『レインボーシックス エクストラクション』は、静と動を司る、正真正銘のタクティカルシューター。先行プレイで見えてきたこと

『レインボーシックス エクストラクション』リポート。本稿では、パッと見ただけではわかりにくい本作の魅力をお伝えしたい。

レインボーシックス エクストラクション』(以下、『エクストラクション』)は、最大3人でプレイ可能な協力型タクティカルシューターだ。『レインボーシックス シージ』(以下、『シージ』)でお馴染みのキャラクターたちが、未知の生命体「アーキエン」の謎を解明すべく、侵食されたアメリカ各地へ赴く。今回の先行プレイでは、ソロプレイ専用のチュートリアル「VR訓練」のほか、メインコンテンツとなる複数のマップを、他メディアの人々と共に計3人で、約4時間にわたってプレイすることができた。本稿では、パッと見ただけではわかりにくい本作の魅力をお伝えしたい。

結論から述べると、本作はまごうことなき“タクティカルシューター”だ。PvPで鮮烈な争いが繰り広げられる『シージ』のテイストを引き継ぎつつ、PvEという新たな切り口で描かれるのが、『エクストラクション』だ。なお、キャラクターは引き継がれているものの、物語の関連などはない。本作から『レインボーシックス』シリーズに触れても全く問題はない。


そもそも、何をするゲームなのか

本作のメインコンテンツは、マップの攻略だ。「ニューヨークシティ」や「サンフランシスコ」など、アメリカの各地をモチーフとした4つのマップが舞台となる。各マップは3つのレベルに分かれており、合計で12のレベルが存在することになる。それぞれのレベルは、『シージ』と同様に複数の階層で構成されているものが多く、破壊可能な壁や、破壊することで下の層へ移動できる穴「落とし戸」などが見られる。緻密に配置されたオブジェクトや、プレイヤー自らが破壊して道を作ることができるなど、その構造は複雑だ。なお、壁の破壊に必要な弾数は控えめで、新たな射線の作成は『シージ』よりも容易になっている。

そして、それぞれのレベルで1つずつ、ランダムな目標が設定される。目標は、特定のアーキエンを捕獲するものや、ターゲットを撃破するもの、爆弾を運んでターゲットを爆破するといったものだ。レベル1では目標Aを、レベル2では目標Bを……と、徐々にクリアしていくというのが基本的な流れとなる。なお、目標内容はオペレーター選択時点で確認できるので、適したオペレーターや、後述するTechアイテムを考えることができる。


目標の一つを紹介すると、たとえば「破壊」が挙げられる。上動画のレベル2でも扱っている内容だ。これは、エリア内のどこかにある「アーキスパイン」に爆弾を設置し、破壊が完了するまでアーキエンの波状攻撃をしのぐというものだ。

レベルスタート時、アーキスパインのような目標物は、基本的に位置が不明であり、まずはフィールドから目標物を探し出す必要がある。この時点ではアーキエンたちはこちらの存在に気づいておらず、忍び寄れば背後からテイクダウンで倒すことができる。また、随所にアーキエンが無限に湧き出す「ネスト」が鎮座しているが、こちらもアーキエンに見つかっていない状態であればノーリスクで破壊できる。つまり、弾薬やHPを消費せずに無力化していくことが可能というわけだ。

緊張感のある静けさのなか、仲間とコミュニケーションを取りながら次々とアーキエンを無力化していくのは、特殊部隊感が強くて楽しい。また、小さなラジコンのような索敵機「ドローン」を操作してサクッと目標を見つけるほか、先の空間の敵を見つけることもできる(本作のドローンは『シージ』とは異なり、制限時間付きのバッテリー駆動式だ。クールダウンで復活する)。

目標を発見したら、爆弾を設置し、破壊までに襲い来るアーキエンの攻撃を耐えしのぐ。襲ってくるアーキエンにも複数の種類があり、シンプルに殴りかかってくる「グラント」や、発射体を的確に射撃してくる「スパイカー」、近づいて自爆する「ブリーチャー」など、特徴を持ったものが登場する。別のミッション目標では、オペレーターの形を模した「プロティアン」も存在する。こちらは「特異点」に存在する、いわばボスのようなアーキエンだ。


目標を達成したら、レベルにあるエアロックへ向かい、次のレベルへ進む。基本はこの繰り返しだ。


目標に合わせたオペレーター/ガジェット選択

前述のとおり、目標はオペレーターピック前に確認することができる。目標に合わせたオペレーター/ガジェットの選択による戦術の組み立てが求められるというわけだ。たとえば、敵をスニークで倒してサンプルを得る目標「生検」では、一時的に敵から姿を消すことができるオペレーターVigilや、敵の目を欺くTechガジェット「スモークグレネード」が有効だろう。また、特定のエリアを一定時間確保する目標「シリアルスキャン」では、デコイで敵を引き寄せるAlibiや、タレットのようなガジェットを持つJagerが便利だろう。オペレーターやガジェットの選択時点から、戦術を話し合うことができる。


また、オペレーターごとにレベルが設定されており、マップクリアなどで得た経験値であがっていく。レベルに応じて、固有アビリティの能力がアップしたり、使用可能な武器が増えたりする。たとえば、味方を回復/蘇生する「スティムピストル」を持つオペレーターDocは、初期状態ではメインアームにショットガンしか持っていないが、レベルを上げることでサブマシンガンや、マークスマンライフルが開放されるほか、スティムピストルでの回復量がアップする。ゲームの序盤は、オペレーターのレベルをあげつつ、各目標に慣れていくのが良いだろう。『シージ』プレイヤーに補足すると、GIGNやGSG-9といった部隊のくくりで武器が設定されているようで、Docが、Twitchなどのマークスマンライフル「417」を最終的に装備可能といった、ユニークな組み合わせも見られる。


サブガジェット的位置づけであるTechアイテムは、スモークグレネードやドローンといった、『シージ』などのFPSでお馴染みのものはもちろん、敵の動きを鈍くする「グルーグレネード」や、自動でオブジェクトをスキャンする「XR偵察ドローン」といった、『エクストラクション』でしかみられないものも存在する。

『シージ』でおなじみのインパクトグレネードも健在だ


目標を見送るという選択肢

本作において特徴的なのが、レベルに設定された目標をクリアしなくても次のレベルへ進めるという点。次のレベルへ向かうためのエアロックは、常時開放されている。たとえば、今回の先行プレイ中では、スニーキングが必要な目標であったが、誰もスモーククグレネードや適したオペレーターをピックできず、あげく敵に見つかってしまうという場面があった。そんな場合には目標をスルーすると判断し、次のレベルへ向かってしまえば良いわけだ。また、次のレベルへのエアロックのほかに、脱出用のヘリパッドも同様に常時開放されている。ここで脱出要請をすることで、レベル攻略の最中でも、ミッションを終えることができる。当然ながら、クリア時と比べて得られる経験値が減少するというデメリットは存在するが、なぜこのようなシステムが必要なのか。それは、限られたリソースと、引き継がれる体力システムにある。


ミッションを跨ぐ体力システム

各レベルには、弾薬やTechアイテムなどを補充するオブジェクトが設置されているが、特に3つ目のレベルではそれらがほとんど落ちていないことが多い。序盤に弾薬を多く使ってしまうと、後半に枯渇し、泣く泣く撤退を余儀なくされる場面も出てくるだろう。

特に重視するべきは体力管理だ。マップ攻略中に減ってしまった体力は、ブーストはできても回復はできない。ブーストによってレベル内で一時的な回復はできるが、脱出時にはブースト以外の体力がそのまま引き継がれることになる。そして、体力が低い状態で帰還したオペレーターはステータスが負傷状態となり、一時的に出撃が不可能になるのだ。これは、別オペレーターでミッションをクリアすることで、一定の体力が回復していき、再び出撃可能になる。なお、レベル攻略中に倒されると、一度目はダウン状態となり、サイドアームでのみ射撃可能な状態となる。このケースだとまだ味方が蘇生できるが、二回目は完全に操作不能な「気絶」となる仕様だ。

気絶した場合、残ったプレイヤーがそのまま続行しても良いし、ヘリパッドで脱出し、安全に経験値を得ても良い。脱出する場合、気絶した味方の身体を、ヘリパッドの回収ポッドへ移送することが最善だ。もしそのまま生き残ったプレイヤーのみで脱出してしまった場合、気絶したプレイヤーのオペレーターはMIA(Missing in action=行方不明)となってしまい、もちろんそのあとに出撃することはできない。取り戻すには、MIAに陥ったマップで別のオペレーターで出撃し、MIAがある場合のみ発生する救出目標をクリアすることで再び使えるようになる。つまるところ、常に体力には気をつける必要があるということだ。


長々と説明してきたが、体力が削られるデメリットが大きく、気絶したら回収が求められ、更にリソースが枯渇していき、さまざまな面でじわりじわりと追い詰められていくというわけだ。このハイリスクなシステムが、前述のスニークでのゲームプレイに緊張感をもたらしている。

なお、本作には、前述のオペレーターごとの進行のほか、マイルストーンと呼ばれる進行も用意されている。マイルストーンは、マップのクリアなどで経験値を貯めることでレベルアップし、逆にミッションに失敗すると減ってしまう。マイルストーンは、レベルがひとつ上がるたびに報酬が得られ、武器などのスキンや、Techアイテムを解放できるポイントのほか、一部のマイルストーンではマップやオペレーターが解放されていく。仮にマイルストーンレベルが下がってしまっても、解放したものが消えることはないようだ。


緊張感を刺激する静と動

本作は、先行プレイをした限りでは、難易度的に難しい印象を受けた。筆者を含め、参加した3名は『シージ』プレイヤーであったが、最初に挑んだミッションはあっけなく全滅した。だが、何回かプレイすることでゲームのコツを掴むことができた。最初は目標を慎重に探そう、と声をかけあったり、弾薬の数を共有して、誰が先頭に立つか考えたりと、タクティカルな試行錯誤が刺さると気持ちが良い。戦略を立てつつ、味方との連携がひとつの鍵となる点は、『シージ』に極めて近い。補足すると、ホイールで選択可能なラジオチャットや、敵やオブジェクトにPingを立てて共有する機能も実装されているので、安心してほしい。

そして、スニークで敵を無力化していく “静”の時間では緊張感が味わえ、波状攻撃をしのぐような“動”では、派手で混沌としたシューティングに移行する、対極なゲームプレイのメリハリが楽しい。また、『シージ』から受け継がれた、壁越しに敵を待ったり、咄嗟に射線を創り出したり、テクニカルな動きが有効に働いたときの気持ちよさはたまらない。アーキエン撃破をはじめ、仲間にプラスになる行為は画面上にスコアとして表示されるが、貫通で敵を倒すとスコアがアップするのも嬉しい。個々のテクニカルなゲームプレイと、チームタクティクスの組み合わせによる独特の楽しさは、『シージ』と深い結び付きがある本作ならではといえる。

ハンマーを振り下ろしているのは、オペレーターを模したアーキエン「プロティアン」


最後に『シージ』プレイヤーへ語りたい。『シージ』で慣れ親しんだガジェットたちを使える楽しさはもちろんだが、Lionが、ナーフされる前の輪郭がくっきり浮かび上がるものであったり、JagerのADSがタレットのような強力な効果を持っていたりと、オペレーターの新たな側面が楽しめる。また、トレーラーでも確認できるとおり、『シージ』キャラクターたちが美しいグラフィックで動いているカットシーンなどは、ファンとして嬉しいものがあるだろう。『シージ』古参プレイヤーとしては、イヤー3シーズン1で限定開催されたCo-opモード「アウトブレイク」が思い起こされる。襲いくる敵を倒すシューティングを楽しみつつも、エイム練習になるモードとして記憶に残っているのではないだろうか。それをより本格化したのが『エクストラクション』というタイトルだ。一見の価値はあるだろう。

『レインボーシックス エクストラクション』は、2022年1月20日 、PC(Epic Gamesストア/Ubisoftストア)およびPlayStation 5/PlayStation 4/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売予定。本作はプラットフォーム間のクロスプレイ、クロスプログレッションにも発売時点から対応する。また、発売日よりXbox Game Pass/PC Game Passにも提供予定だ。

Sakutaro Okano
Sakutaro Okano

フッ軽ゲームライター。生きている実感を得るため、FPSを中心にド派手なハリウッド的アクションゲームを貪って生きている。

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