緊張感と乱戦感の絶妙な交錯『For Honor』 アルファテスト インプレッション

かねてよりアナウンスされていたUbisoft新規IP『For Honor』のPS4版アルファテストが、10月20日の午後8時よりほぼ予定通りに開始された。

かねてよりアナウンスされていたUbisoftの新規IP『For Honor』のPS4版アルファテストが、10月20日の午後8時よりほぼ予定通りに開始された。

2015年のE3にてデビュートレイラーが公開。ヴァイキングと西洋の騎士、侍たちが乱戦を繰り広げる独特の世界観もそうだが、今までにない独特なデザインが垣間見えるゲーム性も含め「謎」の多い作品だっただけに、今回のテストを注目しているユーザーも多いことだろう。今回はその独特なシステムの概要を紹介しながら、テストプレイの感触をお伝えしたい。

 

奇抜で慣れが必要な基本操作

チュートリアルが非常に充実しているとはいえ、今作の操作はとっつきやすいとは言えない。
まず武器の構えが上と左右に分かれており、それぞれの構えがそれぞれの方向の攻撃、防御に当てられている。つまり相手が上段攻撃(L2+R3上+R1)してきた際には上段防御(L2+R3上)、右攻撃なら(L2+R3右+R1)右防御(L2+R3右)で対応するという具合だ。防御の際、どちらからの攻撃なのかは画面に表示されるため方向を誤ることは少ないが、防御姿勢は操作入力後に一定時間で解除されるため、攻撃を受けるタイミングを誤ると無防備な瞬間ができてしまう。またこれに加え、弱攻撃(R1)と強攻撃(R2)も存在しており、それぞれモーションが異なる。強攻撃の後に◯ボタンで攻撃をキャンセルし、相手の防御を誘発させるといった仕掛けも可能だ。

また、防御は操作とタイミングを誤りさえしなければ完全に相手の攻撃を防ぐことができるが、ガードで固めている相手にはガード崩し(L2+□)を放つことで大きな隙を生みだすことも可能であり、まるで格闘ゲームのような「攻撃」「防御」「崩し」の3すくみが成立している。さらにこれい以外にも「回避」「ガード崩し返し」などの付随するシステムによって、相当深みのある相手との読み合いが発生するようになっている。その複雑さを面白さととるか、煩雑さととるかは人それぞれとはなるが、ともかくよくある3Dアクションゲームの操作形態ではなく、慣れには経験と時間がある程度必要なシステムといえる。

 

想像以上に広いカスタマイズの幅

『For Honor』にキャラカスタマイズの幅を期待しているユーザーがどれほどいるのかは不明だが、テスト段階でありながら想像以上にカスタム要素は幅広い。たとえば防具は腕装備、頭装備、胸装備の3種類が存在するが、外見のパターンは左肩、右肩、胸と背中、腰、足、防具の質感、色を細かく分けられる上、キャラクターの性別すらも選択できる。武器もパーツ分けされており、刃、柄、鍔の3種類から自由に選べる。さらにアビリティ、処刑モーション、エモートなども含めれば、カスタマイズの可能性はかなり広く、「自分だけのキャラクター」を作成できるといっても差し支えないほどである。

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練り込まれた戦闘デザイン、際立つ各モード

「人類が滅亡してから1000年後。ナイト、ヴァイキング、侍が勢力を取り戻しつつある世界」
という公式の設定は、一般人の感性をもってみれば間違いなく奇異に映ってしかるべきものではある。だが本作を最初から色眼鏡で見てしまうのはあまりにも勿体無い。複雑な操作システムは、手になじむほど深みのある戦闘の駆け引きを生む。理解度の高いプレイヤー同士が当たれば、想像を超えるほど高度な駆け引きが実現されるであろうことは想像に難くない。それほどに『For Honor』の戦闘におけるゲームデザインは練りこまれているのだ。

その上で特筆すべきは、「デュエル」「ブロウル」「ドミニオン」が、単に「1対1」「2対2」「4対4」の人数違いという差異だけでなく、しっかりと別のモードとして成立しているという点だろう。「デュエル」での逃げ場のない眼前の敵とのタイマンが醸し出す緊張感は、かつて一撃死の緊張感を対戦ゲームに持ち込んだ『ブシドーブレード』に感覚として近い。無論、一撃死というシステムが実装されているわけではないが、一瞬の油断が即座に死へ繋がるという意味では、設計思想としての類似性は高い。「ブロウル」では、『For Honor』の戦い方の多様性を楽しむことができる。二組で行う擬似的な「1対1」を行ってもよいし、そうかと思えばフェイントをかけ味方の方に走りより、一瞬だけで2対1の数的有利を作り出して一瞬で勝負を決めにいってもよい。片方ずつが戦闘不能状態に陥った際には、お互いの味方を蘇生して仕切りなおしをすることもできる。「ドミニオン」では一人一人の戦闘スキルも重要だが、なによりも陣取りを優先に考えることが勝利の肝となる。どんなにスキルの高いプレイヤーでも4対1では勝負にならない。如何に連携して動き、優勢火力を保つかという戦略がうまくはまった陣営が勝利するだろう。

こういった対戦ゲームで、操作を同じくしてまったく違うゲームをプレイしている感覚を生じさせてくれる例は稀有であり、その点一つだけを切りとっても『For Honor』は注目を呼ぶに値するゲームであろう。

 

課題もあるが原石の質は高い

無論、すでに見え隠れしている問題点もある。それが格闘ゲームだろうとFPSだろうと「対戦」をするゲームに確実に存在している問題。「キャラ差」だ。これから研究が進むにつれてどういう状況になるかはさておき、現状では「大蛇」のカウンターと特殊構えが非常に強力であり、ほかのクラスでは対応が困難だ。この手のゲームでキャラクターのバランスはもっとも抑えなければならない部分であり、今後はUbisoftの手腕が問われることになるだろう。

ジャンルはまったく違うとはいえ、どこか同社開発の『Rainbow Six: Siege』を髣髴とさせるストイックさがある。すでに作り込みが垣間見えるこのゲームが輝くかどうかは磨き方次第だろうが、原石の質は非常に高い。

Nobuhiko Nakanishi
Nobuhiko Nakanishi

大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。
喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。

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