PC版『Overwatch』プレビュー。エイミングテクニックとアビリティの駆け引き、仲間との連携で勝利を目指すチーム対戦型FPS
![](https://automaton-media.com/wp-content/uploads/2016/05/overwatch-d-va.jpg)
『Overwatch(オーバーウォッチ)』はBlizzard Entertainment(以下、Blizzard)が開発を手がけるチーム対戦型FPSである。5月3日からは予約購入者を対象とした早期ベータが開始し、5月5日には待望のオープンベータが予定されている。本稿では『Overwatch』のレビューをお届け……と言いたいところだが、本作はまだ未発売であるため、クローズドベータ期間の感想も含めたプレビューをお届けする。なお、すでに弊誌ではインプレッション記事を公開しているのだが、ゲームの感じ方は人によって違うので、それぞれの『Overwatch』だと思ってもらいたい。
リージョンと動作環境について
BattlenetクライアントからリージョンをAmericaにした場合のPingは80~190、Asiaにすると70~150ほど。個人的にどちらを選んでもそこまでPingの差は感じられなかったので、韓国語と中国語が理解できるならAsiaを、英語ならAmericaを選ぶといいだろう。AmericaでもPingが低いときがあるのは、おそらく『Heroes of the Storm』(以下、HotS)と同様に、AmericaリージョンにSingaporeサーバーが入っており、そのときに最適なサーバーに自動で振り分けられているからだと思われる。ラグにかんしては、Ping 120あたりから感じるようになり、Ping 180を超えると着弾に大きな違和感を覚えるようになった。出会い頭の瞬時の判断が勝敗を分かつこともあるので、Americaを主戦場にするのであれば、なるべくPingが低いサーバーに振り分けられることを願うしかない。ちなみに言語設定では、テキストを日本語表示、音声は英語という設定が可能だ
要求スペックは最新のものがこちらで公開されている。32bit OSには対応していないので注意してほしい。
OS: Windows 7 / Windows 8 / Windows 10 64-bit (latest Service Pack)
CPU: Intel Core i3 or AMD Phenom X3 8650
Video: NVIDIA GeForce GTX 460, ATI Radeon HD 4850, or Intel HD Graphics 4400
Memory: 4 GB RAM
Storage: 30 GB available hard drive space
推奨
OS: Windows 7 / Windows 8 / Windows 10 64-bit (latest Service Pack)
CPU: Intel Core i5 or AMD Phenom II X3 or better
Video: NVIDIA GeForce GTX 660 or AMD Radeon HD 7950 or better
Memory: 6 GB RAM
Storage: 30 GB available hard drive space
30fpsで快適なプレイができるかどうかは別として、MMORPG『World of Warcraft』(以下、WoW)が『EverQuest』と戦った際の武器のひとつが「低スペックでも動く」だったので、幅広いプレイヤーが楽しめるようスペックが低いPCでも動作するというのはBlizzardらしいといえる。わたしのPCスペックを書いておくと、CPUはIntel Core i7 860、グラフィックカードはASUS STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5、メモリは16GB。グラフィック設定を最高のEPICにするとfpsは70~100。
繰り広げられるのはシビアな戦い
『Overwatch』に用意されているゲームモードは、攻撃側が荷車を押して制限時間内に最終地点に到達させることで勝利となる「Escort」、攻撃側は二箇所の拠点を制圧することを目指す「Assault」、両チームが一箇所の拠点を奪い合いながら最終的に制圧を目指す「Control」、そして「Escort」と「Assault」を合体させた「Hybrid」の四つ。マップはそれぞれのゲームモードに三つずつ用意されており、合計12種類ある。対戦型FPSの定番であるDeathmatchは、試合開始までの待ち時間に自動で放り込まれる暇つぶし専用ゲームモード「Skirmish」がそれにあたる。
プレイモードは、気軽に遊べる「Quick Play」、練習として機能する「Play vs AI」、高ランクを目指してハイレベルな戦いが繰り広げられる「Competitive Play」(オープンベータでは未開放)、週ごとにユニークなルールが適用される「Weekly Brawl」(『Hearthstone』の「Tavern Brawl」のようなものだと思ってもらっていい)の四つ。正式リリース時にはどうなるかわからないが、クローズドベータのころは「Competitive Play」にレベル制限があったので、最初のうちは「Quick Play」で遊ぶことになるはずだ。
本作のコンセプトやゲームプレイ映像を見た人は、『Team Fortress 2』(以下、TF2)に似ていると感じるだろう。または『TIME SPLITTERS』と言うかもしれない。それは正解でもあるし、間違いでもある。『Overwatch』はどのゲームモードも6vs6という比較的低人数での戦いになるので、チームワークだけでなく各プレイヤーのスキルが存分に生きる仕様になっている。『TF2』のように、エイムに自信がなくてもMedicやEngineerを使えば誰でも主役になれるような“お祭り感”はそれほどないということだ。実際に『Overwatch』の世界に入ってみると、意外にもシビアな戦いが繰り広げられることに驚かされるだろう。
FPS初心者でも遊べるかと聞かれると、YESでもありNOでもある。『Overwatch』はサーバーブラウザからサーバーを選択する仕様ではないので、(おそらく)内部レーティングによってサーバーやチームや対戦相手が自動で決定する。バランスのとれたマッチメイクがされれば初心者でも楽しいだろうし、そうでなければ一方的に負けるだけなので楽しくないと感じるかもしれない。
固有のアビリティを持つ21人のヒーロー
一般的なゲームでは基本攻撃手段とアビリティは別として扱われることが多いが、『Overwatch』ではボタン入力で発動するものはすべてアビリティとなっている。そして登場する21人のヒーロー全員が固有のアビリティを持っており、操作感も大きく違う。
ヒーローによってアビリティだけでなく操作感にも違いがある仕様は、プレイヤーに熟達することの楽しさを感じさせてくれる。
マウスボタン以外のアビリティはQ・Shift・Eキーで使用する。QにはUltimate Ability(以下、Ultimate)が割り当てられており、敵を攻撃したり時間が経過したりすると上昇していくUltimate Meterが100%になったときのみ発動できる。Ultimateは『WoW』でいうところの、効果は高いがクールダウンタイムが長いアビリティをイメージしてもらうといいだろう。または『HotS』のHeroic Abilityでもいい。
Ultimateは、爆破範囲内の敵ヒーローすべてに大きなダメージを与えるTracerのPulse Bombや、プレイヤーの周囲で息絶えてしまった味方たちを蘇生させるMercy のResurrectなど、場合によっては一発逆転できる可能性を秘めるとても強力なものがそろっている。また、味方のUltimateと発動のタイミングをあわせることでよりいっそう強力になるZaryaのGraviton Surge(敵ヒーローを吸い寄せる)などもあり、プロの大会ではハイレベルなチームの連携が披露されるはずだ。
このようなテクニックはサービス開始から時間が経つにつれ誰かが発見し考案し、それを目の当たりにしたプレイヤーへと広がっていく。おそらくみなさんが『Overwatch』を手に入れたときは、Ultimateの強さに驚き、誰にだって活躍できるチャンスがあると思い込んでしまうかもしれない。しかし本作が面白くなるのは、自身のUltimateが封じられたときや、想像もしなかった場所からの射撃を体験してからだろう。それぞれのヒーローの特徴、そして入り組んだマップの構造(ヘルスパックの場所も)を体が覚えたとき、あなたは『Overwatch』の魅力に引きこまれていくはずだ。
しかし残念なことに、そういった読み合いが繰り広げられるプレイモード「Competitive Play」は、オープンベータではプレイできない。なくなってしまったわけではなく、正式リリース時には、リデザインされた「Competitive Play」が登場するようだ。このプレイモードが開放されていない今、クローズドベータに参加していたプレイヤーは、フラストレーションをためながらチームワーク皆無の「Quick Play」を遊んでいるのではないだろうか。
レベルアップのご褒美
Blizzardファンのハートをつかむデザイン
見てのとおり『Overwatch』は完全な新規タイトルである。『Warcraft』『Starcraft』『Diablo』のシリーズタイトルではない。同社にとって初の挑戦となるシューターというジャンルと一人称視点(『WoW』では可能だったが)からも、過去作との大きな違いを感じ取れるだろう。だからといってBlizzardは、ファンを無視しているわけではない。
キャラクターデザインは、どこかピクサーのアニメーションのようでもあり、一見するとBlizzard製の作品とは思えない。しかしローンチ時に登場する21人のヒーローをよく見ると、過去作で人気のあったキャラクターたちのエッセンスが取り入れられている。わかりやすいのはTorbjörnだ。『Overwatch』の世界のなかで、もっともリロードアクションがかっこいい彼は立派な髭をたくわえており、その背丈からも見事なまでにドワーフである。
『Overwatch』を予約購入すると特別なスキン「Noir Skin」が手に入るWidowmakerの腰から太腿にかけるラインはDraenei(Warcraft)によく似ている。そしてスナイパーライフルを巧みに操り色気のある声で「One Shot, One Kill」と発する様はNova(StarCraft)のようでもあり、同セリフと肌の色はNight Elf(Warcraft)を思わせる。
“リュウガワガテキヲクラウ”のセリフとともに、巨大な龍がうなりをあげて突進するUltimate Ability「Dragonstrike」を持つHanzoは、多少強引かもしれないが、寂しい目つきや無造作に束ねられた髪型からVarian Wrynn(Warcraft)に似た男の色気を感じる。
![Hanzoはいつだってきみのそばにいる……(画像のヒーローはReinhardt)](http://jp.automaton.am/wp-content/uploads/2016/03/overwatch-beta-impression-hanzo.jpg)
『Overwatch』に登場する21人のヒーローの中で初心者向けとされているReaperは、不気味なマスクをつけ両手に銃器を持っている。HPも少なく移動速度はスピーディとは言えないが高い火力を持っており、機動力を活かしてハラスメントするさまは、まさに『StarCraft』のTerranユニットReaperである。また、『WoW』の「Valorous Deathbringer Hood」に似たマスクはWarlockをイメージさせるし、相手を倒してライフを回復できるアビリティThe Reapingは、Death Coilとでもいうべきだろうか。
![一見すると強そうだが……。](http://jp.automaton.am/wp-content/uploads/2016/03/overwatch-beta-impression-reaper.jpg)
相手に冷気を噴きかけ最終的には凍結させてしまう基本攻撃や、ピンチになったら自身を凍らせて無敵状態になるCryo-Freezeなど、Meiをファンタジーの世界に登場させるのであればクラスはFrost Mageだろう。Ultimateの効果は『HotS』のJainaのものと似ている。
![右のテーブルにあるゲームは……。](http://jp.automaton.am/wp-content/uploads/2016/03/overwatch-beta-impression-mei.jpg)
ほかにも、そのまま『Diablo』の世界に入れそうな風貌のMercy、フックで敵を引き寄せる巨漢RoadhogはStitches(HotS)、Ultimate Ability「RIP-Tire」でマルチキルが発生するとその場に笑いが起きるJunkratの愛嬌のあるしぐさや行動はGoblinまたはTrollをイメージさせる。すべてのヒーローが、Blizzardの過去作のエッセンスを取り入れているわけではないが、いままでFPSに触れたことがないBlizzardファンに興味を持たせるような工夫が、キャラクターデザインにもあるといえる。
![獅子のロゴとスタジオ名「GOLDSHIRE PICTURES」を見てピンと来る『Warcraft』ファンは多いはず。 こういったネタは、おそらくほかにもあると思うので、探してみるのも楽しみのひとつとなるだろう。](http://jp.automaton.am/wp-content/uploads/2016/03/overwatch-beta-impression-goldshire-picutures.jpg)
こういったネタは、おそらくほかにもあると思うので、探してみるのも楽しみのひとつとなるだろう。
多くのFPSファンを受け入れる操作感
自身がやりこんできたFPSゲームの腕前を完全にそのまま『Overwatch』に生かせるというわけではないかもしれないが、操作感の似たヒーローを選べばプレイ初日から活躍できる可能性はじゅうぶんある。
Overwatchの醍醐味はCompetitive Playにあり