Steam版『デルタジール』インプレッション シューティングラブと高らかにうたう処女作


縦スクロールシューティング(以下、STG)『DELTAZEAL』(以下、デルタジール)のSteam版発売が決定した。発売日2015年10月17日。価格1180円。国内ですでに情報が出ており周知であろう。開発元のトライアングルサービスは、一風変わったSTGをつくるメーカーという認知が高い。同社の処女作である本作は、メーカーの本質を雄弁に語っている。Xbox 360版タイトルに込めた「シューティングラブ」がいかなるものか、ゲーム内容を通じて紹介する。

 

今となっては懐かしい、メカメカしいメカ。
今となっては懐かしい、メカメカしいメカ。

風評を裏切る堅実なつくり

ゲーム開始後、緻密なドットワークに目を奪われた。アニメーション枚数は少ないものの密度が高く、近年で8bit調、16bit調ともてはやされるピクセルアートと一線を画している。90年代前半のアーケード作品を想起させる細かさだ。この作風に感じる懐かしさを抑えることはできない。

ノスタルジアだけでなく、プレイに意外性をもたらすギミックにも貪欲なのは好印象だ。独特なパワーアップ制を例にあげる。攻撃は3種あり、画面下のスロットにおさめたアイテムの数で威力・弾数が増える。たとえば、青アイテムを取得してレーザーを強化したが、スロットの赤アイテムが減ったことでワイドショットの段数が減る。といった具合だ。ゲーム中に自機ショットを設計するしくみは愉快だ。

画像左より赤アイテム2個、4個、10個。ワイドショットの弾数がちがう。青のレーザー、緑のホーミングミサイルも同様に、画面下のスロット数だけ強化する。アイテムは敵機を一定数撃破すると出現し、その頻度は高い。手軽に設計を楽しめる。
画像左より赤アイテム2個、4個、10個。ワイドショットの弾数がちがう。青のレーザー、緑のホーミングミサイルも同様に、画面下のスロット数だけ強化する。アイテムは敵機を一定数撃破すると出現し、その頻度は高い。手軽に設計を楽しめる。
特殊攻撃(自機正面の黒い玉)で敵弾を勲章に変えたところ。
特殊攻撃(自機正面の黒い玉)で敵弾を勲章に変えたところ。

得点源の勲章と特殊攻撃は、意図して狙うとゲーム攻略のたすけとなる。敵弾を勲章に変える特殊攻撃のブラックホール弾を、大量の弾を吐く敵機に使えば高得点のチャンスだ。特殊攻撃にもちいるエネルギーの回復手段は、敵撃破時に飛散する1ドットの破片を回収すること。目視確認は難しいが、敵機に肉薄して撃破すれば回収できる。弾を出すスコア稼ぎ用の敵機と、出さないエネルギー回収用の敵機を覚える稼ぎ要素は、攻略と一致しており好感だ。

先に攻略へ誘導するしくみを紹介したが、得点で残機は増えないため、高得点プレイは任意である。本作の難度はSTGに不慣れなゲーマーにあわせたものだ。缶チューハイを計1リットル空けたほろ酔い状態の筆者でも、ゲーム開始1時間で5面に到達した。この難度なら、高い動体視力をもたずとも序盤面は難なくクリアできるだろう。また、弾幕STGのような場面ごとの難問を解くゲーム性でもないため、肩肘はらずにプレイできた。

冒頭にあげた「一風変わったSTG」という評判に身構えていたが、プレイすると意外性や目新しさだけでなく、堅実で古風なつくりもあることに驚いた。自機というおもちゃに仕込んだギミックだけでよしとせず、ドットワークやレベルデザインで昔ながらの出来映えを継承しようとしている。高難度ならぬ好難度ゲームを目指す愚直なつくりは、STGの主役が難度ではなく自機にあると訴えているようだ。

 

同社開発『XIIZEAL(トゥエルブジール)』は動かして楽しむ要素をさらに追求した。レバーを激しく左右に振ると、横から火が出て攻撃でき得点倍率もあがる狂気めいた内容だ。今年6月にSteam版発売。
同社開発『XIIZEAL(トゥエルブジール)』は動かして楽しむ要素をさらに追求した。レバーを激しく左右に振ると、横から火が出て攻撃でき得点倍率もあがる狂気めいた内容だ。今年6月にSteam版発売。

シューティングラブの海外進出

『デルタジール』は海外産STGを想起する奇抜のアイデアを、国産STGにみられる伝統の構成へ仕立て、動かして楽しむゲームを目指した。この精神は以降のタイトルにも受け継がれている。対戦プレイを主眼にした『シューティング技能検定』『コンバットジール』はその象徴といえよう。新しさと伝統を高いバランス感覚で両立する本作は、STGの高難度化と高性能ゲーマーの共進化を体験していないゲーマーに向けて戸口を開いている。

Steam版の訴求対象は、その高難度ゲームへ至る道を歩めなかった海外在住のSTGファンだ。入手方法が日本からの輸入のみであった本作が、デジタルディストリビューションで入手可能となったのは喜ばしい。これを機に彼らが日本産STGへ飛び込み、シューティングラブの精神を受けつぐことに期待する。