『GUNTAI』レビュー 無限に続く荒野を「手軽に深く」飛ぶ鳥になる
“地球上のすべての「個」は淘汰され、生き残ったのは「群れるものたち=GUNTAI」だけだった。おびただしい死と再生を繰り返しながら、GUNTAIは無限の荒野を駆け抜ける。”
公式サイトに記載されている一文で、ゲームの概要でもある。
スマートフォン向けに制作されたゲーム『GUNTAI』は、3Dで表現された映像やスピード感などが魅力のアクションゲームだ。制作は日本でWebなどのデザインを手がけるスタジオ「tha」で、本作もアート的な魅力が強く押し出されたものとなっている。対応機種はiOS8.0以上もしくはAndroid4.4以上に対応した端末で、価格はどちらも480円で配信されている。
終わりなく飛び続ける鳥になる
スマートフォン本体を傾けジャイロ操作で鳥を上下左右に動かし、障害物を避けながら飛び続けることが、『GUNTAI』の基本ルールとなる。スタート時には鳥は1匹しかいないが、地上にいるほかの鳥に近づくと一緒に羽ばたいて群れになっていく。プレイヤーは鳥というより「群れ=GUNTAI」そのものを操って飛距離を競う。ゴールは存在せず、ゲームオーバーになるまでゲームは続くハイスコアアタック型のゲームだ。
舞台となるステージは、自由に進むことができる広い荒野もあれば、慎重に進まなければならない谷間や洞窟といった狭い場所などさまざま。障害物には地上から生えた木やそびえ立つ壁などから、宙に浮いた岩といった非現実的なものまでが登場する。どの障害物がいつ鳥たちの前に現れるかはランダムとなっている。
またゲームには制限時間が設けられていて、100mごとのチェックポイントを通過すると時間が加算されるが、時間切れか鳥が障害物にぶつかって全滅した時点でゲームオーバーとなる。
ただしステージを素早く移動する手段として、タップ操作で鳥が瞬間的に加速する「ブースト」が1回のみ使用可能だ。ブーストは400m進むたびに1回分補給される。鳥は1匹でも残っている限り続行可能なので、ブーストの使用ポイントを考えながらギリギリでも諦めずに進むことが飛距離の伸びに繋がる。
すべては世界のために
鳥が空を飛ぶ浮遊感、障害物を高速ですり抜けるスピード感、時間切れが迫る中で突き進むスリル。そんな感覚と共に、プレイヤーは『GUNTAI』に登場するキャラクターは鳥のみであることに気づき、世界に自分しか存在しないという孤独感を感じる。そんなさまざまな要素から「ゲームの世界を味わう」ことが『GUNTAI』の特徴である。
『GUNTAI』の世界観を伝えることにおいて、もっとも印象的なのは映像だ。同作の世界は単色のポリゴンモデルで描かれ、プレイヤーの操作する鳥すらも黒一色。だが、一匹一匹の羽ばたきや一斉に羽を広げて降下するなど、アニメーションは非常に細やか。ステージの背景は最初はモノクロなのだが時間と共に少しずつ色づき、快晴・夕焼け・雪など色とりどりな変化を見せる。ミニマムなビジュアルながらも、生命や自然が力強く繊細に表現されている。
見るだけではなく、操作にも本作の世界観を伝える要素がある。本体を傾ける操作はアナログレバーより自由に動かせる反面、動かしすぎることでミスに繋がりやすく、自由と正確さが相反する。それはゲームで「空を自由に飛びながら死と隣り合わせ」という感覚を直感的に感じることができる、スマートフォン特有の要素も効果の一つとなっている。
さらに、プレイを続けるうえで重要な「攻略」について。ゲームシステムとして、鳥の飛行速度は自身の数が直接関係していて、鳥の数が増えるほどスピードアップし、逆に減るとスピードはダウンする。しかし群れが大きくなるほど障害物にぶつかりやすいリスクも背負うので、遠方を見ながら障害物を避けるか鳥に近づくかなど、次の行動を考えて「常に先読みしながら鳥を集めて減らさないこと」が攻略の鍵となる。これを意識することは、先に書いた「鳥の群れが死と隣り合わせで飛び続ける」感覚にも繋がる。
つまり、ゲームの演出・操作・攻略などの要素がすべて「味わう」ことに直結していて、プレイヤーが腕を上げるほど深く楽しめる。これが『GUNTAI』の魅力であり、制作側の意図としたものと思われる。
高すぎた難易度の壁
ただし、その意図は必ずしもプレイヤーに伝わるとは限らず、攻略の部分が極めて厳しいという欠点がある。
鳥の数を増やして速度を保っても、一度でも障害物にぶつかると一気に数が減り失速してしまう。ブーストも一時的な速度アップのみで状況を好転させることは少なく、チェックポイントを通過しながらも次のポイントに到達するのは絶望的でゲームオーバーを待つだけという場面も少なくない。わずかなミスが命取りとなってしまう。初プレイ時はゲームの世界を楽しめるが、高い難易度の壁によってすぐに行き詰まってしまい、それ以上深く味わう地点まで到達できないことが多い。
たとえばブーストを使ったときの速度安定が長時間続いたり、ぶつかった直後は鳥の群れを作りやすくなるなど、失速してもプレイヤーの腕次第で逆転する手段がもう少しあれば、さらに先に進み、深く『GUNTAI』の世界に没入することができたように思う。
そんな不満点を抱えてはいるものの、スマートフォンという画面や操作の部分で制限がある端末にて、『GUNTAI』はミニマムなビジュアルとゲームルールで「制限があるからこその表現」を見せてくれる。高い難易度が壁とはなるものの、『GUNTAI』の世界を味わってみるのも一興である。