【本スゴ 2】 PS2『真・女神転生III-NOCTURNE』シリーズ

記者が昔プレイした、本当にスゴかったゲームを紹介するコーナー、自称略称”本スゴ”。聡明なる読者諸氏の一部にはご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、続き物です。

第2回となる本稿でとりあげるのは、 PlayStation 2 向けにアトラスから発売された『真・女神転生III-NOCTURNE』(以下『真3』と総称)シリーズです。

筆者にとって、100点をつけられるゲームはセガ『SPIKEOUT』だけです。そう言い切ってしまう手前いきなり完結してしまった感がありますが、もちろんスゴかったゲームは他にも両手で数えられないほどにはあります。その内の1つが『真3』。

じつは本稿が書かれたのは今年3月頃。5月発売予定だった『真・女神転生IV』(『真4』)を応援する目的で第2弾にもってきたのですが、ゲーム業界にしばしば発生する超自然的現象である「大人の事情」「諸般の事情」でボツになっていました。しかし、それも諸々の流れを踏まえ「時効」であると判断し、ここに掲載します。ただし、なにしろ最初に書かれたのが半年以上前ですので複数の修正を加えてあります。

なお、複数のスクリーンショットを各動画サイトに投稿されている作品から切り出して使用しております。本来であれば自前で撮影すべきところではありますが、収録されたデータを見つけ当てるのが難しかった(自分でプレイしたゲーム動画はすべて録画しているが、リネームをまともにしていなかったためどこに『真3』があるかまったく判別できなかった)ため、そうした措置をとりました。あらかじめご了承ください。

【プレイ時間】 約200時間
【プレイ状況】 複数周回(難度HARD) 、北米版クリア済、 各種やり込み動画視聴等
【プレイ環境】 PlayStation 2(国内・北米)
【プレイした関連作品】 多くの女神転生系列作品

 

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真4について

 

最初に誤解なきように強調します。『真4』より『真3』のほうが優れているといった意図は一切ありません

 

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見ての通りのプレイ状況です。エンディング全制覇、DLC も嬉々として購入しまくり、ついでにバッドエンドタイムアタックなんてものもやりました。試走もなにもしない雑なプレイでしたが3時間50分ほどでクリアできた記憶があります。

『真4』は素晴らしい作品でした(突っ込みたくてしかたのない部分も少しばかりありましたが)。ゲームもグラフィックもサウンドも、現代 JRPG の最高水準だったと評しても過言ではありません。しかし、「本当にスゴかったのか」を判断するには時期尚早です。筆者が考えるに、総合芸術としてのゲームの評価が固まるには最短で3年、長くて5年以上かかるものです。

今、『真4』が傑作だったかを過去形で語るべきではありません。DLC 配信が完結したからといってゲームが、そしてゲームプレイヤーが終わったわけではありません。今しばらくの時間をおいたのち、振り返って「ああ、あれはスゴかったんだ」と解釈するのが本連載の趣旨です。したがって、『真4』はフレッシュすぎるのです。まだ相対評価することすらできません。

繰り返しますが、『真4』の完成度に疑いようはありません。シリーズファンはもちろんのこと、「メガテンってなんだか難しそうで……」と敬遠していたライト層にも十二分にお薦めできます。具体的に何がどうよかったのか、はまたいずれ語る機会があるかもしれません。

 


『真3』とは – 複数のバージョン

 

『真3』ってなんだか新しくないか?と思われる方向けにまずおさらいです。本作が発売されたのは2003年。『2』の後には『if…』や『ペルソナ』シリーズ、『デビルサマナー』シリーズなどがリリースされていましたが、ナンバリングタイトルとしてはじつに10年ぶりの最新作でした。一昔です。

 

『マニクロ』の影響は小さくない。
『マニクロ』の影響は小さくない。

その後、『真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス』(以下『マニアクス』)が2004年にリリース。様々な追加要素が加えられたバージョンです。大きな変更は、コラボキャラとして『DMC』の”ダンテ”が登場すること・ダンジョンが追加されたこと・それに合わせてエンディングが増えたこと・各種バランス調整がなされたこと。この“調整”が最大の特徴で、「NORMAL」モードと「HARD」モードが選択できるようになりました(後述)。

『マニアクス』は出荷本数が多くなく、一時は5桁の大台に乗るプレミア価格がつきました。後々になってからその高い評価を知っても時すでに遅し。しかし、2008年には救いの手が差し伸べられました。『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』の初回特典に『真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション』(以下『マニクロ』)が付属されたのです。

『マニアクス』と『マニクロ』の違いとしては、まず諸々の理由から”ダンテ”が”ライドウ”に差し替わり、セリフ周りが矛盾の発生しない範囲で一新されています。その他には、一部のスキル性能や設定に変更がありました。たとえばゲストキャラのスキル「永世ライドウ」(元「父の名に誓って」)が強化された、ラスボスの強力な攻撃に特殊効果が付与されたなど。普通にざっくりプレイする分には大差なく、やり込むにあたっては大きな違いになりうる、じつに繊細な味加減でした。

比較的手に入れやすかった『マニクロ』により真なる『真3』の面白さが人口に膾炙することになります。かく言う私もじつはまともにプレイしたのは『マニクロ』からでした。昔、友達から借りて無印版をプレイした際、「なんか合わない」ですぐに投げ出してしまったのです。今よりもっと頭が硬かったのでしょう。

 


『真3』が成し遂げたこと – 破壊と創造

 

主人公”人修羅”。アトラス、ノクタン、アトムなど。
主人公”人修羅”。アトラス、ノクタン、アトムなど。

『真3』は連綿と受け継がれてきた『女神転生』のDNAをいくつかバッサリと放棄しました。筆者も含めたシリーズファンを最も驚かせたのは、やはり一人称視点ダンジョンを廃し、三人称移動にしたこと。発売当初からファンの間では驚きが共有されていたと聞きます。

また、バトルパートもガラリと変わりました。グラフィックは3D調になり、そして何よりも強大な「プレスターンバトルシステム」が採用されました。一口で説明してしまうならば「1回行動するとアイコン消費、攻撃を回避・無効化された場合も消費、弱点をつくとボーナス」です。一見シンプルですがその実態は極めて奥深く、のちのアトラス作品にも採用されるか、少なくとも影響を与えたシステムです。

主人公が人ではなく悪魔になったのも過去作とくらべて大きな違いです。世界観に与えた影響は言うに及ばず、ゲーム部分もがらりと変わりました。今までは悪魔召喚と物理攻撃が主だった肉体派のヒーローが、魔法は使うわ火は吐くわ雄叫び上げるわのゴリッパなアクマへ変貌したのです。また、『メガテン』の暗黙の約束だった”即死魔法「ハマ」を主人公は食らわない”はルールに則り覆され、序盤でいきなりザコに一撃のもとに葬られタイトル画面送りを食らったプレイヤーは、きっと皆乾いた笑いを漏らしたはずです。

舞台はあいかわらず東京ですが、今回はミサイルを叩き込まれて終わった世界ではなく、なんと東京が”受胎”。詳述はストーリーの根幹にかかわるため避けますが、やはり終わっています。ただ、いずれにせよ崩壊した世界を描くにあたり、「核攻撃を受けて崩壊した」という、いうなれば安直な叙述を採用せず、それでいて『メガテン』らしさを失わなかったのは驚くべきことでしょう。

 

ゲーム開始10分後くらいにさらりと解説される超世界。
ゲーム開始10分後くらいにさらりと解説される超世界。

世界の描写は細かく、ニッチなマニアを満足させるに足るものです。『マニクロ』追加ダンジョンに「第5カルパ」まであることなど、深読みさせてくれる表現も随所に仕込まれています。細部を紐解けば、製作者の細かいウィットを感じ取れることでしょう。ネーミングセンスもいわゆる中二的な水準を超越しています。ループ状の迷路に「永遠の12m」と銘名できるクリエイターが世界に何人いるでしょうか?

まとめると、『真3』が成し遂げたのは「破壊と創造」です。物語としてだけではなく、シリーズタイトル・ナンバリング作品として、過去を継承しつつ適度に壊し、組み換え、新しいものを創り上げる。これがいかに困難なことか、長い間ゲームに親しんでいれば実感として共有できるでしょう。キャラクター単位で新しい風を吹き込むことは時折見受けられますが、世界の軸ごと、システムごと動かした事例はそれほどないはずです。こういったほとんどミューテーションのような(そして成功した)フランチャイズとして筆者がパッと思い当たるのは『バイオハザード4』くらいです。

 


ムズい – 絶対に決定ボタンを連打させない

情け無用。クリティカルが出ればすぐにパト(全滅)。 2つ目の戦闘です。[出典: Youtube]
情け無用。クリティカルが出ればすぐにパト(全滅)。

2つ目の戦闘です。[出典: Youtube]

難しい難しいといわれる『メガテン』シリーズにあって、『真3』もまたその味付けにブレはありません。バトルシステムを刷新してなお「らしさ」は失われなかったのです。では間口が狭いのか?となると、『マニアクス』で難度をNORMALとHARDに分けることにより、不慣れな人への導線としています。ただし、『真3』の魅力はやはりHARDにあると言い切って過言ではないでしょう
(両者の相違はじつに機械的なパラメータ設定はじめ単純なものなので、今から『真3』をさわろうという方は基本的にHARDから入ったほうが楽しめるはずです。)

そして、その魅力のなんたるかをを雄弁に物語るのはチュートリアル戦闘にあたる、最序盤の戦闘。”幽鬼 ガキ”戦です。名は体を表し、さらに外見的にも非の打ち所のないまでのザコなのですが、この一匹の悪魔が地獄の一丁目を紹介してくれます。プレスターンバトルの原理原則、攻撃ミスやクリティカルはしばしば発生すること、そしてそれらが文字通り致命的であること、しかるにすぐにゲームオーバー・タイトル画面送りになること。よくある和製RPGのように決定ボタンを連打していたら即死することは、あっという間に理解できます。

 

ゲーム史屈指の濃密チュートリアル空間「謎の場所」。 その正体がわかるのはずっと先です。
ゲーム史屈指の濃密チュートリアル空間「謎の場所」。

その正体がわかるのはずっと先です。

引き続いての第3戦もチュートリアルにあたるのですが、これもまた容赦がありません。「引き際を誤ると死(直前に回復ポイントがある)」「戦闘中、回復を怠ると死」「半アイコン(クリティカルなどで発生)を軽視すると死」「戦闘員数が足りないと死(にやすい)」など。『真3』バトルシステムの基盤を、僅か2回の戦闘で、しかも言外に説明しきってしまったのです。あるいはこうしたスタンスを無茶振り・投げっぱなしととる意見もあるでしょう。しかし、『メガテン』とは何かを踏まえると適切な判断だったと感じます。

今やチュートリアルが雑なゲームのほうが少ないでしょう。どんなタイトルでも「Aボタンを攻撃しよう。次はBボタンで武器をスイッチだ。Cボタンではスキルが使えるぞ。最後に、Dボタンでインタラクトだ、忘れるな。」(一例)なご時世です。それが必ずしも悪いこととは思いませんが、プレイヤーをゲームへ誘うにあたり今ひとつ創意工夫が足りない感も否めません。一方、かつて『スーパーマリオブラザーズ』1-1冒頭のブロックや敵などの配置を引き合いにレベルデザインの在り方が議論されていたときがありました。事の優劣はともかく、『真3』が採用したのは、後者です。文章ではなく、プレイを通じてゲームを語る。「『メガテン』らしい」恐るべき導入部でした。ゲーム史上に残る最凶のチュートリアルです。

 

2戦で説かれた中核は、もちろん深奥に到達したわけではありません。様々なスキルや魔法が用意され、主人公の成長やスキル習得をはじめ不可逆な要素もあり、「一周プレイしてはい終わり」で済まさない面白さを醸し出しています。

ターン制RPGにおけるバトルの面白さは単純なようで、とても一言では片付けられません。リソース配分やダメージ計算、ルール上の強弱関係など、色々とあります。ですが、あえて『真3』の面白さの本質へシンプルに迫るとすれば、「補助魔法」(カジャ・ンダ系)に一側面があるとして間違いないでしょう。

 

バフをかけてスキルで殴る。
バフをかけてスキルで殴る。

 

最強の(補助)攻撃「ランダマイザ」、敵の能力すべてを下げる。 そのインパクトはあまりに強く、のちの『メガテン』系作品でも頻出。[出典: Youtube]
最強の(補助)攻撃「ランダマイザ」、敵の能力すべてを下げる。

そのインパクトはあまりに強く、のちの『メガテン』系作品でも頻出。[出典: Youtube]

かつて補助系スキルが重視されたRPGは山ほどあります。説明不要の『ドラクエ』ならばバイキルト・スクルト・ルカニが大正義であることは衆知の事実ですし、そもそも『メガテン』シリーズでは補助魔法は伝統的に強力です。それでも、『真3』の補助魔法の存在感は圧倒的でした。楽に敵を倒せるかどうか、といった次元にはなく、そもそもゲームをクリアできるかどうかといったくらいの危険度です。たった一度のラクカジャ(味方全体の防御力アップ)が生死を分けることはザラ。そうした絶妙のさじ加減とプレスターンバトルの相性は空前のものでした。

事の深刻さを説明するにあたり、個人的に一番分かりやすいと思うのが『マニアクス』から『マニクロ』にかけてなされたラスボスの調整。「初めに闇ありき」というスキルに、補助魔法解除(デカジャ)の特殊効果が付与されたのです。最後の最後、威厳に満ちた例のボスの最終攻撃によりにもよって追加されたデカジャ。逆説的にとらえると、いかに補助魔法が重要なものなのかがよくわかります。

 

充分に発達したRPGはパズルと見分けがつかない (アトラス第3法則) 寝てアボイドスリーパで避けると最初に気付いたプレイヤーは誰だったのでしょうか。[出典: Youtube]
充分に発達したRPGはパズルと見分けがつかない (アトラス第3法則)

寝てアボイドスリーパで避けると最初に気付いたプレイヤーは誰だったのでしょうか。[出典: Youtube]

ゲームバランスとは抽象概念です。ただ、共通認識として「ひどいゲームになりかねないギリギリの一線を超えず踏みとどまる」ことが”良いゲームバランス”の一要素たりえましょう。ただ難しくするだけではない、さりとて噛み砕き過ぎもしない。しかし中途半端ではなくピーキーさも兼ね備える。そうしたバランスこそが文字通りのゲームバランスでしょう。

『真3』のゲームバランスは絶妙でした。それが計算しつくされた狙い通りの成果物なのか、偶然の産物なのか、そんなことは瑣末な事柄です。問題を解くような快感、一手の重み、絡まる運の要素。『真3』のバトルは古きと新しきを交えた21世紀のRPGの指針として今なお燦然と輝いています。キャラクターの「弱点」が本当に「弱い」作品は、存外少ないものです。

なお、このシステムを突き詰めきったのが後に発売された『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』の隠しボス戦。こちらについては面白いかどうかの議論はさておき、パズルゲームも真っ青の「詰めバトル」は『メガテン』ファンならば誰しもが知る語り草です。

 


魔的な演出 – 簡にして要を得る

 

『真3』のビジュアルは決して豪奢なものではありませんでした。他の大型和製RPGと比較すれば、質素だったと表現しても差し支えないでしょう。長大なムービーやメッセージスキップ連打シーンはほとんどありません。しかしながら、それが体現したものは驚くべきスケールでした。プレイヤーが放り込まれる末法的空間は、意外にも簡潔なグラフィックスで演出されきっていたのです。

これが格好良いんです。 短くて、淡白で、静謐で。[出典: Youtube]
これが格好良いんです。

短くて、淡白で、静謐で。[出典: Youtube]

 

表現技法について個別に語り始めるとキリがありませんが、最も如実に表れたのがバトルシーンのエフェクトです。攻撃力に比例してスキル名とキャラのダンスが長大化しがちな傾向があるなか、『真3』は真っ向から反逆してみせました。主人公の最強攻撃スキル候補の1つ”至高の魔弾”すら5秒足らずです。長台詞もなく、何を言っているのかわからない掛け声だけ。しかし、それを観て「弱そうだ」と感じたプレイヤーがいるでしょうか? まさしく、至高の絵面でした。『スパイクアウト』の”C4″もそうでしたが、最強の攻撃はやはり、大上段からただ振り下ろすだけの無駄を削ぎ落した一太刀であるべき。そういう宗派があってもよいのではないでしょうか。

また、そうして虚飾を廃することにより、戦闘のテンポはきわめて良好となっています。長時間プレイすることになるRPGで、最上位に位置するといってもかまわないくらい大切なことです。そして、『真3』はその精神に則り、バトル以外の部分でもじつにテンポ良く設計されています。メニューへの遷移、回復の連打、バトル画面からフィールド画面への遷移、いずれもストレスを感じさせません。

筆者にとって最高の攻撃「至高の魔弾」。 名前負けしない威力と、極限まで削り落とされた最小にして最大の演出。[出典: Youtube]
筆者にとって最高の攻撃「至高の魔弾」。

名前負けしない威力と、極限まで削り落とされた最小にして最大の演出。[出典: Youtube]

 

シリーズ伝統の天使と悪魔を区別しない世界観も健在でした。名称的にも外見的にも天使な方々が好き放題しゃべっていったあとに「悪魔たちは去っていった」とナレーションが入った瞬間、爆笑すると同時に戦慄が走ったものです。

遠回しでもなんでもなくモロに斬り込んでいくのが『メガテン』シリーズ、その善し悪しは未知数です。『Minecraft』のNotch氏は、異世界を命名するにあたり宗教的な色が出ないよう「Hell」などの呼称を避け「The Nether」に着地させました。元来であれば、それが当然といえば当然です。しかし、何故そうすべきなのか?といった無垢な疑問に合理的な回答を提示できる人は少数派でしょう。ただ悪戯に刺激するのではなく、まるで誠実な一石を投じるがごとき『メガテン』は貴重な存在であり続けています。

また、金子一馬氏発祥の「悪魔」新解釈の命脈は続いており、さらに進化すらしています。雷神”トール”が「ダーイ!」と叫びながらハンマーを振り下ろす様相、妖精の女王”ティターニア”が「アユレディ?」と艶美に魔法を唱える様などなど、なかなか無茶をしてくれています。

ネットの海を漁ればいくつか出てくるイメージイラストなどには、『真3』らしさ・『メガテン』らしさが凝縮されすぎて危険水域です。海外ファンらによっても拡散されているため、ことの是非はともかく探せばすぐに出てきてしまいます。ぜひ一度戦慄してみてください。

こうした流れについて、日本は八百万の神々だから云々、といった説明で淡白に処理するのは無理があります。ちょっと『2』ではやりすぎた感もありましたが、それすらも『3』できちんと受けきり消化・昇華したのです。トゥルーエンド(といっていいでしょう)の最後、わずか数分のムービーと数十行のテキストで打ち震えないメガテニストはいません。ついでにいうと、ダラダラとしたエンディングを好むメガテニストもいないでしょう。

あまり関係ありませんが、筆者が個人的に一番好きな『メガテン』シリーズのエンディングは『真・女神転生 デビルサマナー』です。

 


メガテンの音楽 – 目黒将司ここにあり

 

『メガテン』といえばロック調BGMです。筆者は小学生のころ、アトラスの名物広報”流星野郎相原”氏のAMラジオ番組と、FC『女神転生』の楽曲を敬愛して育ちました。よくわからないうちにサウンドトラックCDも両親にねだり購入(どう理由付けしたのか今ではまったく思い出せません)。ですから、「『メガテン』といえば増子司」くらいの印象を持っていました。

数百枚あるゲームサントラの中から辛うじて発掘できた連中。
数百枚あるゲームサントラの中から辛うじて発掘できた連中。

 

そして月日が経ち、『真3』をプレイし、メインの作曲が目黒将司氏だったことを知ったとき、随分と驚きました。違和感がなかったからです。

たしかに増子氏と目黒氏の曲調は聴き比べれば異なります。目黒氏は『真3』の段階で、『ペルソナ3』の「ベイベベイベベイベベイベ」こと”Mass Destruction”の片鱗があります。しかし、あくまでもそれは断片です。つまり、メガテンは『2』から『3』へ、増子から目黒へ、驚異的なバトンタッチをしてのけたのです。世界観の僅かな揺らぎとともに、それはすんなりと受け入れられました。もしここまで計算されていたのならば、旧アトラスの製作チームはもはや人類ではありません。

ゲームは総合芸術です。プログラム・グラフィック・サウンド。その一翼までもが、フランチャイズの個性を維持しつつもゲームシステムとともにあっさりと変更されていたことにすぐ気付いた人が当時どれだけいたでしょうか? マニアにとってはともかく、あまり人材が矢面に立たないフィールドであればこそ、この事実は注目に値します。

目黒氏の作曲と増子氏の作曲、優劣をつけることなど愚行の極みです。『初代メガテン』の”Explorer”と、『真3』の”ギンザ”を比較して何になりましょうか。どちらも等しく女神転生らしく、女神転生を表現した楽曲です。

が、あえてどれか一曲という問を投げかけられたならば、筆者は『真3』の”通常戦闘”と応えます。iTunesでの再生回数は数千回。理由は語り始めたらきりがありません。簡潔に3点にまとめると、ゲームミュージック最大のテーマの1つ「ループ処理」にこだわっている・『アバチュ』で怨念のように長時間聴いた・「人修羅」のテーマたりうる曲はこれしかないから、です。こればかりは四捨五入で十割主観です。

 

 

ループのバリエーションはサントラに収録されていません。

 

未練がましく次点を挙げると”最後の戦い”。閣下によるボルテクス界最強のデコピンを連想させる威厳に満ちた7拍子です。

 


遊び方あれこれ – 今なお遜色なし

 

人気と魅力のあるゲームはたいていやり込むプレイヤーが発生します。奥深いゲームなら尚更です。而して『真3』にも狂信者寸前の方がいらっしゃいます。 まずお約束なのがRTA。Peercastやニコニコ生放送などで配信した豪の者たちの記録はおおむね13時間~15時間。現状ご紹介できる動画が残念ながら見当たりませんでしたが、ときおり広大なネットの海のどこかで丸一日投入して閣下に(運ゲーを)挑む方を見かけます。素材が素材だけにチャートは『ドラクエ』シリーズのように煮詰まっていないようですが、半日以上『真3』なる学問に挑む修羅の姿は観るものを惹きつけてやみません。

そして、個人的にマストなのが「ナラビのコトワリ」シリーズ。『真3』以降の悪魔合体スキル継承システムを徹底的に活用し、『Wizardry』のキャラメイクのような○×ゲームなどを展開。「美しいスキルの並び方」だけを追求する、神秘的プレイングです。地球上でも人口はたぶん両手で数えるほどしかいません。

 

※ネタバレ注意

残念ながら「うp主失踪シリーズ」入りを果たしてしまっていますが、いわゆる”やり込み”としてこれほど明瞭かつ執念深いものもなかなかないでしょう。『真3』クリア済みの方はぜひご覧ください。

 


ローカライズに興味を持つ – メガテンの名が持つ意味

 

筆者は以前、とある人物から「安田さんは英語が苦手だから」とバッサリいかれたことがあります。実際苦手です。いまだに英語アレルギーは治っていませんし、英語ソースを読むときにはビクビクしながら辞書を引いています。それでも誤訳をやらかしたりしています(ご指摘ありがとうございました)。GDC でもそれなりに地獄を見ました。

洋ゲーはプレイしていました。しかし、飛び込んでくるのは字幕ばかりです。英語の勉強のため!と言い聞かせ耳に力を入れても無駄で、結局日本語を読んでしまいます。さりとて、たとえば『Call of Duty:World at War』や『Dead Space』シリーズのような「そもそも日本で出ていない」ケースを除き、英語版でプレイする気はなかなか起きませんでした。

TOEIC の参考書を読んでも脳がアレルギーを起こす。Discovery Channel を観ても字幕ばかり読んでしまう。洋ゲーでもダメ。まあ、おおよそこの辺りで諦めていました。そんなある日一筋の光(ただの思いつき)が差し込みます。「メガテンって海外で出てなかったっけ?」

北米 PlayStation 2 本体を入手するのには意外に、少々苦戦しました。GameStop などが普通に輸出してくれるのを知らなかったので、頑張って北米 Amazon から転送サービス経由で輸入しました。今自宅には、国内の初期型 PS2 と北米の薄型 PS2 が並ぶといういささかシュールな状態になっています。

 

愛があれば言葉の壁くらい乗り越えられるらしい。 下段のWiiも北米版です。放熱注意。
愛があれば言葉の壁くらい乗り越えられるらしい。

下段のWiiも北米版です。放熱注意。

 

繰り返しますが、筆者は英語がまともにわかりません。だから、『真3』のローカライズが適切なものだったか、AYB 状態でなかったのかなどもわかりません。しかし、自ら主体的に英単語帳を作り、あらかじめ知っている物語を英語で追いかけたのは初めての体験でした。ムービーで次々に英語が流れるのではなく、プレイヤーのペースで文章を追える。RPG は、怠惰なゲーマーにとって格好の学習素材なのではないでしょうか。

 

愛があれば言葉の壁くらい乗り越えられるらしい。 下段のWiiも北米版です。放熱注意。
愛があれば言葉の壁くらい乗り越えられるらしい。

下段のWiiも北米版です。放熱注意。

 

後に北米版『ペルソナ4』もプレイしクリア。ボイスまですべて英語化されているので、なかなか味わい深いものがありました。単語帳は300を超え、あらためて『メガテン』の魅力と自らの英語力の低さを痛感した次第です。

海外でも『メガテン』は広まりつつあり、とくに『P4G』あたりを契機に加速している感があります。かつての IP も『ソウルハッカーズ』などを筆頭に次々と英語化されています。この事実は、とくにあらためて宣言するまでもなく日本的かつ挑戦的です。「日本ならでは」のコンテンツを望み、世界に発信するにあたり『女神転生』ほど”適切かつ不適切”なものは他にあるでしょうか。

 


『デビサバ』を舐めるな

 

蛇足ながら言及しますと、リメイク版『2』がそろそろ発売されそうな『デビルサバイバー』も生半な仕上がりではありません。DSというプラットフォーム、ヤスダスズヒト氏によるイラストのタッチ、見当たらない”女神転生”の文字列から、「メガテンじゃないんだ」と感じプレイしていない方がいらっしゃるかもしれないので、それは違うぞと断言しておきます。

『女神異聞録』の肩書きは伊達ではありません。『デビサバ』は、天使と悪魔は同一の存在という『メガテン』の前提に対し真逆へ舵取りしています。つまり、明確に区分しました。その結果、なかなか許され難い事態になっています。最初にプレイしたとき、筆者は「あ、これ、やっちゃっていいんだ」と感じました。

 

まさかのハードコア、『デビサバ』。 あまりに特徴的な天使ボイスは筆者の周囲で瞬間的に流行りました。
まさかのハードコア、『デビサバ』。

あまりに特徴的な天使ボイスは筆者の周囲で瞬間的に流行りました。

 

『2』がアニメ化され、3DSリメイク版『デビルサバイバー2 ブレイクコード』も(延期されたものの)秋ごろリリース予定ときて、いよいよもって未プレイのメガテンファンは近寄り辛くなっているかもしれません。しかし、勇気を出してとりあえず『デビサバ1 OC』を手にとってみてください。『デビサバ1』、それは筆者が知る限り最も挑発的なメガテン。山手線内側で著名神たちがごちゃごちゃとやりあうほのぼのとしたストーリーが大変愉快です。

浅野孝巳氏による音楽もかなり特徴的だったのですが、それはまた別の機会に。

 


なぜ『真3』を選んだか - 理由は単純

 

筆者の人生なぞたかだか31年です。本当にスゴいと感じたゲームを片端から挙げていけばすぐさまネタ切れになるでしょう。しかるに、前回『スパイクアウト』の話題を取り扱った際、まず「本当にスゴかった」と思える作品をリストアップしました。せいぜい20ほどです。

そこで『真・女神転生3』を選んだ理由は、何度でも言いますが嘘偽りなく「『4』がもうすぐ出るから」以外にありませんでした。裏を読んでいただいても何もありません。ただ、一介のメガテン好きがほぼ外野から勝手にハードルを上げていただけです。

そして『4』は、素晴らしい作品でした。

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