『Atlas Reactor』プレビュー プロなら行動でしめせ。ニューロンをオーバークロックする4v4ガン&チェス

Trion Worldsが現在開発中のターン制ストラテジー『Atlas Reactor』はカジュアルなプレイとハードコアな体験を両立した、クラス制チームバトルゲームだ。このジャンルはMOBAの独壇場にあり、本作はそれに一石を投じる新機軸のゲームである。2016年2月18日~24日に実施したオープンアルファテストは好評をおさめて終了した。筆者は2016年Q1のベストゲームに推薦する。

臆面もなく所感を述べると本作は、『Overwatch』+『Dota 2』(または『League of Legends』)+『XCOM』+『Frozen Synapse』である。クールなヴィジュアルとソリッドなルールで第一印象はスマートの一言。コンテンツ強化、バランス調整したベータテストは将来予定とあるので、先にあげたタイトルのファンは注目されたし。

もちろん、そういった訴求対象に媚びた見栄えだけではない。MOBAにない独創的なチームワークがある。敵味方同時に20秒で思考する1ターンの密度。ターン中の行動の同時処理や、カバー・ステルス・視界といった明快なルール。すぐれたユーザインタフェース(以下、UI)。これらの根底に明確な設計理念がある。本稿はその理念に焦点をあてつつ、アルファテストでのゲーム内容を紹介する。

atlas-reactor-preview-001Atlas Reactor
開発元: Trion Worlds
発売日: 未定
プラットフォーム: PC(Windows)
価格:基本無料(ゲーム内課金の予定)

Trion Worldsは基本無料モデルMMO『RIFT』を代表作とするオンラインゲーム専門のメーカーだ。本作もメーカー過去作と同様の基本無料モデルを採用する。アルファテストの主体「バーサスモード」はチームバトルだ。プレイヤーは1体のキャラクターを操作し、プレイヤー4人 vs. プレイヤー4人であらそう。先に敵から5回キルをとるか、20ターン経過後キル数のおおいチームが勝利となる(キル数がおなじ場合はサドンデスに突入)。

14人のフリーランサー。彼らは未来の巨大企業が強いた善き市民モデルからあぶれたアウトローだ。ガンマン、デジタルソーサレス、ワンマンアーミー、天才社長、バイオビースト、ミュータント、ロボット犬など。キラキラのネオンやピカピカのハイテックで武装したスゴみあるやつらたち。TRPG『トーキョーN◎VA』やマンガ「サイバーブルー」を想起する。
14人のフリーランサー。彼らは未来の巨大企業が強いた善き市民モデルからあぶれたアウトローだ。ガンマン、デジタルソーサレス、ワンマンアーミー、天才社長、バイオビースト、ミュータント、ロボット犬など。キラキラのネオンやピカピカのハイテックで武装したスゴみあるやつらたち。TRPG『トーキョーN◎VA』やマンガ「サイバーブルー」を想起する。

1ターンにできることは次のとおり。罠設置・攻撃・回復などのスキル使用。カバー・ステルスや、アイテムをとるための移動。マップがスクエアのパネルなのもあいまり、プレイフィールはテーブルゲームに近い。さしずめ、4人分の頭脳で戦うチェスといったところだ。

 

カジュアルに築けるプロフェッショナルな信頼関係

本作最大の見どころは、敵味方同時に20秒で行動を入力する点と、チーム内の協力をうながすUIだ。これがチームバトルの魅力「味方との一体感」を手にするまでの敷居をさげた。

atlas-reactor-preview-003

プレイを通じてターンの流れを紹介する。ターン開始時、敵味方全員に20秒の決断フェーズがある。移動・スキルを入力でき、攻撃範囲や移動経路はUIでチームに共有する。その後、敵味方全員で行動する解決フェーズとなり結果がでる。

決断フェーズ。チームメンバーが行動を入力した時点で、その内容が表示される。敵味方が同時に入力することで、時間内の思考密度に、UIによる意思疎通の要因を加えた。
決断フェーズ。チームメンバーが行動を入力した時点で、その内容が表示される。敵味方が同時に入力することで、時間内の思考密度に、UIによる意思疎通の要因を加えた。

この、入力に時間制限を設けたターン同時処理は、ビデオゲームの利点を活かしたマルチプレイだ。相手の手番を待つことがない。敵味方同時に限られた時間で思考するので公平感もある。なにより、チームワークが確実なものとなる点は大きい。マッチ中のチャットより、味方からうけとるUIのほうが雄弁である。チームワークにかかせない「タイミング」・「射程の把握」を、同時処理ターン制・UIといったかたちでゲーム側が用意しているのだ。こうして、言葉を介さず行動でしめした結果、プレイヤー個々の最適行動がチームワークとなり、対等な―― 隷属・強要がない―― カジュアルな協力プレイをもたらしている。

 

コアなプレイ体験を約束するマインドスポーツ

特記すべきは、前章にあるカジュアルな敷居の低さと、以下に述べるコアなターン制ストラテジーを両立した点にある。スキルの発動速度。カバー・ステルスそして視界。これらの要素で、1チーム4人分の頭脳をもってしても、あまりあるほど奥が深い。

スキルの処理順序。左3つの色つきがスキルで、発動速度がおなじものは同時処理となる。要点だけいえば、通常移動より先に攻撃(赤)の処理がありミスショットがない。攻撃より先に回避(黄)や強化(緑)の処理があり回避・サポートの無駄撃ちがない。
スキルの処理順序。左3つの色つきがスキルで、発動速度がおなじものは同時処理となる。要点だけいえば、通常移動より先に攻撃(赤)の処理がありミスショットがない。攻撃より先に回避(黄)や強化(緑)の処理があり回避・サポートの無駄撃ちがない。
解決フェーズの様子(8fpsで撮影)。画面中央下の右よりに、現在処理中のスキル速度がある。キャラクター演出は個別だが、結果は同時処理のあつかいだ。
解決フェーズの様子(8fpsで撮影)。画面中央下の右よりに、現在処理中のスキル速度がある。キャラクター演出は個別だが、結果は同時処理のあつかいだ。

まずスキルの発動速度について。解決フェーズはつぎの順で処理する。準備>回避>攻撃>移動。移動より前の3つはスキルの処理で、移動よりも攻撃が、さらに回避が、準備(罠設置やヘルス回復)がはやい。基本攻撃以外のスキルはクールダウンがあり、消耗品は使い切りのため、敵味方の呼吸を読めば仕留めることができる。

そこにカバーによる撃ち合いの有利、ステルスによる不意打ちがはいり、プレイヤーは高い次元の思考力を問われる。また、キルをとられたチームは視界がせばまり、敵にヘルス回復やスキルのクールダウン、カバー・ステルスといった占位も許すこととなる。これがかくれんぼゲームに陥らぬよう、マップ上にはヘルス回復・攻撃力強化といったアイテムが定期的に出現し、取得にまつわる駆け引きを生む。

アルファテストのマップは2種類。端から1ターン移動すれば中央にたどりつく。キル数を競うルールに適した狭いマップだ。しかし、チームの誰かが倒れると視界外の場所が増え、とたんに広く感じる。
アルファテストのマップは2種類。端から1ターン移動すれば中央にたどりつく。キル数を競うルールに適した狭いマップだ。しかし、チームの誰かが倒れると視界外の場所が増え、とたんに広く感じる。

以上の要素に確率の関与はなく、チェスをはじめとする狭義のマインドスポーツを想起する。しかし、ターン中で可能な行動のすくなさと20秒という制限、そして4人分の頭脳のおかげで「必要以上に悩む」ことはない。単位時間の思考力を要求し、1マッチ=20分と手早く終わらせることで、コアな頭脳戦とカジュアルなプレイ時間を両立したのだ。

 

e-Sportsを意識した“Watchability”への配慮

『Atlas Reactor』は手軽なチームワークと奥深いストラテジーをもって、カジュアル層・ハードコア層の両面を融合した。さらに、いまやゲームシーンで無視できない第三の層、「視聴者層」へも配慮した。アルファテストで積極的にプレイ配信をよびかけ非公式大会をサポートし開発者チームとの対戦に招待したところに、広告宣伝を超えたもくろみがある。

結果は同時処理するが、演出まで同時処理する必要はない。ターン制ならではの強みを活かした発想だ。
結果は同時処理するが、演出まで同時処理する必要はない。ターン制ならではの強みを活かした発想だ。

ネオンでかざりたてたカートゥーンタッチのアートワーク。クラス特性をそのままかたちにしたキャラクターデザイン。派手な演出と、かっこいいトーント。これら見栄えのコダワリも、目にはいらなければ意味がない。本作はターン行動を同時処理するが、演出はキャラクターごとにあり、すべてカメラに捉えることで見栄えの問題を解決した。だれがプレイ配信しても「見て楽しいもの」になるしくみで、観戦時の所感はストラテジーよりも格闘ゲームに近い。

プレイ配信視聴の楽しみやすさ、“Watchability”は必要か。本作リードデザイナー、ウィリアム・クックは、Polygon誌のインタビューで「必要」と答えた。ゲームに深みをもたらす競技性。e-Sportsにかかせないコミュニティの確立。ゲームをはじめる前の学習。これらを満たすため、リプレイ・観戦モードよりも簡単に見て楽しめるものとしたのだ。アルファテストは配信の楽しみやすさ、つまり、配信したプレイヤーの数をはかるテストでもあった。競技用ストラテジーを名乗るゲームは数多くあれど、視聴者への見栄えにも配慮したものは本当にすくない。本作はこの隠れた需要を掘り当てた。

画面外の情報が重要なFPS・RTSとちがい、格闘ゲームは画面内で情報が完結している(遅らせグラップガードといった見えないものもあるが)。だれがプレイしても、だれが視聴しても同じ品質があり、「視聴するための技術」を要しない。近年のe-Sportsにおける格闘ゲーム人気は、この“Watchability”も一因である。
画面外の情報が重要なFPS・RTSとちがい、格闘ゲームは画面内で情報が完結している(遅らせグラップガードといった見えないものもあるが)。だれがプレイしても、だれが視聴しても同じ品質があり、「視聴するための技術」を要しない。近年のe-Sportsにおける格闘ゲーム人気は、この“Watchability”も一因である。

 

こういうチームバトルがほしかった

『Atlas Reactor』はMOBAに対抗しうる魅力をもつチームバトルゲームだ。チームワークを容易に堪能できる点。同時処理ターン制というコアなゲーム設計と、カジュアルなプレイ時間を両立した点。そして配信映え、“Watchability”を重視した点。これらをもって、アルファテストの時点で、冒頭にあげた人気作のニッチにとどまらない「新機軸」に到達している。

「トーント」を購入すると、攻撃前にカットイン演出がはいる。進行を妨害しない程度にとどめてあり好印象だ。解決フェーズの演出はプレイヤー全員が共有するので、スキン・カラーといったファッションをアピールしよう。
「トーント」を購入すると、攻撃前にカットイン演出がはいる。進行を妨害しない程度にとどめてあり好印象だ。解決フェーズの演出はプレイヤー全員が共有するので、スキン・カラーといったファッションをアピールしよう。
キャラクターのアンロック画面。緑の数値がゲーム内通貨。黄色の数値がゲームプレイポイント。
キャラクターのアンロック画面。緑の数値がゲーム内通貨。黄色の数値がゲームプレイポイント。

気になる価格について。ゲーム内通貨を購入する基本無料モデルだ。リアルマネーとの変換レートは未発表。ゲーム内通貨はキャラクターのアンロックと、スキン・カラー・トーントといったファッションにもちいる。キャラクターはゲームプレイポイントでもアンロックできるため、非課金プレイも可能だ。また、日替わりで無料プレイのキャラクターがいるため「おためし」できる。スタミナ制といったプレイ回数の制限はない。

最後に。本作をアルファテスト中に紹介できなかったことをおわびする。本稿にて興味をもたれたゲーマーは、公式サイト・アカウント(Twitter/Facebook)をチェックされたし。弊誌読者とベータテストで会えることを楽しみにしている。

アルファテストが終了し、現在サービス停止中。ベータテストが待ち遠しい。
アルファテストが終了し、現在サービス停止中。ベータテストが待ち遠しい。

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