『Godfire: Rise of Prometheus』 心に残りづらいギリシャ神話

Godfire: Rise of Prometheus』は、ギリシャ神話を題材にしたアクションアドベンチャー。『Real Boxing』や『Ski Jumping Pro』といった美しい3Dグラフィックが特徴的な作品を生み出すVivid Gamesと、『The Witcher』シリーズのカットシーンなどを手掛けるアニメーションスタジオPlatige Imageの共同開発作品です。本稿はバージョン1.00をiPad 4とiPhone 5でプレイしたインプレッションになります。

 

プレイヤーはプロメテウス(左)。オープニングではヘリオスと激しい戦いを繰り広げます。 多言語(日本語含む)に対応していますが、カットシーンでは字幕が表示されないため、ストーリーがわかりにくいかもしれません。
プレイヤーはプロメテウス(左)。オープニングではヘリオスと激しい戦いを繰り広げます。

多言語(日本語含む)に対応していますが、カットシーンでは字幕が表示されないため、ストーリーがわかりにくいかもしれません。

 


移動と戦闘と、時々イベント

 

『Godfire: Rise of Prometheus』は複数のActで構成されています。App Storeの説明には"自由な探検"と書いてありますが、これはクリアずみのActにいつでもアクセスできるという意味であり、広大なフィールドを歩き回るという意味の"自由な探検"ではありません。各Actではあらかじめ決められたアイテムを入手できるほか、隠された宝箱などを発見するといったいわゆる"やりこみ要素"もあります。

 

 

移動中のUIはとてもシンプル。画面左下にバーチャルパッドがあり、扉や宝箱に近付くと画面右下にアクションボタンが表示されます。
移動中のUIはとてもシンプル。画面左下にバーチャルパッドがあり、扉や宝箱に近付くと画面右下にアクションボタンが表示されます。

 

プレイヤーは限られた範囲内であれば自由に移動できますが、敵の出現位置は固定されており、戦闘が発生する場所まで歩いて向かうといった感じです。「移動」と「戦闘」を交互に繰り返しても単調に感じさせないよう、間にパズルやQTE(クイックタイムイベント)が挿入されています。QTEにかんしてはプレイヤーがハラハラするようなものが少なく物足りなさを感じるのですが、iPhoneやiPadの画面が小さいことを考慮すると迫力に欠けるのは仕方のないことでしょう。また、パズルは扉や宝箱を開けるときに登場し、ほとんどが難度の低い仕掛けになっており、「なくてもよかったのでは……?」と感じるかもしれません。

 

ボタンを押さなくても被害のないQTEと、ただ回転させるだけのパズル。
ボタンを押さなくても被害のないQTEと、ただ回転させるだけのパズル。

 

各Actで獲得したポイントに応じてプロメテウスはレベルアップします。しかし、レベルが上がったからといってすぐに強くなるわけではありません。レベルアップ時の報酬やゴールドとの交換で手に入るアップグレードポイントを使うことで、攻撃力や防御力といった基本能力を伸ばせます。ゴールドは装備品の強化やアイテムの鑑定にも使いますので、"熟慮する者"を意味するプロメテウスとしては、ゴールドの使い道は熟慮したほうがいいでしょう。

 

初期の状態では上半身はほぼ裸。防具を強化すれば、重量感のある装備に身を包むようになります。
初期の状態では上半身はほぼ裸。防具を強化すれば、重量感のある装備に身を包むようになります。

 

難易度ノーマルの場合、プロメテウスを強く育て上げる楽しさはそれほど感じられないかもしれません。なぜならプロメテウスはつねに「弱すぎる」か「強すぎる」かのどちらかだからです。たとえばAct2をプレイ中に敵が強いと感じたのであれば、アップグレードポイントを使って基本能力を上昇させるか、ゴールドを使って武具を強化するかします。そうすると今度はプロメテウスが強くなりすぎてしまい、ほぼ適当に攻撃を繰り出すだけでAct2をクリアできるようになってしまいます。ハードを選択すればこの問題は解消しますが、今度は敵が強くなりすぎてしまい……。

 


戦闘はきわめてなめらか

 

Vivid Gamesが最も力を入れているであろうと感じるのが戦闘です。アニメーションスタジオPlatige Imageとの共同開発により、プロメテウスの剣さばきはとてもなめらかに表現されています。若干カクつく場面もありますが、それによってプロメテウスが死んでしまうといったことはありません。ご参考までに例示すると、影響を受けたであろう『God of War』ほどのスピード感はなく、どちらかといえばゆったりとした動きです。これは、攻撃の"重み"を表現するための工夫なのでしょう。

 

けっしてスピーディとはいえないものの、流れるような剣さばきはお見事。
けっしてスピーディとはいえないものの、流れるような剣さばきはお見事。

 

敵と遭遇すると戦闘が開始し、画面左下には回避動作のためのバーチャルパッドと防御ボタン、画面右下にはライトアタック(弱)とヘビーアタック(強)ボタンが並びます。敵を倒すことで「怒り」(画面左上の黄色ゲージ)が増加していき、満タンになれば範囲攻撃の必殺技「憤怒の一撃」を発動可能です。また、この「怒り」はヘビーアタックコンボと呼ばれる強力な連続攻撃を繰り出すためにも必要なため、つねに残量を気にしながら戦うことになります。

 

敵の体力が残り少なくなったら、画面右下に表示される"スカルマーク"をタップでフィニッシュムーブ発動。
敵の体力が残り少なくなったら、画面右下に表示される"スカルマーク"をタップでフィニッシュムーブ発動。

 

ゆったりとした動きのため、戦闘は爽快とはいえません。それでも、出血表現や剣がまとう炎のエフェクトなどにより、見た目の派手さは感じられます。ただし、満足できるのは最初の数回の戦闘だけかもしれません。プレイヤーはAct2、またはAct3へと到達したときに、景色以外の変化の少なさに気付くでしょう。どこまで進んでも顔なじみのモンスターが出現し、同じパターンでプロメテウスに襲いかかります。

 

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プロメテウスのレベルが上がると、使用できるコンボが増えます。それほど多くの種類はありませんが、特別なスキルが1つしかない本作にとって、コンボは重要な攻撃手段です。しかし、コンボ発動中でも攻撃を受けてしまうため、狭い戦場ではあまり使い勝手がよくありません。ちなみに私は、初期から使える4連続コンボばかり使っています。

 

 

攻撃を避けつづけて"めまい"を待つ。
攻撃を避けつづけて"めまい"を待つ。

 

いまいち盛り上がりに欠けるザコ戦を終えると、いよいよActのメインとなるボス戦です。ギリシャ神話が題材ということで、サイクロプスやミノタウロスなど、プロメテウスの何倍もある巨大なボスが登場します。なかでもミノタウロスとの戦いは、プロメテウスの立ち位置によってボスの赤い目が強調されるといった工夫がほどこされており、光と陰の表現はお見事というほかありません。ただし、ボスをより大きく見せるためのカメラアングルなどビジュアル面は素晴らしいのですが、どのボスも不自然に"めまい"をおこし、その間に連続攻撃をたたき込むという戦術を繰り返すはめになるため、人によっては退屈に感じてしまうかもしれません。

 


素晴らしいビジュアルと物足りないアクション

 

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難易度ノーマルは簡単すぎて物足りなく、ハードにすれば比べものにならないほど敵が強くなるという調整は、うっすらと「課金」をちらつかせているようにも感じられます。ハード以上の難易度をクリアしたい、世界中のプレイヤーとスコアを競うサバイバルモードの頂点を目指したい、そのために課金するかしないかは個人の自由です。しかし、本作の値段は700円であり、これはiOSなどスマートフォン向けタイトルのなかでは若干高めの価格設定で、ほとんどのプレイヤーは最後まで課金という2文字が頭に思い浮かぶことなく遊べると思っているはずです(すくなくとも購入前は)。

Platige Imageとの共同開発により、ビジュアル面はとても素晴らしく仕上がっています。それはグラフィックの美しさよりも、アニメーションに表れています。かといって、それ以外もすぐれているというわけではありません。とくに戦闘は本作のメインでありながらも単調に感じられる状況が多く、プロメテウスと敵の強さのバランス調整もうまくいっているとはいいがたいものがあります。プレイヤースキルに左右されることもなく、どうすればAct3のボスを倒せるかといった攻略法を考える必要もなく、ただ強い装備をそろえるだけでどうにかなってしまう点は、初心者にたいする優しさなのかもしれませんが、それはアクションゲームとして面白いといえるのでしょうか。

ストーリーモードは短時間でクリアできます。おそらく、サッカーの試合が終わるころには難易度ノーマルをクリアしているでしょう。もしかすると、前半が終わったころには『Godfire: Rise of Prometheus』を購入したことすら忘れているかもしれません。「もちろん」これは冗談ですが……。

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

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