PS4『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』紹介&先行プレイレビュー。荒唐無稽なクライムアクションは、どのように生まれ変わったのか


DMM GAMESは10月29日、オープンワールドクライムアクション『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』を発売する。対応プラットフォームはPlayStation 4で、価格は4800円(税抜)。本作は、2011年にPC/PS3/Xbox360向けにリリースされた『セインツロウ ザ・サード』(原題:Saints Row: The Third)のリマスター版だ。今回DMM GAMESより先んじてリマスター版のゲームコードを提供いただいた。よって本稿では、ゲーム内容を紹介しつつ、実際のプレイを通じて抱いた感想を述べていく。
 

 
レビューに入る前にまず、オリジナル版の『セインツロウ ザ・サード』について触れておきたい。同作は、オープンワールドアクションゲーム『Saints Row』(セインツロウ)シリーズの第3作目として2011年にリリースされた。ギャング同士の抗争を主軸としたストーリーやアウトローな世界観、バラエティ豊かなアクティビティの数々など、過去シリーズの魅力は継承。一方で、あらゆる面においてバカバカしさがスケールアップ。クライム要素をメインに据えながらも、そのゲームプレイは全編に渡り陽気なノリ全開で展開されていく。いわゆるバカゲーとしての路線を確立させた最初のシリーズ作品でもあり、そのスタンスは続編の『Saints Row IV』(セインツロウIV)にも引き継がれることとなった。

そんなオリジナル版を現世代機向けに再構築した作品が、今回レビューする『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』というわけだ。前述したようなハチャメチャなゲームプレイと世界観はそのままに、本作ではグラフィック表現が一新。具体的には、武器モデルや車両デザイン、都市のテクスチャなどが0から作り直されている。

こうしたビジュアル面の強化について、実際にプレイしてまず感じたのは、主人公含むキャラクターの質感がリアル寄りになっているということ。オリジナル版ではバカゲー路線の強化とともに、見た目のコミカル化が図られたキャラモデルであるが、本作では顔の造形が大幅にナチュラルになっている。また服装の質感もより精細に表現されており、生地の素材の特徴が分かるほど見た目が進化している。
 

 
そして何よりも、マップ上の表現について、オリジナル版から一目ではっきりと違いが分かるほどに進化している。まず遠景描写が鮮明になっており、街の密度が上がっている印象が強い。それにくわえて、よく見ると道路や鉄橋の錆や汚れなども細かく表現されており、オリジナル版よりもかなりリアルな空気が本作の舞台である、スティールポートにもたらされている。さらに光の表現も強化されているようで、日中であれば太陽の光が車のボディやアスファルトを明るく照らし、夜になれば街灯やネオンが煌びやかに輝く。総じて、明暗の差がオリジナル版よりもハッキリしており、人物だけでなく街並みもまた写実的な方面にグレードアップしている。
 

 
そのほかにも、爆破表現や、マップ上の人物・オブジェクトの数も向上しており、オリジナル版よりも全体的にリッチなゲームに仕上がっている。その恩恵をもっとも感じられたのがアクティビティの「メイヘム」だ。同アクティビティでは大量のオブジェクトを破壊することになるが、その際の迫力や車両・NPCの密度が大幅に進化している印象を受けた。もともとカオスな内容だったが、リマスターによってさらに混沌としたゲームプレイを味わえるようになっていると言えるだろう。
 

 
ここからは、『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』のゲーム内容を紹介していく。本作はリマスター作品であるため、基本的な内容はオリジナル版と同様のものとなっている。そのため、当時プレイした方にとってはすでに知っている情報ばかりかもしれない。その場合は、本稿をゲーム内容の振り返りとして活用していただければ幸いだ。

本作の物語は、オリジナル版の前作にあたる『Saints Row 2』の数年後からはじまる。主人公率いるストリートギャング団「サード・ストリート・セインツ」は、今や世界に名声をとどろかせる一大組織にまで登り詰めていた。複数のギャンググループがにらみ合うスティルウォーターを手中に収めたことで、国民はセインツをポップカルチャーの象徴として称賛。オリジナルブランドを展開し、さらにセインツを題材とした映画が制作されるなど、その勢いはメディアをも巻き込み、とどまることを知らない。そんな中、セインツのもつ輝かしい地位を狙う犯罪組織も数知れず。セインツに戦いを仕掛けるグループが現れるのも時間の問題であった。

こうしたストーリー内容のテロップがゲーム本編を開始すると最初に流れるわけであるが、この時点で本作特有の悪ノリは全開。著名なクラシック曲「ツァラトゥストラはかく語りき」をバックに、明らかに某宇宙映画のオープニングロールにそっくりな演出でテロップが流れていく。そう、本作のアイデンティティであるバカバカしさの中には、さまざまなエンタメ作品からのパロディ・オマージュも多分に含まれており、『セインツロウ』流のアレンジが施された“どこかで見たことのある演出”が随所に散りばめられているのだ。パロディ元を知っていると思わずニヤリ、というよりかは、フフッと声を漏らしてしまうような見せ方が多く、筆者は何度か清々しいまでのパロディ演出に口元が緩んだ。こうした要素については特にメインミッションにおけるムービー中にたっぷりと詰め込まれており、本作のユーモラスな世界観を強調する役割として、プレイヤーにいい意味での脱力感を与えてくれることだろう。
 

 
前述したオープニングロールが終わると次にはじまるのは、チュートリアルを兼ねた銀行強盗ミッションだ。プレイヤーは相棒のジョニー、女幹部のショーンディ、雑用係(?)のピアース、そしてうぬぼれ気質なドラマ俳優ジョッシュらとともに金庫の開錠を目指す。このシーンでは敵との銃撃戦も繰り広げられ、プレイヤーは実際の戦闘を通じて移動・射撃にかかわる基本的な操作を覚えていく。その最中にもユニークな会話やぶっ飛んだ演出などが次々と展開されるため、チュートリアルの段階から破天荒なギャングの世界へ一気に引き込まれる。特に主人公たちが“プランB”に切り替えてからの一連の流れには、息をつく暇もなかったほどだ。

かなり激しめのチュートリアルが終わると、いよいよ今度はキャラクタークリエイト画面へと移行する。シリーズ共通の特徴でもある、主人公の高いカスタマイズ性は本作でも健在。体型や年齢はもちろん、顔の各パーツにおける調整幅がかなり広く、鼻についてはその高さや鼻腔の大きさなど含め、20項目ものスライダーが用意されている。また爪の色やフェイスメイク、虹彩の色など基本項目だけでも豊富で、果ては“アレやコレ”を大きくしたり小さくしたりできるセックスアピールも調整可能だ。その組み合わせは無限大であり、腕次第では著名なハリウッドスターやゲームキャラクター、また自分や身の回りの人にそっくりな主人公さえ作れることだろう。人によっては、キャラメイクだけで何時間も費やすことになるかもしれない。
 

 
キャラメイクが終わり、やっと街に出られる……わけではない。銀行強盗からいろいろあり、主人公らセインツ一味は、今度はジェット機の中でミッションを遂行することとなる。それから一連の流れを経てやっと街へ降り立つわけであるが、そこまでの展開もまたセインツ節全開。映画「ミッション:インポッシブル」ばりの(もしくはそれ以上かもしれない)危険な状況に挑んでいく主人公の姿には、素直に言って唖然とする。ハチャメチャでありながらスタイリッシュ。ド派手なハリウッドアクション映画並みの超展開に、心躍ること間違いなしだ。

そんなこんなでチュートリアル含めて2つのミッションを終えると、ついに本作の舞台であるスティールポートに到着する。この街は大きく4つの地区に分かれており、各エリアにてそれぞれ異なる犯罪グループが勢力拡大を目論んでいる。中央のダウンタウンはビジネスが盛んであり、高層ビルが多く建ち並ぶ。一方、東の地区では風俗街がギラギラと欲望の輝きを放っており、ストリップ劇場やSMクラブなど大人向けの建物がやたらと多い。ほかにも空港エリアや、自由の女神っぽい銅像が建てられた孤島など、街の景観は多彩だ。とはいってもギャングが住まう街。基本的には落書きだらけだったり、娼婦が歩き回っていたりと、見るからに治安の悪そうな場所が大部分を占めている。
 

 
本作のゲームプレイについて、メインミッションは仲間に電話をかけることで開始できる。メインミッションを通じては敵ギャングとの抗争や仲間との出会い、そして味方との軽妙な会話などが繰り広げられ、およそギャングとは思えない非常に軽いノリで依頼や作戦をこなしていく。特筆すべきは、そのバリエーションの豊かさ。冒頭に述べたチュートリアルや航空機での戦闘でかっ飛ばしたかと思えば、それ以降のミッションもカオス満載。車をも吹き飛ばす大男との戦闘あり、人力車でのカーチェイスあり、サイバー空間へのダイブありと、シチュエーションは目まぐるしく変化する。多くのミッションにおいてトンデモ展開が待ち受けていることもあり、筆者はプレイ中に早く次のシナリオを見たいという欲求に駆られていた。

一方で、メインシナリオのボリュームについては、昨今の大作オープンワールドゲームと比較すると少し物足りない印象。おそらくメインミッションだけを追った場合、3日もあればエンディングに辿り着けるといったところか。ただし、難易度によってはもう少しクリアまでの長さは上下するかもしれない。本作にはEASY/NORMAL/HARDの3つの難易度が用意されており、難易度を上げるごとに敵の体力と攻撃力が上昇する。筆者は終始NORMALでプレイしていたが、特に詰まるポイントはなかった。ただし一部のミッションにおいては、後述するスキルを多く取得しておく必要があると感じたシーンもあり。難易度については、ゲーム中いつでも変更可能なため、ミッションごとに自分にあった難易度を選ぶのもいいだろう。

メインミッションのほか、本作にはさまざまなアクティビティも用意されている。各種アクティビティはスティールポートの至るところに点在しており、その内容はかなりユニーク。走行中の車両にわざとぶつかり、目標金額を稼ぐ「保険金詐欺」。後部座席に乗せた虎を怒らせないように高速運転する「タイガーエスコート」。シリーズお馴染み、銃火器を用いて街を破壊し、その被害総額を叩き出す「メイヘム」。日本のコメディ番組チックな狂気じみたTVショーに参加する「天才ゲンキ博士の超絶有頂天倫理委員会」などなど、コンセプトからしてぶっ飛んだサイドゲームの数々に、プレイヤーは好きなタイミングで挑戦することができる(一部のアクティビティはメインミッションを進めないと出現しない)。
 

 
ほとんどのアクティビティには複数の難易度が用意されており、レベルが高いほどクリア時の報酬が豪華になる。報酬にはお金のほか、リスペクトと呼ばれる経験値も含まれている。リスペクトを貯めることで主人公はレベルアップ。レベルが上がると、主人公をアップグレードする際に選択可能なスキルの種類が増加する。スキルには体力アップや弾薬の増加といったシンプルなものから、車両へのニトロ装着を可能とするもの、また自身ではなく、仲間のギャングを強化するスキルまで、多くの種類が用意されている。このスキルの解放が本作の妙味となっており、ゲーム進行へのモチベーションは、こうした主人公のアップグレード要素が握っているといっても過言ではない。

その理由は、主人公を短いスパンでアップグレードできる点にある。スキル解放に必要なリスペクトは、前述したアクティビティやメインミッションのクリアのほか、コスメアイテムの購入や車のカスタマイズ含む、チャレンジングな行動(車両のニアミスやヘッドショット、ドリフトなど)や、デバージョンと呼ばれるミニゲーム(強盗や車両のルーフ上でのサーフィン、ストリーキングなど)の達成によっても稼ぐことが可能となっており、経験値を取得するための手段は豊富に用意されている。つまり、特に意識しなくとも、遊んでいるうちにリスペクトが貯まりやすいゲームデザインとなっているわけだ。

そのため、レベルアップまでのスピードも早く、特に序盤から中盤にかけては続々と新スキルが解放されていく。そうして解放された能力を取得すると、より無茶なアクションを起こしやすくなったり、カスタマイズの幅が拡がったりといった具合に、ゲームプレイそのものにも変化が加えられる。そして再びリスペクトが貯まりはじめ、気づけば次のレベルに。このサイクルが非常に気持ちよく、やめどきが分からなくなる。主人公の成長スピードの早さがハイテンポなゲームプレイの実現に一役買っており、単調になりがちな目的地までの道のりにも刺激を与えていると筆者は感じた。
 

 
本作では前述したリスペクトだけでなく、お金を稼ぐことも重要となる。武器・服の購入、車の改造、見た目の変更、そして主人公のアップグレードにもマネーが必要だ。基本的にはミッションやアクティビティを達成することで収入を得られるほか、物件を買い取ることで定期収入を増やすこともできる。購入可能な物件の中には、武器ショップやアパレルショップなどのプレイヤーが利用する店舗も含まれており、それらを買うと、取り扱いアイテムの割引やギャング・警察からの悪評度の帳消しといった恩恵を受けとることも可能。お金はいくらあっても困らない。一方で、稼げるスピードはリスペクトよりも遅め。うまく資金繰りするためにも、建物への投資は積極的におこなっていきたい。

さて、ここまでリスペクトとお金の役割について述べてきたが、今度はカスタマイズ要素について触れておきたい。本作では冒頭に述べたキャラメイクをはじめ、車両と服装も自由に変更することができる。これらのカスタマイズ性は、かなり幅広いものとなっており、車両であれば性能のアップグレードからボディの改造、ホイールの取替えまで可能。そして主人公の服装については、上着やボトムはもちろん、靴やピアス、また下着まで変更できる。ベースとなる項目だけでもかなり多いが、さらにカラーも細かく調整可能で、各種アイテムひとつにつき、色の変更箇所が2つ3つあったりする。そのうえ、各項目のアイテム数自体もかなり豊富に用意されているため、カスタマイズの幅は無限大といっても過言ではない。
 

 
こうしたカスタマイズ性の高さはシリーズを通じて培われてきた面でもあり、本作においてもその特長を存分に味わえる。ただし、ゲーム中は三人称視点で展開されることもあり、正直なところ、ピアスなどの細かなパーツの見た目は分かりづらい。一方、主人公がアップになることの多いカットシーンにおいては、そうした細かなカスタマイズ箇所も映えている。また冒頭に述べたキャラメイクについては、ゲーム中に整形外科に立ち寄ることでいつでも変更可能だ。総じて、本作のカスタマイズ要素は非常にフレキシブルであり、プレイヤーの主人公に対する愛着を深めることに成功している。もっと言うと、自分だけのスタイルを築きたいという、一種の自己実現の欲求を満たすことにもつながっている印象も受けた。それほどカスタマイズ性の高さには、力が注がれている。

ハイテンポなゲームプレイと奥深いカスタマイズ性、いずれも本作を語るうえで欠かせないエッセンスであるが、やはり作品の根幹を成しているのは清々しいほどのバカバカしさだ。シリアスなどどこ吹く風、これまでに述べたメインミッションやアクティビティの内容をはじめ、そのハチャメチャ具合は武器や乗り物にも強く反映されている。たとえば「怪しいバット」。ゲーム内の紹介によると、独特な怪しさを醸す致死性ありのバットのようだが、その見た目とウネウネした動きから察するに、もし形状に規制が施されていなかったら、問題になっていたかもしれない。
 

 
上の画像に写るのは、「Gatmobile」という名の乗り物。セインツの幹部、ジョニー・ギャットの顔をあしらったデザインが特徴的な代物だ。まず見た目のインパクトが大きいが、機能面もイカしている。なぜなら、ジョニーの加えているタバコの部分は火炎放射器だからだ。運転中はいつでもどこでも、街を火の海にできる。あるいは敵ギャングとの抗争で活用するのもいいかもしれない。ちなみに、クラクションを鳴らすと暴言を放つといったミニ仕様も搭載されている。ここまでくると、そもそも乗り物というよりかは兵器ではないかとの疑問が浮かばないでもないが、それはさておき、スティールポートで暴れ回るにはぴったりのモービルだ。

以上に挙げたように、本作にはユニークな武器や乗り物も多く登場する。先ほど紹介したのはほんの一部であり、まだまだ理解の追いつかない性能や見た目をしたものが盛りだくさん。そのほとんどにおいてギャングが使うにしては明らかに過剰な性能だったりするのだが、スティールポートではそれぐらいが丁度いいのだろう。こうした、いわゆるネタ武器・車両の存在は本作のバカバカしさに磨きをかけており、街で暴れ回る動機づけとしても機能している。発見するたびに“これを使って街を混乱に陥れたい”という衝動に駆られるのは、本作特有のゲーム体験と言えるかもしれない。

もちろん、スタンダードな乗り物や武器もたくさん用意されており、その種類も豊富。乗り物でいえば、スポーツカーやボート、ジェット機やサイバービーグルなど。武器だと、ハンドガンやライフル、ロケットランチャーや空爆要請機などが用意されている。なお、これらの武器はショップにてアップグレードが可能で、お金を消費して強化することもできる。また車両については、そのすべてでラジオをつけることができ、ロックやテクノ、80’sからクラシックに至るまで、さまざまなジャンルの実在する曲を運転中に聴くことが可能(ラジオ局のカスタムやプレイリストの作成も可)。特に80’sの曲の中には日本でも馴染みのあるものも含まれており、ボニー・タイラーの「Holding Out for a Hero」が流れた際は、筆者はついノリノリで運転してしまう。
 

 
そのほか、ゲームプレイ全体を通じた主人公のアクションにも破天荒なエッセンスが加えられており、たとえば乗り物のハイジャックひとつにしても、窓ガラスをぶち破って乗っ取るモーションが存在する。また、NPCにまたがっての馬乗り攻撃やプロレス技、果ては急所を突く動作が用意されているなど、いちいち無茶苦茶。これらの動作は演出で楽しませてくれるだけでなく、ゲームプレイの爽快感にもつながっており、主人公の軽い操作感と世界観の荒唐無稽さと相まって、ストレスフルかつユーモアのある体験を与えてくれる。

以上のように本作には、ユニークな要素が大量に詰まっており、シナリオ、NPC、武器、乗り物、演出など、あらゆる面においてバカバカしさを極めている。一方で、ゲームシステム自体は良くも悪くもかなりシンプルだ。プレイヤーは建物の購入や各種ミッションのクリアなどを通じてスティールポートの各地区における占拠率を上げていくこととなるのだが、その過程で筆者は、少しばかりの単調さを覚えることもあった。というのも、占拠率の上昇に必要なアクティビティにおいて、やはりメインミッションと比べるとその内容の変化の少なさが目立つ。アクティビティの種類自体は10種ほど用意されているものの、そのどれもが同じような行動を繰り返すものとなっており、ゲームを進めていくうちに多少のマンネリを感じたことは事実だ。

また本作はオープンワールド作品であるが、マップ探索という面においてはコンテンツ不足感が否めない。スティールポートには多くの高層ビルやマンション、怪しいお店が並んでいるものの、入れる施設の数はかなり限定的。基本的にはこれまでに述べてきた、武器・アパレルショップや、整形外科などのゲーム上重要な店舗がほとんどを占める。つまり、娯楽要素や観光要素のある建物はほとんどないため、マップ探索へのモチベーションが筆者的には起こりづらかった。ただし、隠しアイテムの収集要素やスタント箇所の発見などは用意されており、まったく探索要素がないわけではない。とはいってもやはり、魅力的な外観をもつ建物が多いだけに、フリーローミング中は少しモヤモヤした気持ちになった。
 

以上が『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』をプレイした感想となる。ここまで読んでくれた方ならお分かりだと思うが、本作には重厚なストーリーや革新的なゲームシステムといったものは用意されていない。むしろゲームプレイは一貫してシンプルであり、オリジナル版が約9年前の作品だということも踏まえると、昨今のオープンワールドゲームと比べた場合、その質も量も物足りない面があるかもしれない。しかし、本作には本作の世界でしか体験できないようなバイオレンスとセクシュアルさがふんだんに盛り込まれており、それらは丁寧なリマスタリングによってさらなるエッジを効かせている。

また、これでもかと言わんばかりのぶっ飛んだつくりと、ストレスフリーかつ爽快なゲームデザインは、オリジナル版から良い意味で変わっていない。プレイヤーに振り切ったユーモラスさを与える一方で、荒唐無稽な暴力を求める本作は、“何も考えずに楽しめるゲーム”として随一の魅力を放っていると言えるかもしれない。オリジナル版をプレイした方にとっては安心感がありつつも新しい、未プレイの方にとっては他のオープンワールドゲームとはひと味違うユニークな体験が待っていることだろう。
 

 
なお、『セインツロウ ザ・サード:リマスタード』には、オリジナル版向けに配信された30以上のDLCがすべて収録されている。また、オリジナル版にあったマルチプレイモードや敵のウェーブを切り抜ける「千人切りモード」も用意されており、まさに決定版とも言える内容となっている。そんな本作は、PS4向けに10月29日発売予定。本作の公式サイトからは、各取り扱い店舗に向けてのパッケージ版の予約が可能だ。購入を検討している方は、こちらのページをチェックしておこう。