『Wayward Souls』16-Bitローグライクアクション
『Wayward Souls』は、16-Bit風なグラフィックが懐かしい気持ちにさせる、見下ろし型のローグライクアクションです。2014年6月18日時点では、iOS版のみリリースされています。開発を手がけたRocketcat GamesのプランナーKepa Auwae氏は、『Spelunky』『Dungeon Crawl: Stone Soup』『ダークソウル』などが好きということで、それらに影響を受けた難度の高い作品です。ちなみに本作はRocketcat Games が2011年にリリースした、『聖剣伝説』風アクションRPG『Mage Gauntlet』のスピンオフタイトルですが、物語の背景などを知らなくても問題ありません。
本稿はバージョン1.00をiPad 4でプレイしたインプレッションになります。
個性的な6名のキャラクター
3つのダンジョンに、個性的な6名のキャラクターが挑みます。近接攻撃を得意とする"Warrior"、背後からの攻撃にダメージボーナスが付く"Rogue"、数種類の魔法を使い分ける"Mage"の3名が初期キャラクターで、残りの3名はダンジョンをクリアするとアンロックされます。体力も多く投げオノを使った遠距離攻撃もできるWarriorは初心者向けですが、正確な操作でヒット&アウェイを繰り返さなければならないMageやRogueは、少々玄人向けといえます。
それぞれのキャラクターに物語が設定されており、戦闘スタイルやアビリティも違うため、最低でも6周遊べるようになっています。よって、モバイルゲームにありがちな「購入後1~2時間で遊びつくしてしまった」ということになりにくいでしょう。
一筋縄ではいかないダンジョン攻略
『Wayward Souls』のダンジョンはランダムに生成され、おとずれるたびに違った表情をみせます。フロアは扉で区切られた複数の部屋で構成されており、部屋に入ることで扉にロックがかかり、ほぼすべてのモンスターを倒さないと扉が開かない仕組みになっています。こうしたルールのせいで次のフロアへと移動する階段に到達するためにはモンスターと戦い続けるしかなく、たとえ毎回ダンジョンの構造が違ったとしても、若干単調に感じられてしまいます。ランダムで発生するイベントなどもありますが、仕掛けを解いて扉を開けるなどのパズルや、リスクを回避して逃げるといった戦い方ができれば、もう少し新鮮さを感じながら遊べたのではないでしょうか。
ダンジョン探索といえば、宝探しも醍醐味の1つでしょう。ダンジョンには宝箱が出現し、まれにスカルマークが付いたレアな宝箱も出現します。ただし、なかから光り輝く伝説の武具は手に入りません。手に入るのは装飾アイテムである「Hat」、使いきりのアイテムやコインばかりです。過酷なダンジョン探索のなかで、プレイヤーが笑顔になれる瞬間は、クリアしたときと「Hat」を手に入れたときだけでしょう。
「難しい=遊びたい」ではないと思いますが、リプレイ性の高さを"ウリ"にする『Wayward Souls』の難度はけっして低くありません。先へ進むほど敵の攻撃は弾幕系シューティングのように激しくなり、最後のダンジョンは1階の階段にたどりつくことすら困難です。この難しさはプレイヤーを強くつきはなし、「次はクリアできるかもしれない」といったわずかな希望すら感じさせてくれません。
また、タッチデバイスだからしかたがないこととはいえ、誤操作に悩まされるケースも頻発します。ゲームパッドであればいつでも攻撃を繰り出せるよう対象のボタン上に指を置いたままにできますが、タッチスクリーンではそうはいきません。各キャラクターが持つアビリティを使用するためのスワイプ(右手の親指で上下入力)が、想像以上に難しいのです。また、1つのダンジョン攻略にかかる時間が長いため、長時間のプレイで指は汗をかき、さらに誤操作が起こりやすくなります。タッチスクリーンでの操作に慣れていない方は、理不尽に感じる死を何度も経験することになるでしょう。
操作性にかんしては個人差があるとしても、アビリティはスワイプではなくボタン操作にするなどの工夫は必要だと思います。画面にバーチャルパッドやボタンを表示し、ビジュアルを汚したくないという気持ちはわかりますが、操作の快適さのほうが大切なのではないでしょうか。
前述したように、武器や防具を宝箱から手に入れることはできません。そして、アイテムショップも存在しません。といっても、武具を変更できないというわけではありません。アイテムショップの代わりに、武器や防具を鍛え上げて強化する「Forge(鍛冶場)」がダンジョンに登場します。ただし、「Forge」で手に入る装備はクセが強いため、初期装備のまま進むほうがダンジョンを攻略しやすい場合もあります。
わずかな成長要素
『Wayward Souls』には、攻撃力や防御力といったステータスがありません。ライフは赤いバーで確認できますが、数値では表されません。また、経験値を獲得してレベルが上がるといったRPGならではの成長もありません。キャラクターの育成は、ダンジョンで手に入るコインを使ったアップグレードのみです。このアップグレードでは、エネルギーの回復速度を速めたり特定のアイテムのドロップ率を上昇させたりと、キャラクター自身の"強さ"を成長させるのではなく"特徴"を伸ばすという性質になっています。
コインはたまりにくく、キャラクターをアップグレードするのも一苦労です。また、最大までアップグレードしたとしても、それほど強くなりませんので、アクションが苦手でもキャラクターが育てばクリアできるというゲームバランスではありません。モバイル向けの作品なのですから、もうすこし初心者を救済する工夫があってもよかったのではないでしょうか。
デスペナルティは軽め
"死"にはペナルティがあります。といっても、最大HPが減っていくとか、キャラクターが消えてしまうといった強いペナルティではありません。ダンジョンで手に入れたアイテムを失うだけで、コインやキャラクターのアップグレードはそのまま引き継がれます。ですから、何度死んでも気にすることはありません。ただフラストレーションがたまるだけです。
一度ダンジョンに入ると、死ぬかダンジョンをクリアするまでキャラクターをアップグレードすることはできません。これは『Rogue Legacy』に似ているといえば、イメージしやすいかもしれません。
『Wayward Souls』の魅力
何度も挑戦と失敗を繰り返したところで、キャラクターはいっこうに強くなりません。もっとも重要なのは、プレイヤー自信の腕前の成長です。敵の行動パターンを覚え、常に1vs1の戦闘になるよう意識しなければならず、RPGというよりもどちらかといえばアクションゲーム色が強い作品です。どこか『ダークソウル』を思わせる戦闘バランスは、困難に立ち向かうことが好きなプレイヤーからすればリプレイ性が高いと感じられることでしょう。逆にたとえば『Diablo III』のような爽快な戦闘や、キャラクターが(すくなくとも序盤は)みるみる強くなっていく快感のあるアクションRPGが好きならば、おそらく2つめのダンジョンで挫折を味わうことになるはずです。
グラフィックやサウンド、キャラクターの見た目を変える「Hat」集めなどからはRocketCat Gamesならではの魅力を感じますが、PCや家庭用ゲーム機向け作品のなかからアイデアを寄せ集めただけという感じもまたいなめません。人気作品からアイデアを得ることはいいことですが、Rocketcat Games が2011年にリリースした『Hook Champ』や、2012年にリリースしたMadgardenとの共同開発作品『Punch Quest(日本はAndroidのみ)』などとくらべると、独創性が高いとは評価できないというのが正直なところでしょう。
しかし、敵の攻撃パターンやキャラクターの長所と短所を覚え、繰り返し遊ぶうちにゴールへ近づくというアクションゲームの面白さを持つ『Wayward Souls』は、「iOSゲームのなかでは」抜きん出ています。今後こういったゲームが多数登場するならば、MFiコントローラーの購入を検討してもよいかもしれません(ただし本作はMFiコントローラーいまのところ未対応)。
Rocketcat Gamesは、大型のアップデートを配信するたびに『Wayward Souls』の価格を1ドルずつ値上げすることを発表しています。ダンジョンの追加や各キャラクターの能力調整を含むアップデート第1弾は配信済み、ゲームコントローラーへの対応は第2弾です。第3弾ではダンジョン内にアイテムショップが追加されるとのこと。また、AndroidやPCへの対応も計画されています。