『Shadwen』は”サンドボックス&物理演算ステルスアクション”として成功するか?時を巻き戻す機能で「試行錯誤の手間」省く新たな試み

フィンランドのゲーム開発スタジオ「Frozenbyte」は、新作『Shadwen』の無料デモを配信中だ。Frozenbyteは騎士・盗賊・魔法使いの3人組が協力する2Dアクションゲーム『Trine』シリーズを手がけてきたスタジオで、本作『Shadwen』はスタジオ初となる3Dステルスアクションゲームとなる。

フィンランドのゲーム開発スタジオ「Frozenbyte」は、「Steam」「Humbe Store」「GOG.com」 にて新作『Shadwen』の無料デモを配信中だ。Frozenbyteは騎士・盗賊・魔法使いの3人組が協力する2Dアクションゲーム『Trine』シリーズを手がけてきたスタジオで、本作『Shadwen』はスタジオ初となる3Dステルスアクションゲームとなる。デモ自体のクオリティはまだまだ荒いのだが、ステルスゲームでは珍しい『Shadwen』独自の要素を確認できる内容となっている。

『Shadwen』は昨年12月にFrozenbyteより正式発表され、今年2月に初となるゲームプレイ映像が公開されたタイトルだ。プレイヤーは王殺しを命じられた暗殺者「シャドウェン」となり、任務中に出会った孤児の少女「リリィ」を守りつつ、衛兵だらけの城のなかを突き進まなければならない。シャドウェンはゲーム中に集めた素材からトラップをクラフトすることが可能で、地雷や弓発射装置といった罠で敵を倒したり、おびき寄せたりすることもできる。

客観的に見ると、『Shadwen』のビジュアルはきらびやかだった『Trine』シリーズと比較するとかなり地味だ。筆者自身も『Shadwen』のアートワークにはいまだ魅力を感じないし、キャラクターはかっこよくもかわいくもなく、世界観もストーリーもイマイチ。発表から公開されてきたゲームプレイのディテールにもピンと来なかった。だがデモをプレイしてみると、これがなかなか興味深い内容となっていることがわかる。

発表当時から「物理演算」と「時間操作」の要素が伝えられてきた『Shadwen』。これらはどのようにゲーム中で動作するのか

まず『Trine』シリーズから引き継がれた要素として、本作の世界には「物理演算」が導入されている。ゲーム中には木箱や樽などのオブジェクトが存在しており、これらをシャドウェンが押すことで動かしたり落としたりすることが可能だ。単純に動かしたり倒したりして音が発生すれば、近くの兵士をその場所へとおびき出せる。木箱を高所から落として敵兵に当て、押しつぶすこともできる。さらには時限爆弾を設置した樽を階段の上から転がし、敵をまとめて倒すといったテクニカルなアクションもできる。またシャドウェンは右クリックで発射できるグラップリングフック付きのロープも標準装備しており、これで木箱を撃って引っ張ったりすることも可能である。

まるで「サンドボックス・ステルスゲーム」のようだ。『Minecraft』のごとく無限の選択肢があるわけではないが、ステルスゲームという環境において、「物理演算」を利用した様々なアクションやパズルを組み立てていくのはとても新鮮で楽しい。箱や樽は単純に足場にしてもいいし、音を立てる時限式のおとり装置にしてもいいし、敵を倒す武器にしてもいい。デモ中では確認できなかったが、クラフトでもし樽や箱のようなアイテムが作れるようになれば、さらに暗殺や行動の自由度は広がるだろう。

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ターザンのような移動も可能だという「グラップリングフック」。『Trine』シリーズをプレイしたことがあるのなら、盗賊のゾヤが使う「引っ掛け鉤」を思い出すとわかりやすいだろう
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バックスタブや高所からの奇襲では1人の敵しか倒すことができないため、2人の衛兵がいる場合は頭を捻らなければならない。トラップを設置した樽や木箱を敵の方向へと転がす戦術が個人的にはお気に入りだ

ただ、こういったサンドボックスや物理演算込みのゲームプレイがあると、不確定な要素が増えプレイヤーが意図しない結果が生まれることが往々にしてある。敵兵を倒すために押した木箱があらぬ方向に倒れ込んだり、爆弾を設置する箇所を間違えて樽がどこか遠くへ吹き飛んでいったり。そのため本作には「リウィンド」というシステムが搭載されており、プレイヤーはRキーを押すだけで好きなところまで時間を巻き戻すことができる。

この「リウィンド」はほかのゲームでもよく見る機能だが、実はステルスゲームにもぴったりの要素なのかもしれない。現代のステルスゲームには1つの任務に対し様々な潜入手段や暗殺手段が用意されているのが常だが、プレイヤーが基本的に1回のプレイで試せるのは1つの手段だけだ。さもなくばゲームをリスタートして、スタート地点かチェックポイントから再挑戦しなければならないのだが、『Shadwen』にはその手間がない。その場で思いついた手段を気軽に試せばいいし、失敗したりほかの手段を試したくなったら、「リウィンド」すればいい。本作はそういった”攻略手順の模索”が楽しい作品であり、その模索がストレスとならないように最大限の配慮がなされている。

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「リウィンド」には使用制限などもなく、好きな時に好きなだけ巻き戻すことができる。チェックポイント等は無く、ゲームオーバーになってもそこから時間を巻き戻して、好きな時点からゲームをリスタートすることが可能。タイミングの間違いや画像のような緊急事態にイライラすることも無い
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このほか、ゲーム内にはキーを入力していない状態では時間が停止するという機能も盛り込まれている。プレイヤーはゆっくりと周囲の状況を確認することができるという

現在のデモバージョンではグラップリングフックの使用方法がわかりづらい、壁によじ登るといった移動アクションが少し不安定など、『Shadwen』には荒い部分も散見される。目玉の1つとして語られている「時間停止」も、どうせ巻き戻せるのだからわざわざ周囲を見渡す必要もほとんど無く、無用の長物のように思えた。また「リウィンド」によるステルス手段の模索の楽しさを先ほど伝えたが、いつでも巻き戻せるということは、「敵に発見されてはいけない」というステルスゲーム特有の緊張感を損なわせる可能性もある。

だが前述した「サンドボックス&物理演算」や「リウィンド」のシステムはとても斬新だ。『Shadwen』をあなたの”年内のリリースが楽しみな作品リスト”に加えておいても損は無いだろう。また今回のデモの配信と共に、デモ版のプレイ統計データによってローンチ時の価格が低くなるというキャンペーンも実施されているため、気になった人はぜひ気軽に触れてみて欲しい。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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