味は「薔薇(ローゼン)」「十字架(クロイツ)」「スティレット」。スティレットの意味がわからない方はファンタジー功夫が足りません。開発は erka:es (エルカーエス)。現在の開発メンバーは1人とのこと。
プレイ時間: 約5時間
プレイ状況: ストーリーモードクリア
本作は公式で「ジャンル: 面クリア型2D横スクロール ロックアクション」と掲げていることからわかるように、『ロックマン』シリーズを強く意識したタイトルです。ゲームを大雑把に説明するならば「ロックマンみたいなもの」としか言い様がありません。完全にメガマンファン向け、換言すればリスペクト作品。
8人のボスを倒して武装を獲得しつつ後半面(ワイリーステージのようなもの)を攻略するフロー、ショットにチャージショットにジャンプにスライディングの操作感、オブラートに対する挑戦とでも呼ぶべきザコ敵のデザインなど、基幹は完全にロックマンです。
本家とゲーム部分で決定的に異なる部分は2つ。まず、『Super Meat Boy』などのいわゆる"死にゲー"のエッセンスがまぶされている点。予告なく配置されている即死トラップが多数あり、初見ではまず間違いなく死なざるをえないポイントが山盛りです。本家でしばしば設計されていた「見切りづらい攻撃で徐々にライフを削られ最終的に死亡」というプレッシャーはあまりなく、どちらかといえば突然出くわす即死針により"死にゲー"の側面が強調されています。
賛否両論分かれそうな部分ですが、シンプルな解決策が採用されています。1マップの尺がやや短いのです。残機やチェックポイントにかかる設計は本家準拠にしつつ、単独のステージをコンパクトにおさえることにより「延々同じところをプレイしているんだけど……」という不満をギリギリのところで乗り越えています。また、レベルデザインが全体を通してさほど複雑ではなく、一度覚えてしまえばスムースに進行できるというのもその一助です。
もう1つの相違点は、ボスにいわゆる「発狂」があること。ライフを半分ほど減らすと攻撃パターンが変化します。こちらは恥ずかしながら筆者が昨今のメガマントレンドを把握していないため、もしかするとすでに本家で採用されているのかもしれませんが、FC ロックマンに慣れた身にとっては斬新に感じました。
ほとんどのボスはかなり難しめに設定されており、初見での打開はほぼ不可能。上述のステージスパンの短さを前提に、何度か挑戦してクリアすることを想定されているようです。ただし弱点武器で攻撃した際の瞬殺ぶりは本家以上で、事実上の救済措置となっています。ちなみに、面セレクト時まっ先に目の行く左上のステージは全面通して比較してもほぼ最高クラス難度という悪意も込められています。
操作面で注意したいのが Xbox 360 コントローラ(箱コン)との相性の悪さです。PC ゲーマー向けに普及しておりデファクトスタンダードと呼べる箱コンのホームポジションではアナログスティックに親指を添えることになりますが、ここに問題があります。下方向への入力が極端に入りやすいのです。これにより、スライディングの暴発が多発します。
解決策としては、単純に箱コンではなく十字キーをメインとしたコントローラでプレイすること。もう1つが、若干上方向へ入力しながらの移動を心がけること。いずれにせよストレスフリーというわけではありません。とくにレバー入力で対応する場合、コツを修得するまで暴発スライディングで針へ突撃してしまうシーンが多発することでしょう。
演出面はスクリーンショットを見ての通り。日本に脈々と続く造形と塗りのキャラクターを基軸としています。レトロゲームのネタが山のように仕込まれており、『シャドウゲイト』あたりから『レーシングラグーン』まで。「わかる人にはわかる」性の仕様はゲーム部分だけではありません。
なお、ストーリーは「帝国軍の訓練所に教官補佐として滞在していた少女スピリティアは(中略)かっての仲間たちとの戦いに身を投じるのだった。」というもの。シンプルイズベストです。
クリア後には隠しモードが用意されており、こちらもオマケというにはもったいないボリューム。近接特化型のキャラクターを操作する、ようするに『ロックマンゼロ』の"ゼロ"モードです。最初のチュートリアルボスすら頭を使うことになるくらいに練りこまれています。
厳しかったのはまず、ゲームタイトルから大多数の方が引っかかったであろうドイツ語表記について。キャラクターから兵装まですべて独語系のトーンを採用しており統一感はあるのですが、馴染みやすいかといわれると疑問です。武器の名前は日本語が併記されているものの直感的ではありません。日本人のドイツ語履修率はどれくらいのものなのでしょうか?
また、ボスキャラクターがどういう武器を使ってくるのかもアイコンからはほぼ伝わってこず(青い頭髪だから水属性だろう程度)、「こいつにはこれが効くのでは?」という推理を働かせるのは無理があります。"ウッドマンにメタルブレード"的なメガマン伝統の思考が通用しないのはいささか残念なところです。
全体を通して振り返ってみると、最初にまず苦虫を噛み潰したような表情になったことを告白しておかなければなりません。ただ、それに耐えてゲームを理解した先に本作の妙味があったことも事実です。ただ「ロックマンに似たようなタイトルをプレイしたい」だけで接すると鼻白むでしょうが、それは『Rosenkreuzstilette』の本質ではないのです。
スクリーンショットやイメージイラストからは連想しづらいですが、本作と最も近いのは各種ハックロム版の『ロックマン』といえます。自由闊達にレベルとキャラクターをデザインした成果です。そうした味付け・表現にピンと来る方にマッチすることでしょう。
プレゼントのおしらせ(終了)
最後に、読者の皆さまへプレゼントです。
本記事に言及する Tweet をしてくださった方のなかから1名様へ本作の PLAYISM 用コードをさしあげます。@GamersGeoJP (注: 本アカウントは@AUTOMATONJapanへ変更されています)をフォローしていただいた上で、ご応募の旨と弊誌 URL を明記しつぶやいてください。「もう持っているけど布教用にもう1つ欲しい」「ロックマンライクが好きだ」「とにかく即死トラップさえあればそれで 満足だ」等、一番いいツイートをしてくださった方にお渡しします。締め切りは12月8日です。当選者の発表はコードの配信をもって代えさせていただきま す。