インディーゲーム未完成作品賞 『Journey Of The Light』

『Journey Of The Light』は幻想的な森の中を探索してパズルを解いていくアドベンチャーゲーム。じつは訳ありの作品で、現在は販売中止となっている。

Steam上で定価498円で配信されていた『Journey Of The Light』。幻想的な森の中を探索しながら謎を解き、故郷へ帰ることが目的の見下ろし視点で展開されるパズルアドベンチャーゲームだ。だが、じつは少し訳ありなタイトルで、最初のステージがクリア不可能という未完成の形で発売されていた。

そのことは当時ニュースにもなり、弊誌でも取り上げたので、覚えている方もあるだろう。未完成ではあったが、ゲームの内容と話題に対しての賞となる。

game-award-2015-tsukasa-001

ゲームを始めると、画面には暗い森が広がり、その中にプレイヤーとなる「玉」がある。黒い色をしているが、その周囲はぼんやりと光っている。森の中には、階段など人間が作ったと思われるものがあり、その先に道が続いているが、周りには人や動物など生きものの姿すらない。自分は何者なのか?ここはどこなのか?なぜ誰もいない?この先に何かある?そんな疑問を抱きつつ、その玉を転がすように移動しながら森の中をさまよう。

game-award-2015-tsukasa-002

道を進んでいくと、柱のような建造物・線路・トロッコ・外灯などのオブジェクトがいくつか見えたり、ところどころで光がスポットライトのように照らされている場所もある。またオブジェクトの中で、外灯は点灯・消灯の操作ができる。ゲームの目的などはまったく説明されないが、この中に謎が隠されていて、それを見つけ出せば先に進めるのではないかと感じる。その謎は、森の中という「闇」と、それを照らす「光」にヒントがあって、黒い玉で周囲だけ光るプレイヤー自身にも関係しているのではないか。そんな予想ができる。またプレイ中は、BGMとしてピアノのソロ演奏が流れており、静かな雰囲気の中でさまよいながら謎を探し求めていく感覚は面白いと感じた。

謎を見つけるため、照らされている場所に近づいたり、オブジェクトは動かせないかと、押すような動作をしてみる。外灯を1つ1つ点灯・消灯させたり、ただ点灯するだけでなく順番があるのか探るなど、さまざまなことを試みていた。だが、何をやっても変化がなく、同じ場所をぐるぐる回るだけで、どうやっても先へ進むことができなかった。

最初の場面から進めないことは、私に限らず誰がプレイしても同じようで、Steam上のコミュニティでもその話題が持ち上がり、作者が「手違いで制作中のものをアップしてしまった」と発言するなどの騒ぎの末、発売停止とともに返金に対応すると発表された。

作者はリリース当初、Steamフォーラムでヒントを思わせるような発言をし、未完成であることを隠そうとしていた。ユーザーをだますつもりだったのでは?という疑惑も出ていたが、その後の進展はない。

私は、この騒ぎが出る前にプレイしていて、コミュニティでそのいきさつをある程度見ていたのだが、そのうえでの感想として書かせていただく。

プレイした感覚としては、限られた場面や外灯など少ないオブジェクトだけで謎があるような、そのテーマは「光と闇」ではないかと、プレイヤーに想像と期待を持ってプレイさせる、「何かを匂わせる雰囲気と演出」が面白かった。ユーザーをだまそうとしていた疑惑についても、最初からだますつもりなら、そこまで手の込んだもの用意したのだろうか?という疑問が残る。

『Journey Of The Light』は、Steam上でインディーゲームを発売するための場所であるGreenlightにて審査を通過しているが、作者はGreenlightの時点では新しいゲームを作ろうとして、何かの理由で行き詰まった末に、あたかも完成したように見せるという、苦肉の策を取ったようにも思える。

Steamで数多く配信されているインディーゲームの中で、トラブルの一つと言ってしまえばそれまでかもしれないし、それだけなら取り上げることもなかったが、ゲームとして楽しめたこと、だますために制作したゲームに見えなかったこと、未完成で終わらせるのは惜しく、チャプター1で味わった感覚を維持するように先の場面を見せてほしかったこと、それらを含めての賞とさせてもらった。

Takashi Tsukasa
Takashi Tsukasa

80年代からアーケード、パソコン、家庭用など幅広く遊んでいました。ゲームならとにかく触れてみないと気が済まないゲーマー。得意ジャンルはスクロールタイプのシューティング、アクション、アドベンチャー、パズルなど。今はSteamのおかげでインディーや海外ゲームにどっぷり漬かる毎日。もちろん、少年時代からの、ゲーセンの1コインや1本のゲームソフトで徹底的に遊び尽くして熱く語る気持ちは忘れていないつもりです。

Articles: 6