Sumo Digitalは3月29日より3Dパズルアクションゲーム『Snake Pass』の配信を開始した。価格は20ドルで、対応プラットフォームはPC/PlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch。日本語版はリリースされていないが、それぞれのプラットフォームの海外ストアを経由することで購入することができる。

『Snake Pass』は3Dアクションゲームだ。プレイヤーはヘビの「Noodle」を操作する。本作には基本的に敵は存在せず、 パズル色の強いタイトルといえるだろう。ステージごとに3つの「キーストーン」が用意されており、それらをすべて集めることでゲートが開き、ゲートへたどり着くとステージクリアとなる。道中には多くの「シャボン玉」やいくつかの「メダル」が隠されており、それらのアイテムを収集するといった要素もある。また本作は、「NINTENDO 64時代の3Dアクションゲーム」とイギリスのゲームスタジオである「Rareの歴代作品」から強い影響を受けていると開発者は語っている。そうしたエッセンスが散りばめられているのも本作の特徴だ 。

今回は、3月3日に発売された新ハードNintendo Switch版のパフォーマンスなども含めたゲーム内容をお届けする。

際立つコンセプト

『Snake Pass』の「ヘビ」を操作するというコンセプトは、飽和しつつある3Dアクションゲームのなかでも際立っている。プレイヤーは左スティックでNoodleの進行方向を決め、ZRボタンで前進させる。いわゆるラジコン方式だ。 こうしたラジコン方式を採用するタイトルは、操作が難しいといわれているが、本作も例外ではない。ヘビの動きには物理演算が適応されており、操作するのはヘビの頭であるが、胴体や尻尾は頭の動きについていくので、体全体の動きを考慮しながら操作しなければいけない。こうした特性は、物に絡みつく動作に生かされている。Noodleはジャンプができないので、高い場所へ行く際には木の棒や竹に絡みつく必要がある。うまくオブジェクトに体を絡めて進んでいく楽しさは、本作独特のものだろう。

また本物のヘビには足がないため身体をくねらせて移動するように、Noodleは真っ直ぐ進んでいくとたちまち動けなくなる。あくまで、うねるように“蛇行”するような操作が求められるというわけだ。『Snake Pass』の操作は、ほかの3Dアクションゲームと比較しても難しい部類に入るが、ヘビを操作するというアイディアをゲームプレイにうまく落とし込めているといえるだろう。

こうした個性的なゲームプレイは、グラフィックと音楽によってさらに引き立つ。Unreal Engine 4で描かれるグラフィックは、ポップな世界を美しくキュートに 彩っている。草木やオブジェクトなど、それぞれ単体で見るとそれほど緻密なディテールが描き込まれているわけではないが、フィールド全体を通して色鮮やかさが印象的。Noodleの特徴であるオレンジ色の身体はより目立つような色合いとなっており、身体のラインや位置が判別しやすい。 また本作の音楽は、ポップな世界を幻想的に演出する。本作には『スーパードンキーコング』シリーズの音楽を手がけたことで知られるDavid Wise氏が参加しているが、氏の参加は間違いなく成功だったといえるだろう。 用意されている音楽は、「Aquatic Ambiance」をはじめとした、これまで氏が手がけた人気曲を彷彿とさせるものが多い。単純に曲の質が高いだけでなく、往年のプレイヤーならばどこかノスタルジーを感じることだろう。

『Snake Pass』はヘビを根気強く操作するという、ゆったりとしたゲームプレイが特徴的で、はっきりいってしまえば地味だ。しかし、色鮮やかなビジュアルや耳に残る音楽が、うまくゲーム体験を盛り上げている。

「楽しさ」と「もどかしさ」のせめぎあい

一方、散々言及してきたが、『Snake Pass』を語るうえでは「難しさ」と切り離すことはできない。もっとも顕著であるのが、とにかく多くのボタンの同時押しが求められるところだろう。前進するZRボタンは基本的に押しっぱなしで、高い場所にのぼる際には、頭を伸ばすAボタンも押すことが求められる。オブジェクトに絡みついた状態をホールドする際にはZLボタンを押す必要がある。ヘビの向きを変える左スティックの操作は、繊細な入力が求められる。この状態でカメラを操作するとなると、なにかしらの入力がおざなりになる。この忙しい入力をマスターするまでは、思うような動きはほぼできないと思ってもらってもいい。問題なのは、難しさそのものではなく、それに対するサポートが不十分であるということだ。

そのなかで最たる問題が「カメラ」だ。『Snake Pass』においてもっとも苦労するのは物に絡みついて移動するところであろう。うまく絡みつかなければ地面に落ちてしまうので、さまざまな角度から観察しNoodleをくねらせていく。しかしカメラは、そうしたさまざまな角度から観察させてくれない。本作のカメラは一般的な3Dゲームと同じく「後ろからキャラクターを映す」ことに忠実だ。しかし、本作の主人公はヘビであるがゆえに明確な「後ろ」という概念はないし、ものに絡みつく際には後ろではなく側面や前からNoodleを見る必要がある。カメラリセットボタンが用意されているが、このボタンもあくまでヘビを後ろから映すものである。普通の3Dゲームならば問題のないカメラなのだが、本作のゲームデザインにあまり最適化されていない。

もうひとつ残念なのが、リトライについても配慮されていないことだ。『Snake Pass』は、操作の難しさゆえに頻繁に失敗するタイトルだ。登ろうとしては落ちるし、渡ろうとしても落ちる。落ちること自体には大きなストレスはないが、セーブポイントが1ステージに数か所ある程度で、死んでしまうとくぐりぬけてきた長い道のりをもう一度歩むことが求められる。もしクイックセーブが存在していたならば、難しい操作にもなお納得できていただろう。

また、確かに本作は「NINTENDO 64時代の3Dアクション」をうまく取り込んでいる。絶妙なアイテム配置や、マップを横だけでなく縦も存分に使うデザインは、『バンジョー&カズーイの冒険』や『ドンキーコング64』にも似た楽しさに仕上げられている。パートナーである鳥と二人三脚で進めていくナビゲーションも、両作の影響が感じられる。一方で、難易度への配慮がないのも、硬派な難易度で知られていた「64時代の3Dアクション」を意識しすぎた影響に思えてしまう。Yボタンを押すとパートナーの鳥がNoodleの尻尾を持ち上げるなど、複雑な操作が苦手なユーザー向けのオプションもあるが、根本的なサポートになっているとはいえない。

『Snake Pass』は意欲的なタイトルである。オリジナリティの高いテーマをゲームに落とし込み、ビジュアルと音楽でプレイヤーを独特の世界へと誘う。難易度の高い操作も、そうしたテーマを実現するための過程で生まれたものであることが納得できるし、うまくいった時は楽しい。しかし、操作の難しさは、配慮の不足の影響で「もどかしさ」から「いらだち」に変化することもままある。根気強くプレイしながら操作が熟達すれば、こうした欠点は解消されていくが、もう少しプレイヤーへのサポートがあれば文句の付け所がなかったという点では、かなり惜しく感じる。本作は、一見万人に遊べそうなゲームであるが、実際はプレイヤーに多くを求めるということを、覚悟する必要があるだろう。

Nintendo Switchタイトルとして

ちなみにNintendo Switch版のパフォーマンスは良好であると感じた。広大なフィールドの高所で遠景を描写する際にはややフレームレートが落ちるものの、基本的にはスムーズに動作する。他機種のスクリーンショットと比較しても、劣っているという印象は薄く、Sumo Digitalはかなり最適化に力を入れたのだろう。携帯モードで遊ぶ際は、TVモードで遊ぶよりも解像度が落ちる印象を受けた。携帯ハードのグラフィックとしては高い水準にあるが、TVモードを遊んでからだと、映像がややぼやけて見えるように感じるかもしれない。またHD振動による演出がやや過剰で、Joy-Conで操作する時には特に激しく振動する。(この仕様については、Sumo Digitalは近日中に改善すると予告している)いずれにせよ、Unreal Engine 4がNintendo Switchで快適に動作することは確かなようだ。