循環型横スクロールSTG『BLACK BIRD』を紹介。不穏な物語の解明とスコアアタックが熱い

日本のインディースタジオOnion Gamesが手がけた『BLACK BIRD』は、横スクロールの循環型シューティングゲームだ。Nintendo SwitchのほかにSteamでも配信中。そんな同作の魅力をお伝えしよう。

先日実施した、Nintendo Switchインディーゲーム開発者によるゲーム紹介コンペティションの1位に輝いた作品を、あらためてピックアップする本企画。今回は『BLACK BIRD』を紹介する。

日本のインディースタジオOnion Gamesが手がけた『BLACK BIRD』は、横スクロールの循環型シューティングゲームだ。Nintendo SwitchのほかにSteamでも配信中。本作の各ステージは右端と左端がシームレスに繋がったように循環しており、プレイヤーは左右どちらにも自由に進んでいける。そして、ステージ内に複数いる司令官をすべて倒すとボス戦に突入するという、どことなく『ファンタジーゾーン』を思い起こさせるスタイルとなっている。また、ゲーム中は架空の言語による雰囲気あるオペラ曲が流れており、このBGMにシンクロするように敵が現れることも特徴である。

自機となるのは禍々しい見た目の黒い鳥。それは、とある王国の街角で死んでしまった哀れな少女。横たわる彼女を誰ひとり助けようとしないなか、謎の紳士が現れステッキで彼女をつつくと、どういうわけか少女は大きなタマゴとなり、やがて黒い鳥が殻を割って出てきた。この黒い鳥は、王国にて古くから伝わる大災害のひとつだとされており、空へと飛び立ち王国を滅ぼしに行く。

攻撃にはショットとボムがあり、倒した敵が落とすジェム(人の命)を一定数獲得するとショットがパワーアップする仕組み。最初は小さな弾だがより大きく強力になり、また地上や上方へ撃つ弾も追加されていく。ただし、被弾するとパワーアップが1段階後退してしまう。なお本作はライフ制で、自機の当たり判定は黒い鳥の目の部分のみ。敵の攻撃に“かすり”ながら攻めていくプレイが可能だ。一方のボムは、自機の周囲の敵や弾を吸い込み一掃できる強力な攻撃で、こちらは弾数が限られている。ステージ内には所々に壺が置かれていたり隠されていたりし、これを破壊すると“のろいの虫”が飛び出してくる。この虫は、食べるとボム・ライフ・スピードアップのいずれかをひとつ追加できるアイテムで、『ツインビー』のベルのように撃つことで追加する項目を任意に選択可能だ。

ステージは全部で4つあり、全体的に昔の映画を見ているかのようなレトロな印象を抱かせるグラフィックが目を引く。その中で、最初ののどかな街並みのステージはセピア色、最後の要塞のようなステージは青白く冷たい様子といったように、それぞれ異なる雰囲気を醸し出している。敵である人間はバリエーション豊富で、ステージを進むに従って強力な攻撃を仕掛けてくるキャラクターが登場。また街には普通に暮らしている一般人もおり、よく見ると家事をしていたりくつろいでいたり、あるいは何らかの作業をおこなっていたりと、生きた世界であることを印象付ける。プレイヤーである黒い鳥は、こうした人々の命を喰い散らかすのだ。

本作の魅力のひとつは間口の広さと、入った先の奥深さにあるように感じられる。多くの敵が登場するものの基本的に弾速は遅く、ステージ内を自由に移動できるため逃げ道はいくらでもある。そして司令官優先で倒していけば、手っ取り早くボス戦に突入。ラスボスまでは意外にあっさりたどり着くことができるだろう。本作のビジュアルや世界観に惚れて手に取ったシューティングゲーム初心者でも、何度か挑戦すればその多くの部分を楽しむことができるわけだ。

一方で、本作はその先にあるやり込み要素、スコアアタックが熱い。それを支える要素のひとつがコンボシステム。敵を倒すごとにコンボ数が増えてスコアに倍率が付くため、ゲージを確認しながらコンボを途切らせないよう敵を倒し続けるのだ。コンボ数をMAXまで貯めた状態でボムを使用すれば、一気にスコアを稼ぐこともできる。そのためにはBGMに耳を澄ませ、多くの敵が現れるタイミングを見計らうのも有効だろう。ボムを補給できる壺は比較的多く見つかるため、積極的に狙っていける。また、ステージの中には高得点を獲得できる隠し要素がふんだんに仕込まれており、ハイスコアを狙うために重要なだけでなく、探索して発見する楽しさもある。こうした研究しがいのあるゲームデザインにより、シューティングゲーム上級者にも満足感を与えてくれる。

ステージをクリアするたびに、主人公である可哀想な少女にまつわる短い物語が描かれ、獲得スコアによって8つあるエンディングのいずれかにたどり着く。童話のような、しかしどこか不気味な雰囲気を持つ本作の世界観の裏には何が隠されているのか、真相を目にするためには己のスキルを高めるしかない。またクリア後には、新たな敵や隠れキャラなどが登場する、より高難易度のトゥルーモードがアンロックされる。一度プレイしたステージはプラクティスモードに追加されいつでも練習できるため、やり込みを重ねてハイスコアを目指す楽しみがある。シューティングゲームとしての入り口は広いが、奥は深い。そして、ユニークな世界の解明とも作用する。そんな不思議で遊びごたえのタイトルになっているだろう。

『BLACK BIRD』は、Nintendo SwitchおよびSteam(Windows/Mac)向けに発売中。価格は、いずれも1980円(税込)となっている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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