『ボーダーランズ4』レビュー。“めっちゃ新鮮味”と「物足りない」が同居する、それでも「シリーズ最高傑作」と呼びたい逸品

『ボーダーランズ4』は、ゲームプレイの核となる「戦闘と報酬」の満足感が大きく向上。前作からの問題を引き継ぎながらも、全体としては着実な進化を遂げた作品となっている。

「ボーダーランズ」といえば、ド派手な戦闘、ぶっ飛んだ世界観とキャラクター、幅広いビルド構築、トゥーン調のグラフィック、そしておびただしい種類の銃、銃、銃。とにかく多くの要素を詰め込んだ、パーティー用オードブルのようなゲームシリーズである。

その最新作である『ボーダーランズ4』は、ゲームプレイの核となる「戦闘と報酬」の満足感が大きく向上。前作からの問題を引き継ぎながらも、全体としては着実な進化を遂げた作品となっている。

本稿では2K Japanより提供されたレビュー用コードでのプレイ(Steam版)にもとづき、本作がどのような仕上がりとなっているのか、過去作と比較しながら掘り下げていく。

“いろんな味がある”武器バリエーションの大幅増と、オードナンスがもたらす進化

まず「ボーダーランズ」シリーズの特徴を伝えたい。本シリーズは、ソロプレイおよび最大4人でのオンライン協力プレイに対応。4人の個性あるキャラから1人を選択して、膨大なビルドの選択肢と銃火器などの装備の組み合わせで敵をなぎ倒し、報酬で自身を強化し、さらなる戦いに挑んでいく。

その最新作である『ボーダーランズ4』の進化 がもっとも顕著に表れているのが、武器の「サブ射撃」の種類の大幅な増加と、「認可パーツ」という新システムだ。

サブ射撃については、これまでにもブラドフ社製の銃のアタッチメントなど、一部メーカーの武器で使用可能だった。『ボーダーランズ4』ではこれが大幅に拡張されており、メーカーに関係なく一定以上のレアリティであれば、大多数の武器が何かしらのサブ射撃をもつようになっている。サブ射撃はロケットや火炎放射器といったわかりやすいものから、ナイフを射出するランチャー、着弾点をつなぐ電撃を放つテザー、敵のパワーを奪う「スパイク」、ドローン展開などどれもユニークかつ強力で、試してみたくなる魅力を放っている。サブ射撃はクールタイムを経れば何度も発動できるため、さながら武器ごとに用意されたスキルや必殺技といった様相だ。

また、過去作ではメーカーごとの特色を除けば、武器性能の主なランダム要素はダメージや装弾数といった数値や、デザインの変化に留まっていた。いわば“新鮮味”がやや薄れていたわけだ。本作ではランダム要素にサブ射撃というゲームプレイ自体を変える要素がくわわり、武器選びの楽しさと、宝箱を開けるワクワク感が過去作とは段違いに高まる構造となっている。また、十数時間プレイした後でも新たなサブ射撃を持つ武器が続々登場する。その物量に驚かされると同時に、すでにメーカーごとの特色に慣れてしまったプレイヤーにも新鮮さを提供する、良いスパイスになっている。

そこにさらなる混沌をもたらすのが、異なるメーカーの武器特性が混ざりあう「認可パーツ」システムだ。たとえば本作では高い発射レートが特徴のブラドフ社の銃に、ド派手な爆発でおなじみのトーグ社の認可パーツが組み込まれた銃などもドロップする可能性がある。それらが組み合わされば、速射で爆発を撒き散らす、あたかも爆撃機のような武器が完成するわけだ。どの認可パーツが付くかはドロップ時のランダムで付け替えはできないが、時には3社以上の特性を持つ“魔改造”的な銃が手に入ることもあり、カオスかつ強力な新要素となっている。

『3』以前のシリーズ作品では、ビルドの方向性やプレイヤーの好みにより強いメーカーがある程度決まっており、実質的に選択する武器のバリエーションを狭めてしまっていた。だが認可パーツがあれば、本来ビルドと相性が悪いメーカーの銃でも、弱みを補うパーツや相乗効果を持つパーツが付いて強力に化けることがある。反面、無駄なパーツが付いて逆効果になってしまうこともあるが、すべてのメーカーに光が当たるようになったことで、サブ射撃と同じく武器選びの楽しさが増している。

「銃以外」も新鮮味マシマシ

大きな変更が入ったのは銃だけではない。過去作では「グレネードMOD」とされた装備枠が、今作ではより汎用的な「オードナンス」に変更。グレネードだけでなくミニガン・レーザーを発射する重火器・投げナイフ・衝撃波の発動といった幅広い武装を含むほか、銃火器枠だったロケットランチャーもオードナンス枠の武器となった。

当然オードナンスにも膨大なランダム要素がある。たとえば、遠隔で起動し四方八方に火炎放射をまき散らすグレネードや、着弾点に引力が発生し敵を無防備にさせる投げナイフ、一度に2発の小型ロケットを高速で放って敵を塵にするロケットランチャーなど。どのオードナンスもプレイスタイルを大きく変えるポテンシャルをもっており、使っていて楽しい。一部バランス調整に難のあるオードナンスも存在するものの、銃と同じく「数値の向上だけではない、新しい“味”がするバリエーション」が意識された作り込みがなされていると感じた。

また、2022年発売のスピンオフ『ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界』から取り入れられた変更点として、オードナンスは残弾制ではなくクールタイム制となっている。グレネードやロケットランチャーをピンチに備えて使い控える必要がなくなり、心置きなく派手な攻撃を放てる。残弾を使い切ってしまうとアクション・スキル頼みになりがちだった過去作と比べて、取れる戦略も豊かになっている。

ほかにも本作からの新要素は多々ある。回復と多彩なバフ効果を付与する「リペア・キット」、各メーカー銃器の特性を強化する「強化パーツ」、特定のセット装備で追加効果を発動させる「ファームウェア」、1つのツリーがさらに3つに枝分かれし深みを増したスキルなどだ。ほかにも多くの新要素や変更が盛り込まれ、ビルド構築はシリーズ中もっとも頭を悩ませるものになっている。複雑になりすぎて少々とっつきにくい感は否めないものの、シリーズ特有の物量で圧倒する作り込みは健在だ。

またグラフィックについてはUnreal Engine 5を採用し、トゥーン調のパキッとした感触が軽減され、よりリアルで自然な風合いに。過去作に比して、ゲームプレイからグラフィックまで全体的に変更と改善が施されている。そのなかでも、サブ射撃と認可パーツ、そしてオードナンスは、武器バリエーションの新鮮味を保ち、本作の根幹をなす「報酬の喜び」「武器を選ぶ楽しさ」を押し上げることに成功している印象だ。初作「ボーダーランズ」から15年以上を経て、本シリーズがルーターシューターの王道として健在であることを再確認できる出来栄えとなっている。

戦闘は自由度がっつりアップ、探索要素は“テンポよく物足りない”

『ボーダーランズ4』では戦利品選びがより楽しくなり、そこに至るまでの戦闘や探索もより爽快に、快適になるよう変化している。

もっとも特徴的なのは移動方法の拡充だろう。『3』ではスライディングや乗り越え動作が追加されていたが、『ボーダーランズ4』では新たにダブル・ジャンプ、グライド、グラップル、ダッシュ(緊急回避)などの移動方法が追加。これにより探索や移動が快適になったほか、前述のサブ射撃やオードナンスと組み合わせることで、戦闘のスピード感が大きく向上している。

これにより、たとえばダブル・ジャンプで高く跳んでグライドで滑空、上空からグラウンド・スラムで敵を叩くといった立体的な動きが可能になった。ゲームプレイに慣れればさらに複雑な動きも可能になり、「グラップルで引き寄せた爆発物を敵集団に投げ込む」「サブ射撃のレールガンで遠距離の敵を撃破」「近くにいる敵の脳天に投げナイフをぶち込む」「その中でボスの攻撃を回避する」といった動きを流れるように繰り広げられる。

常に複数の選択肢があることで、戦闘のテンポや満足感が向上していると感じた。『3』までの、平行移動しながら銃撃し、ときどきグレネードやアクション・スキルを発動する、という「お決まりの展開」が少なくなり、より自由で爽快な戦闘を展開できるようになっている。 道中で立ちはだかるボスも、こうした新たなギミックを利用して戦うものが多く、アトラクション的に楽しむことができた。

テンポが向上しているのは戦闘だけではない。過去作では生成地点が決まっていたビークルも、本作では「デジランナー」によりほぼどこでも即時で呼び出せるように。さらにはビークル自体がジャンプもできるなど、使い勝手が大幅に改善された。本作の舞台となる惑星「カイロス」は一部を除き、広大なオープンワールドとなっている。前述の新たな移動アクションやデジランナーにより、広大なフィールドを素早く駆け抜けられるようになり、探索や移動のテンポ自体は向上している。

一方で、こまごまとした探索の満足度はそれほど高くないように感じた。本作のマップ上には、隠されたマークを見つける「ヴォルトのシンボル」や金庫、キャラクターの会話が確認できるエコー・ログなどが無数に点在している。それぞれインベントリ拡張に使うSDUや、大量の戦利品、世界観への理解を深めるロアなどを得られるため、探索自体の意義はある。しかしながら、そのほとんどが「ただ行って、見つけて、取るだけ」というものになっている。

そうした探索要素は、場所がわからなくてもマップでピンを立てれば大体の位置へ誘導してくれる。しかし、多くの場合その道程は平坦で、それらを探すナラティブ上の理由も特に提示されないので、探索のやりがいや達成感が感じられないのだ。

特に、戦闘をせずにいきなり戦利品を得られる金庫類と、死者の最期の状況が曖昧に描かれるだけの「デッド・ボルト」は薄味に感じた。一方でマップ上にあるアクティビティ、たとえば一定時間敵の攻勢を耐え抜く「プロパガンダ・スピーカー」や、ダンジョンに潜り厳しい戦闘に挑む「オーダーのバンカー」といった戦闘が絡むものは楽しく、フィールドすべてがつまらないというわけではない。しかしそれがかえって小さな探索要素の虚しさを際立たせる結果となっている。オープンワールドと新たな移動アクションという食材を用意したのならば、もっとうまく料理できたのではと感じた。

全体のノリとストーリーは、良くも悪くも「いつもの味」

シリーズファンとして本作をプレイして通底しているのは、「いつも通り楽しい」という感覚だ。しかしそれは「あまり変わり映えしない」と紙一重でもある。新要素もさまざま盛り込まれた中、筆者の中で問題と感じたのは「いまいちストーリーに引き込まれない」点だった。

まず前提として、キャラクターや世界観に関しては、かえって安心感すら覚えるような相変わらずのぶっ飛び加減だ。舞台は新たな惑星「カイロス」に変わったが、クラップトラップやモクシィといったおなじみの面々にくわえ、キュートなサポートロボット「ECHO-4」や、逞しい没落貴族「ルヴェイン」といった新キャラも多数登場。特にサブミッションはやりたい放題で、モンスターをつがいにさせたい農場主や、軌道上でダンクシュートのジャンプを数年間続けていたバスケ選手、暴走する銃をボールで捕まえてほしい「サトゥーシ」、それを阻む「ミサイル団」など、いい意味でひどすぎて笑ってしまうキャラクター、展開が多く飽きさせない。

また、ローカライズも高品質だ。文章の意を捉え、小ネタにあふれた良質な翻訳や、高品質な吹き替えもあり、「ヒャッハーしようぜ!」というキャッチコピーに違わない雰囲気を楽しめる。その一方でメインストーリーに関しては、意欲的な取り組みをしつつも、『3』と同じ問題点を抱えている印象となっている。

筆者が考える『3』のストーリーにおける問題点は、「置いてけぼり感」と「ちぐはぐなテンション」だった。主人公が選択式につきストーリー上での個性を出しづらいせいか、あまり喋らず基本的に蚊帳の外で、誰かが決めたことに乗っかるだけだった。世界観や個々のキャラクターはぶっ飛んでいるものの、突然シリアスなトーンになるストーリーは、筆者としてはどのようなテンションで乗っかればいいのかが難しく、プレイしつつもストーリーに引っ張られることができなかった。

『ボーダーランズ4』ではそうした点の改善策としてか、主人公がクエスト中のかけあいや各地にあるエコー・ログの語りで、積極的に喋るようになっている。主人公の感情や人となりがよくわかるようになったことで、『3』よりも感情移入しやすくなった。同じストーリーでも4名分のセリフ量であり、かなりの労力がかかっていることがうかがえる。

しかし、主人公が“乗っかりがち”なストーリー展開自体は変わらないため、どうしても周りのキャラクターに流されるだけの「いい子ちゃん」的な存在に映ってしまう。レジ打ちのアルバイトから突然セイレーンに覚醒した「ヴェックス」、すこぶる陽気な強化外骨格兵士「ラファ」といった魅力的なバックグラウンドを持つ主人公キャラクターたちの個性を、十分に活かしきれていないように感じる場面が多かった。

「主人公が選択式なので個性を出せず、周りのキャラクターでストーリーを転がす必要がある=置いてけぼり感」という構造的な問題を、『3』から変わらず引き継いでしまっている、というのが筆者の正直な感想だ。また、ストーリー展開は3よりもさらにシリアスに寄っているが、会話のノリは軽いため、世界観とキャラクターが乖離しているような印象を受けた。とはいえ、キャラクターまですべてシリアスになってしまっては「ボーダーランズ」らしさを失ってしまうだろう。プレイヤーを引き込む雰囲気やテンションのバランス、最適解をまだ見いだせていないように感じた。

しかしながら、主人公の喋りは没入感向上にある程度の効果を上げているし、ストーリーがゲームプレイの楽しさを損なっていることもない。『3』が楽しめた人や、本作の世界観に抵抗が無い人には、しっかりと満足感を提供してくれるだろう。なお、歴史背景や世界観、一部キャラクターは前作と共通しているものの、ストーリー自体は新しいので、『ボーダーランズ4』から始めても問題ないであろうことを書き添えておく。

それでもやっぱり、ルーターシューターとして「シリーズ最高傑作」と言いたい

『ボーダーランズ4』は、探索要素やストーリーの構造に問題を抱えつつも、銃の海に溺れるルーターシューターとしての快感とぶっ飛んだ世界観で変わらぬ魅力を放っている。その上で、サブ射撃と認可パーツによる“いろんな味がする”武器バリエーションの大幅増や、ビルドの方向性を豊かにするオードナンスといった大量の新要素、そして快適な移動アクションにより、本シリーズの核である「ハチャメチャな戦闘と、魅力的な装備をゲットする快感」の魅力を極限まで高めたと評価したい。本作は、シリーズ最高の“中毒性”をもっている。 『3』までに築いた強固な土台をしっかり活かしながら着実に進化した、見た目以上に堅実な作品だ。 シリーズのファンはもちろん、「とにかく楽しい」ゲームを求める人にも、このジャンクで丁寧な魅力を味わってほしい。

ボーダーランズ4』はPC(Steam/Epic Games Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。10月3日にはNintendo Switch 2版の発売も予定している。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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