新作シューター『ARC Raiders』、どんなゲーム&なぜ注目されてる?ずばり、「カジュアルに楽しめる、完成度の高い脱出型シューター」
『ARC Raiders』を紹介するとともに、「脱出型シューターの現在」という視点から、その期待の背景を掘り下げていこう。

ネクソンから10月30日よりリリースされる『ARC Raiders』。PvPvE形式の脱出型シューターで、対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|Sを予定している。
10月17日から19日にかけて実施された最終プレイテスト「サーバースラム」では、Steamにおける同時接続プレイヤー数が約19万人に到達するなど、今年リリースのタイトルのなかでも特に大きな注目を集めている同作。だが、いったいなぜ、本作にこのような熱視線が寄せられているのだろうか?
本稿では、改めて『ARC Raiders』を紹介するとともに、「脱出型シューターの現在」という視点から、その期待の背景を掘り下げていこう。
『ARC Raiders』の舞台は、ARCと呼ばれる謎の機械によって荒廃した未来の地球。プレイヤーは「レイダー」と呼ばれる、ならず者のガンマンとなり、ARCや敵対するほかのレイダーなどと地表で戦い、戦闘や探索を通じて手にした貴重な物資を地下居住区「スペランザ」へと持ち帰る。ソロプレイまたは3人までのチームプレイに対応しており、ランダムにマッチメイクされた他のプレイヤーたちも参戦する。
開発を担当しているのは2018年に設立されたEmbark Studios。CEOを務めるPatrick Söderlund氏を筆頭に、これまで『バトルフィールド』シリーズに関わってきたDICEの元メンバーが中心となって生まれた新スタジオである。2023年にリリースされたデビュー作『THE FINALS』は、Steam版の初日同時接続者数が20万人を超える大ヒットとなった。
実は、『ARC Raiders』は『THE FINALS』以前、スタジオ設立当初から開発が続けられてきたタイトルであり、長らくリリースの延期を繰り返してきた経緯がある。2023年6月頃から何度もプレイテストが実施されてきたこともあり、特にスタジオにとって肝入りの作品と言っても良いだろう。
(たとえ「全ロス」しても)出撃するたびに強くなる。カジュアルな脱出型シューターとしての魅力
『ARC Raiders』の基本的なゲームサイクルは、『Escape from Tarkov』などの脱出型シューターと同様に、「広大なマップ(地表)でのPvPvEパート」と、「拠点(スペランザ)での準備パート」に二分される。ゲームにおける当面の目的は、スペランザの住人から依頼されるさまざまなクエスト(「◯◯を一定数回収する」、「△△に向かう」)の達成。そして、より長期の目的としては、レイダーとしての装備を強化し、スキルを高め、成長することにある。いずれにせよ、プレイヤーは危険な地表へと降り立ち、スクラップを集めて作った武器を背負いながら、未知の世界を探索して物資を集め、時には戦いに身を投じなければならない。

地表にはいくつかのマップ(ローンチ時点では5つ)が用意されており、それぞれが広大なオープンフィールドとなっている。マップ内にはさまざまな施設やエリアが設けられており、場所によって回収できる物資のレアリティが異なる。『ARC Raiders』では他のプレイヤーとのPvP要素があるため、当然、物資のレアリティが高いエリアは交戦が発生しやすい危険地帯だ。
一方で、地表にはびこるARCたちも脅威として立ちはだかるため、PvEに関しても油断は禁物である。地表に滞在できる時間には限りがあり、タイムオーバーする前にマップ内に点在する脱出地点へ向かう必要があるが、脱出用のエレベーターの起動音は大きく、作動するまでに時間を要するため、最後の瞬間まで死亡(=装備品全ロスト)のリスクがつきまとう。
拠点となるスペランザでは、インベントリの整理はもちろん、クエストの受注/完了や物資の売買、集めた物資を使ったクラフト要素、スキルツリーの成長といった一通りの機能が用意されている。クエストについてはゲームのストーリー要素とも紐づいており、進めていくうちにカットシーンが流れることもあるようだ。脱出型シューターの肝となるクラフト要素については、武器や装備のランク強化やパーツの作成などが可能となっており、物資を集めれば集めるほどにプレイヤーの戦力は増強されていく。
『ARC Raiders』の大きな特徴とも言えるのが、拠点に「スクラッピー」という名のニワトリがいて、地表に出撃するごとにある程度の物資を集めてきてくれることだろう。脱出型シューターと言えば、何度も死亡を繰り返して一文無しになってしまうシビアなイメージが定着しているが、本作ではスクラッピーが毎回物資を集めてきてくれるため、無意味な出撃が存在しないようになっている(しかもスキンまで用意されている!)。
「無意味な出撃がない」というのは、本作を紹介する上で特に重要なポイントだ。『ARC Raiders』では出撃時、集めた装備を使った通常のロードアウト以外に、「無料ロードアウト」という低レアリティでありながらもそれなりに戦える装備一式を選択することができるようになっている。この場合も、通常通りゲームを楽しむことができるし、使用後の待ち時間も存在しない。イメージとしては、『Escape from Tarkov』のSCAV装備を常時、自分のキャラクターで使うことができるという感じだろう。「スクラッピー」と「無料ロードアウト」を使えば、どれだけ敗北したとしても、少なくとも物資は増え続けるし、プレイヤー自身の成長にも繋がる。まさに、出撃すればするほど強くなっていくのだ。

新たなブレイクスルーを求めるシューター界隈における起爆剤となるか
『ARC Raiders』に寄せられる注目の背景にあるのは、一言で言えば「カジュアルに楽しめる、完成度の高い脱出型シューター」への渇望だろう。これまでに実施されてきたプレイテストからは、『THE FINALS』にも通じる「滑らかで軽快な操作性」に加え、それなりのスペックでも実感できる「グラフィック品質の高さ」や、広大かつ高低差があって似たようなエリアが続くことのない「探索の魅力」、充実した拠点・クエストシステムによる「持続性の高さ」を感じることができた。その魅力はゲームコミュニティ全体へと広がり、最終的にはサーバースラム時の活況に繋がっていったと言える。
近年のオンラインシューターを巡っては、『フォートナイト』や『Apex Legends』を中心とした空前のバトルロイヤルブーム以降、あまり大きなブレイクスルーが起きていない状況が続いている。『Escape from Tarkov』と『Hunt: Showdown』のヒットは、『Battlefield 2042』の「ハザードゾーン」や『Call of Duty: Warzone』の「DMZ」といった脱出型シューターの流れへと繋がっていったが、多くのタイトルが(独自の魅力を持ちつつも)何らかの問題を抱えており、バトロワほどの大きな変化が生まれるには至らなかった。
何が問題だったのかというと、(個別のタイトルの批判は避けるが)「ゲームサイクルのどこかに、物足りなさやバランスの乱れがあった」ということになるのだろう。そもそも拠点に戻るのが難しすぎたり、戻ってもやることがあまりなかったり、キャラクターの成長を実感しづらかったり、マップが飽きやすかったり、武器や物資のバリエーションが乏しかったりと、そのポイントはさまざまだ。

だが、「死んだら大きなリスクを伴う」脱出型シューターでは、どの要素も欠けてはならず、「それでもやりたい」と思わせるだけの大きな魅力が必要だ。その点において、プレイテストを通して『ARC Raiders』が垣間見せた全方位的な完成度の高さは、まさにプレイヤーが求めていたものと合致していたのではないだろうか。
さらに、「無意味な出撃がない」というカジュアルさや、トレーラーやアートワークからも感じ取れるレトロフューチャーな世界観が生み出す楽観的なムードは、ハードコアなイメージが付きまとう脱出型シューターにおいて、「これなら気軽に遊べるのでは」という期待を与えてくれる。筆者個人としては硬派なタイトルも好みではあるのだが、シーンの活況のためには、初心者でも気軽に入れる敷居の低さが不可欠であることは言うまでもない。その点も、『ARC Raiders』が注目を集める大きな理由だろう(先日発表された、「ワイプ(進捗リセット)は任意」という仕様も、そうした印象を大いに強めたはずだ)。
脱出型シューター、ひいてはオンラインシューター全体に新たな風をもたらすことが期待される『ARC Raiders』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに10月30日発売予定。




