新作直前に『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』を「ストーリーを爆速で楽しむ」モードでクリアしてみた。時間は?体験を損なわず物語を味わえたのか?

この記事では、そのファストモードでシリーズ作をプレイした感想をお伝えしたい。

映画をはじめとしたエンタメの世界では、3つの独立した作品から一貫したテーマやキャラクターの成長を描く「三部作」という概念が存在する。サイバーコネクトツーが手掛けるシミュレーションRPG『戦場のフーガ』シリーズも三部作となっており、その完結作『戦場のフーガ3』が2025年5月29日に発売予定だ。本シリーズはキャラクターや世界観を共有しているため、『戦場のフーガ3』をプレイする前に過去作をプレイしておいた方がより深く楽しむことができるだろう。

しかし、ゲームをクリアするのは時間がかかる。ゲームのクリア時間集積データベースサイトの「HowLongToBeat」によると『戦場のフーガ』は19時間14分かかり、『戦場のフーガ2』は20時間26分かかるそうだ。2作のクリアに合計約40時間かけるのには、限られた人生において簡単に捻出できるものではない。プレイヤーの可処分時間に配慮してか、サイバーコネクトツーは通常よりも短い時間でゲームをクリア可能なファストモードを搭載した(関連記事)。この記事では、そのファストモードでシリーズ作をプレイした感想をお伝えしたい。


戦闘が圧倒的に時短になるファストモード

『戦場のフーガ』の世界には犬型の獣人「イヌヒト」とネコ型の獣人「ネコヒト」の2つの種族が暮らしている。主人公は年端もいかない子どもたちで、敵国の軍隊が侵略戦争を仕掛けてきたことで家族と離れ離れになってしまう。子どもたちを救ったのが洞窟に置いてあった不思議な戦車だった。その戦車は圧倒的な破壊力を持っており、子どもたちが操縦しても大人の軍隊を蹴散らすことができる。家族を取り戻すために主人公たちは戦車を駆り、敵と戦っていく。

ターン制コマンドバトルの存在する出撃パートと拠点で仲間と過ごすインターミッションを繰り返すことで、『戦場のフーガ』のストーリーは進む。出撃パートはボードゲームのように戦車が進行するルートを選択できるが、たどり着いたマスには敵が待ち受けていることもしばしばだ。場合によっては連戦を強いられることもあるため、通常プレイだと出撃パートをプレイしている時間の方が長い。

ところがファストモードでプレイした場合は、出撃パートのプレイ時間を大幅に短縮できる。ファストモードでは通常の雑魚戦はスキップして戦車は怒涛のごとく先へ進んでいくし、スキップのできないイベントシーン付きの雑魚戦やボス戦でも反応弾で即座に撃破可能だからだ。スキップした雑魚戦でも経験値とアイテムはきちんと獲得可能。ファストモードでプレイすれば道中のバトルで負けることはないし、強敵を相手にしても最強の攻撃方法である反応弾を使うことで誰でもゲームをクリアできる。

相手の弱点を突いて遅延効果を発生させたり、キャラクター固有のスキルや必殺技などを組み合わせて戦うのがバトルのカギとなるが、考えを巡らすのに時間がかかるのも事実だ。バトルの難易度は理不尽に難しいわけではないが、初見の敵に敗北してしまうこともあるだろう。『戦場のフーガ』はオートセーブを採用しており、ゲームオーバーになると一定のチェックポイントからのリトライとなる。

チェックポイントはこまめに設置されているが、それでもゲームオーバーで数十分を失うのは辛い。道中で獲得した経験値などもリセットされるため、純粋なやり直しだ。そこでプレイを止めてしまう人がいてもおかしくないだろう。ファストモードは、そうした危険から救ってくれる。妙な話だが、作中で語られる主人公たちの戦車の圧倒的な強さはファストモードでプレイしたほうが実感できた。

通常は2本クリアまで約40時間かかるところを15時間未満で達成

今回のファストモードでゲームをクリアする目的は、ストーリーの理解に注力するためだ。そのためのルールとして、ストーリーに関するテキストは必ず読むこととボイス付きの会話シーンは最後まで聞くようにした。さらに、ストーリー進行に応じて解放されていくゲーム内資料についてもすべて読むことに決めた。

上記のルールに従ってプレイしたところ、ファストモードで『戦場のフーガ』を5時間53分でクリアすることができた。HowLongToBeatでは同作のメインストーリークリアの平均時間が19時間14分と記録されているため、それと比較すると13時間以上も短い時間でクリアすることができた。ただし、ファストモードで遊んだだけでは、通常のプレイ体験との比較はできない。ということでせっかくなので筆者は通常モードでも『戦場のフーガ』をプレイしてみた。結果、クリアまでにかかった時間は17時間32分だった。

筆者の通常モードでのクリア時間がHowLongToBeatの平均記録よりも短いのは、フィールドの移動速度の高速化拠点内の施設を瞬間移動できるファストトラベル機能などが継続的なアップデートで実装されてきたことが影響しているだろう。HowLongToBeatに投稿されたクリア時間は発売直後のものも含まれているため、筆者の17時間32分という通常モードでのクリア時間は、アップデート後の標準的なものだと考えてもおかしくない。

『戦場のフーガ』シリーズは続編が出る度にそのボリュームを増している。時代と世界を同一にすることで登場するキャラクターが増えていき、シリーズを通じて生まれた関係性によって重厚なドラマが展開されていくようになるのだ。HowLongToBeatでは『戦場のフーガ2』の平均クリア時間は20時間26分と記録されている。筆者はファストモードでプレイするとクリアまで8時間44分かかった。

HowLongToBeatでは『戦場のフーガ』の平均クリア時間が19時間14分で『戦場のフーガ2』の平均クリア時間は20時間26分とそこまでの変化はない。しかし、筆者がファストモードでプレイした場合は『戦場のフーガ』の5時間53分から『戦場のフーガ2』の8時間44分へとクリア時間が伸びていた。それでも2作品をプレイすると通常なら約40時間かかることを考えると、ファストモードで15時間に満たない時間でクリアできるのは圧倒的な時短といえる。ファストモードでのクリア時間と通常モードでのクリア時間を比較すると、以下のようなグラフになった。

通常プレイと比べて物語体験の質は落ちなかったか

謎の戦車の乗組員になった子どもたちは最年長でも12歳。最年少はなんと4歳だ。戦争から縁遠かったはずの子どもたちが命のやり取りへの恐怖に立ち向かい、仲間と助け合っていく姿には胸を打たれる。非日常的な戦争に駆り出されながらも、拠点となった戦車で共に暮らして日常を育んでいく子どもたちがなによりも尊い。戦争を復讐テーマにしたストーリーは重いながらも、少年少女たちが成長を遂げていく王道的な展開も繰り広げられていく。

ファストモードでプレイした場合、『戦場のフーガ』のストーリー体験の質に変化がないのかという問題は考えるべきだろう。正直に言うと、通常のプレイでクリアした方が最高のカタルシスを得られる。ゲームのストーリーはプレイヤーが関与することで際立つものがあり、本作でいうとバトルでの駆け引きなどがそれに該当するだろう。子どもの命を犠牲にして敵を殲滅する「ソウルキャノン」はその最たるものといえる。ファストモードではバトルで苦戦することがないので、ソウルキャノンを使う必要がない。

命のやり取りをしているという緊迫感がファストモードで薄れてしまうが、そのぶん安心してストーリーを進めていけるのは事実だ。ソウルキャノンを使ってしまうと本当にキャラクターがいなくなってしまうので、精神的にも戦力的にも苦しい。人によっては受け入れられないかもしれないので、そのような場合はファストモードでプレイすることをおすすめしたい。

『戦場のフーガ』のストーリーには残酷な側面も存在するが、決して悪趣味というわけではないのだ。心温まるシーンや少年漫画のような熱い展開も存在し、全編を通してストーリーを担当したときは清々しい気持ちになることができる。そのチャンスを得られるファストモードは次善の策としては完璧な選択肢といえるだろう。

また、『戦場のフーガ』のストーリーが進むポイントははっきりしており、佳境に入ってきたときは雑魚戦をこなすのが億劫になるときがある。戦争は自分たちの都合を待ってくれないという点ではリアリティがあるのかもしれないが、とにかく先の展開が気になる場面が出てくるのだ。そしてその驚きはシリーズを通して知っていればいるほど、衝撃が大きくなる。であるからこそ、『戦場のフーガ』は初代作から通してプレイすることをオススメしておきたい。

ファストモードでプレイすれば、15時間未満で『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』をクリアできるというのは魅力的だ。今からプレイしても、2025年5月29日に発売を控える『戦場のフーガ3』に間に合うことができるかもしれない。ただこれは記事の掲載日次第であるが……。『戦場のフーガ3』は過去作をプレイしておくのが必須というべき作品だ。ネタバレを避けるために詳細は省くが、『戦場のフーガ3』のストーリーは『戦場のフーガ2』のエンディング直後から始まる。『戦場のフーガ2』の最後に浮かび上がる謎を起点として、新たな激動の物語が『戦場のフーガ3』で幕を開けるのだ。

筆者はメディア向け先行プレイとして発売前に『戦場のフーガ3』をクリア済みだが、『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』を先にプレイして本当に良かったと思っている。先の読めない衝撃的な展開と、3作品を通して一緒に過ごしたキャラクターたちに愛着が湧いて仕方がなかった。『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』はそれぞれが単体の作品として完結しているところが存在するが、『戦場のフーガ3』はそうではない。『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』が土台となってストーリーの規模が拡大し、秘められた世界の謎が明らかになる。三部作すべてをクリアしたときは、感慨深い気持ちになった。記事を書きながらもその余韻に浸っているところだ。

ファストモードで強敵とのバトルも楽しむ第3の道も

『戦場のフーガ』はストーリーのすばらしさもさることながら、ターン制のコマンドバトルも秀逸となっている。主人公たちの戦車には3つの砲台が搭載されており、キャラクターを割り当てることでマシンガンやキャノンのように攻撃方法を変更可能だ。相手の弱点となる砲台から攻撃すれば相手の行動を遅らせることができるシステムとなっている。

キャラクターの成長によってスキルを習得し、全体攻撃などの派手な攻撃も放つことができるようになっていく。インターミッションでキャラクター同士が仲良くなることで、必殺技も発動できるようになる。ストーリー進行に応じてできることが増えていき、周回プレイではキャラクターの育成要素や戦車の強化要素が引き継がれる。

ストーリーを早く知りつつ、バトルもある程度楽しみたいという場合にもファストモードはオススメだ。ファストモードには敵を瞬時に撃破可能な反応弾が存在するものの、必ずしも使わなければならないというものではない。すなわち、反応弾を保険としてマシンガンやキャノンで戦うことも可能となっている。ファストモードで道中の雑魚戦をカットしつつ、要所で敵と普通に戦うのはいわば第3の道であり、ストーリーもバトルも楽しみたいという場合はうってつけの方法といえるだろう。

『戦場のフーガ』シリーズは完成度の高い三部作だ。戦争に巻き込まれた少年少女が仲間と助け合い、傷つきながらも成長を遂げていく。悲惨な戦争に苦しむ姿は胸が痛くなるが、それを乗り越えていく子どもたちには清々しい気持ちにさせてくれる。時間がかかるというだけで見逃すのはもったいないことであり、『戦場のフーガ』に少しでも興味がある場合はストーリーを高速でクリアできるファストモードでクリアすることをオススメする。そして、時間に余裕があれば通常プレイをオススメしたい。

シリーズ完結編の『戦場のフーガ3』は、2025年5月29日発売予定。プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox Oneとなっている。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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