2016年5月13日にSteamでの販売が開始された『RefRain -prism memories-』(以下『RefRain』)は、日本の同人ゲーム制作集団「RebRank」により制作された。「RebRank」の過去作品には シューティングゲーム『五月雨 -samidare-』(以下『五月雨』)が存在しており、本作はこの『五月雨』の精神的後継作品といえるだろう。同人ショップなどでは以前から流通していたが、今回のSteam配信で本格的なダウンロード販売の環境が整った形になる。Steamでの販売価格は1480円。同人版とのおもな差異はSteam実績の 導入と言語の英語対応となる。
攻めるシューティングゲームとは
過去作『五月雨』は”攻め”のプレイスタイルを強く推奨しており、そのゲームデザインは『RefRain』にも色濃く継承されている。『五月雨』はみずからのゲームジャンルを「戦略的近接撃込型弾幕シールドシューティング」と謳っており、敵の挙動を覚え立ち位置を先回りしてギリギリまで接近してショットを撃ちこむ、 あるいは敵弾をシールドで跳ね返すといったプレイを推奨し、得点やパワーアップアイテムなどのリターンが多量に得られるルールを採用している。
本作『RefRain』は「戦略的循環攻撃型弾幕撃込シューティング」を謳っており、『五月雨』と同様に先回りすることによるリターンが非常に大きく設定されている。プレイ感は”似ている”とまではいかないものの、かなり近いものを感じさせるゲームデザインだ。
シューティングゲームにおける感覚的な分類として、”攻める”タイプと”避ける”タイプが挙げられる。Cave作品に代表されるような、低速で密集した弾幕をア ドリブも込みで避け続けるようなデザインの弾幕シューティングゲームを”避ける”タイプとした場合、『五月雨』や『RefRain』は”攻める”タイプと分類できるだろう。敵の出現場所や挙動を覚えておき、敵が弾幕を吐いて脅威となる前に手早く倒しきってしまうことで、画面上での展開を有利にすすめるタイ プのデザインである。
『RefRain』では、密着状態で敵を破壊するとより多くのアイテム(後述)を自動回収できるというルールを採用することで、この”攻める”プレイスタイルを強く推奨している。”攻める”デザインはボス戦においても顕著であり、ボスが展開する強力な弾幕を避け続けるリスクをおかすよりも、武装を駆使して手早く倒しきってしまったほうが得点的な評価が高い傾向にデザインされている。
攻めるプレイを促すルールデザイン
「M.E.F.A2」と「Concept Reactor」
『RefRain』 では、ほかのシューティングゲーム作品におけるボムのような位置づけで、「M.E.F.A2」と「Concept Reactor」という2種類の攻撃手段が通常ショットとは別に設定されており、それぞれ独立したゲージで管理されている。一見ややこしそうだが、概念さえ把握してしまえば実によく考えられたデザインであることがわかるはずだ。公式のマニュアルにも記述されている内容ではあるが、デザイン上重要な部分なので、以下に詳細なルールを紹介していく。
ゲーム勘のある読者諸氏はもうお気づきかと思うが、通常ショットと上記の2つの攻撃手段は非常に密接に関係している。「Concept Reactor」で破壊可能に変換した敵弾を破壊することで「M.E.F.A2」ゲージを溜め、連続して「M.E.F.A2」攻撃を行うことができるの だ。”循環攻撃型”と謳われているのはここに由来する。
2. 「M.E.F.A2」->「Concept Reactor」ゲージ
3. 「Concept Reactor」->「M.E.F.A2」ゲージ
2つのゲージは溜まりやすさが違う上、最初の「Concept Reactor」で敵弾は全てリセットされるので、上記の2から3を無限に繰り返すといったことはできない。だが敵弾を消したり無敵時間が存在することを考慮すれば、非常に有効な攻撃であることが分かるだろう。加えて「M.E.F.A2」を3発以上放出していれば、2の段階でボスに「ノックバック状態」という 無防備な時間を発生させられる。これらを活用することで、既存のシューティングゲームでは考えられないほどの短時間でボスを沈めることが可能となっている。弾幕による自機への危険を未然に防ぐことが可能な上、短時間で撃破した際にはタイマーボーナスが得られるので、得点的にも有利になる。
「Concept Reactor」ゲージの稼ぎ=残機エクステンド
「Concept Reactor」ゲージを溜めるためのアイテム回収はおおむね得点に直結している。そして、本作の得点による自機の残機追加(エクステンド)は、これも既存の作品では考えられないほど頻繁に起こるよう設定されている。少し練習すれば確実に1面ボスで1機目のエクステンドが発生するほどだ。これにより、 「Concept Reactor」で生存機会を増やすためにアイテムを稼ぐことが、イコール残機エクステンドと直結し、攻略を後押しする構造となっている。
自機ダメージ制によるパターン構築推奨
本作の「1機」は1度までダメージを受けることを許容している。1度被弾すると自機が赤く表示され、これがダメージ状態を表す。ダメージ状態でふたたび被弾すると残機が1機失われる。どちらの場合でも画面内の敵弾はすべて消え、その場からのスタートとなるので、攻略において同じ場所を再度プレイするような場面はほとんどなく、 ゲームのテンポを削がない。ステージを覚えてパターンを構築するプレイを推奨するデザインといえる。
キャラクター、BGM
極端に切り分けされた自機性能=キャラクターデザイン
『RefRain』 にはゲームをプレイするごとに順番に開放される3種類の自機が存在する。これらから1種類を選択してゲームを開始することになるが、この3種類がそれぞれ非常に極端な自機性能をしており、ステージのパターン構築もまったく違ったものになる。実はここまで紹介してきた要素により、『RefRain』は単純にクリアだけを目標とすれば、全5ステージクリ アの難易度はそれほど高いものではない。しかし、このパターン構築の極端な違いにより、自機によってまったく違った攻略が必要となり、機体ごとに別のプレイバリ エーションを産み出している。
秀逸なBGMと完全に同期するステージ
ステージごとに非常にクオリティの高いBGMが設定 されており、これを聴くだけでも十分に『RefRain』というゲームをプレイする価値がある。ステージ進行やボス挙動とBGMが同期するよう細心の配慮がされており、プレイにおける没入感、爽快感を高めることに成功している。
総評
ここまで紹介してきたように、『RefRain』はいわゆる「弾幕避け」に苦手意識のあるプレイヤーでも十分な爽快感を得られる、攻略の快感にこだわったゲームシステムを搭載している。「弾幕避け」自体は発生するが、それを突破するための手段が複数用意されており、「覚えゲー」と「アドリブ回避」の絶妙なバランスでうまく 場面を制圧、攻略した際の気持ちよさは計り知れない。また、プレイするごとに順番に開放される世界観の情報と、複数用意されたエンディングにより、スコア以外の部分でのリプレイ性がある程度確保されている点も見逃せない。スコア更新や攻略以外のプレイ動機を作っており、スコアラーならずとも何度もプレイし たくなる構造だ。シューティングゲーム初心者にこそ触れてほしい作品である。
『RefRain』はキャラクターデザインやUIデザインも総じて高レベルでまとめられており、日本の同人シューティング界が産んだ傑作の一つと言っても過言ではない。