江戸時代が舞台のステルスゲーム『Shadow Tactics』紹介。ドイツから日本へ叩きつけられた硬派な挑戦状

江戸時代の日本を舞台とするリアルタイム・ステルス・タクティクス『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』を紹介する。難度は高いが、プレイヤーの発想力が存分に生きる。『Shadow Tactics』は日本語字幕と音声吹き替えに対応している。

ドイツを拠点に構えるDaedalic EntertainmentとMimimi productionsは12月7日に『Shadow Tactics: Blades of the Shogun(以下、Shadow Tactics)』の配信を開始した。価格は4480円。『Shadow Tactics』は17世紀の江戸時代の日本を舞台としたステルスゲームだ。配信開始時のニュースには「忠実な日本を再現している」と記述したが、ゲームをしばらくプレイしてみると、日本と中国の世界が入り混じった「東アジア文化のごった煮」というほうが表現としては近いと思える。こういうとややB級感を漂わせるが、プレイを重ねるにつれ、ゲームとしてなかなかよくできていると感じた。

操作スタイルで変わるゲーム体験

『Shadow Tactics』は操作する方法によってゲーム体験が大きく異なる。マウスとキーボードでプレイする際は、キャラクターを誘導していくシミュレーション色の強い作品となり、ゲームパッドでプレイする際にはキャラクターそのものを操作するアクションゲームとなるからだ。とっつきやすさでいえば断然ゲームパッドをオススメする。ただ、ゲームパッドでも快適にプレイできるものの、ボタン数の関係上、コマンド入力が複雑になりやすい。一方マウスとキーボードの操作は覚えることが多いが、マップ上の情報確認や移動場所の指定などは直感的におこなえる。ゲームの内容やシステムは全く変わらないので、気に入ったほうでプレイすればいいだろう。

 

シンプルさゆえの遊びやすさ

本作の開発を手がけたMimimi ProductionsのCEOであるJohannes Roth氏は、『Commandos』シリーズから強い影響を受けたことをredditのAMAにて明かしており、「なぜ忍者と『Commandos』を組み合わせたものがなぜ存在しないんだ」という疑問から開発はスタートしたのだという。『Commandos』シリーズは1990年代のRTS。本作は同シリーズのデザインを色濃く受け継いでいるが、さらに現代的な遊びやすさも加えられている。

視野範囲を表示できる。
視野範囲を表示できる。

『Shadow Tactics』は、情報量が多く複雑になりがちなステルスゲームとしては、敵から見を隠すための情報がはっきりと明示されており、シンプルに遊ぶことができる。見下ろし視点が採用されているので、操作キャラクターがどこにいても敵の配置を確認できる。加えて、ステージ内すべての敵の配置も基本的には見通すことができ、カーソルを合わせれば敵の視界も丸見えだ。物音をたてた時も音の範囲をエフェクトによって確認できる。警戒しなければいけない情報が常にゲームから提供されている。ゆえに「何が原因で見つかったのかわからない」といった理不尽さを感じさせることも少ないし、見つかった反省を生かしリトライしようと意欲が湧いてくる。『Shadow Tactics』は『Commandos』のDNAを受け継ぎつつ、ジャンルは多少違うが『Mark of the Ninja』のような快適さの両方が備わっており、初心者でも遊びやすいステルスゲームに仕上げられている。

 

賢くないけど、バカじゃない

行く先々には多くの敵がプレイヤーを待ち構えている。敵は決して賢いとは言い難いが、少なくともバカと呼ばれるようなものではなく、なかなかプレイヤーを悩ませてくれる。

どこか中国人風のキャラクターも。
どこか中国人風のキャラクターも。

敵にはそれぞれ行動パターンが設定されている。指定されたルート歩き、その周辺を見回す敵、その場で立ち尽くし首を振りながらあたりを警戒する敵、ひとつの場所を眺め続ける敵などバリエーションはさまざまだ。彼らの多くは、石の落ちる音を聞くとしばらくそちらしか見ないし、好物の酒が落ちていればつい拾ってしまう。怪しい人物を見てもすぐに視界から消えれば全く気にすることはないといった良い意味でゲーム的なAIを持ち合わせている。

敵は単純なメカニズムに基づいて動いているが、視界によってプレイヤーの行動を強く制限し、統率によってゴリ押しを抑制する、ほどよい賢さを持ち合わせている。彼らは決してバカではない。見張りの相棒がいなくなればすぐに疑念を持つし、死体を見かければ周囲の仲間に知らせ広範囲を警戒状態にする。この鋭い警戒心と驚くべき統率力で、幾度もプレイヤーを苦しめる。

 

楽しいトライ&エラー

『Shadow Tactics』はワンボタンでクイックセーブできる仕様となっており、失敗しても直前からリスタートできる。加えて、前述したように敵の視界や配置情報も丸見えだ。ゆえに本作は、死んでもすぐにやり直せることを前提に高い難易度が設定されており、トライ&エラーを繰り返すことになる。

プレイヤーが誤った行動を起こせば、常に厳しい罰則がプレイヤーを待っている。敵に襲いかかり失敗すると隠れてやり過ごすことは難しいし、不用意に移動するとたちまち銃撃されてしまう。敵はプレイヤーに気付いてから攻撃する速度が異常に速く、さらに圧倒的な統率力によって周囲の仲間がすぐさま寄ってくる。そもそもマップが逃げることを前提に作られていない。敵に見つかれば、ほとんどのユーザーが逃げるよりもクイックロードを選択するだろう。

見つかってしまうと死ぬのは一瞬だ。
見つかってしまうと死ぬのは一瞬だ。

プレイヤーはいつの間にか慎重に進むよりもクイックセーブしつつ、死ぬことを覚悟しながら大胆にいろんな可能性を試すようになるだろう。ステージを進めるごとにプレイヤーには幅広い攻略手段が与えられ、さまざまな武器と特色の異なるキャラクターが追加されていく。攻略手段は序盤からかなり幅広く、手裏剣でひとりひとり狙っていってもいいし、2キャラクターを動かし強引に突破するのもいい。敵の配置や視界を把握しきれずに失敗することが多いが、その分1回の成功が大きな意味を持つ。ああでもないこうでもないと考えながら、死の可能性で編まれた網をくぐるための試行錯誤が楽しい。これが『Shadow Tactics』の醍醐味といっていいだろう。しかしながら、そういった硬派な難易度のせいか、打開策を見つけるために時間を要することもままあり、ある程度の根気が求められる。

 

必要なのは発想力と根気

『Shadow Tactics』をプレイしていると感じるのは、敵の配置や仕掛けがよく考えられているということだ。一見簡単に突破できそうな方法を試すと、敵に思わぬ返り討ちにあうことも多く「してやられた」と舌を巻くだろう。そうして、敵にやられながらさまざまな手段を試すうちに意外な突破口を見つけることができれば、極上の達成感が得られる。ひとつのステージはやや長丁場になるが、ステージ内に小さなチャプターがいくつも用意されているような構造なので、緊張感に区切りがつけやすい。こうした構造を考えると、『Shadow Tactics』はある意味ではパズルゲームのような印象さえ受ける。常にキャラクターを迅速に移動させる必要があるが、冷静な判断ができるならば、アクション初心者でも十分プレイできる。重要なのはプレイヤーの発想力と根気なのだ。

妙にドラマチックな展開も。
妙にドラマチックな展開も。

ちなみに難易度はイージー・ノーマル・ハードが用意されている。力業で進みたいならイージーを選べばいいし、ノーマルでも十分すぎる難しさだ。ハードはプレイヤーのキャラの体力が低いことに加え、敵の感知能力も上がっているようだ。さらにステージごとに「銃を使うな」「~分以内にクリアしろ」といったチャレンジミッションのようなものが存在しており、リプレイ要素も充実している。

『Shadow Tactics』は真面目に誰にでもプレイできるかつ、遊びごたえのあるステルスゲームに挑戦している意欲作だ。本作のビジュアルは中国と混ざっている点も多いが、名前やテキストなど細かい点からは日本に対する研究と愛が感じられる。そうでなくても単純にフィールド上のグラフィックの作り込みも細かく、評価できる点は多い。定価4400円と決して安くない価格設定になっているが、本作のビジュアルやテーマに惹かれたなら、まずはデモを遊んでみてほしい。そのB級感からは想像できないほど硬派な難易度の江戸時代が、そこには広がっている。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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