アークシステムワークスの『GUILTY GEAR』最新作、『GUILTY GEAR -STRIVE-』のクローズドβテストが4月17日から19日にかけて開催された。2020年後半発売予定で、新規プレイヤーも見越してシステムから抜本的に見直したという本作。プレイアブルデモなどはEVO JAPANにも出展されていたが、オンラインで遊べるβテストは今回が初めてとなる。本稿では、実際にテストに参加し対戦を一通り楽しんだ上で軽くインプレッションをお届けする。
演出も試合内容も派手
今回のテストで使用可能であったのはソル、カイ、メイ、アクセル、ポチョムキン、チップ、ファウストの7人だ。どれも『GUILTY GEAR』シリーズを代表する有名キャラたちである。過去作とほぼ同じような技構成のキャラもいれば、大胆に変更されたキャラもいるが、今回はキャラごとの新技や細かい変更点などは一旦置いておき、オンラインマッチングでの対戦経験を踏まえて本作のプレイフィールについて触れていく。
このゲームをプレイした人誰もが最初に抱く感想であろうが、本作はとにかく演出が派手である。まず何が派手かと言うと、とにかく文字がでかい。コンボの数字が画面の半分くらいの大きさはある。そして過去作に比べてカメラが近い。画面に対してキャラの占める割合が大きいため、技のエフェクトもいちいち近いしでかい。ロマンキャンセル演出の円ですら画面の大半を覆う勢いだ。また、攻撃のヒットストップも多めに設定されている。格闘ゲームにおいて派手にヒットストップするのは大技がカウンターで入った時というイメージがあるが、本作ではどの技もヒットストップするのでもはや「何が当たってもめちゃくちゃ痛そうに見える」塩梅である。特に大技がカウンターした時の演出は必見で、ただでさえ文字がでかい本作でも指折りに巨大な「COUNTER!」の表示と同時に丸々1秒近くヒットストップする。『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』では試合を決める撃墜技がヒットした時にリーサル演出が追加されたが、あれに近いレベルの演出だ。
かなり「派手さ」や「爽快さ」を意識した画面作りをしていると思われる本作だが、ゲーム性もそれに寄せているように感じられた。キャラの火力に対して体力量がかなり低く、しかし根性値(低体力での防御力)は高く設定されているのだ。火力が高いのか体力の低いのかは分からないが、少なくとも体力ゲージ残り3割くらいまで減り方は尋常ではない。コンボ火力が高いというよりは根本的に技の威力が高く設定されている印象で、昇竜必殺技をカウンターでくらっただけで体力ゲージが15%くらい持っていかれる。1、2回コンボをされただけであっという間に瀕死となるが、根性値がかなり高く、体力ゲージがオレンジに染まってからの粘りもすごい。結果、ド派手な高火力コンボの応酬であっという間に瀕死になってから(見かけ上)ギリギリの戦いが思ったより長く続く、という対戦になる。もちろんこれは有効体力で考えればちょっと体力が低めなだけの格闘ゲームと同じ展開ではあるはずなのだが、見た目としては間違いなく派手である。この仕掛けには素直に感心してしまった。
システム面では、いわゆるガーキャンがロマキャンに統合されていたり、ガトリングルートの一部が削除されていたり、地上技の空ガ不可が存在しなかったり、空中受身が存在しなかったりなどなかなか変化が激しい。直前ガードによるガード硬直減少が削除され、ゲージ増加のみになったのはレバテク要素を廃する方向が強い、現代の格闘ゲームらしいと言えるだろう。そして何よりも印象に残ったのは「画面端破壊」のシステムである。これは(詳しい条件は不明だが)画面端である程度以上コンボを繋げるとステージの画面端そのものが破壊されるというもので、これが発生するとかなり派手なステージ移動演出とともにお互いの位置が仕切り直しの五分状況となる。コンボをしていた側にはテンションゲージ上昇量増加というボーナスはあるものの、本来ならば画面端でダウンを取って起き攻めの展開となっていたはずであることを考えると、正直慰めにもならない。画面端のコンボでダウンを取り、起き攻めを繰り返して相手を倒すというのは古今東西の格闘ゲームで使われ続けてきた黄金の勝利パターンである。ただしこれは時として一方的な試合展開となる理由でもあり、この「画面端破壊」はこういったハメにシステム面から大胆にメスを入れてきたといえるだろう。自分が画面端でハメられている時はつまらないが、相手をハメている時は楽しいというのは格闘ゲーマーにとって共通認識といっても過言ではない。「ハメ」のストレスと快楽は表裏一体のものであり、ゲーム性に対して一概に悪と言えるものではないと思われるが、この画面端破壊演出が実際にどういうバランスでゲームに作用するかはもう少しゲームに対する理解が深まらないと分からないだろう。
課題の多いオンラインロビーのシステム
新鮮で派手な対戦は非常に楽しめたものの、今回のテストで初のお披露目となったオンラインロビーのシステムに関しては、残念ながら非常に使いづらいものであると言わざるをえない。ドット絵調のデザインは非常にオシャレで、アバターも自由に弄れて面白いのだが、マッチングシステムと階層システムがかなり悪さをしている。マッチングに関してはいわゆる対戦台に座る方式が廃されており、ロビー内で武器を構えると「対戦可能状態」となり、同じく武器を構えているアバターに近づくと自動で対戦が開始するというシステムになっている。3Dであったのならばまだマシだったのかもしれないが、2Dのロビーでこの方式が取られているため、人が多いロビーでは自分がいまどういう状況なのか、本当に全くわからない。武器を構えて走り回っているとどこかのタイミングでマッチングが完了して対戦準備に入るのだが、アバターの位置が同期ズレしていることも多いせいで自分が今どの人とマッチングしているのか分からない。プレイヤーが密集している場所ならなおさらだ。また、特定の相手を狙って対戦することが難しい。お目当ての対戦相手の目の前まで行って武器を構えても中々対戦準備に入れず、仕方なく武器を出し入れしたり目の前を走り回ったりしていると気付けばまったく別の人とマッチングしているのも日常茶飯事だ。
「階層システム」はランク付きロビーのようなもので、初心者狩りを防止するためのシステムのひとつであるのだろう。ここでは勝率に応じて自分の「下限となる階層」が定められる仕組みとなっている。たとえば6階に振り分けられた人は6階以上のロビーには参加できるが、5階以下に入場することはできない。6階での勝率が高いと7階に「昇格」し、6階以下には入場できなくなる、という寸法だ。このシステム自体はいいのだが、ロビーでの対戦3戦ごとくらいにこの階層の変動が行われるのが問題だ。この階層変動は上がる時と下がる時はもちろん、今の階層が維持される時もなぜか演出が発生し、一旦ロビーの外に出される。ただでさえマッチングに難儀している状態で数戦ごとにロビーから放り出されるため、「同じ人と連戦したい」というオンラインロビーに求めるもっとも基本的なことでさえ困難である仕様に関してはかなり理解に苦しむ所だ。これらに関してはアンケートで大量にフィードバックが送られていると思われるので、製品版では改善されていることを信じたい。
試遊経験自体はあったものの、筆者も本格的に本作の対戦を遊んだのは今回のテストが初めてとなる。荒削りな部分もあったが、対戦そのものは派手でありながらギルティっぽさも残っており、「キャラクターを動かしていて楽しい」という格闘ゲームのかなり本質的な楽しさを思い出させてくれるものであった。また、過去作から他にどのキャラが出演するかなどの続報にも大きく期待している。発売までの半年ほど、『GUILTY GEAR -STRIVE-』の道のりに今後も注目していきたい。