ノルウェーが生んだ2Dリズムアクション『Klang』登場。EDMとネオンブルーの世界へトリップ


2016年9月23日、SteamにてPC向け2Dリズムアクションゲーム『Klang』がリリースされた。開発はノルウェーのインディーデベロッパーTinimations、パブリッシャーはSnow Cannon Games。価格は1,480円で、別途サウンドトラックが798円、ゲームとサウンドトラックがセットとなった『Klang: Soundtrack Edition』が2,278円で販売されており、それぞれ9月30日まで期間限定で20%割引中。

ネオンブルーを基調としたビジュアルはサウンドトラックのEDMとマッチしている。

 

右手でリズム、左手でアクション

リズムゲームと2D横スクロールアクション。どちらも瞬時の判断と正確な操作が求められるジャンルだ。本作ではそんなジャンルの性質を生かし、リズムを取りつつジャンプやスライディングでステージを飛び渡るという合わせ技で、プレイヤーのスキルを試してくる。

プレイヤーが操作するのは、チューンブレードという武器を持った音楽兵士Klang。敵の攻撃は音楽のリズムにあわせて飛んでくるので、音とビジュアルを頼りにチューンブレードの射程範囲に入った攻撃をはじき返していく。8方向から押し寄せる敵にあわせ、キーボードの方向キーまたはコントローラの右アナログスティックでビートを刻むのだ。

キャラクターの周りに表示されるメーターがフルになるタイミングで敵の攻撃を打ち返す
キャラクターの周りに表示されるメーターがフルになるタイミングで敵の攻撃を打ち返す

ゲーム後半のステージになると、敵の攻撃をはじき返すだけでなく、上下左右から放たれるレーザーや音波型の波動攻撃をジャンプとスライディングで避け、足場を移動しながらリズムを取ることになる。右手でリズムゲーム、左手でプラットフォームアクションを同時進行するイメージだ。脳から左右の手へと別々に指令を出しつつ統制を取る、トリッキーなマルチタスクゲームとなっている。

 

開発者1人、作曲者1人

Tinimationsの開発チームはTom-Ivar Arntzen氏ただ一人。楽曲以外はすべて一人で開発を担当した。Arntzen氏は動画インタビューにて本作が生まれた経緯を語っており、まず「今までのリズムゲームからは、タイミングよくボタンを押す以外のゲーム性を見出せなかった」という。その一方で『God of War』『NINJA GAIDEN』『Devil May Cry』といったアクションゲームには素晴らしいサウンドトラックがあるものの、BGMとしての役割しか果たしていない。アクションの中でもっと音楽を生かせないものか。そこからリズムゲームとアクションゲームの2つの世界をブレンドする方法を考え始め、『Klang』が誕生した。

本作との比較対象として、リズムゲームと2DローグライクRPGの融合を図った『Crypt of the NecroDancer』が挙げられる。基本的なゲームプレイは、ビートにあわせて方向キーを入力し1マスずつダンジョンを移動。モンスターとの位置関係に注意しながら、タイミングよく攻撃するというもの。ローグライクRPGという本来展開がスローなジャンルと、ハイスピードなリズムゲームが交わって、理想的なグルーヴ感で音楽に乗れる作品となった。対して『Klang』はリズムとアクションというハイスピード同士のハイブリッド。右手と左手で別々に精密操作を続け、必死に音楽を追いかけることになる。『Crypt of the NecroDancer』の比ではない順応力が試されるのだ。

ステージの最初から最後まで敵との戦闘が続くわけではなく、途中には『ロックマンX』シリーズのような、ジャンプと壁ジャンプを利用した移動アクション重視のエリアもある。こちらもタイミングが何よりも大事。ベーシックなアクションに、Klei Entertainmentの『Mark of the Ninja』に影響されたというテンポのよいステルスがミクスチャーされている。そして各ステージの最後で待ち受けるボスは、それぞれユニークな攻撃パターンを持っており、順々に難易度が増していくレベルデザインとなっている。ハードコアな2Dアクションを好む方にとっても、歯ごたえのある内容だろう。

 

移動アクションも豊富
移動アクションも豊富

メインストーリーは3~4時間でクリアできるが、そこからが本番といって良い。各ステージで「クリア時間、死亡回数、コンボ継続回数、入力成功率」のハイスコアを狙い、新しいステージをアンロックしていく。難易度もカジュアル、ハードコア、ナイトメアと三段階用意されており、リズムゲームらしいリプレイバリューがある。サウンドトラックは34曲。コンポーザーを担当したのはEDMアーティストのbLiNd氏。ゲームのステージデザインよりも、サウンドトラックの方が先に完成したため、音楽とマッチするステージ構成が実現できたという。

 

爽快感はないが、達成感はある

ここまで本作の魅力を述べてきたが、リズムゲームと2Dアクションの融合による弊害もある。2つのジャンルを同時にプレイする感覚は新鮮だが、リズムゲームの爽快感が犠牲になっているように感じた。音楽だけに集中できないからだ。タイミングを取りながらも常に他の動作をしているため、音にあわせてボタンを押すというプリミティブな心地よさは薄れる。

高難度への挑戦よりもサウンドトラックを聴き入ることに集中したい場合は、低難度のカジュアルモードを選択することができる。また初心者救済措置として、敵の攻撃を受けた際、一時的に時間をスローダウンさせる設定もあるが、曲のペースが早いステージで使うとリズムが崩れる可能性があり、好みが分かれそうだ。

開発者1人、作曲者1人で製作したタイトルということもあり、まだ広く認知されていないが、高難度の2D横スクロールアクションを好む方には、一見の価値がある作品だろう。

 


元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)