『LUMINES パズル&ミュージック』インプレッション スマートフォンと『ルミネス』のケンカ
人気アクションパズル『LUMINES』(以降、ルミネス)の最新作がスマートフォンに登場した。新曲8曲と初代から厳選した6曲の計14曲で、価格は360円。過去作の販売価格と比較しても大判振る舞いのボリュームだ。また、音響系ミドルウェアCRIWAREを採用し、ゲームとシンクロした音質へのコダワリを見せている。音と光とゲームの一体感はそのままに、スマートフォンならではのプレイフィールを得た「これまでとちがうルミネス」がある。
『LUMINES パズル&ミュージック』
販売: Mobcast
発売日: 2016年7月19日
価格: 360円(追加曲は課金制)
プラットフォーム: Android/iOS
『ルミネス』シリーズは、数多くのハードに移植された実績があるオチモノパズルだ。画面の上から降るブロックを同色2×2に揃えるとブロックが光り、BPMに応じた速度で右から左へ動くラインが通過したときに消える。ブロックが消えたあとに他のブロックが揃う「連鎖」と、揃えたブロックに同じ色をつなげ一度に消す数を増やす「後付け」で得点が増す。
連鎖を組むブロックの積み上げと、後付けを狙う思考の瞬発力が、静と動のコントラストをつくりだす。このプレイフィールに加え、プレイ中に「スキン」が変わるのも見どころだ。スキンは画面・効果音・BGM、そしてライン速度のパッケージである。さまざまな音と光がプレイフィールを味付けし、オチモノパズルから単調さを廃して人気を博した。
スマートフォン向けではなく、ルミネス向けのUIを
本稿は『ルミネス』の名に覚えのあるゲーマーに向け本作の所感を紹介する。最大の焦点は公式サイトにある「UI(ユーザインタフェース)/UX(ユーザエクスペリエンス)」だ。スマートフォンを片手持ちで遊ぶことを想定しており、縦画面にあわせて過去作よりブロックフィールドの横幅が狭くなった。バーを確認する余裕はなくなったが、新たな味付けとして歓迎できる。
操作系は、タップで落下ブロックの回転、スワイプで移動となった。公式サイトに記載はないが、これが本作の最大の変更点である。画面の任意点で入力を受け付け、操作する指で画面が隠れることはない。スマートフォンの片手持ちでプレイできる、ハードウェアにあわせたUIだ。
問題は、それがゲームにマッチしない点である。ブロックはスワイプ時の指の移動先ではなく、移動量だけ動く。これは人差し指だけでバーチャルパッドを操作するよりも苦しい。「移動したつもりが回転する」「回転したつもりがそのまま」といった操作ミスを誘発するのだ。信頼できないタップ&スワイプで正確無比の操作を要求される「貴重」な体験が味わえる。
仮に、画面の一部をバーチャルパッドにしても、タッチパネルの感度というハードウェア固有の問題は残る。本体の感度調整や、保護シート・スタイラスペンといった「周辺機器」でおぎなうしかない。これはアナログ入力(スマートフォン)でデジタル操作(『ルミネス』)を取り扱うことに起因する。
筆者はここで、タップ点の縦軸にブロックを横移動し、同じ場所のタップをブロック回転とする操作系を提案する。これはパッドUI前提のシリーズ作が持つオチモノパズルのゲーム性を曲げるが、操作したい場所を画面上で指定するポインティングデバイスの利点を生かせるだろう。本作の魅力が操作の難しさではなく、音と光とゲームの一体感にあるなら、ゲームとスマートフォンのどちらかが一歩譲るべきだった。
過ぎ去りし日々の残光
『LUMINES パズル&ミュージック』は過去作の追体験にとどまらない新要素がある。ステージ構成はスキン集のアルバムとなり、次の曲を聴きたいというモチベーションを生み出した。世界旅行をイメージした新曲アルバムはテーマが分かりやすくメロディアスだ。その最後を飾る「Universe」をクリアした達成感は、楽曲アルバムを完聴した充実感と一体になろう。
だが、タップ&スワイプによるパッド操作は、新たなプレイフィールの感動よりも不快感が大きい。ゲームとプレイヤーをつなぐUIの信頼性が低く、音・光・コンボに没入できなかった。ブロックの落下が速い高難度面は、UIを由来とするミスで残ったブロックが山のように積み上がる。プレイ後の余韻は、本当ならもっと上手にやれたという後悔が大きい。率直な感想は、「スマートフォンと『ルミネス』のケンカに巻き込むな」だ。