2016年12月は比較的暖冬だった。12月27日には最高気温19度と、むしろ春のような陽気だったのを覚えている。翌28日、最高気温が一桁になり急激に冬の厳しさを感じさせる天候になったその日、寒風吹きすさぶ秋葉原、しかも電気街口と逆方向に歩いていったビルの1フロアで「RTA in Japan」が開催された。異常に寒い外気温の中、おそらく近隣でもっとも夏のような熱さに溢れていた日本で初めての3日通しのオフラインRTA(リアルタイムアタック)イベントである。

その様子は国内外で配信され大きな盛り上がりをみせたが、日本ではこの規模のオフラインRTAイベントは初ということもあり、どういったものだったのかわからない人も多いのではないだろうか。今回は3回に分けたインタビューで、昨年末の「RTA in Japan」をできるだけ詳しく紹介していきたい。そしてできればこのインタビューが、「RTA」の存在は知っていても見た事がない方が「RTA」の動画を見てみようと思うきっかけに、「RTA」はよく見るよという方が「RTA」に挑戦するきっかけになって欲しい。そう切に願う次第である。

 

「やる人」も「見る人」も広がって欲しい

「RTA in Japan」主催者もかさん(@moka_peer

――今回イベント開催への思いは「RTAPlay!」にて読ませて頂きましたが、あらためてその経緯をくわしく教えていただけますか?

もかさん:
以前から海外では日本より先行して「Awesome Games Done Quick(AGDQ)」などのRTAのイベントが開催されていました。「AGDQ」は今から6年前、海外のタイムアタック記録をまとめたWebサイト「Speed Demos Archive」が発案して、みんなで集まってタイムアタックをTwitchで配信しよう、配信するならチャリティーをやってお金を集めてみようと始まったんです。最初はシェアハウスみたいな所を借りて配信していたんですけど、翌年にはホテルのロビーみたいなところに変わって、それからどんどん規模が大きくなっていって、今ではもう寄付金も100万ドル以上集まるくらいの勢いになっています。

どんどん海外でタイムアタックが広がっていく中、日本はまず、まとめる人がいなかったんですね。日本は実はすごくRTAのレベルが高くて、海外からTwitterでリプライで質問が飛んできて、それに英語でやりとりするくらいの人たちが、いっぱいいらっしゃるんです。でもレベルが高いのにも関わらず、こういった集まる場所がないというのがネックになっていて。それで、海外では「Speed Demos Archive」といWebサイトを中心に人が集まっていたので、僕もWebサイトを作ってみようということで、「RTAPlay!」という、RTAを始める人のための初心者解説サイトを作ったのが始まりなんですね。たとえば今日本で一番使われてるのが「LiveSplit」という海外のストップウォッチなんですけど、やはり英語で使いづらいということで日本語の解説文を載せたら、皆がそれをみてくれて導入してくれたという経緯がありました。

――不勉強で申し訳ないのですが、「LiveSplit」というのが定番のストップウォッチになっている?

もかさん:
PC上で動くストップウォッチですね。ストップウォッチって、実はWEB上に転がっているものでも、何時間も計っているとコンマ秒くらいでずれちゃうんですよ。

――ではRTAでは、それを使うのがルールになっているんですね。

もかさん:
そもそも、きちんと正しく動くストップウォッチがかなり少なくて、4個か5個くらいしかないんです。その中で一番多機能なのが「LiveSplit」なんです。それの日本語解説をつけたことで皆が見てくれて、RTAプレイヤーなら「RTAPlay!」は一度は見たことがあるくらいのサイトにまで成長させられたんですね。

2年くらい経ってから、それでようやく集まろうってことになって、一度夏にやりました。日本のRTAのコミュニティって、一番大きいのは「ニコニコ生放送(ニコ生)」なんですけど、その次が「PeerCast(ピアキャス)」だったり、「Cavetube(カベツベ)」だったり「Twitch」だったりと、凄く分かれてるんです。その中でピアキャスだけで集まってみようっていうのが夏のイベントだったんですけど、その配信中に日本のTwitchの方からウィスパーが飛んできてコンタクトがありました。さらに個人的に韓国のTwitchの知り合いの方がいまして、日韓が繋がったということで、今回日本スタッフと韓国スタッフ両方に手伝ってもらっているんです。

――ではTwitchの方から、大規模イベントとしてやってみないかという話が。

もかさん:
かなり以前から大規模イベントをやりたいという気持ちはあったんですが、夏に集まってやってみると成功して、その際にTwitchさんから話がきていて、今回に繋がったという形ですね。

――設備の方もTwitchの方々が用意されているみたいですね。

もかさん:
そうですね、配信機材は全てTwitchさんのものですね。プレイヤー側はゲーム機とかを持ってくるだけということになっています。

当日用意された配信スペースと機材。撮影者の背後にはイベント参加者用の椅子とプロジェクタが並べられ、飲食用の小さな休憩スペースもあった

――「RTAPlay!」にはどのように人が集まっていったんでしょうか。

もかさん:
ほとんど検索経由ですよね。日本で最初に「LiveSplit」の解説が掲載されたことで、みんなが見始めたというか。

――今回の「RTA in Japan」のイベント告知は「RTAPlay!」経由で行われましたが、かなり集まりましたよね。

もかさん:
記事をアップしてTwitterで告知しただけですね。それだけでリツイートが100件以上きて、参加者が数十人きてくれたという感じで。日本ってゲームごとにプレイヤーが分かれてて、横のつながりがほとんどなくて、僕自身もそうなんですよね。でもあのサイトを作っておけば、ストップウォッチはRTAに絶対にみんな使うじゃないですか。そこだけでも共通化しておくことによって、いざ広める時に広がりやすかったってのはありますね。

――今回RTAが披露されるゲームの選別についてなんですが、かなりマイナーなものも選ばれてますよね。『黄龍の耳』とかは、僕自身は知っているタイトルなんですが、一般的に認知度は低いと思います。これは専門でやり込んでる方がいる?

もかさん:
いますね。あれは実はピアキャスで数人だけで流行ってたゲームで。

――ピアキャスのコミュニティ内で流行ってたんですね。

もかさん:
実は「AGDQ」本家でも、同様にマイナーなゲームを選出していたりするんです。「AGDQ」のイベント規模は確かに大きいですけど、ワールドレコードだけを追い求めてるのではなくて、幅広いゲームの選択をしています。なぜか『CCさくらのテトリス』が選ばれていたりとか。その辺で『黄龍の耳』を選ばせていただきました。

――そういう意味ではRTAには、歴史に埋もれたタイトルの発掘という意味もありますよね。あとは『プロゴルファー猿』など、ゲーム本来が持つ面白さ以上の楽しさを伝える力も。

もかさん:
『プロゴルファー猿』はボードゲームなんで。180ヤードのコースだと、残り90ヤードか残り80ヤード、残り5ヤードという場面が何種類かあって、ショットの上手さによって落ちる場所が決まる。こういう埋もれたタイトルの選出というのは以前からあって、2016年8月の「Summer Games Done Quick(SGDQ、夏に実施されるAGDQの姉妹イベント)」でも、PlayStationの『ペプシマン』とかやってたりします。「GDQ(AGDQ、SGDQの総称)」に関しては完全な抽選ではなく厳選なので、そういったタイトルが1つ2つあえて選ばれていますね。そういえば、実は今回の「RTA in Japan」では海外向けのミラー配信も決まっていて、「GDQ」の人と話して海外でも解説つきでやりたいって話もきてるんですけど、『黄龍の耳』は知ってる人が中々いないって話でした。

AGDQ 2017にてRTAが披露された『CCさくらのテトリス』(参考リンク: YouTube

――モカさん自身はRTAをどのように始めたんでしょうか。ブログでは自身もプレイヤーであるという話を読みました。

もかさん:
いま現在のようなRTAは昔はなかったんですけど、90年代ですね、「ファミ通」の「やり込みビデオ投稿」とかあったんですよ。僕も投稿して載ったことがあるんですけど、みんな昔はあれに投稿してたんですよね。ただVHSビデオで録画するとすごく大変で、20数本30数本と膨大な量になっていって、負担が大変になっていった。その後、2000年くらいになってからみんながインターネットを使い出した頃に、国内では「ULTIMAGARDEN(通称「庭」)」という海外の「Speed Demos Archive」に似たサイトが生まれまして、そこに「やり込みビデオ投稿」をしていた方々が集まり始めたんですね。そこでは「やり込みのレポート」というのをみんな投稿していて、たとえばこのレベルでこのボスを倒しますという詳細なレポートを投稿して、それが掲載されれば記録として認められたという形式をとっていました。僕はどちらもやっていましたね。

――たとえばどんなタイトルでしょうか?

もかさん:
僕は今回の「RTA in Japan」でもプレイヤーとして参加するんですが、『ヴァルキリープロファイル』をずっとやってまして。ファミ通のころは『ラジアータストーリーズ』でしたね。僕はトライエースの作品ばかりをやっています。RPGばかりで、海外だとめずらしいタイプなんですけど。

――やり込みやすいRPGタイトルとかあったりするんでしょうか?たとえばシンボルエンカウントとランダムエンカウント、どちらがやりやすいとか。個人的にはシンボルエンカウントの「サガ」シリーズのやり込みがRPGでは多いなと思っています。

もかさん:
タイトルによりますね。ランダムといってもずっと最後までプレイするので、平均値見たいのがわかってくるじゃないですか。その辺でまとまってくるみたいのがありますね。

――最終的には乱数調整されるみたいなとこに行き着く。

もかさん:
はい。長くやってると大体これくらいだなってのが、わかるようになります。

――日本ではRPGのやり込みも主流ですよね。

もかさん:
2000年代はULTIMATEGARDENにレポートを載せるという形式だったので、アクションゲームのやり込みはやりにくかったというのもあります。だから2000年代ごろの日本は、タイムアタックってRPGしかほとんど存在しなかったんですよ。

――たしかにアクションゲームはレポートしづらそうですね。

もかさん:
アクションゲームのやり込みが多く見られるようになったのは、ニコ生などが広がってからですね。

日本のRTAの歴史については、もかさんが記した「RTA in Japan開催までの経緯」にて詳しく解説されている

――RTAプレイヤーの方々はどのようにRTAに取り組んでいるんでしょうか。見ている限りでは、RTAには「テクニックの部分」と「研究の部分」の二つの方向性があると思っています。

もかさん:
けっこう分かれるんですよ。僕や昔からやってる人は戦略に重きを置くというか、記録は二の次で、とにかく机上の空論でいいから方法論を考えるという人も多い。記録よりも方法論の方が重要で、プレイ自体は流れ作業でやるみたいな感じですね。逆にスポーツのように1フレ単位で競うというのは、アクションゲームをやり込む人に多いですね。ジャンルによってパターンの考え方が違うことが多いです。

――AUTOMATONでもたまに取り上げるんでが、グリッチやすり抜けといったすごい発見があって、スピードランの歴史が変わるみたいなニュースがありますよね。そういう研究をすることだけが好きな人もいる。

もかさん:
いますね。実際プレイはしないけども研究だけはすごくて、その研究で記録が塗り変わるみたいのありましたね。初代の『スーパーマリオブラザーズ』で数か月前、4分56秒台がでたってニュースがありましたけど、あれも実は研究が重要でした。『スーパーマリオブラザーズ』って、最後は旗に飛びますよね。あの時、一定以上マリオが下にいると、マリオの動きがキャンセルされるという仕様があるんです。当初は1フレーム単位の操作を続ければそれを実現できるというのが分かったんですが、相当難しくて「TAS」でしか使われてなかったんです。でもそれを研究していた方が、1フレ単位の行動を2回すれば、簡単に実機で再現できるととこぎつけたんですね。

――理屈は分かるんですけど、1フレ単位の行動を二回するって、ものすごく難しいですよね……。

もかさん:
結構できるみたいです。ぶっちゃけ、熟練プレイヤーは3回に1回くらいやってますね。56秒台を出した方は、それを1-1と4-1で2回決めてましたね。

―もかさん自身はそういう研究をされるタイプですか?

もかさん:
僕はあんまりしませんね。僕は研究されたものをまとめて戦略を練り上げるみたいな感じです。僕も『ヴァルキリープロファイル』で状況再現をして、完全に同じ操作をして絶対に先制できるようにするんですけど、それも見つけた方が教えてくれたものをやってるだけで。

――こういう研究をされてる方は、労力を割いてやってる訳ですよね。

もかさん:
そうですね、ゲーム別に日本でも研究タイプの方は多くいます。『ヴァルキリープロファイル』のRTAの研究も、昔なんかは掲示板というかファンサイトにて書かれてきたんですけど、海外で最近発見されて北米版でも修正されてないってことがわかって、国内外で盛り上がるってこともありましたね。

『美味しんぼ』の「アンキモ」RTA

――そう考えると、たとえばアドベンチャーゲームのようなタイムアタックもある?

もかさん:
結構アドベンチャーゲームのタイムアタックやってる人いらっしゃいますよ。僕ら界隈で広まってたのはファミコンの『美味しんぼ』で、山岡さんが「アンキモ」と叫ぶバッドエンドまでが3分ちょっとで終わる。

――ゴールにバッドエンドを持ってくるという遊び方もあるんですね。そういえば、RTAのルールはどこで決められるんでしょうか?

もかさん:
ルールは一番最初に始めた人が勝手に決める感じですね。それが実は問題になることもあって、たとえばニューゲームから始めるゲームがあると、ニューゲーム前に乱数が動いてるゲームもあるんですよ。開始前に調整できたりすると、そのルールの設定で揉めたりすることもありますね。一番酷いのが『ロマンシングサガ2』で、スーパーファミコンの電源を抜いて電池の残存電力で乱数が変わるっていう、酷いゲームなんですよ。あとはスーファミの型番によっても違う。電池を抜いて放電して15分くらいしてから始めると、確実にひらめく乱数があったり。

――現在『ロマサガ2』ではどんなルールが主流になっているんでしょうか。

もかさん:
電池法”っていう電池を使って状況再現するルールと、ROMをさしっぱなしのルールと、2通りですね。

――そういうルールの細分化は、アップデートが頻繁な最近のゲームに多いと思ってましたが、昔のゲームにもあったりするんですね。

もかさん:
ありますね。前期ROMと後期ROMで違ったりすることもあったり。今回応募された方では『魔界塔士SAGA』の方が、SFCの型番によってゲームボーイのロゴ表示の速さが違うってことで、一番早いの持ってきますと言ってました。

――全体的に聞くと、基本的には一番最初に世に出した人のルールが採用されるんですね

もかさん:
そうですね、ただたまに海外と日本で意思疎通ができてなかったりすると勘違いが起きたり、ストップウォッチの計測が違うってこともある。困ったら電源入れてから全部録画しといてってのがセオリーになります。だいたい始まりは電源入れてからかスタートしてからの2種類、終わりはスタッフロールが流れた時かラスボス倒した瞬間ってのが主流ですね。

――バグの許容の仕方でも大きく変わりますよね。

もかさん:
バグ有り無しかでも大きく変わったりします。有名なのは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』なんかで、実はワープ先を自分で選べて、いきなりボス倒した所に飛んだりするんですよ。それがありがなしか、バグありかなしかでも細かく分かれていて。持っているビンによってメモリを操作できるゲームなんで。

今回は時間の都合上、残念ながら『Dark Souls』のプラチナトロフィーRTAは採用されなかった

――今回は「RTA in Japan」第1回となりますが、次回以降はさらにどのようなイベント内容にしたいと考えていますか。

もかさん:
今回は時間的にみると2日間、50時間ずっとやっているんですが、結構これが短くてですね。人によっては長いRTAをやりたいという希望者もいて、今回一番長かったのは24時間の応募だったんですけど。

――タイトルはなんでしょう?

もかさん:
『Dark Souls』の「プラチナトロフィーRTA」ですね。これ16時間で成功したという記録が最近あったんですけど。

――確かに50時間だと、1つのタイトルに16時間をかけるわけにはいかないですね。北米の「AGDQ」だと、一週間規模でやってますけど。

もかさん:
そうですね。それを踏まえると今回はちょっと時間が足りない。今回は短いものを選んでるみたいな感じです。

――ほかにも海外のRTAイベントと比較すると、今回チャリティは実施されていないみたいですね。

もかさん:
したい気持ちはありますけど、1円も間違えることなく慈善団体に飛ばすって仕組みを作るのは難しいらしいんですよね。海外の方からもチャリティをやらないのかって問い合わせがきてたんですけど、「イベントが成長してからね」と返答しておきました。

今年2月には第1回「RTA in Japan」の開催結果についても報告があり、次回への改善点や展望が語られた

――短期的には次回開催が目標になると思いますが、中長期的にはイベントをこうしていきたいという考えはあるでしょうか。

もかさん:
今はもうゲームのテクニックって英語圏が先行していて、英語がわからないとできないってのがあるんですよね。一月に「GDQ」があるんですけど、実は今回の参加者の中の2人が渡米して行ってくるんですよ。そういう英語圏との交流がもっとできたらいいなって感じですね。

――少し違うかもしれませんが、格闘ゲームでは「EVO」というイベントがあって、2018年からは国内でも開催されます。あんな感じで国内外で開催されるような、大規模なRTAイベントもできると面白いですよね。

もかさん:
イベントごとに交流ができるとすごく面白いんですけど、今は海外から日本人のプレイヤーにコンタクトが取れないという問題がありますね。ただ、「RTA in Japan」みたいな大きなイベントから繋がっていければと思います。

――最後に、もかさんから読者の方々へ向けてメッセージをお願いします。

もかさん:
今回の「RTA in Japan」は、まだまだ広がりきれてないと思うんですよね。是非これから2回3回と続けていくうちに知名度をあげていって、一般のゲームプレイヤーの方々に知られて欲しいなと思ってます。まだまだコアゲーマーしか知らないみたいな所があるんで、今はニコ生なんかで広がりつつあるとは思うんですけど、もっとそれを加速して、ゲーム好きなら知ってるというレベルにまで昇華したいなと。日本ではそういうのがなくて相当苦労しましたから。

――インタビュー外でのお話では、そもそも「RTA」って言葉自体が日本で作られたということもお聞きしました。

もかさん:
そもそも海外では使わなかった(海外ではスピードランが主流)んですけど、日本人があまりに使うものだから一般化したみたいです。昔のタイムアタックってストップウォッチを使うようなものじゃなくて、ゲーム内時間でクリアタイムを競ってましたよね。たとえば『ファイナルファンタジー』とか、セーブポイントが最終地点についたときのセーブデータを記録としてた。でもそれだと「多く」のゲームを計れないしってことで、できたのがRTA(“リアル”タイムアタック)ですね。ストップウォッチをつけて、終わったら止めるっていう分かりやすいルール。『ファイナルファンタジー』が多くて、今は『ドラゴンクエスト』も多いですけど、昔は全然なかった。『ドラクエ7』がプレステになってようやく冒険時間が分かるようになってって感じです。

――他のプレイヤーの方々にもお聞きするつもりですが、みなさんがRTAにここまで情熱を注げる動機はどこにあるんでしょうか。

もかさん:
単純に「ゲームの遊び方」としてものすごく面白いからですよね。自分でやっていても見ていても。ファミ通の話に戻りますけど、自分は当時やりこみビデオの特集を見て衝撃を受けたんですよね。こんな遊び方があるのかと。僕はその頃小学生くらいでしたけど、その衝撃を受けてそれから20数年やってきたので。最初にその衝撃を受けて、やってみたら本当に面白くて、だからこの面白さを広めようってことで「RTAPlay!」ってサイトを作ったのは、それがあるんですよね。是非やってみて欲しいと思って。

――自分にとって「RTA」とはと聞かれたら、なんて答えますか?

もかさん:
人生を変えられらたくらいの話になっちゃってますよね。こんなイベント開かなかっただろうし。ファミ通を読んだときの衝撃を今でも忘れてない。やめていく人も多かったですけど、僕は熱量を保ってこれたので今があります。もっとやる人も見る人も、一般に広がって欲しいです。マイナーゲームに光がもっと当たって欲しいって思いもあります。最近「ファミコンミニ(ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ)」が出てみんな懐かしいなって言ってますけど、僕らから言わせれば全然現役ですし、懐かしくなんてないのにって感じです。

――ありがとうございました。

 

「RTAプレイヤー」としてのつながり

「RTA in Japan」開催中はTwitchの日韓混合チームが付きっ切りでイベントを支援した。今回は「もかさん」と直接のつながりがあったという韓国Twitchチームの金さんにお話にうかがった

――RTAは韓国では人気ですか?

金さん:
やってる人はいるんですけど、横のつながりがあんまりないですね。日本もニコニコが主流で、こんな風にみんなで集まるイベントってのは今までなかったですが、韓国はさらにそれよりもないですね。ただTwitchとしては、年に二回「GDQ」というイベントをやってたりして、そこのスタッフを「もかさん」に紹介したりしてます。今回のイベントは英語での配信が予定されていて、日本の配信をみながら英語のコメンタリーをつけることにしています。「GDQ」自体は海外のRTAイベントにすごく興味がありますし、Twitch全体でもかなり興味があるジャンルなので、「GDQ」スタッフもサポートしていきたいと。

――韓国ではどういったタイトルのRTAがプレイされているんでしょう?

金さん:
『Dark Souls』とか有名なタイトルしかないんですけど、やってるにはやってます。韓国に関してはTwitchと、日本でいうニコニコみたいなサイトとかを通じて、個人配信やってる人が多いです。あるいはYouTUbeにアップするとか、そんな感じですよね。コミュニティがないので、自慢できる場所がないんです。

――やっぱり見て欲しいですよね。

金さん:
日本だとWikiを作ったりするんですけど、韓国ではプレイヤー同士でまだそいうのを必要としてないですよね。海外の情報を見て自分でやればいいやみたいな感じです。

――今後、アジア全体でこういうイベントが展開されていくといいですね。

金さん:
ゆくゆくはやっていきたいですよね。今回のイベントにアメリカの「GDQ」に参加している人もいますので、日本はRTA分野でも強い、「GDQ」としても日本は強いっていう認識ではいます。ただ人口がアメリカでやってるゲームと日本でやってるゲームで違ったりするんで、そういう差がありますね。「GDQ」だとネックとしては、英語が話せないとなかなか招待しづらいみたいなとこもあるんで、日本でのイベントが育っていくと相互の交流もしやすくなります。個人で招待するよりはイベントで協力していったほうがやりやすいみたいなところもあるんで。

――お話を聞いていると、Twitch韓国チームと「もかさん」のつながりがなければ、今回ほどのイベントはできなかったかもしれないですね。

金さん:
「もかさん」自身はTwitchでやるつもりだったらしいですけど、つながりがなければ、もしかしたらここまでにはならかったかも知れません。

――もかさんとはどういう関係だったんですか?

金さん:
もともと僕がピアキャスで放送してたRTAのタイトルを、先に「もかさん」がやってたとこからのつながりですね。全然うまくはないですけど、RTA自体は何回かやってました。

『ブレスオブファイア5』

――ちなみにタイトルは?

金さん:
『ブレスオブファイア5』ですね。あれは早くやると1時間15分くらいで終わる、どちらかと言えばRPGというよりは『バイオハザード』みたいな感じのゲームで、周回しないと見れないイベントがあったりするんです。あとは主人公がすごく強い攻撃が出せるんですけど、自分の命を削って出さなければいけないので、それをどう効率良くだすかみたいな。その時は早解きをするって概念がなかったんですけど、たまたま見てた配信者がやってて、動画を見ながらまねをしながら始めました。「もかさん」はその攻略同人誌も出してて、最初に会えたのがそれを買いに行ったときですね。

――攻略同人誌はコミックマーケットなどで販売されているような?

金さん:
そうですね、4、5年前になります。僕は毎年コミケに遊びにいってるんです。

――今年は最終日しかいけないですね(注釈: RTA in japanは12月28~30日の日程で開催された)。

金さん:
残念ながらそうなりますね

――韓国チームがこのイベントに参加するのは、Twitchという会社的にはどうなんですか。

金さん:
僕が若干無理言った感じはありますね。紹介は僕で、あくまでメインは日本チームで、僕らはお手伝いという感じですね。

――ありがとうございました。

 

主催者側も熱いが、実際にイベントにプレイヤーの立場で参加した方々の思いはさらに熱い。次回、次々回はこのイベントで「走った」プレイヤーの思いに迫りたいと思う。

 

[編集・撮影・取材 Shuji Ishimoto]

[執筆・取材 Nobuhiko Nakanishi]