講談社新作Steam/Switch『ダレカレ』は、“感情を大きく動かす”すごいゲームである。プレイ時間1時間、「プレイ」で伝える短編重厚ドラマ
『ダレカレ』は、何がすごいかを語るとネタバレになってしまう。なので、お伝えできる範囲で参考になりそうな情報をお伝えしよう。

講談社ゲームクリエイターズラボは7月24日、『ダレカレ』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch。『ダレカレ』は、開発者yona氏が手がけるアドベンチャーゲームだ。筆者は先行してプレイしたが本作は、かなりすごいゲームである。本稿にはネタバレがないが、ネタバレがないゆえに、核心的な言及には至ってない。つまり、面白そうと思ったのなら、あまり情報を仕入れず発売日に購入することをおすすめする。
『ダレカレ』は、何がすごいかを語るとネタバレになってしまう。なので、お伝えできる範囲で参考になりそうな情報をお伝えしよう。本作はアドベンチャーゲーム……というべきかどうか不明であるが、物語ゲームである。Steamタグとしては「インタラクティブフィクション」「ビジュアルノベル」とされており、そうしたゲームである。
物語は、女の子が朝起きるところから始まる。起きても、いつもいるはずのお父さんがいない。いるのは知らないおじさん。女の子はお父さんを探すが、何かがおかしい。女の子視点で異変について探っていく。


探っていくとはいっても、本作は探索や調査をするわけではない。ゲームにあわせたアクションをすることで、物語は進行する。電話が出てくれば電話をかけたり、洗面台が出たら手を洗ったり。目の前のギミックを進行させることで、物語が進むというわけだ。


このギミックを介して物語を進めるのであるが、物語がかなり凝っている。ネタバレになるのでコメントはできないが、衝撃的ではあるが共感もできる、人間物語である。演出やテキストの物語装置も優れているし、音楽による感情の揺さぶりが巧みだ。自分は本作を2周したが、ついうるっとしてしまった。感動や涙といった表現を安易に使いたくないが、心揺さぶられたのは確かである。


ちなみに本作は1時間でクリアできる。一方で、ずっと物語が進み続けるので、プレイ中の時間は極めて濃密だ。短編作品は、物語に厚みを出すのがやや難しい印象だ。尺の短さもあってか、ギミックを魅せることはできても、キャラや物語に思い入れを作ることが難しく、感情を動かしづらい。本作は短編ながらも「キャラとシンクロする」ギミックや演出によって、プレイヤーの感情を動かすことに成功している。1時間という限りあるプレイ時間の中で、これほど心動かされたことに驚いている。筆者は数々の短編ゲームを遊んできたが、紛れもなく本作はすごいゲームである。
yona氏は本作の開発においては短編アドベンチャーゲーム『Florence』から影響を受けたと公言している。そうした背景もあり、『ダレカレ』の作りや構造は『Florence』に近い。ただ『Florence』はストーリーが直線的に進みエンディングを見るシンプルな形式であったが、本作は物語構造にもうひと工夫仕掛けがある。またエンディングについても、筆者は『ダレカレ』の方が圧倒的に好みである。


本作はSteam Next Festで体験版が配信され、28件のレビューが寄せられ好評率100%と、非常に高い評価を獲得した(note)。そうした前評判どおりの作品だと言えるだろう。核心的な部分に言及できないので、抽象的な褒め方に終始してしまったが、本作はかなりすごい作品である。低価格であることも踏まえて、映画を見るような感覚でぜひプレイしてみてほしい。
『ダレカレ』は、Steam/Nintendo Switch向けに7月24日発売予定だ。