新型ポータブルPC「ROG Xbox Ally X」は、XboxゲームもSteamもHoYoPlayも遊べる「最強の携帯型ゲーミングPC」になりえる。こだわるならば。Steam Deck所持者先行感想

マイクロソフトから提供を受けた「ROG Xbox Ally X」を30時間ほどさわった上での、感想をお伝えする。

マイクロソフトおよびASUSは10月16日より、「ROG Xbox Ally」シリーズを発売する。「ROG Xbox Ally」および「ROG Xbox Ally X」モデルを発売予定だ。価格は、標準モデルの「ROG Xbox Ally」が8万9800円(税込)。上位モデルの「ROG Xbox Ally X」が13万9800円(税込)。

携帯型ゲーミングPCともいえる「ROG Xbox Ally」シリーズ。携帯型ゲーミングPCは現在戦国時代にあり、さまざまなモデルが展開されている。そして今回、携帯型ゲーミングPCで実績を誇るASUSが、「ROG Ally」ブランドとして「ROG Xbox Ally」シリーズを発売するわけだ。「ROG Xbox Ally」は、どのような特徴があるのか。それは「Xbox領域に特化しつつも、PCゲームを広くカバーしたハイスペックをもつ携帯型ゲーミングPC」といえる。マイクロソフトから提供を受けた「ROG Xbox Ally X」を30時間ほどさわった上での、感想をお伝えする。

ちなみにまず留意しておきたい点として、本ハードはXbox Series X|Sのような「Xboxハードウェア」ではない。今やXbox製品は、他ハードでゲームやPCゲームとしても発売されており、「ゲーム事業全体でのブランド」になっている。なので、本デバイスはPCゲームとしてのXboxの領域に特に強い……携帯型ゲーミングPCである。「ROG Xbox Ally」はXboxハードウェアではなく、あくまでPCゲームデバイスである点を留意するといいだろう。

まずは基本概要を見てみよう:

ディスプレイ : 7.0型ワイドTFTカラー液晶
→フルHD(1080p)対応、最大120Hzのリフレッシュレート、AMD FreeSync Premium VRR対応
CPU : AMD Ryzen™ AI Z2 Extreme
グラフィックス:AMD Radeon™ グラフィックス (CPU内蔵)
OS : Windows 11 Home 64
メモリ : 24GB
ストレージ : SSD : 1TB(アップグレード可能)
振動:HD ハプティクス フィードバック部分対応、インパルストリガー搭載
バッテリー:80Wh
インターフェース:
1x USB4 (Type-C/Power Delivery対応)
1x USB3.2 (Type-C/Gen2/Power Delivery対応)
1x microSDXCメモリーカード、microSDHCメモリーカード、microSDメモリーカード
1x マイクロホン/ヘッドホン/ヘッドセット・コンボジャック
重量:715g

基本スペックだけをまとめると、(同ジャンルの中では)かなり性能の高いWindows 11搭載携帯型ゲーミングPCである。しかしこれは単なる性能に過ぎない。

Xboxゲームに「すぐにさわれる」強み

重要なのは、「Xboxゲーム」へのアクセスしやすさである。デバイス表面の左部分にはXboxボタンが存在しており、ワンボタンでXboxメニューにアクセス可能。メニューにはXbox提供ゲームがずらっと並んでいる。Game Passに加入していれば対応ゲームを遊び放題であるし、Xbox Cloud Gamingでのプレイも可能だ。ハードウェアもXboxコントローラーに近い設計になっており、Xboxコントローラーに慣れているのであれば、違和感なくXboxゲームをプレイできるだろう。重量も715gと他社製品と比べると若干重めであるが、そうした重量感を感じない。画面も大きいことから、少し肩を開いた構えでのプレイが基本となる。

筆者はGame Pass加入者であり、ためしに『Forza Horizon 5』をインストールしてプレイしてみた。手元の大きな鮮明な画面に、広大なフィールドが映し出され、スピーカーからはエンジン音が臨場感をもって流れてくる。筆者はSteam DeckやNintendo Switch 2、ほかの携帯型ハードウェアを保有しているが、そうした中でも携帯型ゲームとしては屈指のリッチな体験だと断言できる。現時点で、最高峰の携帯ゲーム機である。そのほかにも『EA SPORTS FC™ 25』など、ハードウェアパワーが求められるゲームをいくつかプレイしたが、かなりしっかり動く印象だ。

PCゲームランチャー詰め合わせ、カスタマイズ性の強み

また筆者が本機の魅力に感じているのは、PCゲームのランチャーをまるっと集積できることだ。ASUS製品ではArmoury Crate SEなる統合制御ソフトウェアが入っており、これもまたいわゆるランチャーのようなものである。このArmoury Crate SEでは、ハードウェア内部にインストールされているランチャーやゲームをスキャンしてくれて、ここからそれぞれのゲームにアクセスできる。それがSteamでもあっても、Epic Gamesランチャーであっても、あるいはHoYoPlayランチャーであってもだ。PCでのXboxアプリにも同様の機能があるが、わかりやすく初期機能として用意されているのは嬉しい。

ちなみに本デバイスでSteamを利用する際には、ビッグピクチャーモードで利用すれば不便はない。Steam Deckも同様にビッグピクチャーモードでの操作を採用していることもあり、時にタッチ操作をした方が手っ取り早い時もあるが、パッド操作でも十分にSteamを利用できる。Armoury Crate SE 経由で起動するとデフォルトがビッグピクチャーモードになるのも嬉しい。つまり、Steamのゲームもちゃんと遊べる。いずれにせよ、PCゲームランチャーをインストールでき(もちろんそれらのゲームはプレイできる)一元管理できるという力技はなかなかすごい。実際に便利でもある。

こうしたカスタマイズ性の高さは、かなり徹底している。もうひとつの代表例が、本デバイスはハードウェアのパフォーマンスレベルを自分でチューニングすることが可能だ。デバイス自体がゲームのパフォーマンスを参照し、自動的に動かすモードを選ぶほか、「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」など、自分でも選択可能。動かすパワー状態と省電力を調整できる。

また現在のパフォーマンスをリアルタイムで表示させたり、色温度をいじったり、かなり細かいチューニングが可能。ハードウェアのライティングもここで制御できる。ROG Allyシリーズとして恒例のものとなっているが、改めてカスタマイズ性の高さが見て取れるだろう。自分好みのハードウェアにできるわけだ。

ここまでで「ROG Xbox Ally X」への感想をまとめると、「ハイスペック」「Xboxゲームを触りやすい」「PCランチャー集積できて便利」「カスタマイズ性高くてよい」といった次第。本デバイスを触った上で感じた課題であるが……下記、「Steam Deck」との比較をしていくので、その中で述べさせていただこう。

「Steam Deck」と比べるとどうなのか

筆者は「Steam Deck」が好きである。初代も有機EL版も購入している。日頃のSteamゲームの多くは「Steam Deck」でプレイしている。こうした自分の観点から見える「ROG Xbox Ally X」の強みと課題をあげていこう。

まずは絵と音については、「ROG Xbox Ally X」が圧倒的に強い。「Steam Deck」は基本的には解像度が800p(1280×800)で駆動するのに対し、「ROG Xbox Ally」シリーズは1080p(1920 x1080)のフルHDに対応。より高い解像度でのプレイが可能であり、またスペックも本ハードの方がずっと高いことも踏まえて、出るグラフィックのきれいさはワンランク違う。スピーカーもデュアルSmart Ampとなっており、音もくっきり迫力あり。

グラフィックやサウンドについては、価格差もあることを踏まえて当然とはいえるが「Steam Deck」よりも「ROG Xbox Ally X」がかなり強い。「Steam Deck」ではギリギリ動いてるけれど無理しているような3Dゲームも、デスクトップPCほどではないながらも「ROG Xbox Ally X」では無理せず動く。

どれくらい馬力があるのかというと、『ファイナルファンタジーVII リバース』を画質ノーマルの60fps設定で動かせるほど。前述したように「ROG Xbox Ally X」はパフォーマンスのレベルも自分で調整可能であるので、厳密な比較はできないが、「Steam Deck」よりも3Dゲームの対応力は高い。

また遊べるゲームの幅も当然広い。Steam Deckでは、OS・ハードスペック両方の面で動かしづらかったHoYoverseタイトルも「ROG Xbox Ally X」では動く。『原神』を動かしてみたが、画質中設定で60fpsで動かしてもファンが叫ぶようなことはなかった。こうした数字もシチュエーションによって変わると思うが、チューニングすれば快適に遊べるだろう。

そしてWindowsを搭載していることもあり、できることも多い。YouTubeを見るもTwitchを見るも、あるいはDiscordを入れることもできる。人によってはゲーム以外の用途も見いだせるだろう。なお、ハプティックフィードバックも部分的に入っており、振動も繊細で感度がいいのも筆者の嬉しいところである。

ちなみにスリープからの復帰プレイのしやすさは、ぼちぼち。固有のスリープ復帰挙動があるわけではなく、Windowsにおけるスリープ復帰の手順と同様なので、すぐゲームを再開できるわけではなく、「Steam Deck」のようなスピード感やXboxハードウェアのクイックレジュームほどスムーズではない。ただし電源ボタンは指紋認証に対応しているので、そちらを設定していればさくっとログイン復帰できることは付け加えておきたい。そこからゲームを再起動する流れである。

カスタマイズ性高さ故の「煩雑さ」

一方で「ROG Xbox Ally X」の課題として浮き彫りにあがったのがゲームを遊ぶ上で多少チューニングが必要という点。これは「Steam Deck」以外のすべての携帯型ゲーミングPCにいえるのだが、起動時にソフトウェア側で最適化された設定が最適とは限らない。解像度やグラフィック設定など含めて、起動後はまずチューニングすることになる。特に操作面が気になる。操作が効かずコントローラー設定をいじることになるのだが、マウスはないのでタッチパネルで選んでいくことになるなど、もどかしい。

「Steam Deck」はDeck Verifiedというシステムがあり、そのマークがついていれば、ユーザー側の設定必要は不要。またSteam Deckのスペックは定まっており、そのスペック基準で最適化しやすいおかげで、グラフィックのプリセットもちょうどいいものが用意されているケースが多い。「ROG Xbox Ally」シリーズにおいても、携帯型デバイスへの最適化を進める、Handheld Optimizedなる対応施策が進められている(参考)。前述した『Forza Horizon 5』などは起動してそのままプレイできる。

しかしそれら以外は多少設定が必要なことが多い。あくまで手間は多少であり、設定をいじればプレイできることがほとんどであるが、「Steam Deck」はすべての設定を勝手にしてくれているので、比較してそのひと手間が意外と煩雑であり、若干フィット感に欠ける。スリープからの復帰も含めて「すぐにプレイできるかどうか」という点は、やはり「Steam Deck」には及ばない印象だ。

また、やや指摘が重複するが、搭載OSがWindowsなのでゲームパッド操作が及ばない箇所がちらほら出てくるが、それをタッチパネルで操作するのは快適とは言い難い。これは本デバイスだけでない問題で、こうしたアプローチをする上では仕方ないのだが、それでも「Steam Deck」あるいは「Nintendo Switch・Nintendo Switch 2」は、ボタン操作だけで完結するので、UI・UX的には劣ると感じた。またOSに付随したアップデート待機やシステム挙動など、「大きなOS」である弊害もある。ゲームのアップデート以外で、アップデートで待たされるのは意外とストレスなものだ。

また本デバイスではソフトウェアArmoury Crate SEが重要な役割をしているのだが、Windows上でArmoury Crate SEを呼び出して、そこからPCゲームランチャーを呼び出し、ゲームを起動する、といった一連の動作がややまどろっこしい。特定のストアを起動時に自動で立ち上げる設定も可能で、デバイス表面右上のボタンにショートカットボタンが存在し、そちらにストアを設定することで一発呼び出しもできるものの、いろんなストアへアクセスするにあたってはArmoury Crate SEを経由する必要はある。

カスタマイズ性の高さが武器であるが、カスタマイズ性の高さゆえに、手間を要されることは多く、フランクに携帯ゲームを遊ぶという状態において、こうした手間は億劫に感じる部分もあった。ただ、カスタマイズ性が高いので、自分なりにこうした手間を短縮する手段もありそうだ。そこを含めて、いかに自分用にいじることができるか、あるいはいじりたいかが重要になる。

とはいえ、携帯型ゲーミングPCとしては最強クラス

以上が全体的な雑感となる。上であげた「ROG Xbox Ally X」の課題は、そもそもとして「ROG Ally」シリーズの課題であり、かつ「Steam Deck以外のほぼすべての携帯型ゲームPC」がもつ課題である。つまり、本デバイス特有の課題は、ない。むしろ最適化などは進められていて、過去あった課題を段階的に克服し始めてるともいえる。

細かいチューニングもちゃんと自分で調整でき、あくまでWindows PCであると認識できるならば、「ROG Xbox Ally X」は決定版に近い携帯型ゲームPCだろう。課題である最適化も、Game Passタイトルはかなり本デバイスに最適化もされている認識で、遊べるゲームの多さもあいまってGame Passをメインに遊ぶなら本ハードはうってつけである。

「ROG Xbox Ally X」は価格もそれなりにするが、できることもいじれることも多い。今後同デバイスにおいては、自動スーパー解像度(Auto SR)やドッキングの強化など、さまざまな機能が追加されるという。拡張性はピカイチ。マイクロソフト側がソフトウェアをサポートしている点も大きい。「ROG Xbox Ally」と「Steam Deck」は、できることは近いが方向性はかなり異なる。また価格も結構違う。「ROG Xbox Ally」は広くいろんなことをカバーできるのが強みだ。自分のしたいゲームや環境、あるいはお財布と相談して、好きな携帯型ゲーミングPCを選んでほしい。

ROG Xbox Ally」シリーズは、10月16日より発売予定だ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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