『ソニックオリジンズ・プラス』で蘇る“ゲームギア”の想い出。当時のままの体験と、寂しさと

セガは6月23日、『ソニックオリジンズ・プラス』を発売予定だ。本稿では本作での新要素を『ソニック&テイルス』を中心に紹介する。

セガは6月23日、『ソニックオリジンズ・プラス』を発売予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS4/PS5/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S。本作は昨年6月23日に発売された『ソニックオリジンズ』に、ゲームギアで発売された『ソニック』シリーズや新プレイアブルキャラクターなどが追加された、いわゆる拡張版だ。

なお、『ソニックオリジンズ』所有者に向けて『ソニックオリジンズ・プラス』での新要素を含むDLC「ソニックオリジンズ:エクスパンションパック」も同日発売予定だ。弊誌では、発売に先駆けて『ソニックオリジンズ・プラス』を遊ぶ機会をいただいたので、新要素を中心に紹介する。

『ソニックオリジンズ』は、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『ソニックCD』『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3&ナックルズ』をデジタルリマスターして収録した作品だ。各収録タイトルは16:9のゲーム画面に対応し、60fps化がなされている。本作にはゲームモードが複数用意されているほか、アニバーサリーモード/ストーリーモードではコンティニューが無制限になるなど、現代向けに遊びやすくなる要素が追加されている。さらに、オリジナル版を楽しめるクラシックモードなども収録。『ソニック』シリーズを当時のままでプレイすることもできる作品だ(関連記事)。


ゲームギアの12作品が追加


このたび発売となる『ソニックオリジンズ・プラス』およびDLC「エクスパンションパック」では、前述した4作品に加えて、ゲームギアで発売された『ソニック』シリーズ作品が収録される。追加タイトルは以下の12作品だ。

・ソニック・ザ・ヘッジホッグ
・ソニック・ザ・ヘッジホッグ2
・ソニック&テイルス
・ソニック&テイルス2
・ソニックドリフト
・ソニックドリフト2
・ソニック・スピンボール
・テイルスアドベンチャー
・ソニックラビリンス
・Gソニック
・ドクターエッグマンのミーンビーンマシーン
・テイルスのスカイパトロール

以上、ゲームギアで発売された12作品の『ソニック』シリーズが追加収録作品となる。『ソニック』シリーズらしい、オーソドックスな2D横スクロールアクションをはじめ、レースゲーム、ピンボールといったタイトルも含まれている。これらのタイトルは、メニュー画面の「Mission」から「ゲームギア」を選択することで遊ぶことができる。本稿では、筆者が子供の頃に初めて触れた『ソニック』シリーズで、もっともプレイした作品でもある『ソニック&テイルス』を中心にピックアップして紹介する。

『ソニック&テイルス』について紹介する前に、ゲームギアについても簡単に説明しよう。ゲームギアは、セガが1990年に発売した携帯ゲーム機だ。黒いボディに十字キーと3ボタンを備えたハードで、携帯ゲーム機としては日本初のカラー液晶搭載機だ。さらに当時の携帯ゲーム機としては珍しい液晶のバックライトを備えており、暗所でもプレイが可能という強みがあった。当時ゲーム大好き少年だった筆者にとって、夜にこっそりとプレイできるゲームギアは憧れの存在であり、買ってもらったときの喜びを今でも覚えている。


ゲームギア初のオリジナル『ソニック』シリーズ


1993年に発売された『ソニック&テイルス』は、初めて『ソニック』シリーズのゲームギアオリジナル作品として発売されたタイトルだ。ゲームギアで発売された『ソニック』シリーズとしては3作品目となる。

『ソニック&テイルス』をスタートすると、セガといえばお馴染みである「セーガー」のサウンドロゴももちろん聞くことができる。メガドライブ向け収録タイトルと比べて音質が落ちた印象はあるものの、その音さえも筆者的にはノスタルジックで好印象だ。一方で画面についても発売当時の画面比率であり、『ソニックオリジンズ』収録作品と違って16:9のワイド画面には対応していない。当時のプレイフィールを味わうという点では遜色ないものの、16:9の画面でプレイしたかったというのが正直なところだ。なお、ほかの追加収録タイトルに関しても、ゲームギアからそのままの移植がおこなわれている。

実際にプレイをしてみると、操作感はゲームギアでプレイしたときと同様な印象だ。元々が携帯ゲーム機だったこともあり、『ソニック&テイルス』はメガドライブ向けタイトルと比べて画面内をキャラクターが占める比率が大きい点が特徴。見えた敵やステージへの対処をすぐに求められるなど、少々難易度は高めだ。敵や障害物の配置もなかなかいやらしく、うっかりするとあっさり1ミスしてしまう。しかし、ステージ構成を覚えることで、軽快に進めていけるようになる、当時のままの絶妙な難易度設定となっている。真エンディングを目指してみたり、とにかくスピードクリアを目指してソニックを疾走させたり、いろいろな楽しみ方ができる作品であることは今も昔も変わらない。


ちなみに『ソニック&テイルス』では、ゲーム開始時に使用するキャラクターをソニックとテイルスのどちらかから選択できる。それぞれの性能が違っており、ソニックはイメージどおり、とにかくスピードに特化したキャラクターだ。当時の新アクション「ストライクダッシュ」によるわずかな無敵時間をもつ高速ダッシュを使えば、スピンダッシュよりも速く移動できるようになっている。一方、テイルスは移動速度がソニックよりも遅いものの、一定時間空を飛ぶアクションが可能。ソニックでは通れないルートを進める、一味違うプレイングを楽しめる。空を飛ぶことで、苦手な動く足場を楽に渡ることができる場面もあるので、初心者にもおすすめのキャラクターと言っていいだろう。

そして、テイルスはソニックと比べてゲームクリアが簡単なキャラクターである代わりに、真のエンディングを見ることができないという点もそのままだ。ソニックはリングを100個集めることでスペシャルステージへ行けるが、テイルスは残機が増えるのみで、真のエンディングを見るために必要なカオスエメラルドを手に入れられないようになっている。ちなみに当時の説明書では「本当に事件を解決してくれるのはやっぱりソニックしかいないんだ」とテイルス自ら語っているものの、筆者としてはテイルスが本当に事件を解決する姿を見たかった気持ちもちょっぴりある。


『ソニック&テイルス』は、当時のままの移植により夜な夜なゲームギアを握りしめていたころを思い出す内容であった。裏を返せば筆者がプレイする限り、『ソニックオリジンズ・プラス』に収録されている『ソニック&テイルス』はオリジナル版から大きな違いを感じられない内容だ。『ソニックオリジンズ』に収録されたメガドライブの『ソニック』シリーズと比べると少し寂しさを感じるのも事実。16:9のゲーム画面への対応や新たなプレイアブルキャラクターといった要素が、新鮮さをもたらしていたことを改めて実感させられる。

しかしながら『ソニックオリジンズ・プラス』では『ソニック&テイルス』以外にも、ゲームギアタイトルが盛りだくさんで追加されたのは嬉しいところ。『ソニック・スピンボール』など、海外でのみ発売された作品も収録されている。なお『ソニック・スピンボール』は、ソニックをボールに見立てたピンボールゲームである。ほかにも、ソニックが車でレースをする『ソニックドリフト』や、落ちもの系パズル『ドクターエッグマンのミーンビーンマシーン』など、追加収録された作品はジャンルもさまざまだ。メガドライブで発売された『ソニック』シリーズを集めた『ソニックオリジンズ』に、ゲームギア時代に発売された『ソニック』シリーズが加わったことで、バイブル的作品としてのラインナップがさらに充実したと言える。原点となる作品群をまとめて遊んでみたいプレイヤーや、当時を懐かしみたいプレイヤーにはさらに最適なタイトルとなっただろう。


ソニックのガールフレンドのエミーがプレイアブル化


『ソニックオリジンズ・プラス』の新たな要素として、ソニックのガールフレンドであるエミーがプレイアブル化したことも挙げられる。エミーはハンマーを武器にしたアクションができるのが特徴で、ジャンプ中に全方向へ攻撃範囲を発生させることができたり、ハンマーを振り回してダッシュできたり。かわいらしい見た目とは裏腹に、攻撃的な性能のキャラクターだ。既存キャラとは攻略スタイルも変わってくるだろう。また敵を倒しやすい分、ソニックやテイルスよりも事故が少ない印象で、扱いやすいキャラクターと言える。

エミーは、メガドライブ版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』『ソニックCD』『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3&ナックルズ』の4作品のアニバーサリーモードなどで使用が可能となっている。さらなる『ソニックオリジンズ・プラス』での変更点として、ソニックのライバルであるナックルズが『ソニックCD』でも使用可能に。ほか作品においても、同じステージでも別のキャラクターを使用することで違った攻略ルートが楽しめるが、『ソニックCD』においては一部のステージに新規ルートまで追加されている。新キャラによるメガドライブ作品の遊びの幅の広がりも、『ソニックオリジンズ・プラス』の魅力といえるだろう。


まとめ


『ソニックオリジンズ』に、新キャラクターとゲームギアのタイトルをたっぷりと加え、過去の『ソニック』シリーズを現代へと伝えてくれる『ソニックオリジンズ・プラス』。『ソニック』シリーズをより深く知りたいという人や、筆者のように当時を懐かしみたいという人を、ますます満足させる作品となっている。なお“3Dソニック”シリーズ最新作『ソニックフロンティア』では、オープンゾーンという新たな試みが取り入れられた。その一方で本作は、進化し続ける『ソニック』シリーズの原点である“2Dソニック”を振り返るのに適した作品であると言えるだろう。

ソニックオリジンズ・プラス』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS4/PS5/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S向けに6月23日発売予定。『ソニックオリジンズ』所持者向けに、今回の追加要素と既存DLC(「クラシックミュージックパック」「プレミアムファンパック」)をまとめた「ソニックオリジンズ:エクスパンションパック」も同日配信予定だ。

Koutaro Sato
Koutaro Sato

何でも遊びますがメトロイドヴァニアとトレハン、ゲーム内の釣りが大好物。クリエイターやプレイヤーの人となりと、彼らが生み出す盛り上がりが大好きです。

記事本文: 381