『Godus Wars』ファーストインプレッション ポピュラスの再誕
ピーター・モリニュー氏率いる22Cansは2016年2月3日、最新作『Godus Wars』のアーリーアクセスを開始した。事件とでもいうべき世間の反応は、弊誌で周辺情報として紹介したとおりだ。本稿はそれらを割愛しアーリーアクセス版の内容を紹介する。次世代のゴッドゲームをめざした『Godus』から不要な枝葉をそぎ落とした本作は、始祖『ポピュラス』へ先祖返りした。
神が区画整理するリアルタイムストラテジー
本作の由来は前作『Godus』の失敗にある。iOS版は不細工にプレイ時間を水増ししており、それを短縮する権利を買うF2Pモデルだ。そしてPC版は未完成のまま更新が止まっている。Kickstarterで集めた期待・投機にこたえていない。この志半ばで倒れた神のなきがらに、ふたたび魂を吹き込もうとするのが本作である。
『Godus Wars』はまず、前作が企画し実現できなかった機能をすべて削除し、「地形操作」「操作できない村人」「ゴッドパワー」の3点を継承した。そして、プレイの強い動機をもたらす「対戦」を導入している。
ゲームの勝利条件は敵拠点の制圧だ。自国・敵国ともに弓兵をもちいてこれに挑む。弓兵は城で生産でき、城は村人の家を集めてつくる。プレイヤーは地図の等高線を模した地形をつまんでひっぱり、平地を用意し村人の家づくりをうながす。この区画整理は前作と同様だが、対戦要素がはいることで手際を問うものとなった。
最初からフィールド全域を地形操作できる点と、弓兵の戦闘力が高低差でうまれる点はかみ合っている。風変わりな仕組みではあるが、ゲーム全体は珍しいものではない。このプレイ体験に一番近いのは『ポピュラス』だ。土地を平坦にし村人に家を建てさせる。村人の信仰ポイントで敵に天災(ゴッドパワー)を放つ。村人から攻撃ユニットをうみだし敵の土地に送り込む。――そのほかの新要素はない。
以上をもって現バージョンのインプレッションとする。前作のゲームエンジンを流用したプロトタイプだが、アーリーアクセスを経た成功作に共通する「独創的なプレイ体験」は今のところ見当たらない。1時間以上のプレイに耐える作り込みはなく、人前に出すには早すぎた代物である。
もしこれが、モバイル版『Godus』の続編であったなら、前作からの新要素で評価できた。ステージのアンロック「鍵」、ゴッドパワー「カード」を課金要素とするなら、F2Pモデルとしてほぼ完成している。前作とおなじゲームエンジンで、動作環境や翻訳のノウハウもある点も強みだ(前作はモバイル版だけ日本語がある)。開発元はPCゲーマーにむけて再構築したと説明しているが、PCゲーマーにだまったままモバイル市場へ発売すれば、いらぬ悪評を受けずにすんだだろう。
余談だが、『Godus Wars』の現状を目にして「ゴッドゲームは死んだ」と断言するのは早計だ。『ポピュラス』がまいた種は多くの実りをもたらしている。『The Sims』シリーズをはじめとする住民管理や、『ドラゴンクエストビルダーズ』といった世界創造などがそうだ。また、次世代のゴッドゲームをめざす新作もあり、その中でも『The Universim』は注目を集めている。すでに完成したものをプレイしたいなら、いますぐ『Skyward Collapse』を手にされたし。神が自分で世界を破壊しつつ再生もてがける独創的なプレイ体験は、ゴッドゲームの不滅を象徴している。