座談会:『MAG』とはなんだったのか。前編「MAG」という「ゲーム」
かつて『MASSIVE ACTION GAME(以下、MAG)』というゲームがあった(Playstation 3で発売、サービス期間2010年1月28日から2014年1月28日)。筆者は今までの人生でそれなりにビデオゲームを見つめてきたが、固有名詞を一切使用しない「形容詞+複合名詞」という、いさぎよくも雑な名称のゲームはほかに見たことがない。そして、その何か突き抜けて振り切れたように乱暴なセンスは、今でも筆者を魅了する。「Massive」という形容詞には、「がっちりとした」といういう意味もあり、「がっちりとしたアクションゲーム」と訳せないこともないし、なんとはなしにそれでもいい気はするが、ここは「大規模なアクションゲーム」と訳すのが穏当なところだろう。
あくまで個人的な所見でしかないことと、古今全てのゲームをプレイを網羅してプレイしているわけではないということを前置きにして言わせてもらえば、128対128の総勢256人で戦うこのバカバカしいほど大規模FPSは、マルチプレイゲームの中で断トツに面白いものだった。「頭一つ抜けてる」ではなく「断トツ」だ。しかし個人的な思いとは裏腹に、もっともアクティブプレイヤー数が少ない時期には1000人を下回るほどの過疎化が進み、開発元のZipper Interactiveは2012年3月に閉鎖が発表され、サービスも三年前半となる2014年1月に終了した。
当初は落胆したものの、『MAG』の存在しない世界でも時間はそれまでと同じように進み、同じように年を取り、楽しみや嗜好も変化した。ゲームサービスの一つがなくなったことは、人生に大きな変化をもたらしはしなかったが、しかしそれでもどこかもやもやした思いは残り火のようにくすぶり続けた。「あれは、一体、なんだったのか?」と。
ありていに言えば、今回の座談会の趣旨は単にそれだけだ。あれだけのめり込み、狂ったようにプレイし続けた『MAG』。某掲示板で瞬間風速的には巨大台風のようなムーブメントを発生させた『MAG』。一部で熱狂的なプレイヤーを生み出しながらたった4年で過疎という、いわゆるオンラインゲームの「老衰」で消えていった『MAG』。まったく知名度が無いように見えて意外なほど知られている『MAG』。『MAG』とはなんだったのか。断トツな面白さだと思っていたが、それは実はただの思い出補正なのか、実は本当に優れていたのか。実際にプレイしていた有志の方々とともに、『MAG』について話をしてみた。そんな次第である。
一般に過去のゲームについて語る時、それがどんなゲームであれ最終的には「プレイする」以上に説得力のある説明はない。そして過去のゲームをプレイしようと思えば、その時の感触までは再現できないにしても、「プレイするこ」こと自体は驚くほど簡単に可能な時代だ。だが、オンライン専用のゲームはサービスを終了してしまえば、もうそれは「記憶」と「記録」の中にしか残らない、一種の残滓でしかない。だとすれば今回の座談会は、記録と記憶の「石の水切り」の一段目だろうし、二段目三段目につながるか細い線であればそれでいい。そんな気がしている。
『MAG』の世界観と『制圧』というルール
座談会に入る前に、『MAG』がどういった作品だったのかを振り返ってみよう。パッケージに描かれた手が握っているドッグタグに「256」と書いてあるのを見ればわかるように、『MAG』は256人で戦闘するFPSというイメージが強い。「妨害」「襲撃」「鎮圧」など、64人や128人で遊ぶルールもあるにはあるが、やはり『MAG』の話になると256人対戦であり、「制圧」の話が真っ先に出てくるのは当然である。しかし、当時はまったく意識していなかった「制圧」のルールは、今あらためて思い出すと実はなかなかに複雑なものだったのかもしれないと思う。少なくとも「制圧」は、128人対128人の正面衝突ではなく、一つの段取りの中で繰り広げられる「攻城戦」のようなものだと捉えてもらうと分かりやすいかもしれない。すでにサービスが終了して3年と半年ほど経とうとしているゲームのルールを説明することに、いかほどの意味があるのか、いささか疑問ではあるが、あらためて『MAG』の世界観と、代名詞ともいえる「制圧」のルールの説明を加えておきたい。
まず「シャドー戦争」は架空のPMC(Private Military Company)同士の勢力争いであり、プレイヤーはゲーム開始時に3つの民間軍事会社から一つを選択し、その会社に雇われている兵士として各国家からの契約を得るために自己の力を示す会社の駒となる。基本的に選んだPMC間を自由に移動できるわけではなく、レベルキャップを迎えてプレステージ移行を選択した場合のみ、会社を選びなおすことが可能であった。
PMCの種類は「セイバー」「ベイラー」「レーブン」の三つ。各社はカスタマイズ可能な外見から装備している武器も違う。その上、サービス途中までは各陣営のMAPも固定されていた。「制圧」ではセイバーは「アブシェロン」、ベイラーは「アリエスカ」、レーブンは「フロレス」。プレイヤーはまず、配備申請をおこない、128人そろった陣営が二つある時点でゲームが始まるというシステムを採用していた。
「制圧」は「攻撃側」と「防衛側」にわかれて戦うマルチプレイルールだ。イメージとしては、攻撃側が防衛側の本拠地を東西南北の4方向に囲み中心に向かっていく構造になる。東西南北には、それぞれ1分隊8名で構成された4分隊32名が1小隊として攻撃側と防衛側どちらにも配備されており、各方面1小隊づつに分かれて攻撃あるいは防衛にあたることになる。各分隊には分隊長が配置され、方面ごとに小隊長が4名、128人のトップに中隊長が存在し、隊長職ごとに可能な命令や戦局を左右する特殊効果がある。こう書くと32対32人の戦いが東西南北で4つあるだけのように見えるがそうではなく、4方面に分かれているだけで戦場は地続きであり、最終局面であるMAP中央部に至ると128対128の混沌した戦場が形成されることになる。
各方面にはそれぞれ燃焼塔が2つ、冷却塔が2つ、対空砲が1つ、バンカーが4つあり、攻撃側が燃焼塔を2箇所同時に保有すると第二段階である冷却塔が現れる。そして冷却塔を2つ同時に保有することにより、最終局面であるアルファベット(AからHの全8箇所、1方面2箇所)が開く。アルファベットを攻撃側が奪取&保持することにより制圧ゲージがたまり、制限時間30分のあいだに制圧ゲージが溜まりきれば攻撃側、30分間それを阻止できれば防衛側の勝利になる。制圧ゲージは4方面共通のゲージであるため、どこかが防衛されていても別の方面の攻撃側がアルファベットを保持し続けることにより勝利条件をみたすこともある。そのため、何もしていなくても勝利することもあれば、担当方面を完全に防衛できていても敗北する時は敗北する。
「燃焼塔」「冷却塔」「アルファベット」の流れは一見単純だが、制圧には「バンカー」と「対空砲」というリスポーン地点の攻防が存在する。バンカーは防衛側の「出城」というべき重要地点であり、1分隊に1つ割り当てられていて、基本的にバンカーが存在しているあいだ、防衛側はバンカーから再出撃できる。逆に言えばバンカーを破壊されると、その分隊はMAP最中央部からの再出撃になるために、バンカーを破壊されることは戦線が大きく後退することになる。なので本来は燃焼塔を奪取して先に進むのが順番としては正しいのだが、先に防衛側の前線を下げた方が効率がいいため、ことに日本人プレイヤーの間では燃焼塔よりも先にバンカーラインを突破することが基本戦術とされた。逆に防衛側は燃焼塔ではなくバンカーを守るのが常識であり、バンカーが破壊された時にいかにそのバンカーを修理して戦線を維持するのかは、防衛側にとって重要な共通認識だったといえる。「バンカー」が防衛側の戦線維持の最重要ポイントだとすれば、「対空砲」は攻撃側にとって戦線を押し上げる重要ポイントだ。攻撃側は最初、マップの端がリスポーン地点となるが、対空砲を破壊することによって制空権を得て、パラシュートによる下降リスポーン、あるいはヘリをバンカーラインの真裏に配備することによって再出撃のポイントにすることができる。つまり対空砲を破壊することによって今度は攻撃側の「出城」の構築が可能になる。簡単に言えば「燃焼塔」「冷却塔」「アルファベット」と進む、あるいは進ませないために、ほとんどの場合「バンカー」と「対空砲」の攻防がより重要になってくる。ごくシンプルに言えば、「制圧」はそういったゲームモードだと理解してもらって良いだろう。
『蘇生』と『修理』
ゲームシステムの理解を促すために「蘇生」と「修理」に関して少しだけ補足しておきたい。
『MAG』では死んでもある程度の蘇生猶予時間が設定されており、そのあいだであれば一瞬で蘇生して最大体力で戦線に戻れた。さらに全員が蘇生キットを持つことが可能であり、一人蘇生させれば死体の山が一瞬にして元気な軍隊として復活する。「蘇生」というと、どちらかといえばパッシブなイメージの行為だが、『MAG』での蘇生はむしろアクティブでアグレッシブな行動ともいえる。ただし蘇生猶予時間内に死体を撃たれるととどめを刺されて復帰不可になる。FPSマルチプレイゲームで「死体撃ち」はマナー違反とされるが、『MAG』では必要な行為だった。
さらに「修理」に関して言えば、本作では燃焼塔と冷却塔以外のほぼ全てのオブジェクトは破壊されても修理可能である。たとえば制圧のルール上の戦線を維持するためのバンカー、対空砲など、非常に重要な拠点も復活させることができる。つまり修理という行為にも戦線を大きく押し戻すという攻撃的な側面があり、時と場合によっては蘇生や修理の方が敵をキルするよりもはるかに勝敗に直結するという点も、『MAG』というゲームを語るに際し外せないポイントだ。
座談会: 『MAG』との出会い
コーイチローさん:
発売されたのが1月末で、その一か月後の2月末にPS3と一緒に買ったんですよ。初めてやったFPSだったんで、すごい感動しましたね。味方との共闘感というか、全てがオンラインっていうのが感動しましたね。
hermanさん:
自分は『MAG』というゲームがどんな内容かわかっていなくて、暇だからやろうかなと思ってたまたま買ったんですよ。説明書がペラペラなんで、最初は何をするゲームなんだろうと思いましたね。装備の説明とか貫通力がどうのこうのとか、貫通力って何だって思いながら。ハンドガンとPDWのところで、最初のスキルツリーが後半と違ったんで、説明を読んでも全然わからなかったのを覚えていますね。その前に『Killzone 2』というゲームをやっていたんですが、ずっと1人でプレイしていたので疲れて、そこで新しい違う作品をやろうかなと思って、『MAG』を買った感じですね。
メジャ郎さん:
僕はインターネットを導入したのと同時ぐらいにPS3を買ったんですよ。『MAG』で初めてのオンラインを味わったので、なんだこの高揚感はと思いました。大人数でとんでもない戦争をしているなと。とにかく平日も早く仕事が終わらせて『MAG』がやりたくてやりたくて、麻薬の禁断症状ってこういうものか、みたいな感じでしたね。2010年からはずっと『MAG』が面白かった、楽しかった思い出が多いですね。今はほぼほぼゲームをしなくなっちゃって。サービス終了後に、たとえば『Battlefield 3』とか『Killzone 3』に手を出したんですけど、やっぱりなにか物足りなくて。
hermanさん:
非常によくわかりますね。
メジャ郎さん:
特に『Call of Duty』なんて、リスポーンして出たらすぐに死ぬ感じで。あれ、蘇生はないのかって。『MAG』は戦うだけが重要なゲームではなかったんですよね。キルはせず、ひたすら後方支援していても貢献していることになるし、プレイスタイルもいろいろあったんで。
maruiさん:
後ろで迫撃砲を修理してくれているだけでも、ありがたかったですよね。
Yさん:
みなさんよりちょっと遅いと思うんですけど、『MAG』が発売された2010年の6月ですかね。フレンドに面白そうなゲームがあると勧められたんですが、当時はまだオンラインプレイにはぜんぜん慣れていなくて。256人で戦闘するのもちょっと怖いなということで、最初は「妨害」だけをやってました。「妨害」に慣れてきてから「襲撃」に行ったころ、2ちゃんねるでIRCがあるのでちょっと覗いてみようと。そしたらけっこうな人数の方がいたので、そこで初めて「制圧」に行きました。その時にこのゲームってすごいなと思った。「制圧」に行くまでは修理とかルールはほとんど理解してなくて、ただ撃ってるだけでしたね。ただ「制圧」だと、そこにいた人がセオリーやルールを教えてくれて、そこで楽しさもわかった感じですね。
maruiさん:
自分は11歳の頃にゲームキューブ版の『Medal of Honor』を友人と4人でやっていて、それが初めてのFPSでした。オンライン対戦もやってみたいということで、14歳の時にPS2版の『Battlefield 2: Modern Conbat』を遊んで。もう少し人数の多いゲームをやりたいなと思って、中学の卒業記念にパソコンを買ってもらって、『Battlefield 1942』をプレイしようと思ってたんですが、グラフィックカードを積んでいなくてできなかった。親にPlayStation 3をせがんで買ってもらって、なにかゲームを探していると256人で撃ち合うゲームがあると聞いて、『MAG』を購入しました。わらわらプレイヤーがいて、撃ち合いもいっぱいできて、楽しかったですね。敵を探すよりは、みんなで撃ち合うゲームがしたかったので。
Zipper_chan(2号):
私は発売後にすぐ『MAG』を購入して、3月終わりくらいまでは野良だったんですが、クランっていいなあと思って、まとめページから「ガンダム」が好きそうなクランを探して入れてもらいました。そこのクランのマスター(クラマス)さんから、「英語がわかるなら一緒に翻訳して『MAG』の最新情報をTwitterで発信しないか」と誘われて、クラマスさんが0号、もう一人の帰国子女だった先輩メンバーが1号、私が2号で2010年8月に開設したのが「じっぱーちゃん」です。当時はまだゲームの情報をTwitterで日本向けに公式アカウントが流すというのは珍しく、『MAG』も公式ブログやフォーラム、ポッドキャストから情報を取得するしか無い状況でした。多くの日本人は2chで翻訳された投稿を見ていたと思いますが、掲示板という仕様上、さまざまな人の投稿で情報が探しにくいというデメリットがあったので、ツイッターで翻訳された情報だけを流すのは便利だし、フォーラムでのZipper Interactiveの社員の発言まで2chに載せる物好きも居ないだろうし、面白そうだと思ったのがきっかけです。
初期の『MAG』
メジャ郎さん:
私はベータテストからやっていて、当時このゲームのことを知ったのは、2ちゃんねるのニュース速報板がきっかけでした。すごいゲームがあるんだなあと思ったのが、『MAG』との出会いですね。NINTENDO64の『ゴールデンアイ007』以来だったので、ほぼほぼ初めてのFPSでしたね。プレイしてみると、最初はわちゃわちゃと人が出てきて、気づいたら死ぬばかり。でも、お祭り感があって、面白かった。
maruiさん:
ベータテストの開始当初に実装されていた、100で弾がひたすらまっすぐに飛んでいくLMG(※)ですよね。あれは確かに強かったですね。でもその頃から、装弾数が少なくて威力も低いアサルトライフルを使っている層もけっこういた気がします。
メジャ郎さん:
特に海外のプレイヤーはそういう細かいことを気にしないでしないで、自分が一番気に入った武器ならそれでいいって人が多いですね。
hermanさん:
外国人はバトルライフルが好きですよね。バトルライフルに4倍スコープとか、ごてごてにアタッチメントつけて、それだと蘇生が持てないだろうみたいな(※)。
Yさん:
初期の思い出といえば、ナイフですかね。ショットガンにナイフを装備して、裏を取ってキルするスタイルでやっていました。
――すごい面白かったですよね。モーションセンサー(※)を付けて、センサー妨害(※)で裏回りして、ナイフで延々とキルし続ける。
maruiさん:
切っても切っても、いくらでも沸いてきますからね。
メジャ郎さん:
それをしていると、向こうの人からファンメールが来るわけですよね。しかも初期のナイフって、味方も殺しちゃったでしょう。フレンドリーファイアがあったから。
Yさん:
いつまでだったかな。
コーイチローさん:
発売された年の6月くらいに修正されたんですよね。
maruiさん:
ヘッドショットも味方に入りましたからね。
――どのモードでも、いきなり味方を殺す人がいましたよね。
hermanさん:
集団でリスポーンするのと、ナイフの当たり判定が広いので開幕でナイフを振ると、味方が死ぬんですよね。
メジャ郎さん:
間違えてする人もいた。
maruiさん:
開幕、味方に半殺しの状態にされて、そのまま最前線に向かうみたいな。
hermanさん:
やけになってるのか、制圧の初期リスポーン地点で、戦争が始まることありましたね。
maruiさん:
入り口で伏せて塞いでる人もいましたね。
PMCについて
コーイチローさん:
外国人タイム(※)の「セイバー」の質がすごかったですね。
hermansさん:
「ベイラー」の質が低すぎた気がしますね。外国人タイムの各PMCごとの質の違いは不思議でしたね。外国人タイムに「セイバー」でプレイしていたら、外国人がAPCを壊すのにびっくりしましたね。ロケランの存在を知ってたんだって。「レーヴン」か「ベイラー」でやっていたら、まず間違いなくそういう発想はない。バンカーを守らないし、燃焼搭にしかたまらないし。
メジャ郎さん:
破壊された燃焼搭を修理キットで必死に直そうとしている人とかいましたね。
hermanさん:
ゲージないし、直らないから。
Yさん:
開始時のゲーム音声で、そこから避難して燃焼搭を守れっていうアナウンスが流れるんで、あれが影響しましたよね。あれがなにからの避難なのか、なぜ燃焼搭に行かなければならないのかが分かっていない。
――ゲームデザイン的なものもきっとあるんでしょうね。
hermanさん:
セオリー的には、本当は燃焼搭を突破して、バンカーを突破して、アルファベットを開くというのがあったんだと思いますね。
コーイチローさん:
ただ、戦術としてバンカーを落とした方が効率が良いから、日本人のあいだでそれが戦術として定まったんだと思います。燃焼搭を無視してバンカーラインを突破するという。
maruiさん:
それで分隊長だったら、反対側に移動させてましたね無理やり。それで排斥投票されたり。
コーイチローさん:
外国人タイムは、やたら排斥投票が入りますよね。
maruiさん:
「セイバー」はやっぱり強い印象がありましたね。あとボロボロの武器を使っているという印象。
メジャ郎さん:
それはそういうデザインだもんね。
maruiさん:
「ベイラー」のアメリカ風の装備で、初心者が入りそうな印象。その真ん中が「レーヴン」って印象でしたね。
――PMCによって武器の強さなどもかなり違いました。
maruiさん:
PMCできっちり武器の特色がて出ていたのも、すごいなと思ってましたね。威力の「セイバー」、命中精度は「ベイラー」とか。自分は命中精度の高い「ベイラー」武器があってましたね。
――「レーヴン」に対しての印象は。
コーイチローさん:
買った当初は「レーヴン」で遊んでいたんですよ。見た目がかっこいいんですよね。オープニング映像でも、バーチャル・リアリティを駆使したトレーニングをしたり、最新鋭のアサルトライフルを持ってたり。
――実際にはどうでしたか。
コーイチローさん:
プレイしていると「セイバー」がうらやましいなと思えてきて、レベル60になってから「レーヴン」から「セイバー」へと移ったんですよね。そしたら味方の動きが良かった、ほぼ全員が蘇生を持っていました。
maruiさん:
熟練したプレイヤーは「セイバー」に行くっていうイメージがありましたね。
コーイチローさん:
それで自然と全体の理解度が上がっていたというのもあると思うんですよね。
Zipper_chan(2号):
熟練モードに入って他陣営のトロフィーを取るために、業務提携先のクランに入れてもらったりしましたね。また陣営を移籍してその人達と戦う時はすごいテンション上がるんですよね。『MAG』ならではの交流の形だったと思います。
MAP全般について
――やっぱり「レーヴン」の話になりますかね。
maruiさん:
「APC」(車両)がありますよね。あれをジャンプして踏み台にして、屋根から侵入するって作戦をしてましたね。「レーヴン」の壁は低めなんで、それを「APC」横づけにして踏み台にして攻めるっていう作戦がありました。
――自分たちが「レーヴン」だった印象的にどうですか。
maruiさん:
とりあえず一通りやった感じ、酷いマップだと思いましたね。なんで対空砲へ一直線の道があるんだよ、防げよと思っていました。外国人タイムだと3分で落ちますよね。対空砲を守るのが自分だけですからね。あとは一度マップアップデートが入って、「フロレス湾移管」の自陣地に壁ができましたね。壁がなかった時は、一度取られると取り返すのが本当に大変だった。横から撃たれるは、正面から抜かれるはで、屋根もないから爆撃で死にまくるという。
maruiさん:
高いところから見ていると、リスポーンする時間にすごい人数の人がワラワラと出てくるんですよね。
――『MAG』ってリスポーンの時間を測る方法ありましたよね。
hermanさん:
どっかのサイトのツールで、リスポーンの時間測ったりとかできましたね。
maruiさん:
でもマルチディスプレイ環境じゃないと見れないですよね。
コーイチローさん:
あとは石油フリーズ(※)ですかね。
hermanさん:
超時空要塞「フロレス」ですね。「セイバー」の制圧ゲージめちゃくちゃ溜まって、「レーヴン」がめっちゃ遅くなるっていう。
コーイチローさん:
あれって、1回目のアップデートの前じゃなかったですか。
hermanさん:
フリーズ地獄の後だったかな。
コーイチローさん:
フリーズの前ですね。フリーズ地獄が始まったのは、2010年の12月ごろなんですよ。
maruiさん:
連続補給ロケラン(※)がありましたね。あれでヘリコプターはすぐやられるんですよね。そしてずっと走っている。あの補給しているところで敵を倒すの、好きでしたね。
コーイチローさん:
あれも「アブシェロン」ですね。
maruiさん:
あと「アリエスカ」の二階の補給箇所で、ガスグレ投げたりグレネードだしたりしてましたね。
メジャ郎さん:
壁抜けてきたところがあって。扉の向こうから入ってくる。
hermanさん:
「アリエスカ」のドアの横から入れるってやつですよね。明らかなグリッチなので、日本人クランはそこを使わないルールでやってたんですけど、外人はそこから入ってきて途中からぐちゃぐちゃで、わけがわからなくなってしまうことも。
Zipper_chan(2号):
「アリエスカ」といえば軽車両を本拠地から持ってきて、崖から落としてバンカー前に陣取って砲台になるのも最初見た時はたまげましたね。ロケランがあれば簡単に潰せるはずなんですけど、複数の敵が修理キット持ってると難攻不落の鉄壁バンカーになってしまうという。
コーイチローさん:
あと、石油の潜り修理(※)ですね。
hermanさん:
あれはちょっと修正して欲しかったですね。
コーイチローさん:
途中から運営はほんと放置してましたよね、マップのバグは。
maruiさん:
Zipper Interactiveが倒産してしまったので、途中から元気がなくなっちゃいますよね。
hermanさん:
ソニーがサーバーを管理して、Zipperが撤退した後になりますよね、ゲームの修正がなくなったのは。
コーイチローさん:
Zipperは『UNIT13』が出てから、すぐに閉鎖しましたよね。
『制圧』の密集感
Yさん:
基本的に4つの方面で戦ってるんですけど、その状態で「アルファベット」をすべて開くと危ないところに一気に集まって、各方面の力が一気に集約してすごい戦いなったりしますよね。
コーイチローさん:
あれは大人数だけど一緒にやってるっていう気分になりましたね。
maruiさん:
ふと空を見つめると、煙が見えるんですよね。それで「バンカー」突破されてるなとか、戦闘機が飛んでるなとか。
――自分の関わっていない範囲の戦況が可視化できてるっていうのはよかったですよね。
maruiさん:
クランだと「バンカーライン」を放棄して「アルファベット」を守ろうとなって、みんなで下がることもありましたね。
コーイチローさん:
自分のところだけ「バンカーライン」守ってても、ほかで「アルファベット」取り続けられると負けるんで。
Yさん:
「対空砲」のすごいいいタイミングの修理とか。修理屋って言うんですかね。単独で潜入してギリギリまでゲージ溜めて、一気に「バンカー」4つと「対空砲」を全部解放して、一気に戦線が戻したりするプレイヤーがいましたね。うまい修理に帰ると、一気に「バンカーライン」まで戻る大逆転みたいな。
maruiさん:
逆に「バンカーライン」が上がったことによって、誰もいなくなった「アルファベット」を攻撃され続けるってこともありましたよね。自動でリスポーンが「バンカー」からになるので。
hermanさん:
結局全部タイミングなんですけどね
Yさん:
ほかのFPSに比べてお祭り感、64人ぐらいでは絶対に味わえない密集感がありましたね。
hermanさん:
マップに対しての密度が濃かったんですよね。『Battlefield』も人数は多いけど、マップがだだっ広いので、あんまり連携感がない。
Yさん:
「蘇生」もすぐにできるんで、十数人の規模で押し合いへし合いもできる。
hermanさん:
「アルファベット」での密度が違いますよね。「蘇生リレー」とかあったじゃないですか。
Yさん:
人間がある程度ばらける「バンカーライン」より、最後の「アルファベットライン」の方が面白かったですね。
maruiさん:
カオスすぎますよね、あれは。
Zipper_chan(2号):
リスポンして出てきたら戦術爆撃で一気にやられたり。
――今のFPSって、大人数である程度撃ち合えるように、意識して広いマップを作っているじゃないですか。『MAG』はその辺の密集感が違った気がします。
maruiさん:
射撃の腕とか関係ないですよね。
Yさん:
そこら中から弾飛んでくるんで、常に視界の中で誰かが死んでいる。敵を撃ってもいいし、味方を回復してもいいし。
――密集感という点では、無理やり他と比べるなら『Battlefield』の「Operation Metro」にちょっと似てますかね。
Yさん:
『MAG』は1方面だけでなくて4方面あるんで、どこを攻めようか、どこ守ろうかというのがある。とにかくやれることが多いというか、戦略次第でひっくり返すことができるパターンも非常に多いですよね。
maruiさん:
「APC」がある部隊はどこかの「アルファベット」に増援に行くとかありましたよね。
――ゲーム内でできることに関しては、自由度もかなりありましたよね。
コーイチローさん:
極端な話、サボってもいいですから。
hermanさん:
疲れたから修理しとくというのもありだった。
Yさん:
回復でもいいしキルでもいいし、修理でも破壊でもいい。
――あのゲームはキルするより「蘇生」した方がポイントもらえるめずらしいゲームだった。
コーイチローさん:
門の修理とか楽しいですよね。あれも局地的な連携がすごくできたりとかしますね。1人より2人や3人のほうが早い。
――先ほど話しに上がった「密集感」って、僕はけっこう考えたことがないキーワードだったんでけど、腑に落ちましたね。
コーイチローさん:
「戦線」ができるんですよね。「戦線」が移動してラインを上げ下げしながら、どっちに数的有利を作るか考える。
Yさん:
レーダーとか迫撃砲とか、それぞれ機能の違う重要施設がいくつかある。どれを壊すかどれを守るか、どれから修理するか。ただ撃ち合うだけではなくて、どこを攻めるのか、回復や修理をどこに定めるかっていう、優先順位を考える必要があるゲームでしたね。撃ち合いだけではないってことですね。
maruiさん:
キルが上手いクランと組織力が高いクランが戦うと、組織力の高い方が最終的に押し返すっていう。
――それは象徴的なものですよね。
コーイチローさん:
とても『MAG』らしい話ですよね。
Zipper_chan(2号):
FPSが上手くなくても、蘇生や修理、破壊工作で貢献できるというのは、何故かほかではいまだに無いんですよね。『Battlefield』は蘇生も修理もできるけど、戦車をちょっと修理したくらいじゃ戦線が動かないけど、『MAG』の施設などの修理は戦局に直結してましたもんね。
hermanさん:
自分のところのクランの話でいうと、全員そんなに撃ち合いが上手い感じではなかったんです。でも、修理とか蘇生みたいに、キル以外のところでチームプレイをやってくれる人も多かったから、そういう人もそれに楽しみを見出せるし、そういうのが勝った時の喜びにつながっていくみたいなとこありますよね。
Yさん:
それだけで楽しめますよね。
maruiさん:
初心者への敷居は低いですよね。
Yさん:
「修理」だけでもいい。
maruiさん:
「蘇生」は100パーセントみんな持ってる。スキルツリー(※)で一番最初にアンロックするのって、あそこですもんね。それがないと話にならない。
メジャ郎さん:
「蘇生」アンロックまでは「妨害」をプレイする。
hermanさん:
マップの密集率が高いから、最後の数秒とかで勝ったりとか負けたりとか。
――意外とあのゲームって接戦で勝ち負けが決まる試合が多かった印象があります。
maruiさん:
それをやるためにやってたみたいなもんですね。
hermanさん:
接戦でギリギリ負けたら悔しいし、勝ったらすごく嬉しい。あれがあったらから、みんな続けてたんじゃないのかなって思いますね。
maruiさん:
それをクランのみんなと仲間たちと一緒に喜べるっていうのも良かったですね。
コーイチローさん:
共闘感はやっぱりすごかったですよね。
hermanさん:
それが『Battlefield』とか別のFPSとの一番大きな違いなのかな。
Yさん:
マップの上を見渡すと、目に見えているだけで敵も味方も常に何人か確実に写っている。防衛側だと大勢が同じ場所にリスポーンするんで、その時の密集感も違ったんですね。
maruiさん:
マップ見る画面ありましたよね。スタートボタンであれ見るだけで面白いんですよ、いっぱい点があって。
hermanさん:
ギリギリで勝ったりするときに、さっきの「蘇生リレー」とか知らない外国人と連携してるようなことがあったりすると、心にすごく残る。なんとも言えない充実感が残る。
――自分たちが頑張ると、みんなで頑張って勝ったっていう気分になれるんですよね。
hermanさん:
違う日本人クランとヘリを壊したりとか。それで勝ったりするとすごい一緒にやったって感じがする。
Yさん:
その分、つまんない時は、ひたすらつまらないんですよね。
hermanさん:
「パラキル地獄(※)」とか「赤線オンライン(※)」とかはきつかったですね。
maruiさん:
「赤線」をすり抜けて施設を壊すのも楽しかったですけどね。
Yさん:
「赤線」でも必ず1人か2人が抜けて門を壊してますよね。「赤線オンライン」でも、防衛側で門が壊れたから修理しに行くと、なぜか敵がいて待ち構えていて、殺されたりする。
――それは局面局面では一対一になったり。
Yさん:
「赤線」でも本当に余裕の防衛の時に軽車両を集めてレースしたりとか並べたりとかしてましたね。
hermanさん:
フロレスでもわかってる日本人が集まったら硬かったですし。
――今考えると「制圧」のマップってすごくよくできてたのかもしれないですよね。
Yさん:
「フロレス」以外はよくできたと思いますね。「フロレス」も屋根がついてからは大分よくなった。
――理解度さえあればやれる感じはありました。
Yさん:
デザインというか、「修理」できる施設とか壊せるオブジェクトが非常に多かったというのはありますよね。ほかのゲームでは、あれだけ目標がたくさんあるゲームってないですよね。
――目標が多いからこそ、優先順位をつけて動いていけるっていう。
コーイチローさん:
「修理」が戦局に大きく影響を与えますからね。
Yさん:
「バリケード」1つでもやっぱり影響はあったんで。「APC」突破されるだけで結構不利になったりしますからね。
hermanさん:
キルだけするけど「修理」はしないところはあんまりだなっていう感じが、一番良かったですね。
――基本的にどんなFPSでもキル優先にはなるんで、そうじゃなかったってのが大きいですね。
hermanさん:
そこのところのバランスがさじ加減が日本人的には非常に良かったのかなあって。外国人から見たらわからないんですけど。
前編は座談会中『MAG』のゲーム性について語られた部分を再構成させてもらった、後編では「現象」としての『MAG』をより多面的に深く掘り下げた部分を抽出したい。
[執筆 Nobuhiko Nakanishi]
[編集 Shuji Ishimoto]
[協力・監修 Zipper_chan(2号)]