『Modern Combat 5: Blackout』 ポケットサイズの『CoD』クローン

Modern Combat 5: Blackout』は、Gameloftが販売するモバイル向けミリタリーFPSです。対応プラットフォームはiOS/Android/Windows Phoneで、価格は700円。とくに日本で人気が高く、App Storeランキングの上位にはいつも『Modern Combat』シリーズの最新作がランクインしており、ここ数年は一人勝ち状態が続いています。

 


iOSデバイスとともに進化した『Modern Combat』シリーズ

 

シリーズ1作目『Modern Combat: Sandstorm』がリリースされたのは、iPhone 3GSが主力だった2009年です。開始数秒で『Call of Duty 4: Modern Warfare』のクローンだとわかってしまうほど似ていますが、多くのモバイルゲーマーに受け入れられました。1年後には、複数の主人公が登場する『Modern Combat 2: Black Pegasus』が発売されましたが、シリーズを大きく変えたのは、iPhone 4Sの販売がスタートした2011年に配信された『Modern Combat 3: Fallen Nation』です。新しいゲームエンジンが採用され、グラフィックは驚くほど美しくなり、カットシーンやクイックタイムイベントも派手になりました。

 

左上『Modern Combat: Sandstorm』 右上『Modern Combat 2: Black Pegasus』 左下『Modern Combat 3: Fallen Nation』 右下『Modern Combat 4: Zero Hour』
左上『Modern Combat: Sandstorm』 右上『Modern Combat 2: Black Pegasus』
左下『Modern Combat 3: Fallen Nation』 右下『Modern Combat 4: Zero Hour』

 

iPhone 5が発売された2012年に配信がスタートした『Modern Combat 4: Zero Hour』は、あらたにHavok Physicsが採用されたため爆発などあらゆるエフェクトが派手さを増し、まさに「モバイルゲーム映像美到達点のひとつ」といえました。

 


良くも悪くも生まれ変わった『Modern Combat 5: Blackout』

 

クラスは「Assault」「Heavy」「Recon」「Sniper」の4つ。
クラスは「Assault」「Heavy」「Recon」「Sniper」の4つ。

シリーズ5作目となった『Modern Combat 5: Blackout』では、プレイヤーはギルマン・セキュリティの特殊部隊員Caydan Phoenixとなって、仲間とともに世界解放軍(テロリスト)に立ち向かいます。前作までとは違い、キャンペーンモードで主人公のクラスを変更できるようになりました。また、ミッション中やクリア時に獲得できるEXPをためればレベルが上がり、武器やアタッチメントがアンロックされます。さらに、スキルポイントを獲得すれば各クラスの特徴を伸ばすことも可能です。ストーリーを1周すれば、ある程度の装備がそろった状態でマルチプレイに参加でき、シングルプレイにしか興味を持たない方でも武器のアンロックやキャラクターの成長を楽しめます。

 

画面左下のバーチャルスティックで移動。画面右下の弾薬ボタンで射撃。ボタン以外の場所をドラッグで照準を操作。
画面左下のバーチャルスティックで移動。画面右下の弾薬ボタンで射撃。ボタン以外の場所をドラッグで照準を操作。

 

タッチデバイスとFPSの組み合わせは、相性が良いとはいいがたいです。つねに移動しながら照準を相手に合わせて射撃する操作は、2本の親指だけではほぼ無理でしょう。今作ではエイムアシストが有効になる範囲は狭くなりましたが、「走る」や「しゃがむ」など基本動作の自動化、照準を敵に重ねると自動で弾が発射される「オートショット」の設定など、iPhoneでFPSをプレイするのが苦手な方でも遊びやすくなりました。ただし、これらの機能はシングルモードでのみ適用されます。

指を使った照準の操作に限界を感じたら、デバイスをかたむけてカメラを動かす「ジャイロスコープ機能」をONにするといいでしょう。iPadだと腕が疲れますが、iPhoneやiPod touchであれば問題ありません。

 

東京が戦場に。民家の2階から発射されるRPGがシュール。
東京が戦場に。民家の2階から発射されるRPGがシュール。

 

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ミッション攻略にかかる時間は大幅に短縮されましたが、各チャプターをクリアするためにはストーリーと無関係なチャレンジミッション「Spec-Ops」をクリアするか、マルチプレイに数回参加しなければならなくなりました。「Spec-Ops」は今作から登場した新モードで、いわゆるやりこみ要素です。パターンは少なめですがパーフェクトクリアを目指すのはなかなか難しく、挑戦のしがいがあります。ただし、そういったチャレンジに興味がないプレイヤーにとっては足止めにしか感じられないかもしれません。

 

「Spec-Ops」の狙撃ミッション。スコープごしにターゲットを探し出し、制限時間内に仕留めなければならない。
「Spec-Ops」の狙撃ミッション。スコープごしにターゲットを探し出し、制限時間内に仕留めなければならない。

 

せめてMFiコントローラーに対応していれば……
せめてMFiコントローラーに対応していれば……

マルチプレイは、全プレイヤーが敵になる「バトル」、いわゆるCTFの「フラッグバトル」、2チームで対戦する「チームバトル」、クラン同士の意地の張り合い「クランバトル」、相手チームのVIPを倒してスコアを競う「VIP」、合計5つのゲームモードが用意されています。マップが広くなったため今まで以上に戦術を考えた立ち回りを楽しめるようになりました。

エイムアシストなどの補助機能が使えないため、慣れるまではストレスとの戦いになります。ジャイロを使った操作をマスターしないと、「楽しい」と感じる前に萎えてしまうかもしれません。私のように。

 

今作は、ややライトゲーマー向けに変化しました。わずか数分で完了するミッションは外出先でも気軽に楽しめ、モバイルゲームであることを第一に考えられてるといえます。操作方法に関しても、初めてモバイルでFPSをプレイする人でもとっつきやすくなっています。しかしその分『Modern Combat』シリーズを遊び続けてきたプレイヤーにとっては満足できないのも事実でしょう。難易度選択もなく、レベルによって兵士が強くなる仕組みやストーリーの進行を足止めする「Spec-Ops」。これらの組み合わせは、次回作がFree-to-Playになる可能性がかならずしも0ではないと思わせます。

 


そろそろ新しいエッセンスを

 

『Call of Duty: Modern Warfare 3』風のオープニング。何に似ているかを考えながら遊ぶのも楽しみ方のひとつ。
『Call of Duty: Modern Warfare 3』風のオープニング。何に似ているかを考えながら遊ぶのも楽しみ方のひとつ。

 

ゲームシステムは変更されましたが、今までどおり『Call of Duty』シリーズのパーツを組み合わせて作られています。むしろそうでないと『Modern Combat』とはいえませんし、それでこそGameloftでしょう。クローンであるがゆえに海外では評価が分かれるシリーズですが、ここ数年モバイルゲームを遊んでいる私からすれば序の口です。

クローンだからといって、つまらないわけではありません。「このシーンは『Call of Duty: Modern Warfare 2』のTeam Playerを再現しているな」とか、「オープニングは『Call of Duty: Modern Warfare 3』を意識したに違いない」など、何に似ているか考えながらプレイするのも楽しいものです。モバイルゲーマーには新鮮な刺激を、PCゲーマーには懐かしさを与えてくれる作品といえます。

しかし、マンネリ化してきたと感じるのも事実です。「またこのシーンか」と思える場面がいくつかあり、若干ネタ切れ感がただよっています。『Grand Theft Auto』シリーズを意識したGameloftの人気作『Gangstar Vegas』に『Saints Row』のエッセンスを混ぜ込んだのを参考に、いずれ出るかもしれない次回作にはたとえば『Battlefield』を加えるというのも"アリ"ではないでしょうか。

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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