配送センターの従業員として働き、社会の闇を垣間見る短編ADV『FULFILLMENT』。Steamにて日本語に対応し無料公開中

『FULFILLMENT』は、現代社会の闇を描いた短編アドベンチャーゲーム。Steamにて、無料公開中。プレイヤーは、配送センターで働く従業員として日夜ピッキング作業をこなし、どうにか糊口を凌いでいく。

『FULFILLMENT』は、現代社会の闇を描いた短編アドベンチャーゲーム。Steamにて、11月に無料公開された作品だ。プレイヤーは、フルフィルメントセンター(配送センター)で働く従業員として日夜ピッキング作業をこなし、どうにか糊口を凌いでいく。ストアページの文言を借りれば、本作は「配送センターで働く喜びを描いた大興奮のアドベンチャー」である。日本語対応。セーブ機能は搭載されていないものの、一気にクリアできる長さだ。

主人公は、「あなたは大事な会社の一員です」と謳う配送センターでの業務初日を迎えた新人作業員。6時30分に起床し電車に乗り、配送センターへ向かうと、まずは研修として1件だけ作業を行うことに。A1からC8まで、24の指定された棚から荷物を下ろし、1から3までの規定のベルトコンベアーまで運ぶ。窓口に待つハゲ頭の上司に報告すると、初日のシフトは終わりだ。このような出勤と作業を繰り返して、『FULFILLMENT』のゲームプレイは進んでいく。

この時点での基本給及び総支給は120ドル、仕事は楽で、それなりに生きていける金額に思える。業務を終えると再び電車に乗り、帰宅した後は食料を買いに行くか(50ドル)外出するか(30ドル)、早めに寝るかを選択。寝る以外の行動にはお金がかかる。所持金はこの日稼いだ120ドルだけであり、家賃の支払い(450ドル)が5日後に迫っているため、無駄な出費をしている余裕はない。すでにある程度切迫した懐事情だが、主人公には更なる苦難が待ち構えている。

徐々に早くなっていく起床時間。増えていく作業量。減っていく基本給と、謎のボーナス。ロボット作業員の導入が近いと知らせるアナウンス。メモから機械へ、タイムリミットも設定され、変化していくピッキングシステム。日に日に短くなっていくタイムリミット。謎のポイントランキング制度と、ポイントでマウントを取ってくる上司。

初日の総支給は120ドルだった。しかし、本作では業務に慣れても、作業量が増えても一向に給料は上がらない。それどころか、減っていく。最初は広かった視界もどんどん狭くなっていき、そもそも物理的に間に合わないタイムリミットが課される。病気にかかれば移動速度が低下し、治療にも日当以上の医療費がかかる。結果的に、主人公は家賃の支払いすらままならず、日々の娯楽や食料にすら困窮していく。

『FULFILLMENT』は、配送センターで働く労働者の、あるいは社会の闇をテンポ良く描いた短編ADV。現実の悪夢と異なり、この闇は20分程度で終わる。クリア後には画面が傾き、一部本音がむき出しになった2周目も用意されている。また、本作を手掛けたUnbound Creationsは、新聞の編集長となってニュースの採用・不採用を判断し、世論を操作していく短編ADV『Headliner: NoviNews』などを開発したインディーゲームスタジオだ。同作は、国内向けには『ヘッドライナー:ノヴィニュース』として12月12日にNintendo Switch/PlayStation 4/Xbox Oneにて販売開始されており、Steam版も近日日本語版の配信が予定されている。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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