惑星探索アドベンチャーゲーム『ASTRONEER』を紹介。未成熟ながら、根っこは丈夫。新たな定番宇宙ゲームとなる予感

『ASTRONEER』は惑星探索アドベンチャーゲーム。サバイバルやサンドボックスといった要素も含んでいる。本稿はレビューではなく、『ASTRONEER』の魅力について紹介していく。早期アクセスながら『ASTRONEER』には20ドル以上の価値があると感じた。

System Era Softworksは12月16日に宇宙探索アドベンチャー『ASTRONEER』の早期アクセス販売を開始した。リリースされて以降、Steamストア世界売り上げランキングの1位の座をキープしており、幸先のよいスタートを見せている。筆者も本作のリリースを待ちわびていたプレイヤーのひとりだが、本作には確かについつい時間を忘れてのめり込んでしまう楽しさがある。今回はそんな『ASTRONEER』の魅力の一部をお伝えしよう。

 

『ASTRONEER』は惑星探索アドベンチャー

まずは『ASTRONEER』の基本的なゲームの流れについて説明していこう。本作はリリース前はあまり情報が公開されず、どのようなジャンルの作品として位置付けられているのかが不鮮明だった。現時点のビルドでは、『ASTRONEER』はサバイバルやサンドボックスといった要素を含んでいるが、「惑星探索アドベンチャー」と呼んだ方がしっくりくる印象だ。

ゲームを開始すると、プレイヤーはポッドに乗せられ未知の惑星へと着陸する。惑星には酸素が存在しておらず、酸素を供給してくれる乗ってきたポッドを拠点に活動していくことになる。拠点の周囲にはさまざまな資源が存在している。プレイヤーは地形を削ったり盛り上げたりすることができる「地形ツール」を駆使して資源を採掘していく。

「樹脂」を発見できれば、拠点を拡張する土台となるベースを作成することができる。「混合物」を入手できれば、一定範囲内のエリアを照らし酸素を供給する「テザー」を代表としたさまざまな便利なアイテムを生成できる。「電源」も地表に埋まっており、持ち帰って拠点の機械に挿せば、電力を供給することができる。ゲームを開始してからしばらくは、テザーを立てつつ周囲を探索し、活動できる範囲を広げていくことが目標となる。

ローカライズは、やや怪しい部分はあるが、基本的な機能は果たしており、おおむね及第点だろう。やはり日本語があることへの安心感は何にも代えがたい。
ローカライズは、やや怪しい部分はあるが、基本的な機能は果たしており、おおむね及第点だろう。やはり日本語があることへの安心感は何ものにも代えがたい。

活動エリアを確保し拠点をある程度広げれば、近辺に存在する洞窟へと足を運んでみてもいいだろう。洞窟には「ラテライト」や「くじゃく石」など珍しい資源が存在する。そういった資源を拠点に持ち帰り錬成すれば、「アルミニウム」「銅」といった素材に変化させることができる。こうした素材は、大地を素早く移動できる乗り物や、電力を自動生成するソーラーパネルなど、さらに便利なアイテムの作成に使用することになる。そしてシャトルを作成すれば、異なる惑星へと飛び立ち、新たな惑星の新たな資源が採取できるようになるというわけだ。惑星を探索して資源を採取し、拠点へと持ち帰りクラフトし活動範囲を広げていく。これが本作の基本的な流れとなる。

 

手探りから生まれる喜び

『ASTRONEER』はとにかく手探りが求められるゲームである。そしてその手探りが楽しい。アイテムのクラフトはそのもっともたる例だろう。本作では、アイテムや施設に名前はついているものの、そのアイテムがどう機能するか、施設がどうすれば動くのかといって説明は一切ない。プレイヤーがとにかく手探りにさまざまなことを試していくしかないのだ。このクラフトの手探り感はある意味『Minecraft』に似ているといってもいいだろう。『ASTRONEER』は『Minecraft』ほどユーザーのひらめきに委ねられるわけではなく、施設の運用方法もクラフトのレシピも示唆的なヒントが書いてあるので、試していけば必ず答えへとたどり着けるデザインとなっている。

もちろん、探索も手探りの連続だ。本作には敵は存在しないが、プレイヤーの行方を阻む危険植物が多数存在している。植物がどのように危険なのか、究極的には近付いて死ななければわからないことも多い。ほかにも、用途不明のオブジェクトや巨大アーティファクトなど、何に使うのか、危険か安全かすらもわからないものがゲーム内には多く存在している。死んでしまうと持っているアイテムを落とすペナルティがあるが、序盤なら回収も容易なので、ぜひ自分で学んでいくのがおすすめだ。

ass2

こうして試行錯誤しながら、アイテムの使い方やオブジェクトの意味を知ると、喜びが湧き上がってくる。このように情報を与えずプレイヤーに学習させていくメカニズムは、サバイバルゲームという枠組みでは重要なデザインだ。くわえて、本作はプレイヤーに対する誘導が絶妙で、うまく“アハ体験”をさせてくれる。ゲームの雰囲気自体が明るく、敵も存在していないので、それほど緊張感なく手探りできるのも嬉しいところだ。

 

すべてがシームレス

『ASTRONEER』はそのキュートなグラフィックも魅力的だが、徹底してシームレス化されている点も見逃せない。まず本作では、最初の読み込み以外にロード画面は登場しない。地平をどこまでも歩いていっても、洞窟へと潜りこんでも、宇宙へと飛び出しても、そこから異なる惑星へ行っても、ロード画面は表示されない。ゲームプレイ体験がまったく途切れることがないのだ。

さらに本作の面白いところは、インターフェイスさえもシームレス化されている点だ。本作でアイテムをクラフトする際に「クラフト画面」は表示されないし、アイテムをバックパックに収納する際にも「アイテム画面」がポップアップされることはない。

astrogif

ゲーム内のアクティビティはすべてシームレスに、画面を切り替えることなく完結する。たとえば、混合物の資源採取をしている時、混合物はまず発掘ツールに堆積し、ひとかたまりになるとバックバックへ移動する。手持ちのアイテムが「x個所持している」と数的に表示されることはほとんどない。すべてが数量的にではなく、視覚的に表示される。常にゲームプレイとシステムが一体化しているというこだわりは特筆すべき点だろう。

 

「未完成」ではなく「未成熟」

『ASTRONEER』の開発スタッフが、発売前から「適切な期待を持ってほしい」と公言していたことは記憶に新しい。筆者もその言葉を重々理解し、あくまで早期アクセスタイトルであることを理解して購入した。この週末の時間を使ってゲームをプレイし思ったことは、本作は「未完成」ではなく「未成熟」であるということだ。

というのも、本作はゲームとして完成しきっていないというよりは、単純に不具合が多い。バグの多くはゲームプレイに支障をきたさないレベルで、小さなものが多いので笑って許すことができる。しかし、開発スタッフが“リリース段階では実装する予定はなかった”と述べていた協力プレイは、プレイしているとクラッシュすることが非常に多い。キャラクターにレベルやスキルなどがなく、またクラッシュした際に持っているアイテムは落ちるのであとで回収すればいい。そういう意味では、クラッシュしても、もう一度サーバーに入り直せば問題はない。しかし現時点では、ある程度拠点が充実してくるとサーバー側が処理しきれなくなるのか、非ホストのプレイヤーはゲームに入った瞬間に落ちるような状況となっている。ホストプレイヤーも、時間の経過やテザーの数によってゲーム内の処理が非常に重くなる。リリース以前から「不具合が多い」と告知されていたものの、プレイできなくなるような不具合に遭遇するのはやはり無念だ。こういった問題は、数日中にアップデートで修正されることがすでに発表されているので、早急な対応に期待したい。

一方で、早期アクセスタイトルにありがちな「コンテンツ不足」はあまり感じられない。少なくともアイテムや施設の数はそれなりに用意されているように感じるし、しばらくは飽きることはないだろう。ゲームとして根本的な部分はかなりしっかりしており、20ドルにふさわしいどころか、それ以上の価値がある印象を受けた。

『ASTRONEER』は『No Man’s Sky』と比較されがちだ。探索の動機付けにおいては『ASTRONEER』はうまく仕上げられているが、コンテンツの拡充という課題は共通している。ともに発展途上のタイトルであるので、時間が必要だろう。
『ASTRONEER』は『No Man’s Sky』と比較されがちだ。探索の動機付けにおいては『ASTRONEER』はうまく仕上げられているが、コンテンツの拡充という課題は共通している。ともに発展途上のタイトルであるので、比較して評価するにはまだまだ時間が必要だろう。

ただし“手探り感”が楽しい作品なだけに、アイテムを網羅し世界のメカニズムを把握してしまうと、飽きてしまうのは一瞬だろう。こうした点は、段階的にコンテンツを拡充していくほか、現在のビルドでは実装されていない「建築」などの新たなメカニックを追加してことが求められる。現段階では地形ツールの性質上、建物を作るのも一苦労で、家やアジト、オブジェを作ろうとするのは難易度が高い。グラフィックに魅力がある作品なだけに、建築要素が充実すればさらなる奥行きが加えられ、いつまでも愛されるタイトルになるかもしれない。

そういった意味でも『ASTRONEER』は未完成ではなく、未成熟だ。まだまだ熟しておらず、収穫して味見するには苦すぎる。しかしその苦味のなかには確かなうまみが存在しているし、少なくとも成熟後の味が不安になるようなことはない。早期アクセスタイトルとして、継続的に“水”をやっていけるかが重要になりそうだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

記事本文: 5194