『Hero Generations』 伝説の勇者は豪商の家系から生まれる

『Hero Generations』は勇者の一族を「経営」するRPGだ。わかりやすく表現すると「世代を超えてたたかうローグライク」。

Hero Generations』は勇者の一族を「経営」するRPGだ。わかりやすく表現すると「世代を超えてたたかうローグライク」。この言葉に反応したゲーマー諸氏はぜひ注目してほしい。販売・開発は HEART SHAPED GAMES。2015年Q1発売予定。プラットフォームはPC(Windows, Mac, Linux)で、現在ベータテスト中。11月4日には、公式サイトでベータ版アクセス権付きの予約受付を開始した。

 

 

Kickstarterを4万ドル以上オーバーし達成(2014/04/26終了)した本作は、独立開発ゲームイベント「IndieCade」で2011年ファイナリストに選定された期待作だ。1歩ずつリソースを消費して「生存」し、そのリソースを回収する「探索」の要素をもつRPG、つまりはローグライクである。

本作におけるリソースは「余命」だ。1歩で1年経過する。個体の死を回避することはできないため、伴侶をみつけ子をなし世代交代する必要がある。日本では「俺の屍を越えてゆけ」で有名なシステムだ。ローグライクと俺屍という、人気のある要素を融合させた一作である。

 

子供は余命・能力のほかに主人公と伴侶の容姿もうけつぐ。 肌の色、髪の色のほか目つき、出っ歯など組み合わせは無数にある。
子供は余命・能力のほかに主人公と伴侶の容姿もうけつぐ。
肌の色、髪の色のほか目つき、出っ歯など組み合わせは無数にある。

 


ベータ版インプレッション

 

本作の特徴は、子が「施設」を受けつぐ点だ。村に隣接する4枚のタイルは勇者一族の土地として、後述する「子の資質」と違い確実に継承できる。ゆえにゲーム序盤は村の発展が主となる。勇者となるまえに豪商を目指すのだ。2代目、3代目は親の遺産を使い、さらに村を強化する。財産を十分に所有している一族から生まれた資質ゆたかな子が、幼少から兵舎にかよい勇者学にはげむ姿は、現代社会に当てはめても違和感のないものだ。財産は才能と教育を生み、それがさらなる財産を生みだす。公式サイトがあげるゲーム要素「シティビルド」「ストラテジー」は、戦略的な一族の経営だ。

 

ゴールドを生み出す工場と、戦闘力をあげる要塞にかこまれた環境。金持ちの息子が優秀なのもうなずける。
ゴールドを生み出す工場と、戦闘力をあげる要塞にかこまれた環境。金持ちの息子が優秀なのもうなずける。

 

もう一つの特徴は子の資質だ。これは婚姻時の年齢と伴侶の器量によって決まる。伏せられた資質カードを選択し、それが子に受け継がれる。早く結婚すれば選択できるカード枚数が増え、主人公と伴侶の器量でレアカードの確率があがる。これはタイトルにそった要素だ。最高の条件からボンクラが生まれたとき、本作の魅力は最高潮となるのだ。

 

子の資質は20枚の伏せられたカードを選択してきまる。まれに、すべてハズレをひくこともある。 右上の「Golden」は戦闘力と余命を大幅にあげる超レアカード。12世代目で勇者の誕生だ。
子の資質は20枚の伏せられたカードを選択してきまる。まれに、すべてハズレをひくこともある。右上の「Golden」は戦闘力と余命を大幅にあげる超レアカード。12世代目で勇者の誕生だ。

 

筆者が思うに、現時点のベータバージョン1.01は施設が強力で、探索・生存要素が薄い。資質の特技カードも種類がとぼしい。ゲームコンセプトは楽しいが、まだまだ練磨できる部分がある。これは開発者も認識しており、ベータ版への反応をフィードバックしていくと公言した。改善が待ちどおしい。(12月2日にアップデート予定

 


名作に新解釈をもたらすゲームコンセプト

 

フローラとビアンカ、ゲーム史における究極の選択だ。 本作は伴侶の資質がわかるので、子に受けつぎたい資質を選べる。
フローラとビアンカ、ゲーム史における究極の選択だ。本作は伴侶の資質がわかるので、子に受けつぎたい資質を選べる。

 

本人らの過酷な運命・たゆまぬ努力もあるが、 生まれ持って得た資質も栄光の要因だろう。
本人らの過酷な運命・たゆまぬ努力もあるが、生まれ持って得た資質も栄光の要因だろう。

『Hero Generations』を通じて過去のRPGに対してうがった視点を得られるのも興味深い。本作の攻略セオリーに照らすと、『ドラゴンクエスト3』の勇者は一族の財産が大層なものに思える。『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』のセリオス王子にいたっては周辺にはスライムしかおらず、幼少期の訓練場として最適だ。『アンリミテッド:サガ』に登場する金持ちのゴクツブシ息子が資質面で最強なのもうなずける。

 

 

もちろん、そういった視点だけでなく、本作は単体でも魅力がある。カートゥーンタッチで見た目は楽しく、シンプルながら必要十分なUIで操作感は良好。上記した「シティビルド」「ストラテジー」要素は、現在おこなわれているベータテストのフィードバックで「探索&生存」要素とともに練磨されることだろう。また、聞き慣れた名前の剣「エメラルドソード」をはじめ、ファンタジー作品のオマージュもある。名声が最高潮に達すれば悪魔のお姫様とも結婚できる。

本作は見栄えとUIで気楽さをもたせつつ、ローグライクと世代交代システムで奥深さも兼ねそなえる。注目作となる可能性を秘めた本作の名を覚えていただきたい。

 

名声30000ポイントで悪魔のお姫様と結婚できる。ちなみに、6世界踏破で6000ポイント、ボス5体撃破で10000ポイント、 プレゼント所持で必要ポイント40%軽減できる。一族の壮大な野心にむくいるやりこみ要素だ。
名声30000ポイントで悪魔のお姫様と結婚できる。ちなみに、6世界踏破で6000ポイント、ボス5体撃破で10000ポイント、プレゼント所持で必要ポイント40%軽減できる。一族の壮大な野心にむくいるやりこみ要素だ。

 

Hikaru Nomura
Hikaru Nomura

高校卒業後、ペンキ塗り・コンビニバイト・警備員・システムエンジニア・ネットショップの店長などで食いつなぐ。趣味はスーパーカブにまたがってのドライブ、海外SF小説(オールタイムベストは『スキズマトリックス』)、ゲーム実況、たまに同人活動。

宇宙ストラテジーと格闘ゲームを好む。リズムゲームとビジュアルノベルは苦手。FPSは酔う。中段や弾幕は見えない。Arcen Games信者であり、Stardockian(Stardock信者) でもある。英語は苦手だが、気合で翻訳して遊ぶ。

ゲーム大会の最高成績は2013年トライタワー末塔劇『チェンジエアブレード』部門第4位。

オールタイムベストゲームは『ニュースペースオーダー』。

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