『FF14』零式風協力アクション『TrinityS』早期アクセス版レビュー。話題のボスラッシュゲームを、『FF14』経験者視点でプレイレポ


Indie-us Gamesによる協力オンラインアクションゲーム『TrinityS』の早期アクセス版が本日4月28日にSteamにて配信開始された。「ファンタジーRPGのボス戦だけを抽出したボスラッシュゲーム」を自称する本作は、体験版配信時から特に『FF14』を彷彿とさせる戦闘システムとギミックが点から注目されていた。そこで新生エオルゼアから『FF14』のエンドコンテンツを中心に遊び続けてきた筆者が、同じく戦闘好きの知人2名と協力して本作の早期アクセス版を一通りプレイしてみた。『FF14』との相違点や戦闘システムのプレイ感を中心に、本作の感想を以下に述べていく。


「FF14のような戦闘」がなにかと話題になる本作。「タンク」「ヒーラー」「DPS」の3ロールが協力する、フィールド上に予兆が出るギミックをボスがタイムラインに沿って発動する、「ヘイト」「ボスの向きや位置」「プレイヤーの立ち位置」を気にする必要がある、といった要素はなるほど『FF14』の戦闘コンテンツを彷彿とさせる。ただし装備やキャラクターの成長要素などは存在せず、シンプルに「レイドボスとの戦い」のみに焦点を当てたゲームとなっている。ジャンルこそ違えども、コンセプトとしては個人的にインディーアクションゲーム『Titan Souls』を彷彿とさせる部分もあった。

ボスラッシュアクション

本作は基本的に『FF14』の「零式」のようにボスのみが登場するステージをひとつひとつクリアしていく形式となっている。各ステージをクリアしてもキャラクターが成長することはないが、若干のローグライク要素としてステージをクリアするごとにランダムに抽選されたロールごとのスキルが報酬として与えられ、次のステージに進む前にスキルの入れ替えをおこなうことができる。ステージごとにロールを変更などは出来ず、選んだロールとビルドで一気にラストステージまで走り切る必要がある。


各ステージのボスが繰り出してくるギミックの内容はせいぜいが『FF14』における「極」程度のものだが、とにかくギミック処理の猶予がない。どの攻撃も予兆から発動までがかなり速く、心の準備が出来ていないとすぐ失敗する。直近の『FF14』のエンドコンテンツは予兆や猶予が長い代わりにギミック自体が複雑であったり並列処理を求められたりするものが多いが、『TrinityS』のギミックは単純な代わりに猶予が短く、2.X時代の『FF14』エンドコンテンツの風情を感じさせる。

なお、本作を『FF14』経験者3人でプレイしたところ、ラスボス撃破までに大体4時間ほどかかった。ラスボスのギミックのうち最後まで仕様が把握できなかったものがひとつあり、また失敗すると強制ワイプのギミックであったため非常に苦戦した。ボスの難易度はステージを進めるごとに上昇していくのだが、ステージ3のボスにかなり複雑なギミックが存在し、難易度曲線はここでかなりの急勾配を描いているように感じられた。スキルの入れ替えこそあれどプレイヤーキャラクターがステージを跨いで大きく強くなることはなく、またいわゆるボスの時間切れワイプは存在しない(細かいDPSチェック自体はある)ので、ギミックの難しさがそのままボスの強さである。それを踏まえると、ステージ3のボスはステージ4のそれよりも強いと言っても過言ではないだろう。


独自要素

そんな本作だが、『FF14』の戦闘とは決定的に違い、本作独自のテイストを作り出している仕様が3つ存在する。

1つ目は「キャラクターは極力移動させない方が良い」という点だ。3ロールともに移動せずにその場で棒立ちしているパッシブのスタックが溜まっていく。タンクは被ダメージの割合軽減、ヒーラーは自分と自分に最も近いキャラクター対象のリジェネ、DPSはオートアタックダメージの上昇がこのパッシブによって発動し、累積していく。このパッシブの効果は激烈で、例えばDPSであったらパッシブ未発動では100前後のオートアタックダメージが最大のスタック5では500近くまで増加する。ヒーラーに関しても、マナを消費しクールダウンも長く詠唱も必要なスキルヒールだけではパーティーを立て直すのは難しく、パッシブスタックの維持(とヒール対象との相互の立ち位置)が非常に重要となっている。とにかく「動く必要がない時は動かない」ことを要求されるシステムとなっており、それを実現するためのタイムラインやギミックの把握も重要だ。

2つ目は「スキルの詠唱はキャンセル不可能」という点。各キャラクターが3つまでセットできるスキルにはそれぞれ詠唱時間が設定されており、詠唱中は移動ができない。詠唱をキャンセルして移動することもできないため、詠唱中にギミックが来た場合はまず対処できない。なので基本的にスキルは「次のギミックは自分に来ないと把握している時」もしくは「ギミックが来た直後など、次のギミックまで十分に時間的な猶予がある時」にしか使えない。どのスキルもクールダウンは長めに設定されているので焦って回す必要もないのだが、ちょっとした油断はすぐミスに繋がってしまう。ちなみに詠唱時間とは言ったが実際は詠唱の7割程度でスキル自体は発動しており、スキル発動後の硬直時間を含めての時間となっている。そして当たり前だが「滑り撃ち」は出来ない。


そして3つ目が「3ロール全員が蘇生可能」ということだ。ヒーラーしか蘇生できなかったらヒーラーの責任が恐ろしいほど重くなってしまうのである意味当たり前なのだが、全体的にシビアなゲーム性の中でこの蘇生システムはかなりの有情仕様となっている。蘇生には特別な詠唱やスキルは必要とされておらず、基本的にパーティーメンバーの死体の上に立っているだけで良い。ゲージが溜まり切ると蘇生となり、特にデメリットもなくHPは300の状態で復活する。連続で蘇生するとゲージの溜まりは遅くなるが、よほど何度も死なない限りは気になるほどではない。本作ではヒーラーのヒール能力はあまり高くなく、特にDPSへのヒールはクールダウンの長いスキルヒールに依存する部分が多い。復活時にデバフもリセットされる以上、瀕死のDPSは必死にヒールするよりさっさと死んでもらって蘇生した方がてっとり早いことも多い。この優秀な蘇生システムのおかげでいわゆる「ゾンビアタック」方式でギミック処理をことごとく失敗しつつもクリアしてしまうことは多い。

総評

本作のボスの繰り出してくるギミックには『FF14』で見たことがあるようなものが多い。オマージュというのもあるのだろうが、本家『FF14』ですらその9年の道のりで戦闘システムが許す限りのさまざまなギミックアイデアをあらかた実装しつくしており、最近は既存のギミックの組み合わせが多いという状況だ。そんな中で、似たような戦闘システムで全く斬新なギミックを期待するのも若干酷な要求というのはあるだろう。


一方で、「ひとつひとつは単純で対処の簡単なギミックでも、ひとつミスをするとじわじわとパーティーの状況が悪くなっていき、その後のギミック処理にも影響が出ていき、最終的にはどこかで決壊して全滅する」というプレイ体験自体はまさに『FF14』のエンドコンテンツそのものであり、そこのバランス感覚と再現度にはかなり舌を巻いた。前述のような独自のシステムでちょっとした味付けをしてあるところも含めて、『FF14』経験者にもそうじゃない人にもオススメできる作品となっている。ただ3ロール全てをプレイすることを加味しても若干ボリューム不足の面は否めないので、今後のアップデートや正式リリースにも期待していきたい。

『TrinityS』は、Steamにて早期アクセス配信中だ。